【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
「アンタがキナイか?」
酒宴に興じているロウ&セクシーコンビを『放置』してオレたちは、ヤツの家を訪ねた。
「あぁ…」
中には、麦わら帽子を目深に被った若い男がいた。
パッと見、某海賊漫画の主人公っぽい。
ただ、その声はとても小さく、元気さの微塵も感じられないところが、まったく違う。
部屋に明かりを灯していないせいもあり、どことなく陰々滅々とした雰囲気が漂う。
「なにか用か?」
…九日、十日(ここのか、とおか)…
シャレがわかりそうなヤツでは無さそうなので、オレはそう言うのをグッと堪えた。
「単刀直入に聴くわ。アンタ『ノゾミア』って人魚、知らない?」
「!!」
ベロニコさんの問い掛けに、ヤツの表情が一瞬変わった。
だが
「それがどうした…」
と慌てることもなく、静かに呟いた。
「彼女が…アンタを探している。いや、正確に言えば、アンタが来るのを待っている」
「…そうか…」
「迷惑でなければ、私たちと一緒に来て頂きたいのですが…」
「…いや…悪いがそれはできない」
「どうしてよ。ノゾミアはずっとアンタの事を待ってる!って」
「あぁ…だが、彼女の言う『キナイ』は『オレ』じゃない」
「えっ!?」
「そのノゾミアが待ってるのは、オレの『祖父』だ…」
「祖…父…?…」
「つまり、アンタのおじいさんってワケ?」
「あぁ…キナイってのは苗字で…祖父はキナイ=ユキっていう」
「ちゅん?」
「ハラショー!…前々から怪しいって思ってたけど、希、やっぱり歳を誤魔化してたのね」
「ぬゎんでよ!」
「ここは希としてではなく、人魚ノゾミアとして考えるべきでは…」
「わ、わかってるわ!ロシアンジョークよ…」
「…」
海未ちゃんが、時々「絵里はああ見えて、結構抜けてるところがあるんですよ」とオレに言うんだが、その一端を、一瞬垣間見た気がした。
「詳しく聴かせてもらっていいか?」
オレが話を本筋に戻す。
「…いいだろう…」
キナイは小さく頷きながら、そう呟き
「…少し長くなるが…」
と語り始めた。
その内容は、昼間見た『紙芝居』のお復習(さらい)だった…。
「そこまでは、あなたのお母様から聞きましたわ」
「でも、これは言ってなかったろう…」
「?」
「その『腕利きの漁師』っていうのが…『オレの祖父』なのさ…」
「!!」
「では、あの紙芝居は実話なのですか?」
ヤツは無言で首を縦に振った。
なるほど。
まぁ、もしかしたら…とは思っていたが、やっぱりそうだったか…。
「…その紙芝居には…続きがある…」
そう言ってヤツが話したことは、もっと不気味なものだった。
「祖父はこの家の裏側にある、しじまヶ浜に幽閉され…その間に村長の娘は…別の男と結婚し、子供を宿したんだ」
「…」
いきなりの展開に、オレたちは言葉を無くす。
「だが…そんなふたりの幸せは、そう永くは続かなかった…。今度は、その再婚した旦那と…父親である村長が出漁中に、大嵐が襲い…帰らぬ人となっちまったのさ…」
「…やだ…」
エリティカさんが、オレの腕にしがみついてきた。
肘に当たる胸の感触。
突き刺さるウミュの視線。
どちらも気付かないフリをして、ヤツの話を聴いた。
「これはきっと『人魚の呪い』だと大騒ぎになり…村人たちは、祖父の元へと向かった…」
ごくっ…
「すると…幽閉され独り身だったはずの祖父の腕の中には…まだ産まれて間もない…ずぶ濡れになった赤子が抱かれていた…」
「きゃっ!」
…おいおい…
…なんだ、その怪談は…
「その子は…ノゾミアの?」
「いや、ベロニコさん。彼女はエッチ出来ないって言ってたけど…」
「リサトさん!こんな時に、破廉恥です!」
「いや、真面目な話、そうでしょ!」
…ちょっと、空気を変えてみたかった…ってのも、あるんだけどさ…
「それで…村長の娘さんはどうなったのかなぁ?」
…えっ!セーニャさん、それ訊いちゃう?…
「さぁ…どうなったのやら…」
その口調があまりに冷ややかで、オレの背筋にゾクッと悪寒のようなものが走った。
…あぁ、ほら…これは深追いしちゃいけないパターンだよ…
女性陣もそれは悟ったらしい。
「それじゃ、質問を変えるね。そのキナイさんが抱いていた赤ちゃんは、誰の子なんだろう?」
…セーニャさん、攻めるねぇ…
…あ、そういえば…『ことりはああ見えてSなんです。…本人は自覚ゼロですが…」って海未ちゃんが言ってるっけ…
…「あっ、でも、彼女にだったら、攻められたいかも…」って言ったら、すっげぇ怒られたけど…
「その子が誰と誰の子かは…よくわからない…。ただ、それがオレの母親である…ってことだけは間違いない…」
彼女の質問に、ヤツは静かに答えた。
…ふ~ん…
その赤子が、村長の娘と再婚した旦那の子供なら…今、ここにいるキナイは『祖父』との間に、血縁的な繋がりはない。
一方、キナイとノゾミアの子供であれば…いや、それはないか…。
それであれば…彼女がエッチできるかどうかは別として…キナイとはどこかで再会していることになる。
まさか、産んだ子供を彼の元へと流したわけでもあるまい…。
…まぁ、それはどうでもいいことか…
…詮索しても仕方ない…
「丁度いい…お前たちがその人魚と面識があるのなら…届けて欲しいものがある」
コイツには感情がないのか?
表情を変えずに、オレたちに言った。
「届けて欲しいもの?」
「着いて来い」
オレたちはヤツに言われるまま、あとを着いて行った。
港は島の南に面しているが、その真反対…北側の小高い丘を超えると、その眼下には入り江が広がっていた。
薄汚れた看板には『しじまヶ浜』の文字。
キナイが幽閉されていたという場所だ。
暗がりで、よくは見えないが、波打ち際に墓石のようなものが見える。
薄気味悪くて、エリティカさんでなくても、ガンガン前に進む…というのは躊躇われるというロケーション。
その一角に…これまた『何が出てもおかしくなさそうな小屋』が建っていた。
連れて行かれたのは、その建屋だ。
ヤツは中に入ると、なにやら手にして戻ってきた。
「これを…その人魚に渡してくれ…」
「これは?」
オレはピンとこなかったが、女性陣はすぐにわかったようだ。
「ヴェール…ですね?…」
「ヴェール?」
「うん、ウェディングヴェール…花嫁さんが頭に付ける薄い布だよ…」
「おぉ!アレか!誓いのキスの時に、捲くるやつ」
「正解!」
「母の話によると…祖父が死の間際まで、大事に握りしめてたらしい」
「つまり…」
「おじいさまは、これを持って行ってノゾミアと結婚をするつもりだった…ってことよね…」
エリティカさんの呟きに、澱んだ空気が一段とその濃度を増したように感じられた…。
「重い、重いわ!」
ベロニコさんが頭を抱えている。
「このピラピラの一反木綿みたいなレースがですか?」
「質量のことではありません!気持ちの問題です!」
ウミュがオレを睨んだ。
「わかってるよ、そんなこと…」
「どんな顔してノゾミアに伝えたらいいのかしら」
「ちゅ~ん…」
エリティカさんも、セーニャさんも悩んでいる。
キナイ(孫)にヴェールを手渡されたオレたち。
取り敢えず全員合流して、船に乗り、彼女の待つ入り江へ向かった。
「それで、リサトちゃん、どう伝えるの?」
「どう…って…」
「真実を伝えるか…それとも…」
「待って、待って!この選択次第でオーブが入手できる、できない…ってなることはないよね?」
「それはどうかしら?」
「ここで一旦、セーブしておきたいんだけど」
「ゲームじゃないんだから、そんなことできるわけないじゃない」
「まぁ、そうなんだけど…」
…って、これゲームの中の世界じゃなかったっけ?…
「じいさんはどうするべきだと思う」
「どうもこうも…ここにいる連中はお主と一蓮托生じゃて…。どっちに転んでも、恨みっこなしじゃろ」
「いいのか?オレに任せて…」
ぐるりと顔を見回す。
反対はいない…と…。
「わかった!出たとこ勝負だ…」
みんなが、うんと頷いた。
「リサトちゃん、着いたわよ」
シルビアが「頑張れ!」と意味だろう。
ガッツポーズでオレを鼓舞した。
~つづく~
この作品の内容について
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続編作れ