【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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Marmeid Festa vol.4

 

 

 

「アンタがキナイか?」

 

酒宴に興じているロウ&セクシーコンビを『放置』してオレたちは、ヤツの家を訪ねた。

 

 

 

「あぁ…」

 

中には、麦わら帽子を目深に被った若い男がいた。

パッと見、某海賊漫画の主人公っぽい。

 

ただ、その声はとても小さく、元気さの微塵も感じられないところが、まったく違う。

部屋に明かりを灯していないせいもあり、どことなく陰々滅々とした雰囲気が漂う。

 

 

 

「なにか用か?」

 

 

 

…九日、十日(ここのか、とおか)…

 

 

 

シャレがわかりそうなヤツでは無さそうなので、オレはそう言うのをグッと堪えた。

 

 

 

「単刀直入に聴くわ。アンタ『ノゾミア』って人魚、知らない?」

 

 

 

「!!」

 

ベロニコさんの問い掛けに、ヤツの表情が一瞬変わった。

 

 

 

だが

「それがどうした…」

と慌てることもなく、静かに呟いた。

 

 

 

「彼女が…アンタを探している。いや、正確に言えば、アンタが来るのを待っている」

 

 

 

「…そうか…」

 

「迷惑でなければ、私たちと一緒に来て頂きたいのですが…」

 

「…いや…悪いがそれはできない」

 

「どうしてよ。ノゾミアはずっとアンタの事を待ってる!って」

 

 

 

「あぁ…だが、彼女の言う『キナイ』は『オレ』じゃない」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

「そのノゾミアが待ってるのは、オレの『祖父』だ…」

 

 

 

「祖…父…?…」

 

「つまり、アンタのおじいさんってワケ?」

 

 

 

「あぁ…キナイってのは苗字で…祖父はキナイ=ユキっていう」

 

 

 

「ちゅん?」

 

「ハラショー!…前々から怪しいって思ってたけど、希、やっぱり歳を誤魔化してたのね」

 

「ぬゎんでよ!」

 

「ここは希としてではなく、人魚ノゾミアとして考えるべきでは…」

 

「わ、わかってるわ!ロシアンジョークよ…」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

海未ちゃんが、時々「絵里はああ見えて、結構抜けてるところがあるんですよ」とオレに言うんだが、その一端を、一瞬垣間見た気がした。

 

 

 

「詳しく聴かせてもらっていいか?」

 

オレが話を本筋に戻す。

 

 

 

「…いいだろう…」

 

キナイは小さく頷きながら、そう呟き

「…少し長くなるが…」

と語り始めた。

 

 

 

その内容は、昼間見た『紙芝居』のお復習(さらい)だった…。

 

 

 

「そこまでは、あなたのお母様から聞きましたわ」

 

 

 

「でも、これは言ってなかったろう…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「その『腕利きの漁師』っていうのが…『オレの祖父』なのさ…」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「では、あの紙芝居は実話なのですか?」

 

 

 

ヤツは無言で首を縦に振った。

 

 

 

なるほど。

 

まぁ、もしかしたら…とは思っていたが、やっぱりそうだったか…。

 

 

 

「…その紙芝居には…続きがある…」

 

そう言ってヤツが話したことは、もっと不気味なものだった。

 

 

 

 

「祖父はこの家の裏側にある、しじまヶ浜に幽閉され…その間に村長の娘は…別の男と結婚し、子供を宿したんだ」

 

 

 

「…」

 

いきなりの展開に、オレたちは言葉を無くす。

 

 

 

「だが…そんなふたりの幸せは、そう永くは続かなかった…。今度は、その再婚した旦那と…父親である村長が出漁中に、大嵐が襲い…帰らぬ人となっちまったのさ…」

 

 

 

「…やだ…」

 

エリティカさんが、オレの腕にしがみついてきた。

 

肘に当たる胸の感触。

突き刺さるウミュの視線。

 

どちらも気付かないフリをして、ヤツの話を聴いた。

 

 

「これはきっと『人魚の呪い』だと大騒ぎになり…村人たちは、祖父の元へと向かった…」

 

 

 

ごくっ…

 

 

 

「すると…幽閉され独り身だったはずの祖父の腕の中には…まだ産まれて間もない…ずぶ濡れになった赤子が抱かれていた…」

 

 

 

「きゃっ!」

 

 

 

…おいおい…

 

…なんだ、その怪談は…

 

 

 

「その子は…ノゾミアの?」

 

「いや、ベロニコさん。彼女はエッチ出来ないって言ってたけど…」

 

「リサトさん!こんな時に、破廉恥です!」

 

「いや、真面目な話、そうでしょ!」

 

 

 

…ちょっと、空気を変えてみたかった…ってのも、あるんだけどさ…

 

 

 

「それで…村長の娘さんはどうなったのかなぁ?」

 

 

 

…えっ!セーニャさん、それ訊いちゃう?…

 

 

 

「さぁ…どうなったのやら…」

 

 

 

その口調があまりに冷ややかで、オレの背筋にゾクッと悪寒のようなものが走った。

 

 

 

…あぁ、ほら…これは深追いしちゃいけないパターンだよ…

 

 

 

女性陣もそれは悟ったらしい。

 

 

 

「それじゃ、質問を変えるね。そのキナイさんが抱いていた赤ちゃんは、誰の子なんだろう?」

 

 

 

…セーニャさん、攻めるねぇ…

 

…あ、そういえば…『ことりはああ見えてSなんです。…本人は自覚ゼロですが…」って海未ちゃんが言ってるっけ…

 

…「あっ、でも、彼女にだったら、攻められたいかも…」って言ったら、すっげぇ怒られたけど…

 

 

 

「その子が誰と誰の子かは…よくわからない…。ただ、それがオレの母親である…ってことだけは間違いない…」

 

彼女の質問に、ヤツは静かに答えた。

 

 

 

…ふ~ん…

 

 

その赤子が、村長の娘と再婚した旦那の子供なら…今、ここにいるキナイは『祖父』との間に、血縁的な繋がりはない。

 

 

 

一方、キナイとノゾミアの子供であれば…いや、それはないか…。

 

それであれば…彼女がエッチできるかどうかは別として…キナイとはどこかで再会していることになる。

まさか、産んだ子供を彼の元へと流したわけでもあるまい…。

 

 

 

…まぁ、それはどうでもいいことか…

 

…詮索しても仕方ない…

 

 

 

「丁度いい…お前たちがその人魚と面識があるのなら…届けて欲しいものがある」

 

コイツには感情がないのか?

表情を変えずに、オレたちに言った。

 

 

 

「届けて欲しいもの?」

 

 

 

「着いて来い」

 

 

 

オレたちはヤツに言われるまま、あとを着いて行った。

 

 

 

港は島の南に面しているが、その真反対…北側の小高い丘を超えると、その眼下には入り江が広がっていた。

 

薄汚れた看板には『しじまヶ浜』の文字。

キナイが幽閉されていたという場所だ。

暗がりで、よくは見えないが、波打ち際に墓石のようなものが見える。

 

薄気味悪くて、エリティカさんでなくても、ガンガン前に進む…というのは躊躇われるというロケーション。

 

その一角に…これまた『何が出てもおかしくなさそうな小屋』が建っていた。

 

連れて行かれたのは、その建屋だ。

 

 

 

ヤツは中に入ると、なにやら手にして戻ってきた。

 

「これを…その人魚に渡してくれ…」

 

 

 

「これは?」

 

 

 

オレはピンとこなかったが、女性陣はすぐにわかったようだ。

 

「ヴェール…ですね?…」

 

 

 

「ヴェール?」

 

 

 

「うん、ウェディングヴェール…花嫁さんが頭に付ける薄い布だよ…」

 

「おぉ!アレか!誓いのキスの時に、捲くるやつ」

 

「正解!」

 

「母の話によると…祖父が死の間際まで、大事に握りしめてたらしい」

 

「つまり…」

 

「おじいさまは、これを持って行ってノゾミアと結婚をするつもりだった…ってことよね…」

 

エリティカさんの呟きに、澱んだ空気が一段とその濃度を増したように感じられた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「重い、重いわ!」

 

ベロニコさんが頭を抱えている。

 

「このピラピラの一反木綿みたいなレースがですか?」

 

「質量のことではありません!気持ちの問題です!」

 

ウミュがオレを睨んだ。

 

「わかってるよ、そんなこと…」

 

「どんな顔してノゾミアに伝えたらいいのかしら」

 

「ちゅ~ん…」

 

エリティカさんも、セーニャさんも悩んでいる。

 

キナイ(孫)にヴェールを手渡されたオレたち。

 

取り敢えず全員合流して、船に乗り、彼女の待つ入り江へ向かった。

 

 

 

「それで、リサトちゃん、どう伝えるの?」

 

「どう…って…」

 

「真実を伝えるか…それとも…」

 

「待って、待って!この選択次第でオーブが入手できる、できない…ってなることはないよね?」

 

「それはどうかしら?」

 

「ここで一旦、セーブしておきたいんだけど」

 

「ゲームじゃないんだから、そんなことできるわけないじゃない」

 

「まぁ、そうなんだけど…」

 

 

 

…って、これゲームの中の世界じゃなかったっけ?…

 

 

 

「じいさんはどうするべきだと思う」

 

「どうもこうも…ここにいる連中はお主と一蓮托生じゃて…。どっちに転んでも、恨みっこなしじゃろ」

 

 

 

「いいのか?オレに任せて…」

 

ぐるりと顔を見回す。

 

 

 

反対はいない…と…。

 

 

 

「わかった!出たとこ勝負だ…」

 

 

 

みんなが、うんと頷いた。

 

 

 

「リサトちゃん、着いたわよ」

 

シルビアが「頑張れ!」と意味だろう。

ガッツポーズでオレを鼓舞した。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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