【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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姉と妹

 

 

「キミが探していた妹って、この娘じゃないの?」

とオレは、再度、生意気な口をきく幼女に問い質(ただ)す。

 

「違うわ」

 

彼女は首を横に振った。

 

「この人は、キミのおねえちゃんじゃないのかな?」

 

今度は、サウナで見つけた娘に訊いてみる。

 

「ううん…知らない人…」

 

「でも、迷子なんだよね?誰とはぐれちゃったのかな?」

 

「お…さん…」

 

「だから、おねえさんでしょ?」

 

「違う…おとうさん…」

 

「マジか!それなら、そうと最初から言ってくれ!」

 

「リサトさん、それは酷というものです。この娘もパニックになっていたのでしょうし…それに私たちも早とちりしてしまい、確認しなかったのが悪いので…」

 

「それはそうだけど…」

 

「ねぇ、それより、私をこの酒場の中に入れてくれない?」

と生意気な方の幼女。

 

「まだ、諦めてないのか?」

 

気が強いというか、なんというか…。

いささか、オレも呆れ気味に言った。

 

「詳しいことはまだ言えないけど…リサト…アンタにも関わることだから」

 

 

 

「!?」

 

 

 

「それに、上手くすれば、この娘の父親の手掛かりも掴めるかもしれないしね」

 

オレはウミュの顔を見た。

ここはそうするしかないですね…そんな表情だ。

 

「わかった。乗りかかった船だ。協力してやる!…だけど…その前に言っておくことがある。年上には敬語を使わなきゃいけないよ」

 

「あら…それなら、その言葉、そっくり返してあげる」

 

「あぁ?」

 

「『とある事情』で、今はこんな姿だけど…こう見えて、アタシはアンタより年上なんだから」

 

「なんだって?」

 

「色々明かせないことがあるんだけど…名前くらいは教えておいてあげるわ。私は『ベロニコ』。よろしくね」

 

 

 

「ベロニカ?」

 

 

 

「ベロニコ!ニコよ、ニコ!『ラムダの大魔法使い、ベロニコ様』よ!」

 

 

 

「あぁ…」

 

不思議なことに…さっきまではただ単にちっちゃい女の子という印象しかなかった彼女が…名前を聴いたとたん…黒髪ツインテールの…よく知っている顔になった。

 

「そういうことですか…確かに背格好だけでなく、口調までも同じですね」

 

ウミュも納得という顔をしている。

 

 

 

「ふん!『背が低くて、生意気』って言えば『アタシ』だなんて…安直すぎるのよ…」

 

オレにはよく意味はわからないが、彼女はぶつぶつと独り言を呟いていた。

 

 

 

「リサトさん…『にこ』の妹なら、話は早いです。髪型さえ違え、同じ顔をしてますから」

 

ウミュはオレの耳元で、そう囁く。

 

「何か言った?」

 

「い、いえ…」

 

「急いでるから、さっさと行くわよ!」

 

オレたちは入口の用心棒に事情を話し、彼女を『引率』して酒場の中に入った。

 

カウンターの向こうにはマスターがいる。

 

「単刀直入に訊くわ。アタシの妹を知らない?同じ格好をした女の子なんだけど…」

 

「お嬢ちゃんと同じ格好?…さぁ…」

 

マスターは軽く首を傾げた。

 

「服は色違いで…アタシは赤だけど、彼女は緑で…ヘアバンドしてて…」

 

「緑で…ヘアバンド…」

 

「スタイルは…言いたくないけど…スラッとしてて…」

 

「ふむふむ…」

 

「性格は…ちょっとトロくさくて…」

 

「おぉ!思い出したよ!あの美人さんだな?」

 

「…認めたくないけど…たぶんそうね…」

 

「お嬢ちゃんが妹だなんていうから、混乱しちゃったよ。あれはお姉さんだろ?」

 

「妹なの!」

 

「はっはっはっ…大人をからかっちゃいけないよ。ありゃあ、どう見たってお姉さんだよ」

 

「…まぁ、いいわ…ここでやりあっててもラチが開かない…で…その娘がどこに行ったか知らない?この村には、いないみたいだけど…」

 

「確か…西に行くようなことを…。あぁ、そういえば、その娘さんもお姉さんを探してる…って言ってたな…。キミたちは3姉妹なのかい?」

 

「しまった!入れ違ったわ!」

 

「ここのところ、急激に魔物が増えているから、外に出るのは危険だと止めたのだが…」

 

「ああ見えて、このあたりのヤツらやられるような『タマ』じゃないと思うけど…わかったわ。ありがとう」

 

「居場所がわかったのですか?」

 

「まぁね…。リサト、悪いけど付き合ってもらうわよ」

 

「えっと…はい、承知しました…って返事でいいのかな?」

 

「上出来だわ。…と、そうそう…マスターにもうひとつお願いが…」

 

「なんだい?」

 

「この娘をしばらく預かってほしいの」

 

「この娘を?」

 

「父親とはぐれたんだって」

 

「おや、おや…」

 

「まぁ、心当たりはあるから、すぐに見つかると思うけど」

 

「うむ…こんなに小さい娘を外に放り出すわけにはいくまい。わかった、しばらく預かろう」

 

「ありがとう…。いい、お姉ちゃんが必ず、お父さんを連れてくるから、いい子にして待ってるんだよ」

 

「…うん…」

 

「なぁに、ここの連中はみんな温泉みたいに、温かいヤツらばかりだ。心配いらないよ」

 

「頼んだわ」

 

「詳しい事情はわからないが、本当に気を付けるんだぞ。今まで出会ったことのないモンスターが、うろついてるらしいからな」

 

 

 

マスターへの挨拶もそこそこに、オレたちは村を出た。

 

「どこへ行くんだ?…じゃなかった…どこへ行くんですか?」

 

「この先のヒノノギ火山の…さらにその西側に、地下迷宮があるの。今からそこに向かうわ」

 

「地下迷宮?」

 

「なぜ、そのようなところに?」

 

「理由はあとで。どうせ口で説明したって、わかんないんだろうから」

 

 

 

マスターの言う通り、以前に較べて、魔物が急速に増えている気がする。

なるべく遭遇しないように歩いているが、不意に襲い掛かってくるヤツは避けられない。

そこで新たに加わった彼女の出番だ…と思ったのだが…正直、戦闘能力はゼロに等しい。

杖でスライムを「ポコッ」っと叩くのが、やっと…という感じだ。

その分と言ってはなんだが、オレとウミュの戦い方は、どんどんこなれていく。

呼吸が合ってきた…と言えばいいのだろうか。

 

 

 

…というわけで…道中、何体かのモンスターを倒して、目的地まで着いた。

 

 

 

「ここが…地下迷宮の入り口なのですね。…邪悪な気配に満ち溢れています」

 

「あぁ…」

 

「ですが…このようなところに妹さんが本当にいるのですか?」

 

「ふん!じゃなきゃ、わざわざ好き好んで、こんなところには来ないわよ」

 

「確かに、そうですが…」

 

「地下迷宮って言っても、明かりは点いてるんですね」

 

「住人がいるからね」

 

「住人…ですか?」

 

「…とは言っても人ではないけど…」

 

「はぁ…」

 

「要心してよ!何も無いように見えて、トラップが仕掛けられて…きゃあ!…」

 

 

 

「…って言ってる側から、落とし穴に落ちないでくださいよ…」

 

「ふん!今のは、わざと落ちたのよ。アンタたちに教えてあげようと思ってね…」

 

「はぁ…」

 

 

 

 

 

「きゃあ!」

 

「うわっ!」

 

「うひゃあ!」

 

 

 

「…」

 

「…」

 

 

 

「ベロニコさん、何回落ちれば気が済むんですか?」

 

「ふん!今日はこれくらいにしておいてあげるわ」

 

「新喜劇ですか!!」

 

 

 

「あっ!ベロニコさん!あれは…」

 

ウミュが何かを見つけたようだ。

 

「あっ!」

 

オレもすぐにそれを認識した。

 

人が倒れている。

女性のようだ。

身に着けている服は…緑色…。

 

 

 

…この人が?…

 

 

 

オレはこの女性を知っている。

一歩間違えたら、この人と人生を歩んでいたかも知れないのだ。

もっとも…向こうにその気があったなら…という話だが…。

 

 

 

「ウソ!?一足遅かった?…」

 

ベロニコが猛ダッシュして、彼女に駆け寄り、抱き上げた。

小さな身体はよろけそうになり、慌ててウミュが支える。

倒れていた女性の身体は…力なくグッタリとしていた。

 

「起きなさい!お姉ちゃんより先に逝くなんて、許さないんだから!!」

 

しかし、反応はない。

 

「いつも『専用の枕がなきゃ眠れない』って言ってるくせに、なんでこんなところで寝てるのよ!早く起きなさいよ!!」

 

「ベロニコさん…」

 

ウミュの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

だが、その時だ。

 

 

 

 

 

「…あ…れ…私…」

 

 

 

「気付いたのね?」

 

 

 

「その声は…二…コ…ちゃん?」

 

 

 

「よかった…」

 

「私…体力が尽きて…眠っちゃったみたい…助けに来てくれたんだぁ…」

 

「当たりじゃない!」

 

「ニコちゃんには…いつも、迷惑かけちゃうね…」

 

「本当よ、デキの悪い妹を持つと大変なんだから」

 

「まぁ、とにかく無事でよかったわ」

 

「うん…って…ニコちゃん!?どうしたのその姿…」

 

「今、気付いたんか~い!!ふん、アイツらに魔力を封じ込められるのを抵抗してたら、こうなったのよ」

 

「かわいそうに…」

 

「…って言ってる場合じゃないわよ。今から、リベンジに行くわよ」

 

「リベンジ?…うん、わかった!」

 

 

 

「…えっと…事情を説明してもらえますか…」

 

この状況を理解していないのは、ウミュも同じらしい。

 

 

 

「こちらは?」

と倒れていた女性が、ベロニコに訊いた。

 

「剣を持っているのが、リサト。アタシたちが守るべき勇者の血を引く者」

 

「この方が…」

 

「ブーメランを持っているのが…そういえば、アンタ、まだ名前を訊いてなかったわね」

 

「私はウミュです。神のお告げにより、リサトさんと行動を共にしています」

 

「そうなんだぁ…。私は『セーニャ』です」

 

「セーニャ?『ことり』ではないのですか?」

 

「う~ん…そうなんだけど…役名はセーニャなんだぁ」

 

 

 

…『ウミュ』『ベロニコ』までは、なんとかなっても…さすがに『セーニャ』は厳しかったかぁ…

 

 

 

「それで、こと…いえ、セーニャさんとベロニコさんとは、どういうご関係なのですか」

 

「だから、さっきから言ってるでしょ!アタシが姉で、この娘が妹だって」

 

「ニコちゃん、それじゃあ、きっとわからないよ」

 

「じゃあ、アンタが説明しなさいよ」

 

 

 

「はい!実は、私たち双子なんです!」

 

 

 

「えぇ!?」

 

オレもウミュも揃って驚きの声を上げた。

そして、しばしのあいだフリーズしたのであった…。

 

 

 

 

 

~to be continued~

 







※ベロニコ…ドラクエでの正式名称はベロニカです。


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