【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

30 / 37
勇者の自覚

 

 

 

 

オレにとって…故郷であるイシの村が、デルカダール軍に焼き払われたことの次に…人魚のノゾミアさんが目の前で命を絶ったのは、ショッキングな出来事だった。

 

だが、いつまでも下を向いている場合じゃない。

『マーメイドハープ』なるアイテムを求めて、彼女が棲んでいた場所へと、船を進める。

 

 

 

…そういえば…

 

…ソルティコの浜辺で『エリティカさんのバニーガール姿を見せたじいさん』に、ナギムナー村に行ったら、鶴だか誰だかに会え…って言われたっけ…

 

…すっかり、忘れてた…

 

 

 

…まぁ、いっか…

 

…そのうち、また行くだろう…

 

 

 

 

 

「着いたでやんす」

 

 

 

主(あるじ)を失った白い砂浜は、静寂を保っている。

果たして、ここはそのことに気が付いてるんだろうか…。

何年経っても、この美しい景色のまま、彼女の帰りを待っているんだろうか…。

 

 

 

みんなの表情も、心無しか暗い。

そりゃ、そうだ。

そう簡単に気持ちを切り替える…なんて普通の人間じゃできやしない。

 

 

 

 

「リサトちゃん?」

 

 

 

「!!」

 

シルビアがオレの顔を覗きこんだ。

 

 

 

「あぁ…大丈夫だ…なんでもない…。じゃあ、早速探すとするか…」

 

「リサトさん、あれではないでしょうか?」

 

ウミュが目敏く、お目当てのものを見付ける。

それは島の中央…平な石が積み重ねられた場所に立て掛けてあった。

 

「随分、これ見よがしに置いてあるのね」

 

「当然でしょ!ここまで来て今から『宝探し』なんてさせられても、時間のムダだから」

 

エリティカさんの呟きを、ベロニコさんが拾って毒づいた。

 

 

 

「さて…こいつを手に入れたはいいけど…どう使えば海底王国とやらに行けるんだい?」

 

「私は知りませんが…」

 

「アタシも知らないわよ」

 

「えっ!?ベロニコさんも知らないんですか?」

 

「知るわけないじゃない!」

 

「じゃあ…セーニャさんは?」

 

「…ちゅん…」

 

「マジか!エリティカさんは?」

 

「ごめんなさい…」

 

「悪いな、私も知らない」

 

「右に同じ」

 

セクシーコンビも首を横に振った。

 

「こんな時こそ、じいさんの出番だろ?」

 

「その通りじゃ!…と…言いたいところじゃが…」

 

「なんだよ、使えねぇなぁ…」

 

 

 

「ひょっとしたら『光の柱』が関係してるかも…でやんす」

 

 

 

「あら、さすがアリスちゃん!海のことなら任せておけって感じね」

 

シルビアに誉められて、船長は「えへへ」と頭を掻いた。

 

 

 

「光の柱?」

 

「へぇ…船乗りの間ではわりと有名な不思議スポットで…海面から空に向かって、文字通り、光の柱が立ち上ってるでやんすよ」

 

「へぇ…不思議スポットねぇ…」

 

「ただ、それが何なのか、誰も知らないんでやんす」

 

「スピリチュアルねぇ」

 

「いや、それ希のセリフ!」

 

ベロニコさんがエリティカさんにツッコんだ。

 

「つまり、もしかしたら、そこが海底王国への通り道かも知れない…と言うわけですね?」

 

「その『鍵』がこのハープじゃと」

 

「なるほど。アリス、場所はわかるか?」

 

「もちろんでやんす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…光の柱?」

 

「綺麗ですね」

 

「あぁ…」

 

オレたちが目にしたのは、海面から空へと延びている『光の幕』。

なるほど…その幕が円筒状になっているから、確かにそれは柱の様に見えた。

 

 

 

「ですが…この中へはバリアみたいになっていて、入ることができないんでやんす」

 

「そこでこのハープが出番なわけですね」

 

「ウミュ殿、試しに鳴らしてみるのじゃ」

 

「はい、わかりました…」

 

「鳴らせるの?」

 

「リサトさん、それは愚問です。私、こう見えても特技の欄には『箏(そう)』と書いておりますので」

 

「そうだった…」

 

「それは『そう』だけに…と言うシャレでしょうか?」

 

 

 

「…」

 

 

 

…オレが寒いこと言ったみたいになっちゃったよ…

 

 

 

「ほら、いいから、早く弾いてよ!」

 

「えっ?あ…はい…」

 

 

 

♪ぽろぽろぽろり~ん…

 

 

 

オレはまったく演奏などできないが、経験者なら、ある程度どんな楽器でも弾けるのであろう。

ウミュはいとも簡単に、優雅な音色を奏でた。

 

ハープという楽器の特性上、誰が弾いても、そんな変な音は出ないと思うが、ちゃんとメロディになってるところが、さすがと言うべきか。

 

 

 

そう思った次の瞬間…

 

 

 

オレたちの船は眩い光に包まれ、そのまま海中に引き込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…海底王国…」

 

「はい…恐らく…」

 

 

 

船ごと『ここ』に引っ張りこまれたオレたちがたどり着いた所は、どうやら『桟橋』らしかった。

 

恐々(こわごわ)とみんなで下船する。

 

 

 

「なんか水族館の海底トンネルに来たみたいだな…」

 

「はい、リサトさんとデートで行った、八景島シーパ○ダイスのドルフィンファンタジーを思い出しますね」

 

「別に具体的に名前を出さなくても…」

 

「ただ、そこと違うのは…」

 

「周りが何も囲われてない…ってことかしら」

 

「うむ…サイエリナ殿とビビアンジュ殿の言う通りじゃ。不思議なことに…水の中にいるはずなのに、普通に呼吸ができておる」

 

「まさに…スピリチュアルね」

 

「アンタ、そこは『ハラショー』でしょ!」

 

「ちゅんちゅん!」

 

 

 

「お待ちしておりました。リサト様ですね?」

 

 

 

「!?」

 

オレたちが、この慣れない状況に戸惑っていると、どこからともなく現れた人魚に声を掛けられた。

 

 

 

…しかし、人魚という生き物は、こぞってみんな美人だな…

 

 

 

「そういうイメージで見ているからです。本当は実体のないものを、脳に映し出しているだけなのかも知れません」

 

「ウミュ?」

 

「リサトさんの考えてることなど、だいたいわかります」

 

 

 

…スピリチュアルやね…

 

 

 

「女王様がお待ちです。ご案内致しますわ」

 

 

 

色々『彼女』に訊きたいことはあるのだが、取り敢えずあとに続くことにした。

 

海底と言うからには、太陽光は届かないと思うのだが、周囲は青白い灯りが点(とも)されていて、視界は悪くない。

故に、目の前に魚の大群が泳いでいくのが、よく見える。

 

 

 

…鯛やヒラメが舞い踊り…

 

…浦島太郎の歌だったけか?…

 

 

 

桟橋を抜けると…王国…と言うわりはこじんまりとした…野外音楽堂みたいな場所に出た。

いや、ショッピングセンターのイベントスペースか。

ボキャブラリーな貧困なオレには、そこをなんて称したらいいかわからない。

 

 

 

「きっと、王国自体はもっと広いのでしょう。ここはその中のほんの一部…そう考えるのが妥当だと思います」

 

 

 

…ハラショー!…

 

 

 

ウミュは、またしてもオレの思ってることを読み取った。

もはや、エスパーだと言っていい。

 

 

 

「どうぞ。この上に女王がおられます」

 

言われるままエレベータに乗る。

 

 

 

扉が開くと

「あなたが勇者リサトですね。海底王国ムウレアへようこそ。私は女王のセレンです」

と空間の奥にいる…美しい人魚…が名乗った。

 

 

 

ノゾミアさんよりは年齢が上だということはわかる。

人間で言えば40代前後というところだろうか…。

ただし、見た目が老けているとかそういんじゃなくて…得も言われぬ『漂う威厳』…が重ねてきた月日を感じさせるのだ。

 

だからなのだろうか…とても綺麗だが…いやらしい目では見られなかった。

 

 

 

それに…

 

何となく目付きが怖い。

オレたちに威圧感を与えるには充分すぎる雰囲気を持っていた。

 

 

 

「どうして、オレの名を知ってるんです?」

 

オレは疑問のひとつをぶつけてみた。

 

 

 

「カードが教えてくれたのです」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「…冗談です…」

 

 

 

「冗談か~い!」

 

ベロニコさんは相手が女王だろうと臆せずツッコむと、張り詰めていた空気が、一瞬にして和んだ。

 

 

 

ふふふ…と微笑む女王。

だが、目は笑っていない。

 

「私はちょっとした魔法が使え…地上の様子が全てわかるのです」

 

 

 

「ハラショー…」

 

エリティカさんはついに、自らそのセリフを口にした。

 

 

 

「それでオレの名前も?」

 

 

 

「はい、ここに来ることはわかってました。…そして…ノゾミアのことも、当然知っております」

という女王セレンの言葉に、和らいだ空気が、再び重くなった。

 

 

 

「…」

 

 

 

「…ですが、この件に関しては、あなた方が責任を感じることはありません。…廻(めぐ)り巡(めぐ)って、世界樹の葉の意思のもと、ふたりが再び出会うことを祈りましょう」

 

 

 

「…はい…」

 

オレたちは言葉少なに頷くのがやっとだった。

 

 

 

「そんな顔をしないで下さい。…リサト…あなたにはもっと大きな使命があるハズです」

 

「えっ?あぁ…まぁ…」

 

「私は魔力によって『結界』を張り、邪悪な力から、この王国を守っております。しかし、それも…そろそろ限界が訪れようとしております…」

 

 

 

「!?」

 

 

 

「邪の力が日に日に強大になっており…私の力だけでは守りきれないのです」

 

「こんな海底にまで、そんな影響が?」

 

「行きなさい…リサト。世界はあなたの力を必要としています。悲しみを力に変えて…世界を滅ぼす悪と戦うのです!」

 

「悲しみを力に変えて…か…」

 

「あなたは悪魔の子ではありません。魔王を倒す為に生まれた勇者なのです!!」

 

 

 

…なるほど…

 

…この人の目付きの鋭さは、きっと、そう言ったことが積み重なった結果なんだろう…

 

 

 

オレは本来、平和主義だ。

争い事は嫌いだ。

 

 

 

だが…女王の目を見た瞬間、オレの心の中で何が弾けた。

 

 

 

「オレが勇者か…ふっ…女王様にそう言われて、ようやくそんな気になったよ」

 

「リサトさん、今頃ですか…」

 

「正直、みんなには悪いけど…やっぱりオレが勇者だなんて、どこか半信半疑で…いや、悪魔の子だとは思っちゃいないけどさ、でも…だからって勇者だとは…」

 

「うむ…16年間、何も知らずに育ってきたんじゃ…無理もない」

 

 

 

…♪眩しい空を…

 

…輝く海を…

 

…渡せるもんか…

 

…悪魔の手には…

 

…みんなの願い身体に受けて…

 

…さぁ立ち上がれ…

 

 

 

「だけど…今、オレの中でスイッチが入った。頭の中で『子門真人』が熱唱してるぜ」

 

 

 

「リサト…誰じゃ、それは?…」

 

じいさんだけじゃなくて、みんなが『?』を浮かべてるらしかった。

 

 

 

「♪行け、行け、勇者…リサト~、リサト~!!」

 

だが、オレはそれに構わず、口ずさむ。

 

 

 

…あれ、これドラクエだっけ?…

 

…スーパーロボット大戦じゃなかったな…

 

 

 

「なんだか知らないけど、リサトちゃんがやる気になったみたい!」

 

「何よりじゃ」

 

みんなが「ふふふ…」と笑った。

 

 

 

「そこでリサト…あなたに渡ししたいものがあります」

 

 

 

「これは!?」

 

 

 

「グリーンオーブ!!」

 

 

 

「邪悪な力を封じ込めるには、これが必要なのでしょう。長い間私が預かっていましたが…リサト、あなたに譲ります…」

 

「おっしゃあ!グリーンオーブ、ゲットだぜぇ!」

 

「リサト、それは違うゲームだから」

 

「前もそんなこと言われてましたね!」

 

「まぁ、お約束ってことで…」

 

オレは照れ笑いを浮かべた。

 

 

 

 

するとベロニコさんが、オレを一瞥したあと、女王に

「ところで…これでオーブは3つになったわけだけど…残りの3つはどこにあるか知らない?」

と訊いた。

 

「残念ながら…そこまでは…」

 

「ふ~ん…」

 

「でも、どうして、そんなにあっちこっちに、隠してあるのかな?」

 

セーニャさんのもっともな質問。

 

「それは、ひと揃い纏めて置いてあれば、なんの苦労も要りませんが…裏を返せば、やはりあの場所へは、それだけ苦労しないと行けない…ということなのでしょう」

 

「ウミュ殿の言う通りじゃ。それこそが…神に選ばれし者…ということじゃ」

 

「なるほど…。でも、あと半分…宛てもで探すのは半端なく大変なんだけど…女王様、何かヒントとか無いですかね…」

 

「わかりました…それでは、あなた方がこれから進むべき場所を占ってみましょう…」

 

「あぁ…お願いします…」

 

 

 

女王はジッと水晶玉を見つめた。

 

 

 

「…これは…」

 

 

 

「何かわかりましたか?」

 

 

 

「ここより、遥か西…少女たちが集う…華やかな場所が見えます…そこにオーブがあるかどうかは定かではありませんが…次の目的地はそちらに向かうのが良いでしょう」

 

 

 

「少女たちが集う、華やか場所?」

 

「今、リサトさん、破廉恥なことを考えましたね?」

 

「いや、そんなことは…って言っても、やっぱりパッと思い付くのは、女子校とか女子寮くらいしかないんだけど…」

 

「発想が貧困です」

 

「ごめん、ウミュちゃん…私も音ノ木坂を思い出したゃった」

 

「アタシも」

 

「さすが双子…というところでしょうか…」

 

「私たちはUT-Xだな」

 

「そうね…」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「私は…『硝子の花園』かしら…」

 

「ど、どうしてそうなるのですか!?」

 

「な~に、それ?」

とシルビアが首を傾げた。

 

「『のぞえりのデュエットソング』よ!…いきなり『ユメの迷宮、ユリの迷宮…』で始まる『ゆりかもめに乗ってゴーゴー』な感じの曲」

 

「やんやん♡…♪大興奮のココロ、ちゅんちゅん!」

 

「やだ…楽しそうじゃない!」

 

「は、破廉恥です…」

 

 

 

「あ…思い出した!前にソルティコの町で情報収集した時にさ、そこから北の方に女子校があるって聴いたなぁ。確か…『メダ女』って言ってたような…」

 

「メダ女?…メダカの学校ですか?」

 

「ウミュ、さすがにそれは違うんじゃない?」

 

「うん、ウミュちゃん、セーニャもそれは違うと思う…」

 

「し、失礼しました…」

 

 

 

「メダ女ね…聴いたことあるわ。うん、方角的にも合ってると思うし…リサトちゃん、次はそこに向かうわよ!」

 

 

 

「了解!」

 

 

 

「リサトさん、妙に張り切ってませんか?」

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

「言っておきますが、おかしな真似は…」

 

 

 

「しない!しないって!ほら、勇者としての自覚が芽生えたばっかりだから…」

 

 

 

…まぁ、ウミュにはすべて見透かされてるのはわかってるけどさ…

 

 

 

 

 

~つづく~

この作品の内容について

  • 面白かった
  • ふつう
  • つまらない
  • ドラクエ知らない
  • 続編作れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。