【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
人魚の女王セレンの助言に従って、オレたちは『メダ女』を目指す。
彼女の案内に従い…海底王国に来たときとは『別の光の柱』…の前でハープを奏でると、船は再びワープして浜辺に着岸した。
そこは、これまで踏み入れたことのない内陸地だった。
時折、設置されている看板を目印に、山を越え、谷を抜け、ひたすら歩く。
「こんな奥地に本当にあるの?」
ベロニコさんは終始愚痴をこぼしている。
「だから、秘密の花園っていうんじゃないんですかね?」
「関係ないでしょ!」
彼女は身体が小さい分、歩幅が狭い為、オレたちの2倍歩かなければならない。
オレたちでさえ、結構きつい道。
そうなるのもよくわかる。
「ワシも、疲れたわい。少し休まんか」
もうひとり。
じいさんも辛そうだ。
だが…
「見えた!あれじゃない?」
シルビアが前方を指差した。
「本当に学校なんだな」
「結構立派な建物ね」
セクシーコンビの言う通り、随分と本格的な校舎が眼前に迫る。
「はぁ…やっと着いたのね。長い道のりだったわ」
「まったくじゃ…」
校門の前まで来ると、丁度、庭で集会をしている最中だった。
恰幅のいい初老の校長らしき人が、訓示を述べている。
小・中・高一貫教育なのだろうか…幼い子から、オレたちと同じ位の女子が20名ほどが並んで話を聴いていた。
しばらくすると、軽快なメロディーに乗って歌らしきものが耳に入ってきた。
ここからは距離が遠くてよくわからないが、どうやら校歌のようだ。
オレたちは校門の外でそれが終わるのを待つことにする。
「終わったみたいね」
「じゃあ、行こうか」
「ちょっと、ちょっと勝手に入らないでほしいわ!」
校内から誰かが走ってきて、オレたちはすぐに止められた。
人ではない。
『ブチュチュンパ』というモンスターだ。
「どういうこと?」…とオレたちは顔を見合わせる。
「あなたは?」
「私は『マリンヌ』。こう見えてもメダル女学園の教師なのよ」
ふむ、確かにモンスターだからといって、全て悪者ではない。
特にこの世界においては、たびたびこうして『改心』したヤツらがいる。
「人を見た目で判断するのは、人間の悪いクセよ」
彼女は少し怒った口調で、オレたちにそう言った。
「大変失礼致しました」
「それでなんの用?ここは神聖なる女子の学び舎(まなびや)。何人たりとも男性が立ち入ることはできないのよ」
「校長は?男の人じゃないの?」
「指導者は別」
「…ですよね…実はオレたち…」
と一旦頷いたあと『彼女』に事情を話す。
自分で「勇者だ」と名乗るのは恥ずかしいので、そのへんはベロニコさんに説明してもらった。
マリンヌは怪訝な顔をしているが
「わかったわ。ちょっと待ってって」
と言い残すと、校舎の中へと入っていった。
程なくして…
校長が小走りでこっちへとやってきた。
そしてオレを見るなり
「ん~素晴らしい!!あなたは、とんでもない才能を秘めておりますなぁ。さすが勇者だけのことはある」
とのたまわった。
「はい?」
…なんの才能だ?…
「あ、私が当学園の校長です。こんなところで立ち話はなんです。さぁさ、どうぞ中へいらしてください」
「ちょっと、校長!この人は男性ですよ!」
「まぁまぁ…そう目くじらたてなくても…この人たちは特別ですよ」
「まったく、信じられませんわ!!」
同行するマリンヌの小言を無視して、校長はオレたちを誘導する。
心なしか彼の足取りが軽そうに見えた。
校舎に向かって左に、大きな像がある。
制服姿の少女が、肩膝をついて何かを拾っていた。
歩きながらそれを見ていると
「それは『メダルを拾う乙女』という名の銅像です。どうです?気品溢れる素敵でしょ」
と、それに気付いた校長が説明する。
「はい。とても優雅で上品な姿勢ですね」
ウミュが同意する。
「ここは『立派なレディ』を育てることを目的とした学校なんですよ」
と校長は笑顔を振りまいた。
「改めまして、よくぞ参られました。旅の方。いえ、勇者さま。私は校長のメダルです」
「あぁ、リサトです。…で、こっちがその他大勢です」
「こら、ちゃんと紹介しなさいよ!!」
ベロニコさんが怒鳴ったが、面倒なので省略した。
「これこれ…」
「リサトさんをお招きしたのは、ほかでもない。私はあなたの澄んだ瞳に見たのです!」
「瞳に見た?何を?」
「青空のように広がる『メダル集めの才能』を!!」
「続けるのね?アタシの扱いなんてそんなもんよ…」
「穂乃果よりはマシだと思いますが…」
「まぁ…ね…」
「メダル集め?あぁ、これのことか?」
旅を続ける中で、ツボや樽を壊し…あるいは人の家のタンスや棚の引き出しを開け見付けた…『小さなメダル』…オレはそれを校長に前に出した。
「そうです!まさにそれです!!」
「これが何だって言うんだ?」
「その集めた小さなメダルの数によって、プレゼントを差し上げているのですよ!」
「確かに、そんな話をソルティコの街で聴いて…コツコツと集めてはきたけど…」
「本来ならば、その才能を見込んで、当校の生徒として入学して欲しいところですが…残念ながらリサトさんは男性です」
「はぁ…」
「そこで、今こそメダ女の校長の特権を行使して…メダル集めの類稀(たぐいまれ)なる才能を持つあなたを、我が校の客員生徒として迎えましょう!」
「客員生徒!?」
…えっ?…
…っていうことは…
…紅一点ならぬ『黒一点』ってヤツか?…
…いわゆる…
…ハーレム!!…
「リサトさん、顔が…」
「ん?」
「破廉恥です!」
「ウミュ、そのセリフは聴き飽きたよ」
…まぁ、一瞬、鼻の下が延びたのは、否定しないが…
「じゃが…メダル集めと立派なレディと…どういう関係があるのかのう?」
「はい、初代の校長が…立派なレディになる条件のひとつ…として『視野を広く持つこと』を掲げおり…世界中にそのメダルをばら撒いたのです。つまり、それを数多く集めたものは、それだけ色々なところに行き、試練を潜り抜け、精神的に大きく成長する…ということでしょうね…。ちなみに私は11代目です」
「何が?」
「校長ですけど」
「あぁ…そういうこと?急にぶっ混んできたんで…」
「視野を広く持て…で、メダル探し?なんか、結構、発想が飛躍しているな」
「先人の考えることなんて、そんなものなんじゃない?」
「…ですね…」
セクシーコンビの言葉に、オレは妙に納得した。
「長い年月を経て、メダル集めに関しては、多少イベント化しているところがありまして、あなたのように生徒以外の方が手にすることもあるようですが…しかし、その初代校長が想い描いた精神は脈々と受け継がれております」
「それが、あの校庭の銅像ってことか」
「メダルを見つけるということはもちろんですが…だからと言って一喜一憂してはいけません。決して慌てず、騒がず、優雅に…」
「なるほど…」
「さてリサトさんは…ここに来られたということは、きっと数多くのメダルを集められたということでなのしょう」
「えっと…」
とオレは道具袋の中から、メダルを取り出し、1枚1枚数えた。
31枚あった。
「ワシも2枚持っておる…そんな使い道があるとは知らなかったがのう」
「それなら、私も1枚持っている。グロッタの街で見つけたんだが…どうせ、1枚だけあっても役に立たないなら、これはリサトにやる」
「すみません、ありがたく頂きます。これで…じいさんとサイエリナさんのとを合わせて、34枚か…」
「ううん。35枚よ!」
「!?」
「私の1枚を合わせて」
とシルビアがもう1枚、オレに手渡した。
「ねぇ、なんか、前にこんなシーンをみたことない?」
「はい」
「あの時は『9人や』だった気がするけど」
「ちゅんちゅん!」
「エリティカさん、何の話ですか?」
「うん…ちょっとした思い出話よ」
「はぁ…」
「素晴らしい!!さすが私が見込んだだけのことはあります!いきなり35枚とは…ところで、スタンプカードはお持ちですか?」
「それなら…これのことかな?」
「おぉ、セーニャさん!」
「前にニコちゃんと一緒にソルティコの町で買い物した時に、ホテルの前でもらったんだよ」
「そういえば、そうだったわね」
「さすがです!では、そちらをお預かりして…」
と言うと校長は、ポンポンポン…とカードにスタンプを押していった。
「1、2、3、4、5…まずは『守りのカード』をプレゼントです」
「あっ…どうも…」
「6、7、8、9、10…で『風の帽子』ですね…」
「サンキュー」
「次が…20で『ルーンスタッフ』」
「おぉ、これはワシの物じゃな」
「あら、それはアタシも使えるわ」
「25で…メダ女の制服です!」
…制服?…
「これ、オレの?」
「リサトさんはそういう趣味があったんですか!?」
「ないよ!あるわけないじゃん…けど…何かオレが使うアイテムかと思っただけで…」
「制服で…何をするつもりですか?」
「おいおい…」
「破廉恥です!破廉恥すぎます!」
「しないっていうの」
「本当ですね?」
「着てる人には興味はあるけど、服だけってのは、どうでもいい」
「そうですか…ん?…」
「いや、聴き流してくれ…」
「えっと…こちらは…お見受けしたところ…そちらのお嬢さんと、あなたと、あなた…が着用できるかと…」
ベロニコさんとセーニャさんと…エリティカさん。
妥当っちゃあ、妥当だな。
「制服だって。ずいぶん着てなからドキドキしちゃうね」
「ワシもドキドキするわい」
「これこれ!」
「…続きまして30枚…『先代王の衣装のレシピ』…そして35枚…と…『はやぶさの剣』ですね」
…おぉ、結構、もらったなぁ…
「ねぇ、ところでこのスタンプを溜めていくと『オーブ』って手に入るのかしら」
「オーブ…ですか?…すいません、私にはなんのことだかわかりませんが…」
ベロニコさんの質問に、校長は首を傾げた。
「え~っ、そうなの!海底王国の女王はここに来ればあるって言ったのに」
「ある…とは言ってません。ヒントがあるのでは…と申しておりましたが…」
「だとすると、我が校の教師…もしくは生徒が何か知ってるかもしれませんね」
「また聴き込みかぁ」
「そう簡単には手に入らないのね」
「あとは…この部屋の裏にある図書室の本も、お調べになったらよいでしょう」
「ありがとう、そうするわ」
「では、今日はもう夜も遅いですし、こちらにお泊りになっていってください」
「校長!男性を校内に入れるだけではなく、宿泊させるなどと…いくら勇者だとはいえ、あんまりです!」
「大丈夫!勇者さまが、おかしなことなどすまい」
「どうでしょう…よいですか?ちゃんと監視をさせて頂きますからね!!」
マリンヌがオレを睨みつける。
「ははは…了解です…」
「リサトよ…世の中そう甘くのう」
じいさんがオレの耳元で囁いた。
~つづく~
この作品の内容について
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