【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
オレは自分で言うのもなんだが…そこそこモテた。
いや、過去形にするのはどうだろう。
今も現役のJリーガーとして、女性ファンは大勢いる。
その気になれば、あちらこちらと手を出すことも、難しくはない。
…とは言え『スケベ』だという自覚はあるが、法を犯すようなことも、道徳に反するようなこともしたことはない。
そこに関しては、マスコミに追求されるようなことは一切ない。
こう見えて、意外と真面目。
元カノからは『口だけ番長』なんて言われたりもした。
小学校時代は別として、中学の時には何人かの女の子と付き合った。
いずれも性の不一致…いや、性格の不一致で別れてしまったが。
その後…高校生になって付き合い出した元カノが…カリスマモデルからアーティストになり、今は女子サッカーの日本代表という…いわばスーパースターだった。
そして…現在の嫁さんは…こちらも伝説のスクールアイドルμ'sの元メンバー。
う~ん、華麗なる女性遍歴!!
これ以上、何を望む?って話だ。
ところで…今いるところは『メダル女学苑』という。
オレが通っていた学校は、共学だったし、先述の通り、そこまで異性に飢えていたわけではないのだが…それでも『女子校』…という響きは、男心を擽(くすぐ)るには充分すぎるものだと言えた。
得も言われぬ淡い期待を抱きながら、廊下を歩く。
校内はアロマでも焚かれているのだろうか?
うっすらといい匂いが漂っている。
それだけで、なんとなく気分が良くなった。
オレとロウ…それとシルビアを除けば、全員女子校出身だ。
彼女たちは「この感じ、懐かしいわ…」と言いながら、4つ目のオーブの情報を入手する為、生徒たちや教師たちに聴き込みを開始した。
「そう言えば…まだこの物語に1年生組が出てきてないわね」
「そうだね、ニコちゃん。真姫ちゃんと凛ちゃんと…花陽ちゃんがまだだね…」
「あら、穂乃果もまだじゃないかしら…」
「いえ、穂乃果はあなたがパーティーに合流する前に、すでに出演しております」
「そうなの?」
「ホムラの里の看板娘という役で…」
「ハラショー!そんな適役があったのね…」
「本人は『出番が少い』と怒っていましたが…」
「アイツのことだから、この中の生徒役で出てきたりするんじゃない?…」
μ's組はそんなことを言いながら、校内を巡回していた。
周り始めて気が付いたが、女生徒たちの…オレを見る目が違う。
どうやら『勇者』だという情報が伝わっているらしい。
それが『憧れの眼差し』だとわかる。
…ひょっとして、ひょっとしたら…
…この後『むふふ』なことが待ち受けているか?…
自分の顔が、少しだけ緩んでいるがわかった。
もちろん、なにかあってはいけないし、なにかをするつもりもない。
ないけど…あんなことやこんなこと…を想像してしまう。
それは男にとって仕方のないことなのだ。
「リサトさん、わかっていますね?」
生徒は30人ほどだが、そのうちの2/3はオレより年下…おそらく小中学生。
そして数人は…人間界に改心したモンスター。
『ロリコン』でもないし『特殊な趣味』があるわけでもないので『間違い』を起こしようがない。
…待てよ…
…逆に言えば…残りの1/3とは間違いが起こる可能性がある?…
「…わかってるって…」
と睨むウミュの問い掛けに答えてみたけど…でも…『この世界』なら、多少のことは許されるんじゃないか…とか思ったりもする。
…なんと言ってもオレは『勇者』なんだから…。
結局、聴き込みでは直接オーブの手掛かりになるようなことは、判明しなかった。
「だとすると…校長が言っていた図書室か」
「そうね…。でも今日はもう遅いし、それをするのは明日にしない?寝不足はお肌に大敵よ」
「そうね!そうしましょう!」
とベロニコさんの提案に、シルビアが同意して、みんなも大きく頷いた。
オレたちは、校長の特別な計らいで宿泊を許可された。
教師のマリンヌは
「学校の立ち入りだけでなく、一晩を共に過ごすなんてありえませんわ!」
と物凄い剣幕でまくし立てていたが『勇者様ご一行』という免罪符の前では、彼女も『なすすべ』がない。
渋々、その決断に従ったのだった。
オレたちは1階にある学食で、学校自慢の『伝説のソーセージ』なるものを食し、腹が膨れたところで就寝となった。
学校は全寮制で、建物の2階部分に生徒の寄宿部屋がある。
その空き室を3部屋借りた。
オレと同室になったのは、ロウとシルビア。
…まぁ、仕方ない…
ここまでの道中が長かったこともあり、2人はベッドに就くとすぐに眠りに落ちた。
どれくらい経ったろうか…。
こんこん…というドアをノックする音で目が覚めた。
オレは元々1時間毎ごとに目を覚ましてしまうような『ショートスリーパー』である上に、寝ていても物音や気配に敏感で、割とすぐに気が付くタイプだ。
…これはもしや…
…逆夜這いってやつか?…
ロウとシルビアを起こさないよう、ベッドから抜け出し、静かにドアを開けると…そこに立っていたのは…リップスというモンスターだった。
「勇者さま!お願いがあります!」
「えっ!?…えっと…」
「私は『ブリジット』と言います」
「はぁ…」
どうやらここの生徒らしい。
「実は…校内の壁新聞に恋の悩みを投稿したのですが…その回答を見て来て欲しいんです!」
「壁新聞?恋の悩み?」
「自分で見に行くのは怖くて…」
「はぁ…」
「ここはひとつ勇者さまにお願いできないかと…」
…勇者ってそういうことをするのが仕事だっけか?…
「…どこに貼ってあるの?…それ…」
「丁度、ここから反対側の廊下です。グルッと周った向こう側です」
「あ…そう…」
…別にオレじゃなくてもいいと思うけど…
…それほど難しいことじゃないし…
…まぁ、いいか…
「明日でいい?」
「は、はい!も、もちろんです!」
「わかった…じゃあ、そういうことで」
「ありがとうございます!助かります!さすが勇者さまです!」
そう言うと彼女は「むふ!楽しみだなぁ…なんて書いてあるのかしら…」とスキップしながら帰っていった。
「…」
今の出来事は夢かな…とも思ったが…そうではないみたいだ。
気を取り直してベッドに戻る。
何か楽しいことでも考えながら、眠ることにした。
しかし…
どれくらい経ったろうか…
こんこん…
再びドアがノックされた。
…今度こそ…
…逆夜這いってやつか?…
ロウとシルビアを起こさないよう、ベッドから抜け出し、静かにドアを開けると…そこに立っていたのは…初老の女性だった。
…モンスターではなかった…
…人間だった…
…でも期待している人でもなかった…
残念ながら、両者ともオレのストライクゾーンではない。
「夜分遅くに申し訳ございません。私、この学校で教師をしております『グレース』と申します」
「はぁ…こんばんわ…」
「あなたが勇者さまと聴いて、お願いにあがりました」
「なんでしょう…」
「実は…友人との想い出の品を探して欲しいのです」
「想い出の品…ですか…」
「古いアルバムをめくり…ありがとうって呟いた…」
「ん?」
「いえ、すみません。間違えました。古いアルバムを見ておりましたら、中から旧友からの手紙が出てきたのです」
「手紙?」
「…そこには想い出の木の周辺に『友情の証を埋めた』という趣旨の内容が記されておりまして…」
「それをオレに見つけろ…と」
「さすが勇者さま、話が早いですこと…」
「いやいや…」
「このようなことは勇者さましか、お願いできないものですから…」
「あぁ…そうですか…まぁ、いいですよ」
…それこそがオーブかもしれないし…
「ありがとうございます!!」
「でも…明日でいいですか?」
「は、はい!もちろんです!」
「じゃあ、確かに承りました…おやすみなさい」
「はい、失礼致します…」
今のも夢かな…と思ったが…やはり、そうではないみたいだ。
再度、気を取り直してベッドに戻る。
何か楽しいことでも考えながら、眠ることにした。
そして…
どれくらい経ったろうか…
こんこん…
三度(みたび)ドアがノックされた。
…二度あることは三度あるか…
…三度目の正直か…
ロウとシルビアを起こさないようベッドから抜け出し、静かにドアを開けると…そこに立っていたのは…
…おぉ!ストライク!…
打つか、打たないか?と問われれば、カウントによっては見送る『アウトローいっぱい』のところ。
でも、追い込まれていたら、手を出してしまうだろう。
打ちにいった瞬間、スーッと逃げていくスライダーのような…そんな危険性を孕んでいるけど…
…ってサッカー選手が例える表現ではないな…
美少女であることは間違いないのだが…ひと昔前のヤンキーって感じで…この学校には似つかわしくない生徒だった。
オレがアウトローって言った意味は…つまりそういうことでもある。
「アンタ…勇者なんだって?」
と彼女は不躾にそう言った。
「まぁ、一応、そう呼ばれてるけど…」
「そう…」
「なにか?…」
「そんなアンタを見込んで、ひとつ頼みがあるんだけど…」
…私をオンナにしてくれ…なんて言われたりして…
…こういう娘ほど、意外と純だったりするからな…
「『女王のムチ』が欲しいんだ」
…違った…
…って、おいおい…
…女王のムチってか?…
…この歳でいきなり『それ』はハードすぎるだろう…
「か、勘違いするんじゃねーぞ。これはケジメなんだ」
「ん?」
「アタイ…世話になったセンセーのムチを無くしちまってさぁ…。普通のムチなら別にどーでもいいんだけど…あれ、特殊なヤツで…簡単には手に入らないんだよねぇ…」
「あぁ…そういうこと…」
「アタイにとって一番大切なことは、義理ある人に決して迷惑を掛けないことなんだ…ホントは他人に頼るつもりなんて毛頭もないんだけどさぁ…」
…なるほど…
「すぐに…ってワケにはいかないと思うけど…それでもいいなら探してみるけど…」
「あぁ、アタイの名は『ハンナ』って言うんだ」
…オンナじゃなくてハンナね…
「オレはリサトだ」
「勇者リサトか…ヨロシクな!恩に着るぜ。それとさぁ…できれば、ムチはワンランク上のヤツを頼むよ」
「ワンランク上?」
「折角ならいいモノをプレゼントしてやりたいからな」
「約束はできないけど…努力はする」
「OK!じゃあ、待ってるぜ!」
「お、おう…」
…まぁ、なんだ…
…いい娘じゃねぇか…
…μ'sで言えば真姫ちゃんタイプ?…
「それにしても…」
ベッドに戻ったオレは思わず呟いた。
「勇者って職業は…イコール『何でも屋』なのか?…」
むふふ♡…な夜はどこへやら…。
オレはこのあとドッと疲れを感じて、朝まで泥のように眠ったのだった…。
~つづく~
この作品の内容について
-
面白かった
-
ふつう
-
つまらない
-
ドラクエ知らない
-
続編作れ