【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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謎の暗号『S5 E20』

 

 

 

 

朝になった。

オレはみんなに、昨晩頼まれた3つの『依頼ごと』について話す。

 

 

 

「壁新聞なんて簡単じゃない。見て、その娘に報告してあげればいいんでしょ?」

 

ベロニコさんは、くだらないわねぇ…と小さな声で付け加えた。

 

「それで、どこに貼ってあるんだって?」

 

校舎は回廊のような造りになっている。

 

「ここから…グルッと廻った向こうの廊下らしいです」

 

「では、早速行きましょう!」

 

ウミュの掛け声と共に、反対側へと歩き出した。

 

 

 

角を直角に2回曲がると、廊下の中程に掲示板が見えた。

 

「アレだな…」

とオレは呟く。

 

 

だが…

 

 

 

「…?…」

 

目当ての物は貼り出されてなかった。

 

 

 

「ここなのですか?」

 

「たぶん…」

 

「寝惚けていて聞き間違えたとか…」

 

「いや、それはない」

 

 

 

そんな時に

「あら、勇者さまじゃない」

と不意に聞き慣れない声がした。

 

その主は…小さなモンスターだった。

 

 

 

「えっと…あなたは?」

 

 

 

「おおきづちの『メープル』。この学校の新聞部の部長よ」

 

名前の通り、手には『大きな木槌』を持っている。

外で会ったなら、間違いなく攻撃対象だ。

でも、ここにいるなら生徒なのだろう。

 

 

 

「新聞部?…なら、ちょうどいい。ここに貼ってあったと思われる壁新聞…どこに行ったか知らないかな?」

と『彼女』の容姿に戸惑いながら、でも平静を装いつつ訊いてみる。

 

 

 

「あぁ、それね…。飛んでいっちゃったのよ」

 

 

 

「飛んでいった?」

 

 

 

「窓を開けておいたら、突風が吹いて…多分『怪鳥の幽谷』に飛んでいったんじゃないかしら?」

 

 

 

「会長の優子くん?」

 

「どなたですか?」

 

 

 

「違うわよ。『ごくらくちょう』という怪鳥…モンスターが棲む渓谷のことよ。ここから北東の方向にあるわ」

 

「へぇ…」

 

「随分、ピンポイントにわかるものなのですね」

 

「風向きから考えると、多分そこなのよ」

 

「ほぅ…」

 

 

 

「それと…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「『おおきづちの勘』ってヤツ?」

 

 

 

…なんだそりゃ?…

 

 

 

「そこまでわかってるなら、拾いに行けばいいのに」

とベロニコさん。

 

「そう簡単に行けるようでしたら、とっくに行ってます」

 

メープルは悪びれることなく、そう反論した。

 

 

 

…まぁ、そりゃあそうだ…

 

 

 

「モンスターがいるんだもんな…とりあえず、わかった。うん、ありがとう」

 

今すぐ…というワケにはかないが、あとで向かうことになるのだろう。

 

 

 

 

 

メープルに礼を言い、続いて向かったのは…教師のグレースのとこだ。

彼女はラウンジでお茶を飲んでいた。

 

「あら、おはようございます」

 

「おはようございます。早速ですが、昨日お願いされた『想い出の品』の件で…」

 

「ごめんなさいねぇ…お忙しいところ…。見て欲しいのはこれなのよ」

と彼女は、テーブルの片隅に置いてあったアルバムを開いた。

 

その中からは現れたのは…一通の手紙。

 

「そこの図書室を整理していたら、このアルバムを見つけてね…懐かしさのあまり手に取ってみたら、これが入っていたのよ…」

 

「はぁ…」

 

「その親友は…卒業後、とある王家に嫁ぐことになって…私は猛反対したのだけど…彼女の意思は固くって…」

 

この短い時間に、すごい情報量が詰め込まれていた。

 

 

 

「王家に嫁ぐ?」

 

「お姫様になられたのですか?」

 

「なぜ、反対されたのです?」

 

女性陣が矢継ぎ早に問い掛ける。

 

 

 

「ある日、偶然出会った王さまと恋に落ちたみたいで…彼女はルックスもも良くて、性格も社交的だったけど、少し病弱で…ですが、わりとお転婆で悪戯好きだったものですから『貴女にお姫さまなんて、務まるハズがない』なんて言ってしまって…」

 

 

 

「穂乃果がいきなり王女になるようなものでしょうか…」

 

「穂乃果ちゃんは病弱じゃないよ」

 

「それはそうですね」

 

「海未…いちいち、穂乃果を引き合いに出すのはやめなさいよ」

 

「すみません、つい…」

 

ウミュはエリティカさんに、窘(たしな)められた。

 

 

 

「今、思えば…彼女の将来を心配するのと同時に…私のやっかみが入っていたのかも知れませんね。そこからは段々と気持ちが離れていって…お互い疎遠になってしまったのです」

 

「そうですか…」

 

「その方は…今…」

 

「風の噂では…病死されたと…」

 

 

 

「なんと!?」

 

「えっ!?」

 

じいさんとエリティカさんが、同時に声を上げた。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「い、いや…気にせんでよい…。ちょっと似たような話を知っているだけじゃ」

 

「そ、そうね…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「…で…その友人の手紙がこの中にあったと…」

 

「はい、こういうのを虫の知らせというのでしょうか…。勇者さまがいらっしゃるのに合わせて、見つけたのは、何かのお導きかと…」

 

 

 

…その『想い出の品』とやらがオーブであれば、確かにその通りだろう…

 

 

 

「…かも知れないですね…。失礼ですけど、その手紙を読ませてもらっていいですか?」

 

「はい、どうぞ…」

 

オレは彼女から、それを受け取り、ウミュに手渡した。

 

 

 

≪私の青春を、想い出の場所からS5のE20に埋めるわ≫

 

≪どうか受け取ってね…私の親友≫

 

 

 

「なるほど…悪戯好きとは、そういうことですか」

 

手紙を読み終わったウミュは苦笑した。

 

「ふふふ…つまり、この暗号を解き明かして、お宝を探し出せ!…ってことね。面白いじゃない」

とシルビアは笑う。

 

 

 

…まぁ、面白いという気持ちは、わからなくもない…

 

 

「先生、この想い出の場所って何か心当りがありますか?」

 

「そうねぇ…もしかすると、そこの木…大樹のことかしら。昔、彼女とよくここでお話をしたり、お昼を食べたりしてましたので」

 

「あぁ、その木ですか。わかりました」

 

オレはスコップを借りて校庭に出ると、その木の根元へと足を進めた。

 

 

 

…シルビアは暗号だと言ったが、これに関しては、そんなに難しいものじゃない…

 

 

 

…S5ってことは…南に5歩ってことか…

 

…そしてE20は…東に20歩…

 

 

 

…ここか!…

 

 

 

オレは自信を持って、地面を掘り進めた。

すぐさま『カツン』と何か手応えを感じて…自信が確信に変わる。

 

「これだ!」

 

オレは地中にあった箱を取り出し、フタを開けた。

 

 

 

≪ふふふ…相変わらず貴女はおっちょこちょいね。想い出の品はここじゃないわ≫

 

 

 

中に入っていたメッセージを見て、呆然とする。

 

 

 

「ハラショー…この文章からして…どうやら先生は、かなり『あわてんぼう』だったようね」

 

 

 

「そして、その友人はかなり意地が悪かったみたいね」

 

ベロニコさんが呟く。

 

 

 

「…というより、悪戯好きなのでしょう」

 

ウミュがその発言を正した。

 

 

 

「そして、オレがまんまと引っ掛かったというわけか…」

 

「どうやら、そのようじゃのう…」

 

 

 

「はぁ…壁新聞も想い出の品も、速攻で解決すると思ったのに…」

 

「うん、ニコちゃん…そんな簡単にはいかないね…」

 

 

 

「ではリサト、想い出の品の発掘をする組と…昨日持ち越したオーブの在りか…についての図書室で本を調べる組と…二手に分けたらどうじゃ?」

 

「あぁ、そうしよう」

 

オレはじいさんの提案に賛成した。

 

 

 

オレ、ウミュ、エリティカさん、ロウ、シルビアが発掘組。

 

残りのメンバーが図書室組となった。

 

 

 

「S5が南に5歩、E20が東に20歩…という読みは間違ってないハズなんだけどなぁ」

 

「はい。現にこうして『現物』が出てきたわけですから…」

 

「フェイクだったけどな…」

 

「ねぇ、リサトちゃん…グレース先生が『おっちょこちょい』ってことは…彼女、なにか重要な情報を忘れてるんじゃないかしら?」

 

「おう、シルビア。その可能性はあるな」

 

「そういえば、穂乃果も相当『粗忽者』でしたからね。私も色々苦労させられました」

 

「例えば?」

 

「集合時間や場所を間違えるなんてことはザラで、酷いときには『そのこと』すら忘れてしまうのです」

 

「確かに、あの娘には苦労させられたわね」

 

さっきは「いちいち引き合いに出すな」と言ったエリティカさんも、笑いながらウミュの話に同意した。

 

 

 

「あはは…そういう話を聴くと、ホント『海未ちゃん』をヨメさんにして良かったと思うよ。穂乃果ちゃんみたいな性格だと…付き合い始めの頃ならいざ知らず、結婚してもそんな感じのままだったら、オレにはとても耐えられないから」

 

「…『梨里さん』…そんなことを人前で言われるのは、とても恥ずかしいのですが…」

 

「いやいや、真面目な話。まぁ、オレの目に狂いはなかったと…」

 

「梨里さん…」

 

「海未ちゃん…」

 

 

 

「…ゴホン…」

 

 

 

「あっ!?」

 

「はっ!?」

 

オレたちは、エリティカさんの咳払いで我に返った。

 

 

 

「えっと…S5E20の謎を解かないとな…」

 

「は、はい…そうでした…」

 

 

 

「ふむ…」

 

 

 

「えっと…どうする?手当たり次第、掘り返してみる?」

 

「それは、あまりにも非効率的です」

 

「だよなぁ」

 

「…S…S…リサトちゃん…Sがショートとかスモール…だったりしないわよね?…」

 

「あぁ、そういう見方もあるか。サイドのSとか…」

 

「…だとすると…Eはなんでしょう?」

 

「エンドのE」

 

「それらしくは聴こえますね」

 

「テニスとかバレーのコートだとさ、それぞれ長い方を『サイドライン』短い方を『エンドライン』とか言うし…。ちなみにサッカーだと『タッチライン』と『ゴールライン』って言うけどね」

 

「ほう、リサト…お主、なかなか詳しいのう」

 

 

 

「いや、オレ、向こうの世界じゃ一応Jリーガーだから」

 

 

 

さっきもそうだが、ときおり、向こうとこっちの世界が混濁してしまうオレだった…。

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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