【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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絶体絶命

 

 

 

ウマレースによって潤っていると思われていた、この国の財政状況だが、実はかなり厳しかったようだ。

国王の話によると、オレたちが探し求めている『虹の枝』は、国の資金を得るため『とある商人』に売ってしまったとのこと。

 

 

 

「それで、その商人はどこへ?」

 

「確か…ダーハルーネへ行くと申しておったが…」

 

 

 

…とうことで、オレたちはここから更に西にある街を目指した。

 

 

 

「リサトちゃん!私もお供するわよん」

 

どういうわけか、さっき立ち去ったハズのおネエ…旅芸人のシルビア…がオレたちのパーティーに付いて来た。

 

「ふふふ、ダーハルーネには、私の船があるのよ。これからの旅において、船は必要不可欠じゃない?」

 

コイツにオレの寝込みを襲われないか…という不安はあるが、あの剣捌きを見れば断れない。

ましてや船を持っているなら、尚更だ。

 

「わかったよ。勝手にしてくれ」

 

口ではそう言ってみたものの、戦いにおいては心強い仲間が加わったと思った。

さすがに女子だけのパーティーでは…旅をするだけなら嬉しい限りだが…冒険となれば少し心許ない。

コイツがおネエで…彼女たちに手を出す心配をしなくていい…というのも、オレの中ではポイントが高かった。

 

 

 

砂漠地帯を抜けると、一転して湿地帯となった。

ダーハルーネはその中にある。

街の中に運河がある、いわゆる水の都だ。

まだ魔物の影響は及んでいないのか、人々の暮らしに活気があり、治安もいい。

観光旅行であれば、いつまでも滞在していたくなる…そんな街だ。

 

しかし、のんびりとしているわけにはいかない。

さっそく虹の枝を買った商人を探す為、聴き取り調査を行ったが…残念ながら、既に旅立ったあとだと言う。

 

「チッ!逃げ足の早いヤローだぜ」

 

「別に私たちから逃げてるわけではないと思いますが。むしろ逃げてるのは私たちですし」

 

オレの嘆きに、ウミュが冷静にツッコんだ。

 

 

 

そのあと『突然、声が出亡くなった』という『村長の息子』に出会ったオレたちは、一旦街を出て、この近くにある『霊水の洞窟』へと足を運んだ。

そこにある『さえずりの蜜』を採取してきて渡してあげると、彼の声は無事にもとに戻った。

 

いつかオレも誰かに助けられるかも知れない。

情けは人の為にならず…だ。

 

 

 

「よし、これでこの街には用はなくなった。シルビアさん、船を出してくれ!」

 

「わかったわ。準備してくる」

と彼は快諾した。

 

 

 

ところが…である。

 

 

 

オレたちの前に、デルカダールからの追っ手が現れたのだ。

『ホメロス』という…若くてなかなかのイケメン…と、その部下たちだ。

 

オレはコイツに会ったことがある。

デルカダール城へ初めて出向いたあの日…冷たい視線でオレを一瞥したあと、城を出て行った。

噂によればコイツはその足で…オレの育ったイシの村…を焼き払ったらしい。

 

 

 

…坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い…ってか?…

 

 

 

正直なことを言えば、逃げ回るのは好きじゃない。

いつか、ぶちのめしてやろうと思っていた。

 

 

 

「悪魔の子よ、ようやく見つけたぞ!逃げ回るのはこれまでだ」

 

「オレは悪魔の子じゃねぇ!…っつうの」

 

「いざ!」

 

「返り討ちにしてやるぜ!」

 

 

 

…と言ったものの、今ここにはオレとウミュしかいない。

シルビアは船の出港準備に、ベロニコ&セーニャ姉妹は買い物に出掛けている。

 

 

 

「ウミュ!」

 

「わかってますよ!」

 

 

 

こうしてオレたちは、ここでヤツらと一戦を交えた。

しかし、思ったより部下の数が多い。

 

 

 

「デルカダールの兵力を甘く見ないでほしいな」

 

ヤツは余裕綽々といった感じだ。

 

 

 

「リサトさん…キリがありません…」

 

「チッ!仕方ない…ここは…逃げるが勝ちか…」

 

 

 

「リサトちゃん!助けに来たわよ!」

 

「アンタ、なに遊んでるのよ!」

 

「リサトさんを苛める人は、セーニャのおやつにしちゃうぞ!」

 

 

 

「なに?仲間がいただと」

 

 

 

3人の登場に虚を突かれたホメロス一団。

どうしたものかと、右往左往している。

その間隙を縫ってオレたちはダッシュで逃げた。

 

 

 

「フン!みすみす逃すものか!」

 

ホメロスはオレたちに、エネルギー弾のようなものを放った。

 

 

 

「リサトさん!危ないです!!」

 

「ウミュ!?」

 

 

 

一番後ろを走っていたウミュが、その攻撃に気付くと、身を挺してオレたちを守ったのだった。

 

 

 

「ウミュ!」

 

 

 

「わ、私は大丈夫です!先を急いでください!」

 

 

 

「そうはいくかよ!」

 

 

 

「前回は、梨里さんが車の衝突から私を救ってくださいました。ですから、今回は…」

 

 

 

「そういう話じゃないだろ!」

 

オレは倒れているウミュに駆け寄ろうとした。

 

 

 

「ダメ!リサトちゃん!ここで捕まったら元も子もないわ!ここは一旦、引くわよ」

 

「チッ!」

 

オレはシルビアに引っ張られるようにして、この場から立ち去った。

 

 

 

「卑怯者め!おとなしく出て来い!」

 

本来それは、正義の味方が言うセリフだ。

ヤツに言われる筋合いはない。

しかし、そうかと言って正面切って向かっていくほど、バカじゃない。

オレたちは夜になるまで身を潜めた。

 

 

 

 

 

ウミュは街の端っこにある広場の柱に、ロープで括り付けたれていた。

 

彼女は男装をしているから…そう思って見れば、どうということはないが…女性が縛られている…と考えれば、このシチュエーションは、そこそこエロい。

 

「リサトちゃん、何、興奮してるのよ」

 

オレの頭の中を読んだのか、シルビアはニヤニヤしながらオレに言った。

セーニャさんは気に留めていないようだったが、ベロニコさんは思い切りオレを睨んでる。

 

「べ、別に興奮なんてしてねぇよ…」

 

「わからなくもないけどねぇ。私もリサトちゃんがそうされてたら、同じことを考えてると思うから」

 

「アンタと一緒にするな!」

 

照れ隠しでそう言ったが、この状況でそんなことを考えていた自分が恥ずかくなり、顔が真っ赤になるのがわかった。

 

 

 

「さて、冗談は置いておいて…街の中は、私たちを探すホメロスの部下がうろついてるわ。アイツら1人1人を倒すことは造作もないことだけど…できれば戦闘は避けたいわねぇ」

 

「あぁ…下手に気付かれて、また人海戦術を繰り出されたらラチがあかねぇ」

 

「幸い腕によっぽど自信があるのか…ウミュちゃんの周りには、あのイケメンくんしかいないし…ここは身を隠しながら近づいて、一気に彼を叩きましょ?」

 

「OK!」

 

ベロニコさんもセーニャさんも、その作戦に同意した。

 

 

 

そして、オレたちはルパン三世の如く…屋根から屋根へと飛び移り…あるいは水路の脇を音も立てずにひた走り…ヤツの前へと足を進めた。

 

 

 

「こんばんは。ホメロスちゃん!」

 

「むっ!?ここまで何事もなく辿りつくとは!」

 

「ふふふ…有能な部下を持って、アナタも幸せね!」

 

シルビアはヤツに、皮肉たっぷりの台詞を浴びせた。

 

「フン…あやつらにはハナから期待などしておらぬわ」

 

若い割には、かなり冷静な男だ。

シルビアの挑発には乗らない。

 

 

 

…精神的な揺さぶりは利かない…ってことか…

 

 

 

「それなら、実力で勝負するまでよ!ベロニカさん、セーニャさん、後方支援をお願いね」

 

「任せなさい!」

 

「ちゅん、ちゅん!」

 

 

 

シルビアはムチを手にしている。

 

「剣じゃないのか?」

 

「ふふふ…私はね、こっちの方が性に合ってるの!」

 

 

 

…なんとなくわかるような気がする…

 

…おネエでドSか…

 

 

 

プライベートでは絶対に付き合いたくない人だ。

 

 

 

ホメロスは両手に剣を構えた。

二刀流だ。

…とはいえ相手は同じ人間。

モンスターではない。

こっちは4人、相手は1人。

それを考えれば「楽勝でしょ」と思ったが…敵さんもなかなか強い強い。

剣術もさることながら、呪術もそこそこ使えるらしく、攻守のバランスがいい。

オレたち4人に、平均的にダメージを与えてくる。

 

 

 

「セーニャさんがやられたら、こっちは終わりだ。ベロニコさん、頼みます!」

 

「わかってるわよ!こっちはいいから、サッサとやっつけなさいよ!!」

 

「さすが、デルカダールの『二大将軍』だけあるわね…でも…なんだかんだ言って、すべてにおいて『グレイグちゃん』の方が上かしら」

 

 

「グレイグのことを知っているのか!貴様…何者だ!?」

 

「言わなかったかしら?ただのしがない旅芸人よん」

 

 

 

…いや、言ってない…

 

 

 

「そうであるなら、なぜ悪魔の子に与(くみ)する?」

 

「さぁ、どうしてかしら?少なくとも私には…イシの村を焼き払う…なんて所業に出るホメロスちゃんの方が悪人に見えるんだけど」

 

「ぬかせ!」

 

 

 

…そうだ…

 

…コイツがオレの故郷…イシの村…を焼き払ったんだったっけ…

 

 

 

そう思ったとたん、オレの集中力が上がった。

全ての感覚が研ぎ澄まされていく気がした。

 

そして、このタイミングを逃しちゃいけない。

そう思った。

 

 

 

「くらえぇ!!」

 

オレは勢いよく飛び込み、思い切り剣を振り降ろした。

 

 

 

ズバババッ!

 

 

 

文字にするとメチャクチャチープな擬音だが、手応えは完璧だった。

会心の一撃ってヤツだ。

 

 

 

「ぐっ…うぅ…」

 

ホメロスは片膝をついたあと、ゆっくりと倒れた。

 

 

 

「勝負あり!ってとこね…。リサトちゃん、凄いじゃな~い」

 

 

 

「…はぁ…はぁ…なんだ、今のは感覚は…」

 

 

 

「?」

 

 

 

「サッカーをしている時、ごくごくたまにこういうことが起きるんだけど…すべてが止まって見えるというかなんていうか…」

 

「いわゆる『ゾーン』に入ったのね?」

 

「ゾーン?…あぁ、そうかも知れねぇ…」

 

「パーティーの中で、複数の人が同時にゾーンに入ると、連携技が出やすくなるのよ」

 

「へぇ…なるほど…」

 

 

 

「リサトさん、シルビアさん!ウミュさんの縄を解(ほど)きました」

とセーニャさん。

 

「大丈夫か?」

 

「ウミュさんにも、ベホイミを唱えておきましたよ」

 

「はい、お陰さまで、私は平気です」

 

「よし!じゃあ、とっととこの場から立ち去ろうぜ!」

 

 

 

「ハハハハ…そう簡単に逃がすものか…」

 

よろよろと起き上がったホメロス。

もう戦闘能力は残されていないようだが、この後に及んでまだ抵抗しようというのか…。

 

 

 

しかし…

 

 

 

「リサト!マズイかも…」

 

ベロニコさんが叫ぶ。

 

 

 

「うおっ!…これは確かに…」

 

 

 

ホメロスと戦っている間、役立たずの部下たちがオレたちを包囲していたのだ。

 

「デルカダールの兵力を甘くみないでほしい…そう言ったであろう」

 

ホメロスが高笑いをする。

 

 

 

「枯れ木も山の賑わい…か…」

 

「リサトさん、いくら私たちでも…この人数は…」

 

 

 

四面楚歌。

絶体絶命。

 

 

 

さて、このピンチ…どうやって切り抜けようか…。

 

 

 

 

~to be continued~

 

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