こんな物が読みたい:ファンタジーな世界観をベースに二次創作 作:144283
『――魔族と人類との戦争を解決するのは不可能だろう』
かつての英雄、ヨハン・ストライドは自らの言葉を自書に記した。 かつて人類側に一時的な平和をもたらした英雄のこの言葉は平和が訪れた当初は嘲笑されるべき言葉であった。 しかしながら英雄であったヨハン・ストライド亡き後、この言葉は奇しくも履行されることになる。
そしてヨハン・ストライド亡き後、彼の後継ともいえる英雄の登場は未だ実現せず、魔族との戦争はもはや泥沼という言葉ですら生ぬるい状態になった。
あぁ、たしかに現在は互角の状態だったとしても何か火種があれば魔族は攻め入ってくる。 それのどこが平和なのだろうか?
実力がある者も人類側にはいるが、それでもなお小さな争いが絶えないこの時勢で冒険者という職業が重宝されるのもまた時代の流れである。
世界は一つの大陸から成り立っている。 これは比喩ではない。 巨大な大陸が星に一つあるだけである。 また別の宇宙にあるだろう多くの大陸から成り立っている星でないのだ。
もちろん小さな大陸はあるが、そんなものはただの島だった。 大きな文明を築けるほどの存在感のある大陸ではない。
そんな中でその星で圧倒的な存在感を誇る巨大な大陸の名をサヴァナ大陸と呼ぶ。
この大陸で全ての文化が発祥したと言っても過言ではないというのだから、その他の小さな島の価値の小ささがわかるだろう。
そんなサヴァナ大陸で人類と魔族の争いは今現在でも絶えないのだ。
さて、人類側の現在の状況を再確認してみよう。 まず、人類の現在の状態を語る上でアズラエル王国の存在は欠かすことができないだろう。
人類側の最大勢力とも言えるこの王国は魔族との大戦争になった以前より存在している王国であり、大戦Q.世界観がオリジナルで登場キャラクターの一部において原作が存在する場合はどうなるか?争のときにも活躍したとされる国の一つであるから驚きだろう。 現王のヨハン・アズラエルは聡明な人物と評されているが、現在の王国にいくつかの問題点がある。 その問題点に関しては後々語るとして、他の国についてもいくつか挙げておこう。
カルーア帝国――かつて、存在したイシュリア共和国を打倒した現帝王のジェンキス・カルーアが率いる独裁国。
サリア聖教国――この星を造ったとされる女神サリアを崇拝する国。 『サリア教』の聖地も含まれている。
アルマニア共和国――異人が集う小さな国。 ドワーフやエルフなどが連合を組み、国家として成り立っている変わった国。
ダスダン合衆国――民主主義国家から成り立つ新興国。
そして魔族領。
他にも小さな国々がそれは後ほど紹介するとして、アズラエル王国の都市部から離れたイッシェンとも呼ばれる小さな都市でとある物語が始まろうとしていた。
◆
「冒険者として登録したいんだが」
そう語るのは黒い短い髪にイマイチパッとしない顔の男である。 身長的には一般的な大きさであり、太ってもおらず痩せてもいないという感じがする。 この男の名を『サイキ・スタイナー』と呼ぶ。
この男が冒険者として活動しようとしたのはこの国を救いたいという正義感では断じてない。
自分の恩師である孤児院のシスターにお礼がしたいだけであった。 サイキ自身、正義を語れるような人物ではないと自分自身も理解していたからだ。
彼が現在居るのはアズラエル王国の都市部から離れたイッシェンとも呼ばれる小さな都市にある冒険者ギルドであった。
冒険者ギルドと言っても様々な規模存在する。 アズラエル王国の都市部にあるのが本部であり最大の規模を誇る。
イッシェンにあるのは都市部から離れている割にはそれなりの中規模の大きさを誇るギルド支部であった。
さて、このイッシェンにある冒険者ギルドは初心者に優しいギルドとして有名だった。 有名な女性冒険者の一人であるアルカ・シューリドが初めて冒険者になるのであればここが良いと語ったからである。
「分かりました。 少々お待ちください」
サイキの冒険者志望の言葉を聞いた受付嬢は冒険者になるための手続きの準備を始めた。 ここで小規模の冒険者ギルドの支部との違いが出てくる。 他の冒険者ギルドの支部では冒険者になる手続きは非常に簡素なものである。 名前を書き、冒険者であることを示すプレートが渡される。 それで終わりなのだ。
「では、こちらの書類に記入をお願いします」
渡された書類に羽ペンで名前と性別を記すサイキ。 その動作はもちろん淀みはない。 冒険者ギルドに登録する際には名前と性別、そのぐらいしか書くことがないのである。 なぜならば冒険者の証であるプレートを無くすことは冒険者としてありえないとされているからだ。
「書けました」
「お預かりします」
書類を渡したサイキの情報を改めて確認する受付嬢。
「サイキ・スタイナー様ですね? これで宜しければ血判をお願いします」
この血判が本人が冒険者になるという意思の再確認を示すものである。 サイキは小さなナイフで自らの指に傷を作り、血判を押した。
これで晴れてサイキは冒険者になった。
「サイキ・スタイナー様は冒険者として初登録のようですので、こちらで適性検査を受けていただきます」
アルカ・シューリドがここが初心者向けであるという理由がこれだ。 普通なら有料である適性検査を初回に限り無料で受けさせてくれる。
小規模のギルドでは維持費の捻出で精一杯なので、こういったサービスは行っていない。
イッシェン規模の冒険者ギルドでようやくできることである。
「わかりました」
同意の返答をしたサイキ。 断る理由は微塵もない。 なぜならばどの分野が自分にとって一番向いているかがわかるからである。
「では、こちらについてきてください」
受付嬢がサイキを冒険者ギルド内にある検査室に連れて行く。
――適性検査。 冒険者の初心者が冒険者になるために必ず受けておけと中堅以上の冒険者から口を酸っぱくして言われる重要な検査である。
この適性検査は自分がどの
前衛である戦闘職か、後衛である補助職かを教えてくれる他にどういったユニークスキルがあるかを確認してくれる。 さらに現在のステータスも教えてくれるわけだ。
さて、適性検査は検査員が魔水晶を手に
今回の検査員はサイキを担当した受付嬢がその適性を持っていたため、人員交代無しでそのまま検査することになった。
◆
名称: サイキ・スタイナー Lv:4 性別:男性 職業:なし(冒険者)
ステータス: 筋力:D- 防御力:D- 魔力: B- 魔力耐性: B- 素早さ:D+
適正: 後衛職(補助術師、神官、???、???)
スキル: (ユニーク)??:? (ユニーク)??:? 契約:C 家事:A
スキル説明
(ユニーク)??:過去の適性検査かつ本人がその能力を自覚していないため不明。
契約:精霊などと契約することができる。
家事:一般的な家事スキルのこと Aだと本気で修行すれば完璧にこなせる。
◆
表示された情報をみた受付嬢はまず適正を確認した。 なぜ適正を確認したのかというとここで彼の人生が大きく変わるからだ。
例えば適性が剣士だった場合は冒険者としてそこそこを名を残すだろうし、魔術師だった場合は様々な攻撃魔法を扱うことができるだろうと知っていたからである。
しかしながら、彼――サイキの適正は後衛職でかつ支援がメインの職業しかなかった。 前衛職の適正は全く無い。 後衛職であったとしても魔術師ならば攻撃魔法などが使えるので問題がないが、攻撃魔法が不向きな補助術師ときた。
もう一つの神官が適性で出るのは珍しいが、今から修行をして間に合うレベルなのかはこの適性検査ではわからない。 加えて、残った二つの職業は過去の適性検査で出てこなかったものなのでわからない。
もし前衛職でわからない適正ならば勇者の可能性もあるが、後衛職でわからない職業ならば勇者である可能性は限りなく低いだろうと受付嬢は判断した。
しかしながら、彼の場合はまだ救いがある方で、ひどい人間になると適正がないということもある。
受付嬢は当分の間、冒険者ギルドの補助施設で修行することになるだろうと思った。 しかしながら、彼自身が前衛職になれないと分かったら冒険者をやはり辞退することになるのではないだろうかと彼女は感じていた。
「サイキさん、検査の結果ですがあなたの適性は後衛の支援職です」
そう正直に彼女はサイキに対して検査結果を語った。 それに対してサイキはあまり関心がなかった。 彼自身の夢がなかったからである。 シスターに恩返しするという夢はあるもののそれは彼自身のものではないからだ。
「それは冒険者としてまずいですか?」
故に彼はそう答える。 彼自身は強さを求めていないからだ。
「いえ、むしろ後衛の補助職の方はあまりいないので食い扶持には困らないと思います」
そう答えるは受付嬢。 この発言もあながち間違ってはいない。 男性も女性も前衛職に適性がないと冒険者にならない人物が少なからずおり、なおかつ補助職を専門にする人物はあまりいないからである。
それに加えて、補助職は他の前衛職がいないと討伐任務を満足にこなすことができないからだ。
当然ながら、供給の数は少なくなる。 しかしそれで困るのがメンバーを組んでいる面々だ。
前衛職が傷を負った時に即座に回復させたり、バッドステータスになった時にその状態から回復させてくれるのが補助職の役目である。
しかしながら、前衛職のみメンバーでは回復薬を各自持たざるを得ず非常に非効率的になるからだ。
ギルド内でメンバーを組んでいる内、有名なグループには必ず一人は後衛職でかつ補助がメインの人物がいるというのはもはや定説だ。
有名なギルドグループの一つである『蒼天の剣』のリーダーは補助職の重要性についてこう語る。
『補助職ってのは馬鹿にされがちだけど、俺達はそうは思わない。 むしろ生命線の一つだ。 一時的に実力の底上げをしたり怪我をした時にすぐに回復に手を回せる手合がいるってのはすごい安心できることだ』
『補助職を馬鹿にしてる奴らの中で高ランクの任務をこなせるグループはいないだろう』
故にだ。
「とりあえず、補助職の方はこちらでも数が足りていないのでこちらから支援させていただきます。 いかがいたしましょうか?」
受付嬢にとって慢性的に不足している補助職の面子を調達できるのはありがたい。 だからこそ逃さないようにする。 補助職に特化した人間を用意し、任務遂行の速度を上げるのはギルドにとってプラスであるからだ。
それに対してサイキ。
「分かりました。 よろしくお願いします」
補助職に否定的ではない彼はシスターの恩返しがしたかったのですぐに了承した。
◆
サイキの連絡先を確保した受付嬢はとりあえず支援できる人物がギルド内に現在いなかったのでサイキを一旦帰らせることにした。 もちろん数日後に来るように約束を取り次げた後でだ。
そこで改めて受付嬢はサイキの適正を確認する。 そこで初めてユニークスキルを再確認した。 彼を逃したくなかったのは家事スキルの存在だ。
世間一般的に家事はスキルを持っていない状態でも頑張れば人並にできる。 しかしながらスキルとして家事が追加されているということは家事に関して才能があるということである。
ここでも彼を欲しがるグループは大いにあるだろう。 補助職メインに加えて家事もできるのであれば前衛職の面々は戦闘に集中できるからだ。
だからこそ、受付嬢――ギルドとしては彼を逃したくなかった。
加えて謎のスキル2つ。 ギルドの適性検査のスキルが過去の事例になくわからなかったパターンは少なくはない。
最後までわからなかったパターンもあればある日を境にわかるようになったというケースもある。
例えば魔術師にとって存在すると格がかなり変わるとされるスキルの一つである『高速詠唱』もその一つだ。
30年前に適正者が現れた当初はわからないままであったが、魔術師として大成した後に検査を受けたところ判明するようになった。
しかも一度わかれば他の人物がその適性を持っていた時にわかるようになった。
だからこそだ。 その謎のスキルを是非判明させてほしいのがギルドにとっての夢のひとつなのだ。
サイキの正体不明のスキルの正体を考えながらも受付嬢は検査室の後片付けを終え、もとの持ち場に戻ったのだった。
◆
さて、場面をサイキに戻す。 ギルドを出た彼はとりあえずシスターの居る孤児院に戻り、本格的な冒険者としての修行をすることを報告するためだ。
無事に冒険者になれそうな感じがするので彼自身は浮足立っていたんだろう。 人と肩をぶつけてしまう。 誰とぶつかってしまったのだろうと思って確認すると、こりゃあまずい。
冒険者ギルドの中で荒くれ者と呼ばれている人物の一人だった。
さて、この荒くれ者と呼ばれる人物。 ギルド内では実力がないわけでもないが、気性が悪いため扱いは悪かった。
しかもこのとき、彼の気分は最悪だった。 まさに石で転んだ上に転んだときの衝撃で飛んだ石が他人の家の窓を割ったというレベルで運が悪い。 大凶。 合掌。
当然の如く、胸ぐらを掴まれるサイキ。 この時点でサイキは自分の運の悪さに加えて、この先どうなるかがお察しがついたわけで顔がすぐに真っ青になった。 しょうがないね。
「ごめn―――」
最後まで言い切れずに顔面をぶん殴られふっ飛ばされるサイキ。 左手で胸ぐらを掴まれた上で右手で作られた握り拳で右頬をふっ飛ばされたサイキは一発
ふっ飛ばされたサイキにもう一発ぶん殴ろうとする荒くれ者。 彼の人生はここでおしまい――ではなかった。
「兄貴! まずいですって!」
そう止めにかかるのは彼の弟子の一人である人物だった。
「テメェ、止めるつもりか?」
そう憤る荒くれ者。 ワカメみたいな藍色の髪の毛が逆立ちかけていた。
「ここでやり過ぎたら、今度こそ謹慎喰らいますよ!」
弟子は一生懸命制する。 『今度こそ謹慎』 ――実は荒くれ者は以前街の中で住民に暴力を振るったことで厳重注意を受けていた。 ただぶつかった子供を容赦ない蹴りを食らわせたからだ。
「――わかった」
荒くれ者はその言葉で落ち着いたようでその場を立ち去った。 サイキをほったらかしたままで。
◆
サイキが気づいたときにはすっかり真っ暗になっていた。 ゆっくり立ち上がると彼はシスターの居る孤児院に帰ることにした。 彼の居る孤児院はお世辞を言っても綺麗な物ではないが、それでも彼にとっては安心して眠りにつける家だった。
昔居場所がなかった自分を養ってくれたシスターに恩を返さなければと彼は考えていた。
そう考えて歩けばあっという間に自分が世話になった孤児院が見えてきた。 朧気に見える橙色の灯りが見えている部屋には世話になったシスターが今頃、自分の作業部屋で作業をしているのだろう。
無事冒険者になれたことを報告したいと考えていたサイキは自分が意識しないうちに現在の居住地である孤児院に帰るのだった。
孤児院の入り口の扉には鍵がかかっているが、シスターからスペアキーをもらっていたサイキは難なくその鍵を解錠し、孤児院の玄関に足を踏み入れる。
この孤児院はお世辞にも綺麗なものではない。 ボランティアで運用されている以上しょうがないのだが、これもかつてのアズラエル国王が『民はこの国の資産である』という旨から子供を保護する孤児院に補助が入るようになった。
――――しかしながら、その制度もその存在を揺らがせつつある。 王国の議会で制度の廃止が議論され始めているからである。
サイキが冒険者になろうと考えたのもそれがきっかけだった。 かつて、孤児院から有名な冒険者が何人も排出されてきた過去があるわけだから、そう簡単に孤児院の補助が打ち切られるわけがないだろうとサイキは考えていたが、別にそんなことはなかったのである。
サイキは古びた階段を上り2階のシスターの部屋に入る。
「戻りました」
彼がノックをしつつ、扉の向こう側にいるシスターに話しかける。 そうすると木製の扉の向こう側から声がした。
「入っていいですよ」
その声を聞き、サイキは静かに部屋に入った。
◆
サイキの目の前に居るシスターは若くはない。 かつての王の政策で建てられた孤児院には必ず、教会から派遣されるシスターが居る。
そのシスターの大半は30〜40代の女性である。 孤児院に派遣されるシスターは問題を起こしていないが出世を望まない者が多いという。 名誉を選ばない彼女達こそが教会の上層部に入るべきだろうとは思うが世の中そんなにうまくは回らない。
サイキが世話になったシスターの一人であるアンジェも名誉よりも民に奉仕することを選んだであろう一人であった。
シスターということもあり普段から彼女は目立たない服装である。 藍色の厚手の布で出来たある部分を覗いて装飾のないワンピースにベールをつけている出で立ちである。
そして装飾のある部分は右胸にある女神を象った黄色の刺繍である。 その刺繍はサリア教を指し示す紋章である。
「無理に冒険者にならなくても良かったのに」
入ってきたサイキの気遣いに気づいていたアンジェは申し訳なさげにサイキに声を掛けた。
それに対してサイキ、
「いやいや、私が恩返しをしたいと考えただけですよ」
と謙遜してみせた。
サイキのその言葉にアンジェは困ったように頭を抱えた。 サイキのような人間が過去にいなかったわけでもないが、大半の人間は孤児院を出たあと自分の夢に向かって駆けて行く者が多かった。
「まぁ、とりあえず今日はもう休みなさい」
とりあえずもうこんな時間なのですからという言葉を添えてサイキに対して、休息を取るように言うアンジェ。 しかしながらサイキも思うところはあるようで
「先生は寝ないんですか?」
と返した。
それに対して、アンジェは困ったような表情をした。
「最近、捨て子が多くてね……。 その子供達全員の面倒をしっかり見れる方法を考えてなおしてるのよ」
正直言って、孤児院の数は多くないのに孤児の数は増えていっている。 アズラエル王国の状況が悪いわけではないはずなのだが、他国の子供ももしかしたら紛れ込み始めているのではないだろうかとアンジェはそんなことを考えていた。
特にカルーア帝国の近況は芳しくない。 ジェンキス・カルーアの帝政がうまく行っていないのではないかと一部では囁かれているぐらいだ。
アズラエル王国の状況は悪くないはずなのに、孤児が減らないのもそれが原因なのではないだろうか。
そのことを考えたサイキはどこかにお手伝い出来そうな人がいないものかと考えてみる。 ……特に思い浮かばなかった。
「まぁ、とりあえず早く寝なさい 明日は早いのだから」
アンジェはサイキに自らの苦労の重みを背負わせたくなかったのか、もう一度サイキに早く寝るように促す。
サイキは渋々といった感じでシスターの部屋から退出し、自分の部屋に向かった。
自分の部屋についたサイキは着替えるのも面倒だったのか、すぐに寝具に横になる。 明日は早いのだからと自分に言い聞かせ寝ようとするサイキは自分の石も手伝って、すぐに夢の世界に旅立った。
◆
――――知らない土地だ。
サイキが気づいた時には知らない場所に立っていた。 やたらと周囲の喧騒がうるさいし、空気が悪い。 前を改めて見ると金属の何かが目の前を通り過ぎていく。 あれに当たればひとたまりもないだろう。 冷や汗をかいていた。
周囲を改めて見渡せば人が沢山居る。 奇抜な服装が多いが大丈夫だろうか? 赤い色の服などは染料がかなり高かったはずなのに同じような服を着ている人が多い。
それにだ。 王城の高さほどの建物が摩天楼が如く建っていた。 改めて知らない場所だと感じた。
ふと右肩に重みを感じたので見てみるとベージュ色のベルトが肩に掛かっていた。 はて? と思いベルトをたどると小さなカバンを持っていた。
カバンを開けると一つの四角い透明なものに覆われた理解不能な何かがあった。 触ってみるとやたらとつるつるしている。 石板の一種だろうか? 書かれている文字を見ると『東方妖々夢』と書かれていた。
その言葉の書かれている言葉が読めた瞬間、喧騒が止んだ。 慌てて顔を上げるとそこは姿を鏡と遜色ない状態で世界を全反射する床と紫色と青色が混じった奇妙な色と雲がまじった空から構成された世界に飛ばされていた。
水平線の先には光があった。 その光でこの世界が照らされているとサイキは理解できた。
――その時である。
「あらあら」
今まで聞いたことない声が後ろから聞こえた。 サイキが慌てて後ろを振り返ると女性が立っていた。 やたらと装飾がついた水色のドレスと水色をベースに白い装飾がついた帽子をしたピンク髪の女性が居た。 その美しさと特にその帽子の装飾部についた赤い渦巻きのマークが気になったがそれどころではない。
「あなたは誰ですか?」
サイキは彼女に話しかけた。 彼女は少し考えた様子だったが、
「そうね。 私の名は西行寺幽々子と言うわ」
と自分の名前を語った。
その返事を聞いたサイキは対話ができる相手だと少しだけ安心した。 彼は自分が思った疑問を正直にぶつけることにした。
「あなたが私をここに連れてきたんですか?」
その質問に西行寺幽々子という女性は少し困った顔をした。 何か質問を間違えたのだろうか? と心配になったサイキであるが、幽々子は何かを察したようだ。
「なるほどなるほど」
というか何かに納得したようだった。 それにサイキは首を傾げた。 その様子に気づいた幽々子という女性はどうしたものかと少しばかり悩んだあと、
「私が連れてきたわけではないわ」
と返した。 サイキはその回答に少々面食らった。 彼女ではないのなら誰がつれてきたのだろうか?
「あまり多くのことは話せないのだけど、
幽々子はサイキに対しての心配事を見透かしたように回答した。 その言葉にサイキはただ困った。
「それってどういうことでs――」
――サイキがその言葉に違和感を持って声を掛けていたその時である。 世界の様相が変わった。 水平線上にあった光が消え始めたのである。
その光が消えるように世界も暗くなり始め、目の前の幽々子という女性の姿も消え始めていた。
「なっ――――」
消え行く女性に声をかけようとするサイキ。 その様子を見て幽々子は答えた。 その口元はいつの間にか握られていた扇子が開かれていて見えなかった。
「妖夢のことよろしくね―――」
――――その言葉を最後まで聞き取ることは出来ず、意識は断絶した――――。
◆
彼は朝の日差しで目が覚めた。 彼にとっては何時もどおりの朝だった。 目が覚めてふと周囲を見渡すと白い髪色をした女性が倒れていた。 その出で立ち、ショートカットの髪にはアクセントして何か黒い装飾、服装は緑と白が基調の服装で白い装飾がついた緑色のスカートを履いていた。 目を閉ざしているが意識はなさそうだ。
その女性をみてサイキはふと呟いた。
「誰? この娘?」
サイキは改めて昨日の記憶をひっくり返すが、寝る前に彼女は絶対にいなかった。 見過ごすことなどありえない。 白い髪は珍しいし目立つからだ。
「どうなってんの?」
このときからだろうか? サイキの受難が始まったのは――。
■■■ 次回予告 ■■■
サイキ・スタイナーは知らない白髪の女性が倒れていたのを見て、一瞬で厄介事だと感づいてしまった。
「私の名前は魂魄妖夢と申します」
とりあえず彼女を起こして、彼女の名前を聞き出したサイキ・スタイナーは彼女から衝撃的な言葉を告げられる。
「この世界はなんですか?」
彼女がこの世界の住民ではないことを知った彼はどうにかして彼女に対して仕事を凱旋しなければならないかと戦々恐々としていた。
そんな中、ある出来事が起こる。
次回――――『剣士(仮)』
彼女はどこからやってきた?
◆
軽く書くつもりだったのにえらく長くなってしまった。 まぁ一万字行けなかったのが残念です。
やる夫スレ的感じの方が向いてるかな―って思ったんですけど、AAスレとかやったことがないので小説化して書いてみた次第であります。
原作の多重クロスについては他の作品の出すのでついています。
一話の段階だと出てないですが。 まあ出す段階になったらタグを追加することにします。