side一夏
「「「「一夏くん、私とペアになって!!」」」」
どうしてこうなった。
事の発端は学年別トーナメントがタッグ戦になった事と、兆秋に関するある噂のせいである。
あの野郎どういう訳か『優勝者は兆秋と交際できる』等という噂を流されてしまったらしく、大勢の女の子たちはこのタッグトーナメントにかなりの熱意を燃やしているのだ。
そして、手っ取り早く優勝する確率を上げる方法は強い生徒、つまりは専用機持ちのタッグになることだ。
しかしここで一つ問題が発生する。
優勝者は二人存在することになる。そうなるとその二人が戦い、勝利したほうが兆秋と付き合う権利を得ることになる。そうなれば一般生徒が勝てる確率は0に等しい。
つまり兆秋との交際に興味のない専用機持ちを選ぶ必要がある。
そして1年の専用機持ちは・・・
オルコットさんと鈴→兆秋に好意があるため不可。
眼帯娘→兆秋と付き合う気はないだろうけどなんか怖い。
兆秋とシャルル→もうこの二人で組んでいる。
俺→絶対に権利に興味を示さない上に襲撃事件である程度の力は示した。
つまり俺にタッグの申し込みが大量に来るのは当然のことだった。チクショウあの野郎、男が来た事に舞い上がってさっさと誘いやがったな。
「いやあ、悪いけど俺、今回は抽選で決めようと思うんだ。」
「ええ!なんでえ?」
「デザートおごるからお願い!!」
「絶対足引っ張らないから!」
一応言っておくと、この集団の中に園山さんたちはいない。
「一期一会って言うかな、このドキドキ感が好きなんだ。」
抽選を選んだ理由は二つある。
一つは、一般生徒にすぎない園山さんたちからペアを選んだ場合、変なやっかみを受ける可能性がある。
そして・・・
「それにほら、わざわざ俺がそんな風に自分から贔屓するような真似をしたらさ、他の専用機持ちの娘が怖いじゃん。」
これがもう半分の理由。
今はまだ兆秋ハーレムの3人からの接触はないが、俺がアグレッシブに誰かを兆秋に勧めるような真似をした場合、何が起こるかわかったもんじゃない。
下手したら外堀から埋めていくと言わんばかりに俺に自分を売り込んでくるかもしれない。
そうなったら俺の平和な(女子高にいるにしてはだけど)学園生活は終わりだ!
「「「「ああ~、なるほどねー。」」」」
「そんなわけで、諦めてくれ。」
そうしたら皆、仕方ないといった雰囲気で諦めてくれたようだ。
いやー、よかったよかった。
その夜、俺は噂を聞いた。
鳳さんとオルコットさんが眼帯娘と戦いボロボロにされ、大ケガを負う寸前のところで兆秋が何とか助けだしたらしい。
その際、兆秋は敗北に近い形で事態は収束したらしい。
時は少し巻き戻る
side兆秋
「やめろおおおおお!!!」
ガキイイイイイイン!!
「感情のままに突っ込んでくるとは、やはり愚図か。」
オレはシャルルとISの訓練のために第3アリーナに足を運んだのだが、そこでは先にセシリアと鈴がボーデヴィッヒと戦っていた。
2対1で鈴とセシリアが有利なはずだが、ボーデヴィッヒは凄まじい強さで2人を圧倒していやがった。それだけなら不快だが何の問題もなかったが、あろうことかボーデヴィッヒは戦闘不能に近い2人に対して過剰な攻撃を加えていた。
このままではヤバいと感じたオレはアリーナのシールドを零落白夜で切り裂き、シャルルと共にボーデヴィッヒを止めに入った。
「シャルルは2人を安全な場所に運んでくれ、オレはこのチビの相手をする!」
「兆秋!無理はしないで、すぐに先生を呼ぶから!」
そう言ってシャルルは2人を出口に運んで行った。
先生が来るまで逃げ回ってればいいんだろうけどよお、流石にこのままへっぴり腰で引き下がるのは性に合わねえな。
「覚悟しろよテメエ・・・」
「フ、彼我の実力差もわからんか。」
分かっちゃいるさ、認めるのは癪だがこのアマは今んとこオレより遥かに強え。
だけどな、
「勝てる勝てないで相手を選ぶ趣味は無えんだよ!」
ガキイイイン!!
俺のブレードとボーデヴィッヒのプラズマ手刀がぶつかり合った。
ガガガガガガガガガガ!!
「貴様のそれは勇気ではなく愚昧というのだ。」
クソ、わざわざ格闘戦で戦われてるっていうのにこうまで捌かれるか!
「ウォォォオオオオオオオオオ!!!!」
「フム、格闘能力だけは及第点をくれてやってもいいが・・・。」
ボーデヴィッヒの機体から無数のワイヤーが飛び出てきてオレに襲いかかってきた。
「ぐうっ、クソ!」
「あくまで及第点、教官のように戦おうなど100年早い。」
完全にオレの距離だってのに攻撃する隙がねえ!
「どうした、そんなものか?」
「舐めるなあああああああああ!!!」
こうなったらある程度の被弾は覚悟の上でぶち込んでやる!!
「それはこちらのセリフだ青二才。」
「なに!?」
ボーデヴィッヒに手を向けられた瞬間、オレは身動き一つ取れなくなった。
「軍属であるこの私に、そんな手が本当に通用すると思っていたのか?」
ボーデヴィッヒはオレに対して、まるで余裕を見せつけるかのようにゆっくりとレールカノンの標準を合わせてきた。
「チクショウ・・・!」
どれだけもがいてもこの拘束を引きちぎれる気がしねえ。打つ手なし、完全にオレの負けだ。
このままいいようにボコされるのかと思ったが・・・。
「そこまでだ馬鹿者ども。」
凛とした存在感を放つ声がアリーナに響き、オレとボーデヴィッヒはまるでDVDを一時停止したかのようにピタリと動きを止めた。
「ハッ・・・まさか千冬姉が来るとはなあ。」
「教官がそう仰るならば。」
「模擬戦をやる分には構わんが、アリーナのバリアを破壊するだの重傷者を出すだのと言ったことは看過できん。これよりはタッグトーナメントが終わるまでの模擬戦を禁じる。決着はトーナメントでつけろ。」
「ハッ!」
「了解ですよ。織斑先生。」
ボーデヴィッヒは軍人らしく敬礼をし、オレはぶっきらぼうに返事を返した。
そうしてボーデヴィッヒとは反対の、シャルルが2人をアリーナから運んで出て行ったゲートに歩いて行くと、向こう側からシャルルが駆け寄ってきた。
「兆秋、大丈夫だった?」
「オレは大丈夫だ。それより2人は?」
「幸い大きな怪我は無かったようだけど、機体のダメージが大きすぎるからタッグトーナメントに出るのは無理だって・・・。」
そうか、あいつらとの再戦を楽しみにしていたんだがな。
「ちょいと慰めに行ってやるかな。」
「うん、きっと兆秋が行ったら2人も喜ぶよ。」
「何か悪かったな、巻き込んじまって。」
元々、ボーデヴィッヒが恨みを向けているのはオレだからな。そう考えると鈴とセシリアも半ばオレのせいで巻き込んだようなもんか。
「気にしなくていいよ。流石にあんなのは僕としても見過ごせなかったし。」
「そう言ってもらえると助かるぜ。」
「じゃあ、僕は先に戻ってるね。」
「ああ、サンキューな。」
「うん。」
そうしてオレはシャルルと分かれて保健室に足を運んだ。
「よう、怪我の調子はどうだよ。」
そう言ってオレは保健室に入って行った。
「こんなの怪我の内に入らないわよ!」
「その通りです。機体が直ったらすぐにでもお灸を据えてさしあげますわ!」
確かにそれほど大きな怪我は負ってないようだな。
「それよりあんた大丈夫だったの?あいつを一人で食い止めてたんですって?」
「ああ、負けだよ負け。完敗だな。千冬姉が止めに入ってなきゃあオレもここで寝てただろうよ。」
「確かに、ボーデヴィッヒさんの機体の第3世代型兵器、AIC、慣性停止結界は兆秋さんの白式とは相性がとても悪いものでしょうし。」
「AIC?あの体が動かなくなるやつはそれだったのか。」
「そうよ、そんな長い距離まで延ばすことはできないと思うけど、絡まれたら運動エネルギーを持ってるやつは全部止められるわね。」
「零落白夜で斬・・・ろうとしても足や腰を狙われたら終わりか。」
「そうゆうことですわね。」
「しゃあねえな。悔しいがタッグトーナメントでは大人しくシャルルの手助けを全力で借り続けるか!」
「あんたそんな情けないことを全力で言うんじゃないわよ・・・。」
しかし今、冷静になって思い返すと驚愕だな。あの2人があんなにあっさりやられちまって、連戦のはずなのにオレのことだって完全に負かしてた。これほどの衝撃はそうそうないぞ。
その夜、オレはシャルルが入っているシャワーにボディーソープの替えを渡しに行き、シャルルが女であることを知ってボーデヴィッヒの強さが霞むほどの大きな衝撃を受けたのであった・・・。
side一夏
オレは寮の中でたっちゃん先輩とくつろいでいた。
「で、どう一夏くん?ボーデヴィッヒさんに勝てそう?」
「どうでしょうねえ。勝ち目は薄いかもしれないですね。」
「ふーん?ボーデヴィッヒさんがあの2人を倒したことに関しては驚かないんだ。」
「2人同時に倒したことには驚いてますよ。ただ、貴族家の当主でその他の仕事もあるオルコットさんや、まともに訓練してまだ2年程度の鳳さんより、軍人としてみっちり長い間鍛え上げたボーデヴィッヒさんの方が強いっていうのは、なんとなく予想してました。」
聞いた話じゃあBT兵器とは相性が悪いらしいが、軍で使われてるのだから第3世代兵器以外の武装も十分強いだろうし、まあ負けは避けられないだろうな。
「とりあえず、俺とペアを組む人が決まってからいろいろ考えますよ。1対1ってわけじゃないですからね。」
「そう、生徒会長としては誰か1人の生徒に肩入れすることはできないけど、怪我をしないように祈るくらいなら自由だろうから祈ってアゲル☆」
「不吉なこと言わないで下さいよ。」
さてと、今日がトーナメント表の発表日か。だれと一緒になるのかな?
そう思いながら廊下を歩いていると、前からボーデヴィッヒさんがやってきた。
「貴様、噂で聞いたぞ?随分と腑抜けた性格のようだな。」
「いきなりなんだ?ボーデヴィッヒさん。」
「ふん、殴られても貶されてもヘラヘラしているような惰弱な愚図など、教官の家族にふさわしくはない。トーナメントで私が叩きのめしてくれよう、精々怯えて、少しでも長い間私とアリーナで会わないことを祈れ。」
そう言って彼女は去って行った。どうすんだよ、結構な人に見られて決闘騒ぎになってるじゃないか。こんな見せものみたいに変な注目を集めたらタッグを組む人に悪いぞ。
そうして俺とタッグを組むことになった人はこの注目のせいで顔を真っ赤にすることになった。そして、ボーデヴィッヒさんとは初っ端からアリーナで会うことになった。
と言うか・・・
ボーデヴィッヒさんがペアになっちゃった。
「あっ、そのお・・・気にしないほうがいいぞ。」
「・・・黙れ。」
「まあ、なんだ、頻繁にアリーナで顔を合わせることになるだろうし、多少はお互いのことを知っておかないとさ。」
「・・・だまれ。」
「恥ずかしがるなよ、この程度のミスは誰にだってあることだって。」
「・・・ダマレ。」
「とりあえずお互いの武装や特性を把握だけでもしておこう。そうしないとお互いに足を引っ張り合うことになるぞ。」
「・・・何も言うな。」
「話してないと俺も恥ずかしいんだよ。メチャクチャ周りから見られてるじゃねえか。」
「何もしゃべるな・・・だが私から離れるな・・・。」
「・・・わかったよ。」
前途多難すぎる・・・。
次回作のアイディアが溢れるように出てくる!
でもこの作品のアイディアがまったく出てこねえ!
チクショオオオオオオオオ!!