side一夏
一応、フレンドリーファイアを避けるためにもお互いに訓練だけでもしようぜと言ったんだが、
「貴様なんぞに付き合う時間はない、私の手を煩わせるな。」
この通りまったくと言っていいほど聞き入れてくれない。
「仕方ない、その場で息を合わせるしかないか。」
「貴様は壁際で黙って見ていろ。手を出されても邪魔なだけだ。」
「生憎と、俺にも成績ってのがあるからな。それになるべく動かしてデータを取らなきゃならないし、ガンガン動かせてもらう。」
もしそんなことしたら企業の人や先生方から大目玉だわ。
「勝手にしろ。だが、巻き込まれても責任はとらんからな。」
前途多難すぎる・・・。
sideシャルル
「はあああああああ!!」
ガキンガキン!!
「やるね兆秋!」
僕は兆秋とアリーナで訓練していた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「マシンガンはもう見切ったぜええええええ!!」
ドギュウウウン!
「うそお!?」
兆秋は僕の放ったマシンガンの弾丸をかわしきって接近してきた。
最初は僕の武器の多さに対応しきれずに押されていたけれど、瞬く間に成長していき、もう既に僕の武器の半分以上が通用しなくなっていた。
「ああ、目に見えて分かるぜ。どんどんオレが強くなっていくのがな!」
ドドドドド!ドンドンドンドン!!バアアアアアアアアン!!
ギュギュギュギュウウウウウウン!!
僕も組み合わせや高速切替で捉えようとするけど、悉く避けられ、捌かれる。
「なんでそんな淀みなく捌けるのさ!?」
「勘だあああああああ!!」
ドドオオオオオオオオオオオオン!!
理不尽なくらい鋭い勘だな。でもそのおかげで予想外の出来事にも落ち着いて対応できるようになってきたし、僕のほうも強くなってる手ごたえを感じるよ。
「まだまだ僕もこんなものじゃないよ!!」
腕を磨いた僕と兆秋なら、ボーデヴィッヒさんにも確実に勝てる!
side一夏
何だろう、今すごい勢いで俺ごとボーデヴィッヒさんの足がすくわれそうになっている気がする。
「でも他にやりようもないし、自分でどうにかするしかないか。」
そう呟いて、俺は一人でISの訓練を再開した。
一つ一つの形態の癖が大きいな。全部それなりに使いこなせなきゃ、下手したらフォームチェンジしても格の違いで纏めて叩き潰してくる相手も出てくるかもしれないし。
「模擬戦にしてもたっちゃん先輩も他の皆もペアの人との訓練に忙しいだろうし、この調子で大丈夫なのか?」
大丈夫じゃないよなあ・・・。だって兆秋とか絶対強くなってトーナメントに臨むだろうし、シャルルにしたって代表候補生でしかも実家がIS企業の大手デュノア社だ、鳳さんやオルコットさん以上の実力を持っていても何らおかしくはない。
「ん?いかに強いとはいえ、たった3人の男性操縦者がこんなにすんなり国家の代表候補になれるものなのか?それなら兆秋なんかはとっくに日本の代表候補になっていてもおかしくないはずだよな?」
オルコットさんを破って鳳さんにしたってギリギリまで追いつめたし、早すぎるといってもシャルルは俺と兆秋よりは後に見つかった上で代表候補になったわけだし・・・。
「血筋だけを言うなら“織斑千冬の弟”っていうこの上ない血筋があるわけだし、日本の代表候補にすることに何の問題もないよな?」
どういうことだ・・・?
「・・・考えすぎだよな。」
さて、練習再開だ。
side兆秋
さーて、遂にトーナメントの開催日になったわけだ。
「どうやら僕らとボーデヴィッヒさんたちは決勝まで行かないと当たらないみたいだね。」
「そりゃいいな。こういうのは1回戦とかじゃ燃えねえよな!」
まさかあいつらも決勝まで上がれないってことはないだろうし、ここは実戦を積みまくってシャルルとの連携に磨きをかけるか。
「さて、俺たちの最初の相手は・・へえ。」
1年2組 佐別 巻子(さべつ まこ)& 1年4組 弾 渥美(はじき あつみ)
「兆秋はこの人たちを知ってるの?」
「いや、さっぱりだ。聞いたこともねえや。」
ただ、同じ学年なのにこうも情報が入ってこないやつがいるのかと。
「あらあら、これはラッキーね。」
「初戦が男風情だなんて、勝ったも当然だわ。」
後ろ側から、明らかに馬鹿にしていますという声色の声が聞こえた。
「テメエらがオレ達に最初に負ける可哀想なタッグか?」
オレも負けじと挑発的に返す。
「ハッ、負けるですって?私たちが、男に?世迷いごとよねえ。」
「もしかして、代表候補に勝ったからって調子に乗ってる?」
それにしてもまた絵にかいたような女尊男卑主義者どもだな。
「女に生まれたってだけで調子に乗ってるやつらは言うことが違うなあオイ。」
「代表候補って言ってもボーデヴィッヒさん1人に負けちゃうような人たちでしょ?」
・・・は?
「それなら私たちのほうが強いわよ。所詮は金持ちとあんたと知り合いってだけでハニートラップをしに来たような奴らじゃない。そんなの雑魚よ!」
「テメエら、いい度胸してんじゃねえか・・・。」
「ハン、こんなやつら相手にしてても仕方ないわ。もう行こう渥美。」
「そうね。ま、せいぜい私たちを美しく見せることね。引き立て役として。」
そう言って2人は去って行った。
「兆秋、僕もあの2人にはイラっときたかなあ。」
「ああ、全くだ。」
「「あの2人は叩きのめす!」」
side一夏
さて、俺とボーデヴィッヒさんの初戦は明日になったわけで、俺は園山さん(他の二人は自分たちの試合や調整に重なって来ることが出来なかった。)と共に弟の試合を見に来たわけだが・・・
「これは大人げないな。」
「なんかあの2人、怒ってない?」
専用機持ちでもない一般生徒を相手に、兆秋はすさまじいまでの猛攻を見せていた。
『偉そうなことほざいといてその程度かああああああ!!』
『きゃああああああああああ!?』
ズガンズガンズガン!!
まるでお前に使うまでもないとでも言うかのように、兆秋は零落白夜を発動させなかった。
『君の動きは全部読めてるよ!』
ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
『いやああああああああああああ!?』
シャルルもシャルルで相手の心を圧し折るかのようにゆっくりと追い詰めていっている。
「あの娘たち、男女差別がものすごく激しいって1年の中で有名だから、もしかしたら試合前に兆秋くんたちをなにか怒らせるようなことを言っちゃったのかも。」
「それは何とも・・・。」
ドンドンドンドンドン!!
『なんで当たんないのよ!』
ギュイイイイイイイイイイン!!!
『シャルルの射撃に比べたらこんなのハエみたいなもんだ!』
「へえ・・・。」
「随分と上達したみたいね。」
射撃の回避がうまくなってるな。前は大きくよけて隙ができたら突っ込むって形か、被弾覚悟の突撃だったが、今回はコンパクトによけてフェイントを入れて隙を作らせることまでしている。
「シャルルは兆秋の良い教師になったみたいだな。」
「確かに、前に見た試合の時より楽そうによけてる。」
これだけ動きの無駄を減らせたなら、ただでさえとんでもないスタミナを抱えている兆秋は更に激しい攻撃が出来るようになっただろうな。
それはいいとして問題はシャルルだ。
『君の攻撃は直線的で読みやすいね!』
ドオオオオオン!!
『そんな!?』
「デュノアくん、戦い方が上手くて参考になるなあ~。」
「・・・上手すぎやしないか?」
「え?」
園山さんが首を傾げて俺のほうを見る。
「シャルルの戦い方は丁寧すぎないか?」
「確かに、デュノアくんの戦い方は教科書みたいに綺麗だけど、兆秋くんだって初めからオルコットさんをあんなに圧倒してたし。」
「強いことに疑問はないさ。でも、あれは才能のみで出来る戦い方なのか?あれは基礎をしっかりと修めた者の戦い方じゃないのか?」
「それは・・・確かに。」
園山さんも疑問に気がついたようで、考えるようなそぶりを見せ始めていた。
「努力をするといってもシャルルにあそこまで基礎を叩き込む時間があったのか?少なくともシャルルは俺と兆秋よりも後にISを動かしたはずなのに。」
そう、本来シャルルのあるべき戦い方とは、兆秋のように荒削りで、大味な物になるはずだ。こんな磨き抜かれた戦い方になるはずがない。
「もしかしてデュノアくんって・・・女の子?」
「可能性は高いよな・・・。」
そしてその瞬間、試合終了のブザーが鳴った。
あろうことか事情を何も知らない一夏や一般生徒に疑惑が広がるという恐ろしい事態に。