そんなわけで3人称視点は別の機会に。
side一夏
結局あの後、俺と園山さんは何事もなく帰路につき、今日という日を迎えた。
そして今、俺とボーデヴィッヒさんはアリーナで対戦相手と対峙している。
「さてと、遂に俺たちの戦いが始まるわけだが・・・。」
俺は洗礼されたフォルムで軽装備の色鋼・赤銅を身に纏っていた。
「私の邪魔さえしなければ好きにしろ。」
ボーデヴィッヒさんは俺のことをまったく意識せず、軽蔑した目で対戦相手を見ていた。
俺たちの初戦の相手は、小林恵理子さんとエリー・アーモンドという名前で、2組の仲のいい2人組らしい。面識は無いが、見た限り緊張して浮足立っている。恐らく実力も一般生徒の平均から大きく外れてることもないだろうな。ついでに言うと、黒い髪の小林さんは打鉄を、金髪のアーモンドさんはラファールを纏っている。
「じゃあ俺は黒い髪の娘と戦わせてもらうぞ。」
俺は小林さんと戦うことにした。連携が取れないなら、単純に各個撃破するぐらいしかフレンドリーファイアを避ける方法がない。
「好きにしろ。ただし、その程度の相手に時間をかけるようなら貴様ごと私の手で叩き潰してやるから覚悟しろ。」
おいおい流石に失礼だろうが。聞いてたあの2人、かなり怒ってるぞ。
そうして試合開始のブザーが鳴った。
赤銅はマシンガンとブレードが主武装の格闘機で、その速度は黄土を超えるどころか兆秋の白式にも食らいつける程の物だ。
俺は速攻で小林さんに接近してマシンガンを撃ち、アーモンドさんと引きはがしにかかった。
ダダダダダダダダダダダダダ!!
ギュウウウウウウン!!
「連携すらとらないなんて余裕だね一夏くん、専用機持ってても私ら以上の初心者なのに。」
さっきの会話がよほど気に障ったんだな、かなり険しい目で睨んできている。
「仕方ないだろ小林さん、ボーデヴィッヒさんに連携を取る気がないんじゃ俺にはどうしようもない。」
試合後が怖いから言外にさっきの悪口に俺の意思は入っていないことを匂わせることにした。
その思いが通じたのか小林さんは“ああ・・・成程。”というような顔をして表情を緩ませた。そして・・・。
「ふーん。それと後もう一つ言いたいことがあるんだけどさ・・・。」
瞬時に物凄い殺気に満ちた鬼のような形相になった。
「私がエリー・アーモンドだ!!間違えるな!!!」
「ええ!?」
ガキイイイイイイイイン!!
黒髪黒目の黄色人種なのに!?顔のパーツとか見ても完全に日本人じゃん!!
それに向こうのほうなんか金髪で目が青いし肌もめちゃくちゃ白いじゃん!!どうみても外国人じゃん!!エリー・アーモンドって感じじゃん!!
「お父さんの方のおじいちゃんが日本人でお母さんも日本人なのよ!!」
ドガガガガガガガガガガガガ!!!
「成程ねー!!!納得!!!!!」
ズドオオオオオオオオン!!!!
さっきから物凄い剣撃を俺は浴びせられている。捌くので精いっぱいと言うか、気迫が凄過ぎて押されちゃう。めっちゃ怖いぞこの人。
「じゃあ小林さんは何で!?」
「謎の先祖返りよ!」
ズドドドドドド!!
くっそ!強え(というか怖い)、だがそろそろ反撃の時間だ!!
「赤銅、スーパージャンプ起動!!」
ドン!ドン!
そして俺はアーモンドさんの視界から消えた。
「なんですって!?」
彼女は動揺して一瞬の隙を見せた。
「ここだ!!」
ズバアアアン!!
「ぐうう!」
俺は後ろからブレードで一撃を加えた。
「調子に乗らないで!」
ダダダダダダダダダダダダダ!!
アーモンドさんは俺に対してマシンガンを連射してきた。散らばらせるように撃っているため、外れろ物も多いが、その分逃げずらいな。
だが・・・
「赤銅なら話は別だ!」
ドンドンドン!
「嘘!!?」
スーパージャンプとは、簡単にいえば空気を蹴って方向転換する装備で、これを使えば高速で曲がる際のブレーキや遠回りを無くしてスーパーボールのような軌道で動き回ることができる。
「それにマシンガンはそっちだけの武器じゃないぞ!」
ダダダダダダダダダダダ!!
高速で動きまわってるから狙いが定まらないが、7割当たれば牽制には十分。
ジャンプした瞬間は減速ができなくなるのが弱点といえば弱点だな。
「ま・・・マズイ!!」
マシンガンの威力でアーモンドさんの体勢が崩れた、このまま一気にけりをつける!
「オオオオオオオラアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
俺はアーモンドさんの360°全方向から跳ねまわるようにブレードで斬りかかった。
「きゃああああああああああ!!!」
彼女のシールドエネルギーが0になったようだ。
「こっちは終わったけど、そっちは?」
「フン・・。あの程度、相手にもならん。」
どうやらボーデヴィッヒさんは俺より早く小林さんを倒したみたいだな。
「うう・・・っ」
様子を見る限り、小林さんはよほど酷い負け方をしたらしいな。機体には大した傷は付いていないが、その表情は恥辱にまみれているように思える。
「どんな勝ち方したんだよ・・・。」
「余りに弱かったのでな、暇つぶしに足だけで戦ってやったまでだ。」
それでもなお戦いにならなかったから叩き潰してやったがな。と言って彼女は出撃ゲートに去って行った。
「チクショウ・・・!」
・・・対戦相手の俺が彼女にかけられる言葉は無いだろうし、それならここにいても仕方ない。
俺もボーデヴィッヒさんに続いてゲートに戻って行った。
side兆秋
マジかよ・・・。
オレはシャルルと一緒に一夏の試合を見に来たが、
「黄土とあそこまでコンセプトが違うのかよ・・・。」
「この分だと残り一つの形態も全くの別物だろうね。」
今回は赤銅の初の実戦ってことであれ一つで戦って慣らしたようだが、やろうと思えば無人機の時みたく戦闘中に変形できるだろうしな。
「残り一つの形態にも特殊な武装が積まれてるよな多分。」
「うん。それに予想だけど、最後の形態はオルコットさんのブルー・ティアーズみたいな遠距離射撃型だと思う。」
距離を選ばない重装備型と、中距離くらいなら軽く翻弄できる近接格闘型ときたら、次はそうなるわなあ。
「でも、その装備が実弾かビームかで対策が違って「ビーム兵器だろうよ。」え?」
「黄土も赤銅も実弾やブレードみてえな質量兵器しか持ってねえようだし、最後の形態くらいはビームみたいなエネルギー主体の武器が中心だろうよ。」
オレは一夏がビーム兵器を所持していることに確信を持っていた。
「でももしかしたら色鋼そのものが実弾兵器をメインにしたISかもしれないよ?だからまだ決めつけるのは早いよ。」
「ああ、言いたいことは分かる。オレだったそんな安直な理由だけで言ってるわけじゃねえ。」
そう、あいつはあの時。
「あいつは無人機と戦ってた時、ビーム兵器に対して慣れすぎてたんだよ。」
そうでもなけりゃ、あんな鮮やかに防ぎきれるわけがねえ。
「ああ、僕が転入する前にあったっていう襲撃事件だね。でも兆秋も初戦でビーム兵器を使うオルコットさんに勝ったらしいけど。」
「30分近くたっぷり慣らしたからな、それまでは大きく避けてたよ。」
だが一夏は初撃からシールドで完璧に防いで、しかもあの迷子まで守りきって見せた。とてもビーム兵器にはじめて向き合ったとは思えねえな。
「そっか、間近で見てた兆秋がそう言うんだったらもう異存はないよ。」
「サンキュ、だが問題は、」
「特殊武装が何なのか、だよね。」
こればっかりは幾つかのパターンを想定するぐらいしか対処法はねえな。
「まあ偏向射撃みたいなのは流石にねえだろうな。」
流石にこれでそんなもん積んでたら第3世代の枠から飛び出しちまうだろうし。
「偏向は出来なくても拡散ならできるかも。」
「なるほど、それなら最初から決まった数値かなんかをブチ込めば済む話だもんな。」
こうして、オレとシャルルは色鋼の最後の形態の予想を語り合いながら帰路について行った。
side一夏
「まあ、まず間違いなく兆秋は色鋼・青天がビーム主体の形態だって当たりをつけてるでしょうし、次の試合でがっつり慣らしておきますよ。」
「ふーん。でも特殊兵器までは兆秋くんたちも分からないんじゃない?」
既に午後8時過ぎ、俺は寮室でたっちゃん先輩と自分たちのトーナメントの手ごたえやこの先の方針について駄弁っていた。
「別に第3世代兵器レベルってわけでもないですからね、あの2人に隠したところで多少押したらすぐ持ち直すでしょうし、それぐらいなら完成度を高めて真っ向から打ち合いますよ。」
やっぱり実戦をこなすとこなさないとでは、同じ訓練量でも差が出てくるものだし。
「そう言うたっちゃん先輩はどうなんですか?確か次の次で専用機持ちのサファイア先輩と戦うそうじゃないですか。」
2~3年生なら時折専用機持ちに勝てる人が出てくると聞いたことはあるけど、勉強がてら学園の試合の映像や結果を調べた限り今の先輩方はそんな下剋上を許したことはないらしい。(飽くまで俺が調べた結果ではあるんだけど)
「ん~?普通に体調を整えて最高の状態にして挑むだけだよ?」
「対策とかは練らなくても大丈夫と。」
「まあそうだね。」
余裕だなオイ・・・。
「あの娘相手なら大層なことをする必要はないかな、そりゃあ候補生の中にも代表に近いレベルの実力者はいるけど、彼女はまだまだ青臭いわ。3年のダリル先輩と組んだら危険だけどね。」
「・・・好奇心で聞きますけど、ボーデヴィッヒさんはどうなんですか?たっちゃん先輩から見て。」
「代表候補の中なら結構強い部類に入ると思うよ?」
うん、つまり代表のたっちゃん先輩から見たら強くないって訳ですね。
兆秋、お前あの時とんでもない人に喧嘩売ってたんだな・・・。
「んで一夏くんの話に戻すけどさ、兆秋くんとデュノアくんに勝てる目処は立ってるの?ラウラちゃんは連携とる気ないんでしょ?」
そうなんだよな。寧ろ肝心の決勝でこそ1番足並みがそろわないと思う。
「そうですね。このままトーナメントの試合で色鋼の操縦技術を上達させることと、、」
「うんうん。」
「兆秋とシャルルの成長を考えたら、」
「考えたら?」
「大体70%ぐらいの確率でこっちが負けますね。」
「勝率低いわね。五分五分くらいじゃない?」
口ではこう言っても、顔には“妥当な判断”と書いてある。
「戦力の足し算なら負ける気はしませんよ。」
自信の源は自分の実力じゃなくてボーデヴィッヒさんの力というのが情けないな。
「でも兆秋たちは掛け算してくるでしょうからね。」
大してこっちは足した後何割か減らしてしまいそうな勢いがある。
「停止結界にしたって研究されてると思いますし、このままいけば各個撃破されて負けます。」
「じゃあ、一夏くんはどうする?」
「どうしようもないですから、残りの3割にかけますよ。」
「・・・なるほどね。」
「どうかなさいましたか?」
たっちゃん先輩が一瞬何かを察したような顔をした
「ん~ん、何でもないよ。」
・・・まあいいか。
「お手並み拝見させてもらうね。」
「やるだけやってみますよ。」
今は次の試合のことを考えよう。
「ところで、ペアの娘に『一夏くんは全裸よりセクシーランジェリーが好き』って教えちゃったけどいいよね☆」
「えっなにその情報!?マジでぶっ殺しますよ!!」
楯無さんが周りのキャラを何て読んでるのかがさっぱり分からぬ・・・。