帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
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思いつきで書きました。続くか分かりません。


第一話 帝国貴族が帝国に生まれるとは限らない

 さて諸君、一つお訊ねしたい。諸君は「銀河英雄伝説」と呼ばれる文学作品を知っているだろうか?

 

 そう、日本で最も有名なSF小説の一つである。略称を銀英伝、銀河を二分する銀河帝国と自由惑星同盟の永遠の様に続く戦争、そこに現れる二人の英雄の物語だ。

 

 かくいう私も当作品の大ファンだ。まぁ、私の場合OVAからだが……。そこから漫画、小説。そして二次創作と手を出していった口だ。リメイク版アニメの出来が怖いぜ。

 

 さて、私はある日死んだ。事故死だ。まぁ、細かいところは語る必要もあるまい。そして私はそこで俗にいう転生をする事になった。

 

 さて、ここまで言えば大体の人々は察しがつくだろう。そう、私が転生したのは銀英伝の世界だ。

 

 うん、青空に宇宙戦艦が浮いていたのを見た時は唖然とした。真上を戦艦が通り過ぎるってかなり怖い。全長600メートルだからな。米空母の2倍の大きさだぞ?

 

 転生したのはまぁいい。問題はどこに転生したかだ。所謂最高の展開はフェザーンの一般家庭だ。原作介入?いやいや、あんな小競り合いで万単位が戦死する世界で介入とか無理だって。確実に名無しのモブとして死ぬ。あの世界下っ端の内はマジで運ゲーだぞ?

 

 だが、態々このように長々しく書くだけで分かると思うが私はフェザーン生まれでは無い。

 

 で、残るは帝国か同盟だ。次点でいえば帝国貴族に生まれる事だろう。二次創作の御約束パターンだ。上手く貴族社会を渡り歩いてリップシュタットでラインハルトに味方すれば後はヌルゲーだ。

 

 え?うん、なったよ。帝国貴族だ。帝国開闢以来の伝統を持つティルピッツ伯爵家の長男だ。名をヴォルター・フォン・ティルピッツ。宇宙暦763年帝国暦454年7月14日生まれ。この歳4歳。当然門閥貴族だ。やったぜ、勝ち組だ。勝ち組の……筈だったんだけどなぁ。

 

「見よ、ヴォルター!あの艦隊を!我らが誇る帝国亡命政府軍の勇ましい姿をっ!此度の遠征でも、我らが精兵達が必ずや賊軍共を殲滅させて見せる事だろう!!」

 

 幼い私を抱き上げる金髪碧眼の屈強な男性が叫ぶ。その姿からわかるだろうが、ゲルマン系だ。私の父である。つまり帝国貴族だ。だが、着ている軍服は同盟軍の深緑色のそれにベレー帽。

 

……ああ、父の言葉で御分かりかな?そういう事だ。

 

 自由惑星同盟の帝国との国境近いアルレスハイム星系、そこに居を構える同盟構成国の一つ、銀河帝国亡命政府……通称は亡命政府の主星ヴォルムスが私の生まれ故郷だ。

 

 つまりだ……私は亡命貴族の子として生まれてきたわけだ。

 

 

 

 

 さて、私の生まれ故郷について少し語ろう。

 

 銀河帝国と自由惑星同盟の接触は宇宙暦640年、帝国暦331年2月に両軍の辺境警備艦隊の遭遇戦、アルレスハイム遭遇戦が始まりだ。アルレスハイム星系の第4惑星は当時惑星改造の必要無しに入植可能な第1級居住可能惑星だった。

 

 遭遇戦から遡る事10年前に帝国の探査船団がこの星系を調査、アルレスハイム星系と命名、第4惑星は極めて環境の整った惑星、周辺の他の惑星もハイドロメタルを始め多くの資源に恵まれた有望な星系だったが、当時帝国領域から余りにも遠すぎたために開発が後回しにされていた。

 

 7年前には同盟の探査船団が調査、同じく当時の同盟領域から離れていたためすぐさま開発される事は無かった。 

 

 帝国暦330年9月帝国の移民船団がアルレスハイム星系に入植を開始、同年10月、同盟の移民船団が惑星シャンプールから進発。当時同盟の移民船団は、帝国や宇宙海賊との遭遇に備え同盟軍が護衛について入植するのが常識だった。

 

 後は御分かりの通りだ。両者の移民船団の護衛艦隊が遭遇、戦闘。これにより帝国と同盟は戦争状態に移った。

 

 で、ダゴン星域会戦の結果、イゼルローン回廊の同盟側出口にあるこの星系は同盟の有望な入植地に……ならなかった。

 

 ダゴン星域会戦で帝国軍が歴史的大敗を喫し、帝国宮廷が混乱状態になった際、多くの共和主義者や権力闘争に敗れた帝国貴族が回廊から同盟領に雪崩れ込んだ。その数コルネリアス1世の大親征までの約20年間に十億人近い数に上ったらしい。

 

 当然ながら当時の同盟にそれ程の数の帝国人を受け入れる余裕は無かった。人的資源は喉から手が出るほど欲しいがさすがに短時間の間に大量に雪崩れ込み過ぎた。しかも亡命者の大半は貧しく、財産も無く、言葉も通じない下層階級だ。後々になると回廊の帝国側に侵攻して農奴や奴隷を解放するようにもなるが、この頃の同盟には雪崩れ込む亡命者の受け入れすらその国力の限界ギリギリだったのだ。

 

 さて、そんな彼らを一時的に隔離するために居留地が出来たのだが、それがアルレスハイム星系第4惑星に置かれる事になった。と、いうのも既に帝国の入植地があったためである。

 

 さらに、大量の亡命者が犇めく事で混乱が起きると、当時の亡命者の中の知識階級であり有力者、つまり皇族や貴族階級が一時的に彼らを管理・指導する事になった。

 

 当初、同盟政府は愉快な感情を持たなかったが背に腹は代えられない。彼らに一定の自治権を与えた。同盟としては自国に移住させる間にワンクッション置く事で帝国の間諜がいないか調査すると共に語学を始めとした教育を与える準備段階とするつもりだったらしい。

 

一方、亡命貴族達にとっても悪い話では無い。この新天地で仮初であろうとも再び貴族としての権力を振るえるならば同盟に頭を下げるなぞ安いものだ。

 

そうしてこの奇妙な自治区は20年に渡り続いた。

 

 そしてコルネリアス1世の親征によって同盟と自治区の関係は一気に深化した。

 

 帝国軍の大軍の侵攻に対してこの自治区の取った選択は徹底抗戦だった。当然だ。彼らは帝国軍や社会秩序維持局が反逆者をどう扱うかをよく知っている。コルネリアス1世自身は恩赦を約束したが信用出来る筈が無い。星系全体を舞台に自治区の住民はゲリラ戦を開始した。

 

 元々帝国に近いのだ。惑星全体が帝国軍の侵攻に備え20年の時間をかけて要塞化されていた。貴族の私兵と元共和派テロリスト、現地警備兼監視役だった同盟軍が協力して帝国軍を迎撃した。小惑星帯に同盟軍と貴族軍の戦艦、共和派の武装輸送船が潜み奇襲攻撃を繰り返した。地上では地下に、森林に、山岳地帯に何百万と言う兵士が潜み降下してきた帝国軍と戦った。

 

 窮鼠猫を噛む、というがその余りにも必死の抵抗についに帝国軍は牽制のための部隊を残しこの星系を放置し、同盟本領を目指す程であった。冗談抜きで特攻攻撃がそこら中で実施されていたらしい。地球教もびっくりの規模で、だ。

 

 オーディンのクーデターによって親征が失敗した後、同盟と自治区の信頼関係は頂点に達した。自治区から帰った同盟軍兵士達は口々に自治区の兵士達の勇敢さを、悲壮な覚悟を民衆に語った。自由のために戦う亡命者とその子孫、兵士達の先頭で指揮する元貴族達、その姿は同盟市民を熱狂させた。

 

 親征の2年後には、同盟政府はアルレスハイム星系を自治区から同盟加盟国に昇格させた。同盟加盟国は自治区と違い同盟の保護区では無く対等な惑星国家である。同盟議会への議員を送る権利があれば住民には選挙権もある。つまり完全に同盟の一部として、同盟国民として認められた訳だ。

 

 そしてここに銀河帝国の正当な後継者として帝国領の奪還と民主化を目指す共和派貴族と亡命市民からなる銀河帝国亡命政府が成立した、という訳である(銀河帝国亡命政府公式パンフレット年表欄より)。

 

 以来、我らが銀河帝国亡命政府、そして我らの保有する亡命軍は政治的には同盟議会の主戦派の急先鋒としてロビー活動に勤しみ、軍事的には同盟軍の一部として毎年の如く帝国軍と戦いを繰り広げている。私の生家ティルピッツ家は最初期から亡命政府に参加した貴族軍人の名家。私も将来父や戦死した祖父のように軍を率いて帝国軍と砲火を交える事になるだろうって……。

 

「……嘘、まじ?」

 

 ……すみません、凄い死亡フラグしかない転生先な気がするのですが?

 

 








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