帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
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第十一話 まぁ、適材適所というからね?

 宇宙海賊の襲撃を受けたと同時に補給基地に訪問していた銀河帝国亡命政府軍幼年学校生徒は直ちに基地の安全区画への避難が実施された。

 

 だが、そこにさらに基地の物資強奪を図る海賊集団の陸戦隊が揚陸を開始した。

 

 その場にいた同盟軍兵士達の援護を受けつつ避難する生徒達。

 

 アレクセイは学年首席の身として生徒の纏め役として避難を主導した。

 

 だが、大半の生徒が避難を終え、自身も退避しようとした所で宇宙海賊側の艦艇による基地への更なる攻撃が行われ、避難しようとした通路が自動封鎖された。

 

 アレクセイは、このままここに居ては区画ごと吹き飛ばされると考え急いで別ルートからの脱出を計り、数度の海賊の襲撃を撃退、あるいはやり過ごした。

 

「そして、海賊から隠れて移動しようとこの電源シャフトに入ろうとしたと」

「そして、抱き合ってる友人を見て退場しようとしたわけだよ」

「殺せ!殺せよ!どうせ私は生きている限り永遠に黒歴史を産みだし続けるんだっ!!」

 

 私は有らん限りの慟哭を叫ぶ。こんな恥(怖くて女子に抱きついて震えていた)を他人に知られるくらいなら今すぐ毒をあおって自裁した方がましだ!誰か帝国暦410年物の赤ワイン持ってこい!

 

「も、申し訳ございません!若様の名誉を辱しめたのはこの無能なベアトでございますっ!どうぞ自身を御責めにならず私に罰を御下し下さい……!!」

「五月蝿い。死にたくなかったらお前達、少し黙ったらどうなんだ?」

 

 ベアトが懇願し、ホラントは心から下らなさそうに注意する。ん?何でホラントの奴がいるかって?ああ、こいつアレクセイと共に避難を主導していたんだよ。しかも、射撃の腕が学年一だからな。同盟軍兵士の死骸からブラスターライフルを拾って銃撃戦までしやがった。今はこの狭苦しい点検用シャフト通路の最後尾でライフル持って警戒している。

 

「ははは、済まないね。迷惑ばかりかけて……」

 

 本当に心苦しそうにアレクセイは謝罪する。話によるとホラントは実戦でも殆んど動揺せず、的確に判断して行動していたらしい。おかげでアレクセイの方も危うく命を助けられたらしい。

 

「口を動かす暇があったら今後の事を考えたらどうだ?これから向かう場所は?」

 

不愉快そうにホラントは尋ねる。

 

「ああ、それならヴォルター達が地図を手に入れているよ。だろ?」

 

アレクセイが私に確認するような質問をする。

 

「ああ、同盟軍の事務携帯端末に基地の見取り図が記録されているよ。この点検用の通路から少し遠回りだが、第16区画に入れる筈だ」

 

端末のタッチパネルを操作しながら私は答える。

 

「そういう事さ。早く合流しよう。海賊側もその内ここを調べるかもしれない」

 

アレクセイの言葉に一同で頷き足を早める。

 

「それにしても……まさか基地を襲うとはな」

 

 私は呆れ半分に愚痴る。今時の宇宙海賊は過激で重武装とはいえ、一国の正規軍に正面から襲えるほどのものではない。大胆不敵と言うべきか後先考えない蛮勇というべきか……。同盟軍にしても宇宙海賊に簡単にこうもやられるとは……。いや、帝国軍から支援でも得ていればあり得るか?

 

「ここを……右だな。20メートルほど進めば換気口がある。そこで一旦地上に出よう」

「では……行きます!」

 

 ベアトが先頭に立ってブラスターを構えて進む。その次が私、アレクセイ、ホラントの順だ。アレクセイがブラスター、ホラントはライフルを装備しているが私は地図の確認役なので非武装だった。

 

「………」

 

 換気口の前に立ち、ベアトが耳を澄ます。地上に誰もいないか確認しているのだろう。

 

 一応の確認と共にベアトは背伸びをして地上側の蓋を持ち上げる。私達は警戒しながらそれを見守る。

 

「………」

 

 蓋を僅かに持ち上げ、確認をするとそっと蓋をずらして、勢いを着けて昇る。

 

 彼女が登りきり、警戒体制を取る間に私が続けて登る。続いてアレクセイの腕を掴んで地上に上がるのを手伝う。

 

 最後にホラントが仏頂面で私の手を借りずに登ってきた。

 

「おいおい、つれないな?」

「他者の助けは必要ない」

「あっそ」

 

 淡々としたホラントの返答に肩をすくめて私は答える。

 

「さて、と………」

 

私も周囲の警戒に移る。

 

 そこは、無線室だった。正確にいえば第16区画報告室、第3重力発生装置や基地中枢に向かう3箇所の通路等を管轄する区画指令部を兼ねた施設だ。最も、ここも酷い荒れ模様だ。

 

「放棄されているな……」

 

人っ子一人いない部屋を見てぼやくように私はいう。

 

「そのようだね。……通信記録を見られるかやってみよう。今の状況が分かるかも知れない」

「じゃあ、無線が使えるかやってみるわ。ベアト、警戒頼む。ホラントも、やってくれねえか?お前さん射撃がこの中で一番だろう?」

 

 私の頼みにベアトは教科書の見本のような敬礼で答える。一方ホラントは一瞬不快な表情を見せるがあぁ、と短く答え同じく部屋の出入口で警戒に移った。

 

「あー、糞。担当の奴ら放棄前にシステムにロック掛けたな?少し面倒だな………」

 

 安易な通信の傍受をされないように一時的にシステムのシャットダウンがされていた。完全に破壊しないのは最終的にこの区画を取り戻すつもりだからだろう。完全放棄の場合は破壊される筈だ。

 

「アレクセイ……そっちはどうだ?」

 

 液晶画面及びキーボードとしかめっ面でにらめっこしながら私は旧友に尋ねる。

 

「こっちもだね。復旧に少し時間がかかりそうだ」

 

困ったようにアレクセイが言う。

 

「いやいや十分よ。こっちは復旧出来るかすら分からん」

 

 こういった電子系やソフトウェア系の技術は苦手なんだ。電子戦基礎理論とソフトウェア運用概論Ⅰは毎度赤点ギリギリだ。ラインハルトとキルヒアイスは化け物だな。敵装甲車のデータを1日でハッキングしやがったんだよな?こっちは味方の機材の復旧すら悲鳴を上げそうだ。

 

「あー、違う違う………こう、こう、こう……やべ、こいつの処理は………」

 

 私が文字通り、液晶画面に身を乗り上げながら復旧作業をしていると横合いから人の気配が近付く。

 

「………見てられん。どけ。この手の技能は俺の方が上だ」

 

 ライフルを私に押し付けて機器の操作を始めるホラント。

 

「うお、早っ……」

 

 凄まじい速さでキーボードを操作してシステムを復旧させていく同僚。到底同い年には見えん。

 

「これくらい、講義内容を理解していれば難しくも無いだろう。ましてこいつのプログラムは760年型だ。アップデートもしていない中古もいい所だぞ?」

「ソフトウェア関連の成績が軒並み3位内の奴が言う台詞か」

 

 ホラントの言葉に嫌な顔で答える。頭良い奴はこれだから困る。

 

「……うん。こっちは部分的だけど記録が出てきたよ」

 

アレクセイが安堵した声で伝える。

 

「マジか。内容は?」

 

私は、アレクセイの方に移動し成果を催促する。

 

「慌てないでくれよ。……ふむ。87番通路、104番通路封鎖……ああ、ここは飛ばしていいね。……うん。海賊は第9から14区画辺りに侵入しているね。ここの区画のメモを」

「ああ、分かってる」

 

 私は既に通信記録から基地内の占領区画についてメモ帳に走り書きをしていた。

 

「増援は……エルゴンでの演習中の第4辺境星域分艦隊の即応部隊に第11星間航路巡視隊の分遣隊か。随分と豪勢な事だな」

 

それは、素直な驚きだった。

 

 同盟宇宙軍のナンバーフリートは帝国軍の大規模会戦に備えるため辺境の小競り合いや宇宙海賊との戦闘に派遣されることは滅多にない。それは地方部隊の仕事だ。

 

 同盟の辺境域の防衛と維持には主に3つの地方部隊が担当する事になっている。

 

 1つは星系警備隊だ。有人惑星を有する星系に置かれ、同盟の辺境警備部隊の基本だ。司令官は准将から少将、バーラト星系のみ首都防衛軍という名称で中将が指揮官に任じられる。

 

 基本的に星系警備隊には、軍管区の人口・経済規模に応じて艦隊と地上軍……平均して1個戦隊に1、2個師団……が編成されている。装備は駆逐艦や旧式艦艇、軽装備が中心で国境星系か富裕星系以外は宇宙海賊は兎も角帝国軍正規艦隊と戦えるものではない。人員の半数以上が地元出身であるのも特徴で徴兵された者は大抵地元の星系警備隊に配属される事になる。任務としては駐留星系の治安維持と防衛であり外征部隊として派遣される事は基本的にない。我らが銀河帝国亡命政府軍も一応これにカテゴリーされている。尤も暫定的扱いなのでほかの星系警備隊と様々な相違があるが……。

 

 次が星間航路巡視隊だ。これは、自由惑星同盟の星系間航路の維持を任務にしている。司令官は少将、全24個隊が編成されており艦艇は巡航艦を中心に少数の戦艦・空母等平均して1000隻弱保有、また宇宙軍陸戦隊等を複数個師団保有している。同盟の物流網の守護神だ。

 

 最後が方面軍である。前記の星間航路巡視隊を複数統括する地方部隊の最高指令部であり全7個方面軍が編成されている。司令官は中将。その直属部隊としては平均1、2個の辺境星域分艦隊と十数万単位の地上軍を有する。

 

 特に全12個編成されている辺境星域分艦隊は艦艇数にして1000隻から3000隻程度、流石にナンバーフリートには一歩譲るもののその装備の質と練度は星系警備隊や航路巡視隊とは比較にならない。帝国軍正規艦隊相手にも互角の戦闘が可能だ。

 

 実際独立部隊や臨時編入を受けナンバーフリートと共に外征に投入される事が珍しくない。

 

「あー、大体予想が付くな。こりゃお客さんへの考慮だな」

 

 無線記録を辿ると途中から口論になっていた。相手は補給基地司令部と軍港内の亡命軍艦艇だ。亡命軍側が独自に海賊の迎撃と生徒の救出を提案……というかごり押ししようとして同盟側と相当な押し問答になっていたらしい。まぁ、同盟側からすれば海賊相手に正規軍が格下の亡命軍に助けを求めるのは御免被りたいのだろう。国境ならいざ知らず、同盟統治星系で下手にお客さんに戦闘での死者を出させれば良い恥さらしだ。

 

「……!こちらも繋がったぞ!」

 

イヤホンを頭部に装着したホラントが連絡する。

 

「こちら、第16区画報告室、銀河帝国亡命政府軍幼年学校所属、ウィルヘルム・ホラント4年次生です……」

 

 ホラントが何度も雑音の鳴り響く無線に呼び掛ける。4度目の呼びかけに雑音の中から同盟公用語による呼びかけが返ってくる。

 

『……こちら、アモン…スー……こちら、アモン・スールⅢ補給基地中央指令部……この通信は……第16区画報告室……?』

「はい、こちらは……」

 

 ホラントが所属と名前、ほかの生存者名、現在までの経緯の詳細、現在の状況を端的にかつ正確に報告する。

 

『……り、了解した。……こちらから救援部隊を送る。

貴官達はその場で救助を待って欲しい。可能か?』

 

 少しばかり驚いた雰囲気で、恐らく上官であろう、誰かと相談する囁き声がして、最後にそう尋ねられる。

 

ホラントは私とアレクセイに視線を向ける。

 

「……いけそうか?」

 

ホラントの質問に私はアレクセイを見つめる。

 

「彼方から救援が来るのならこちらとしても動かずに済んで都合が良い。どれ程の時間になりそうか聞いてくれ」

「……ああ、救援の到着はどの程度かかるか分かりますか?」

 

 再度の相談し合う囁き声が漏れる。急いだような口振りで通信士が報告する。

 

『今、19番通路と35番通路から陸戦隊を進出させている所だ。激しい戦闘が続いていて断定は出来ないが1440時までにはそちらに到達する予定だ』

 

私達はその通信を聞いてすぐさま現在時刻を確認する。

 

「1354時……40分と言った所か」

 

 その程度ならば行けるか?と私が考え……その楽観論はすぐに裏切られた。

 

「……!?」

 

 ブラスターの発砲音が鳴り響く。すぐさま後方を見れば

室内から通路を伺うベアトがこちらを振り向く。

 

「敵陸戦隊です……数、少なくとも10名以上っ!!」

 

 叫ぶような報告。その間にもブラスターの青い閃光が次々と通路を通り過ぎて行く。ベアトが応戦のため発砲を開始した。

 

『どうした!?状況を応答されたし!』

 

 基地司令部から呑気な通信が入る。ホラントが何か言おうとしたかが私はイヤホンを奪うと悪態をつくように叫んだ。

 

「状況かっ!?ああ、いいさ!教えてやる!今地獄に就活する面接中だよ馬鹿野郎!陸戦隊に教えてやってくれ!さっさと来ないと餓鬼の死体の山と御対面する事になるってな!」

 

 其だけ叫ぶと私はブラスターライフルを掴んで銃撃戦の場に向かう。私達が陸戦隊に救助されるか死神の馬車に乗るか……客観的に考え非常に分の悪そうな賭けだった。

  

 

 

 

「おい、ライフル返せ」

 

 ホラントが私から自然にライフルを取り上げると応戦を開始する。

 

「………」

「ヴォルターは、この中で射撃が一番下手だから無線とバリケードを頼むよ?」

 

アレクセイが私を通り過ぎて銃撃戦に参加する。

 

「……ベアトー?」

「若様、危険ですので後方に御下がりください」

「あ、はい」

 

………うん、ちょっと。格好つけたの恥ずかしいわ。

 

 私は先程言い捨てた無線士に気まずい声で連絡を取った。仕方ないね。銃が3丁しかないからね?

 

調子に乗ってすみません。

 

 

 








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