帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
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軍靴のバルツァー10巻を読んでいたら最後の南部貴族大掃除がリップシュタット連合の末路とダブって見えた


第二十七話 困った時は相談するのが定石

 原作におけるワルター・フォン・シェーンコップは大胆不敵にして慇懃無礼、人を嘲るようで、子供っぽい所があって、皮肉家で……どこか憮然とした表情を浮かべた人物だった。

 

 そんな彼を大抵の軍人は疎んでいたし、恐れていたし、信用していなかった。

 

 彼が……本人は肩を竦めて否定するかも知れないが……忠義を尽くしたのはどこか眠たげな表情を浮かべる不敗の魔術師と、生真面目で健気な魔術師の養子だけだった。

 

 それを知る身として思う。……なぜ彼は律儀に魔術師の騎士を演じたのだろうか?

 

「そんな訳でさぁ、少し助言を欲しいんだよね。頭回らない私にそこら辺の思考の機敏についてさ?」

『久しぶりの通信かと思ったらこれだよ』

 

 士官学校内の寮、自身の住む共同部屋に据え置かれたテレビ電話、その液晶画面の前で私は安っぽいベッドに腰掛けて尋ねる。

 

 一方、超高速通信により4700光年離れた地から返ってくるのは溜め息混じりの呆れ声だ。

 

 画面の中では、赤地に黄金色の飾緒を纏う学生服、そこに銀糸の縫い込んだマント……亡命軍士官学校学生制服姿のアレクセイ・フォン・ゴールデンバウムが映し出されていた。優美に椅子に腰かけた後に肩を竦める。その所作一つとっても育ちの良さがありありと分かる。

 

「いやいや、それは心外ですよ殿下。私としましては心から信頼して、嘘偽りなくお話しの出来る貴方様だからこそこうして御伝えしているのですがねぇ?」

『今の言葉を訳そうかい?一々形式や礼儀を気にせず明け透けと愚痴れるから付き合えよ、って所だろう?』

 

 頬杖しながら苦笑すると、私の発言を適切な訳語に翻訳する旧友である。

 

「いやいや、そんなことは………多分無い?」

『疑問形の時点で認めたも同然だね』

 

そうバッサリ切り捨てるアレクセイ。

 

「おいおい、そう言うなって。マブダチだろ?私達?」

『え、友人だったの?』

「はは、ワロス」

 

 止めてくれない?友人と思っていたの自分だけとかトラウマになるから。

 

『ははは、安心しなよ、ちゃんと友人だと思っているからさ。……さて、冗談も程々にしようか』

 

本当だよな?私ガチで泣くぞ?

 

『妙な所で疑るね……。えっと……確かその帝国騎士をどう丸め込むか、て事だったね?』

 

アレクセイはこれまでの説明から確認する。

 

「ああ、聞いての通りの経歴だ。お前さんなら奴の内心について幾らか察しがつくところもあるだろう?」

 

私は確認するように尋ねる。

 

『確かにね。……こういってはあれだけど、下手な貴族や平民に比べたらある程度は察しが良いと自負しているよ』

 

半分皮肉を込めてアレクセイは答える。

 

 皇族であることは必ずしも自由を意味しないし、巨大な権限を持とうとも無遠慮にそれを振るう事は許されない。皇帝を始めとした皇族の発言や思想、行動はそれだけで周囲に影響を与えるし、それを利用しようとする者は少なくないからだ。最近の例では帝国のフリードリヒ4世の女性趣味が上げられるだろう。豊満で妖艶な美女を求め大貴族達が我先に該当する平民を養子に入れ、かと思えば皇帝が少女趣味に走っててんてこ舞いになる姿は帝都の平民達の物笑いの種だそうな。

 

 尤もこの程度なら可愛いもの、アウグスト2世の時代なぞ狂気と脂肪の塊に悠々と取り入り政敵を次々と勅命や皇帝の娯楽として殺処分してみせた猛者までいる。良く言われる事が「長く皇帝として君臨するのに尤も必要な才能は政治でも軍事でもなく、想像力」らしい。

 

 つまり相手が事象や発言をどう受け止めたか、或いは利用しようとしているか、それを相手の立場に立って考えを巡らせなければならないのだ。自身の権威を他人に利用されないために。

 

 その点、実は皇帝の方が常識や伝統、慣習といったものに懐疑的であったりする。少なくとも一般的な帝国人よりは自由な発想力がある(元々、ルドルフは優秀であり選ばれた皇帝や貴族が無知蒙昧で責任と自立を忌避する平民の代わりに思考し、指導する、という建前の下に身分制度を建てたのだから当然ではある)。

 

 まぁ、前置きが長くなったが帝国的価値観を持ちつつ、それ以外の思想にも理解があり、かつ私が心おきなく話せる相手を探すと消去法でこのご仁しか残らない訳だ。

 

「さてさて、たかだか帝国騎士のお話しに皇族に御相談するという贅沢の仕様なわけだが……どうだ?」

 

私は本題を尋ねる。

 

『ふむ……そうだね。ヴァルターの話しを聞く限り、分かっていると思うけど貴族、特に門閥貴族への憎悪があっても不思議はないね』

 

 考える仕草をしながらゆっくりと話し始めるアレクセイ。

 

『いや、それだけじゃない。……多分だけど帝国文化、気風そのものを嫌っているのかも知れないね。少なくとも母と兄はそれがなければ死ぬことはなかった筈だ』

 

 不良学生の母は、毒を飲んで自殺した。無一文で平民以下の生活を送る位なら毒をあおって帝国貴族らしく自裁してやる、という訳だ。……特に名誉を重んじ、独立独歩の気風の強い古い帝国騎士の家らしい考えだ。

 

 一方兄は、最早再興の見込みもない家の名誉のために志願兵として危険な任務を率先して引き受け戦死した。

 

 どちらも貴族としての名誉なぞ気にしなければ少なくとも現世と別れを告げる事はなかった筈だ。まして、亡命したのが6歳の頃の筈、かつて本当に貴族としての生活をしていた頃の記憶なぞ無かろう。家名の重みも、貴族としての在り方も、その権勢を覚えてはいまい。そんなもののために命を捨てる理由をどこまで理解出来ようか?

 

『尤も……』

「だからといってそれを完全に捨て去る事も出来ない、か?」

 

アレクセイの声に私は続けるように口を開く。

 

『そうだね。宮廷帝国語もかなり流暢だったのだろう?マナーも含めて祖父母殿に良く指導されたのだろうね。それこそ、捨てたくても捨てられない位にね』

 

 人間は、共同体で生きる以上アイデンティティー、その集団への恭順意識がどうしても必要だ。国家、と言えば魔術師は鼻じろむだろうから文化、社会と言ってもいい。自身の価値観の核となる存在、自身の立場を、利害関係をはっきりさせるために所属意識は必要不可欠だ。

 

 当然ながら、祖国を捨てた亡命者、特に実際に帝国に住んでいた第一世代の者はこの所属意識が非常に不安定になる。

 

 共和派ならこれまでの全てを捨て去って同盟と民主主義を新たな心の主人にすればいい。帰還派ならば古き善き帝国の伝統が絶対的な精神的支柱となってくれるだろう。鎖国派は同盟にも帝国にも忠誠を持っているか怪しいものだが少なくとも彼らは国家は兎も角帝国文化は伝えているし、家族という最小にして原始的な社会集団への所属意識くらいはある。

 

では……不良学生はどうだろう?

 

 帝国という国家と文化により家族を失った彼が心からそれに忠誠を尽くせるのだろうか?

 

 同時に自分達を排斥し、否定する同盟と民主主義を心から信ずる事が出来ようか?

 

 最後の支えである血縁も、天涯孤独の身では意味もない。

 

 ワルター・フォン・シェーンコップは恐らく年齢から見て両親を殆ど覚えていないのだろう。彼にとって記憶に強く残る家族は祖父母と兄だ。そして貴族としての生活を覚えているからきっと厳しく貴族として躾られた筈だ。幾ら不良中年とはいえ、さすがに家族との唯一といっていい繋がりであり、自身の精神的骨格は捨てきれないのだろう。

 

『フォンを捨てて無いことが証明だよ。少なくとも帝国人である事を完全に捨て去りたいのなら貴族としての証明は捨てるさ。それこそ名前を同盟風に改名する者だって少なくないしね』

 

 共和派、あるいは迫害を受け、かつ同盟への同化を選んだ者の中には帝国風の姓名を捨てた者も多い。シェーンコップが心底帝国貴族の血筋であることを、帝国文化を憎んでいるのなら改名している筈だ。

 

「同盟人にも帝国人にもなりきれない身という訳か」

 

 彼の原作における慇懃無礼態度を思い出す。あの態度は一種の自己防衛の面もあったのだろうか?……少なくとも彼は帝政も、民主主義にも拘りはないように見えた。帰属意識或いは忠誠を持っていたといえるのは「薔薇騎士連隊」と、魔術師と、その弟子くらいのものだ。

 

 「薔薇騎士連隊」に入隊した理由は何となく察する事が出来る。国家に忠誠心を抱けないのだから代わりの社会的拠り所が欲しかったのかも知れない。推測に過ぎないがそこまで間違った判断では無かろう。誰しも帰る場所が必要なのだから。本当に根なし草でいられる人間はそういない。

 

「……問題はそれがどう繋がるか、か?」

 

 問題は彼が士官学校を辞退する理由だ。士官学校を受験した理由は「薔薇騎士連隊」入隊するためだろう。志願兵では部隊異動の自由は士官よりずっと少ない。どこぞの陸上部隊に配置されそのまま訳のわからないまま戦死、あるいは忘れられたような辺境で数十年放置何て事もあり得る。彼にとっては論外だろう。

 

 経歴から言って生活も苦しかった筈だ。武門の貴族とはいえ財産もなく、働き手も殆どいない、兄の戦没者遺族年金と自身で働く位か……文字通り苦学生だ。亡命政府と距離を取っていたためにハイネセンに行くのも自費だろう。到底気に入らない、なんて理由で入校辞退するだろうか?……いや、あのひねくれ者ならしそうだけど。

 

『合格後に何か考えを変える出来事でもあったのか、だね。どう思う?』

 

 画面の中のアレクセイは使用人だろう、画面の切れ端から紅茶のティーカップを受けとると一口含んだ後そう尋ねる。

 

「どうだかな。うちの身内が横槍入れたのかね?」

 

 成績上位組、それでいて亡命者、一応貴族、そして亡命政府と距離を取っている。同胞の中に要らぬお節介をかけた者がいてもおかしくはない。そして、あの不良学生がそれに愉快な表情をするか、と言えば……。

 

『その辺りは調べて結果待ち、といった所だろうね。次に考えるべきはどうやって彼を引き留めるか、だよ』

「そうは言ってもな。あれは物で釣れるような御仁かね?」

 

むしろ不愉快に思いそうだ。

 

『そうだね。身一つで生きてきたような人だ。今更人にすり寄るような性格でも無いだろうね』

 

ティーカップを受け皿に置きながら尋ねる旧友。

 

「それじゃあ、どうするべきだと思う?」

 

 私の質問に少しばかり熟考するように考えこむアレクセイ。そして難しそうな表情で口を開く。

 

『……これは主観的な考えなのだけれど、嫌悪と好意は表裏一体だと思うんだよ。嫌うのは期待があるだけ、理想とかけ離れているだけ、憧れがあった分だけ、それに裏切られたからじゃないかな?何を抱いて彼が受験したのか、ハイネセンに来たのか、その辺りが肝要だろうね』

 

 口調からしてアレクセイは私に分かるのはここまで、といった様子だ。まぁ、情報が少なすぎるから仕方ない。

 

「……そうか。悪いな、無茶な事を尋ねてしまって」

 

会ったことも無い人物について尋ねたのだから当然だ。

 

『いや、それはいいんだよ。私もそう忙しい訳でもない。それより……そっちは大変だね?聞いたよ、抜け出した後の事は……』

 

画面の中で苦笑いを浮かべる旧友。

 

「止めろよ。嫌なことを思い出させるなって」

 

私は頭を抱えて困り果てる。

 

 レストランでの一件は面倒だった。私がリューネブルク伯爵を連れ出し単独で外出した後、ベアトが私がいない事に気付いて慌てて亡命者コミュニティに捜索願いを出したらしい(教官に対してでないことがポイントだ)。しかもリューネブルク伯爵もいない事が発覚するとその情報は伯爵の叔母であるザルツブルク男爵夫人の耳まで届いた。

 

 取り敢えずクレーフェ侯爵の下に両家の親戚一同一族郎党から5ダースの抗議(保護責任についてらしい)が来たのでグエン・キム・ホア広場でのアイドルコンサートに向かっていた侯爵は泣く泣く亡命者相互扶助会の本部に戻って捜索指揮を執らされた。

 

 どうにか見つけて相互扶助会傘下の警備会社(に偽装した民間軍事会社、に偽装した私兵集団)社員が突入したわけだが、あの後騒ぎに急行したテルヌーゼン市警察とまた一悶着あり大変だった。おい、警察相手にブラスター向けるな。お前達は帝国版憂国騎士団か。いや、あいつらは実は過激派の中では(恐ろしい事に)穏健派らしいけど。

 

「警備人員動かすほどかよ。只でさえ同盟警察に目をつけられているのに」

 

 完全武装の亡命軍をハイネセン等同盟中枢宙域に配備するのは問題が多すぎるためにダミーの警備会社を建てて亡命軍兵士をそこに出向させているわけだが当然同盟警察は良い顔しないんだよな。テーザー銃に警棒、拳銃程度なら兎も角、装甲車やヘリまで備えていれば(武装は別枠で外して保管しているが)そりゃ危険団体扱いも残当だ。

 

『仕方ないさ。大昔は本当にそれくらいしないと危険だったからね』

 

 苦笑しながら答えるアレクセイ。コルネリアス帝の親征の頃のトラウマはハイネセンに住む帝国系市民には未だ強く印象に残っている。帝国軍がハイネセンの目と鼻の先に迫る中、一部の暴徒や自警団がパニックを起こして帝国移民をスパイとして私刑や虐殺した事件が散発した。同盟警察が介入して事態を沈静化した頃には死傷者は数千人に上っていたという。アルレスハイム星系の同盟加盟国への昇格の一因である(同盟議会の国内帝国系住民への配慮だ)。

 

 実際、必要以上に重武装な警備会社が限りなくグレーに近いのに摘発されず監視対象に留まるのは、法律の穴を突いている事もあるが、過去の事件で同盟警察の対応が精細を欠いた事もある。

 

「と言ってもそれこそ爺さん方が生まれる前の話だからなぁ。そこまで警戒しなくても良いだろうに」

 

 年寄りは保守的で身内や同胞以外に排外的な所があるんだよなぁ。今のハイネセンはそこまで危険じゃないぞ?……いや、流石に極右やハイネセンファミリーの根城は絶対いかないけどな?

 

『まぁ、私から言えるのは気を付ける事、後は周囲の事も考えてくれよ?ヴォルターはその辺り鈍いから。自分は良くても周囲は別だよ?単独行動で下手やって、責任取るのは周囲なんだから』

「ハイネセン来てまで身分が付きまとうのは健全ではないけどな」

 

尤もその恩恵を受けている身であるわけだが。

 

その後も暫く他愛も無い雑談を続ける。

 

『……さて、少し名残惜しいけど、そろそろお開きだね』

 

 時計の針が一周した頃、アレクセイが切り出した。恐らくカンペが出ているのだろう。ちらりと斜め横に視線を移していた。

 

「今日は日曜日だぞ?何か用事か?」

『演劇会の観賞、その後は詩の朗読会と陛下と尚書方との食事会』

「休日ってなんなんだろうな?」

 

怠い行事がてんこ盛りだ。休める日あるのかこいつ?

 

「仕方ないさ。実学も必要だけど芸術への理解もないといけないからね。それにこれでも新無憂宮の偽帝よりはマシだよ」

 

 亡命政府の宮廷は同盟市民から見れば似たようなものだろうが、帝国のそれに比べればそれでも教養や政治の面で実利的で合理的、質実剛健だ(帝国基準で、だが)。

 

 国事行為も簡略化低予算化しているし、芸術や文化方面への予算も削り経済や軍事に振り向けている(同盟人からすれば十分過ぎる程金かけていると言うだろうが)。

 

 一方、オーディンの宮廷なんかキチガイ染みている。国事行為や宮廷イベントで皇帝の一年の三分の一が消えるらしい。園芸会や芸術観賞、パーティー……伝統は分かる。だが明らかに多すぎる。政務はオマケみたいなものだ。後宮に入り浸っているだろう時間を含めたら……正直オトフリート1世の気持ちが分かる。彼のように完全に無心で作業感覚で過ごすか、逆にジギスムント2世やオトフリート4世のようにはっちゃけるかのどちらかだろう。

 

 いやぁ、オトフリート2世やオトフリート3世が精神焼き切れた理由が分かるわ。あいつら宮廷行事こなしながらガンガン政治もやってたからな。どうやって時間作ってたんだろう?そりゃ過労死や発狂しますわ。

 

 現銀河帝国皇帝フリードリヒ4世もやる気無いとか言われているが、正直気持ちも分からんでもない。もうイベントこなすだけで面倒くさくなるわ。残った時間くらい愛妾と薔薇を愛でながらだらだら過ごしたいだろうね。

 

 そこから考えれば、アレクセイは皇族とはいえ次期皇帝では無いし、亡命政府は宮廷行事も減らしているからある意味楽ではある。

 

……どの道禄でも無いけど。

 

『他人事見たいに言うけど、ヴォルターも爵位譲られたら同じ目に合うからね?』

「よし、一生ハイネセンに住むわ」

 

 宮廷に何時間もかけて行くとか嫌です。あれだね、同盟軍人になって正解だね。軍隊入りすれば宮廷行事から逃げられるからね。後方勤務本部の窓際部署で一生昼寝して過ごそう。よし、そうしよう!

 

『禄でも無い事考えているね……言っとくけど、同盟軍も軍拡で予算に余裕無いから窓際部署行く前にクビになると思うよ』

 

 そもそもエリートばかりの後方勤務本部にそんな部署あるのかい?、と続けるアレクセイ。分かっとるわい!現実に戻すな、夢ぐらい見させろ!

 

『それでは。ベアトリクスやホラントにも宜しく言ってくれると嬉しいな』

「前者は頼まれたが後者は本人が嫌がると思うぞ?」

 

 頭を掻いてそう答えると画面のアレクセイが微笑む。鋼鉄の巨人の顔でやるのやめーや。

 

『では……またね(mach's gut)!』

 

 旧友がウインクしながら小さく手を振った所で回線が切れた。

 

「……はぁ、まあ。あいつよりはマシか」

 

色々聞いたが、後は自分でどうにかするしかあるまい。

 

 私は背伸びをして体を解すと立ち上がり退出する。さてさて、どうやってあの不良学生を言いくるめるか……。

 

と、ドアノブに手を掛けようとしたと同時に……一人でに扉が開いた。

 

 ……扉の先には直立不動の姿勢で優し気な笑みを浮かべる従士が背後に十数名の学生を控えさせて待機していた。にこり、と首を傾げながら従士は口を開く。

 

「若様、どちらに御行きでしょうか?不肖ながらこのベアトリクス、御傍で御同行させて頂きます」

 

完璧な所作で御辞宜をして言って見せる少女。

 

「あー、うん。そだね……」

 

……まず、不良学生の所に行くまでが前途多難だなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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