帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:鉄鋼怪人

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銀河帝国軍組織図

【銀河帝国軍大本営】

総司令官(大元帥・銀河帝国皇帝)

  ・軍務尚書

  ・統帥本部総長

     ・宇宙軍幕僚総監

     ・地上軍総司令部長官

     ・宇宙艦隊司令長官

     ・地上総軍司令長官

  ・帝国大本営報道部

  ・野戦機甲軍総監

  ・狙撃猟兵団総監

  ・装甲擲弾兵総監

  ・各帝国クライス司令官

  ・帝都防衛司令官

(また、文官として原則帝国宰相・内閣書記官長・皇帝政務秘書官・国務尚書・財務尚書・内務尚書・枢密顧問官が無条件で出席可能なほか、必要に応じてその他の文官も認可により出席可能)

  

 

【中央国衙】

軍務省

 :軍務尚書(元帥)

 :軍務次官(上級大将)

  ・軍務局(大将)

  ・兵備局(中将ないし大将)

  ・軍需局(中将ないし大将)

  ・人事局(中将ないし大将)

  ・教育局(中将ないし大将)

  ・経理局(中将ないし大将)

  ・医務局(中将ないし大将)

  ・法務局(中将ないし大将)

  ・査閲局(中将ないし大将)

  ・帝国軍広報部(少将)

 (付属機関)

  ・帝国軍最高将官会議

  ・予備役総監部(大将)

  ・科学技術総監部(大将)

      帝国兵器工廠(少将)

  ・憲兵本部(大将)

  ・帝国軍士官学校(中将)

  ・帝国軍幼年学校(中将)

  ・帝国軍機関学校(中将)

  ・帝国軍専科学校(中将)

  ・帝国軍経理学校(中将)

  ・帝国軍法務学校(中将)

  ・帝国軍軍医学校(中将)

・帝国軍兵学校(少将)

 

統帥本部

  :統帥本部総長(元帥)

  :統帥本部次長(上級大将)

   ・第一部(中将ないし大将)

      統合総務課(少将) 

      統合教育課(少将)

   ・第二部(中将ないし大将)

      外縁域課(少将)

      辺境域課(少将)

      サジタリウス腕課(少将)

      フェザーン課(少将)

   ・第三部(中将ないし大将)

      統合作戦課(少将)

      統合編成動員課(少将)

   ・第四部(中将ないし大将)

      統合兵站課(少将)

      統合通信課(少将)

   ・第五部(少将)

      戦略戦術課(准将)

      帝国軍戦史編纂・総括課(准将)

   ・その他特務機関

 

 

【銀河帝国宇宙軍】

・帝国宇宙軍幕僚総監部

  :幕僚総監(元帥)

  :幕僚副総監(上級大将ないし大将)

    ・第一部作戦担当(中将)

      第一課作戦・編成(少将)

      第二課教育・演習(少将)

    ・第二部軍備担当(中将)

      第三課軍備・兵器(少将)

      第四課出動・動員(少将)

    ・第三部情報担当(中将)

      第五課・対外縁宙域(少将)

      第六課・対辺境宙域(少将)

      第七課・対サジタリウス腕(少将)

      第八課・対フェザーン(少将)

    ・第四部通信担当(中将)

      第九課・通信計画(少将)

      第十課・暗号(少将)

    ・宇宙軍戦史部(大佐)

    ・その他特務機関

   ・帝国宇宙軍要塞総監部(上級大将)

   ・帝国宇宙軍大型戦闘艇総監部(上級大将)

   ・帝国宇宙軍陸戦隊総監部(大将)

   ・帝国宇宙軍単座式戦闘艇総監部(大将)

   ・帝国宇宙軍航路部(少将)

 

・宇宙艦隊司令本部

 :宇宙艦隊司令長官(元帥)

 :宇宙艦隊副司令長官(元帥ないし上級大将)

 :宇宙艦隊総参謀長(上級大将ないし大将)

 :宇宙艦隊副参謀長(大将ないし中将)

    ・各司令部直属部隊・独立部隊

    ・各要塞守備隊

    ・白色槍騎兵艦隊(中将以上・階級指定なし)一万六〇〇〇隻

    ・黒色槍騎兵艦隊(中将以上・階級指定なし)一万六〇〇〇隻

    ・第一重装騎兵艦隊(上級大将)一万四〇〇〇隻

    ・第二重装騎兵艦隊(上級大将)一万四〇〇〇隻

    ・第三重装騎兵艦隊(上級大将)一万四〇〇〇隻

    ・第四重装騎兵艦隊(上級大将)一万四〇〇〇隻

 

    ・第一竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

    ・第二竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

    ・第三竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

    ・第四竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

    ・第五竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

    ・第六竜騎兵艦隊(大将)一万二〇〇〇隻

 

    ・第一軽騎兵艦隊(中将)一万隻

    ・第二軽騎兵艦隊(中将)一万隻

    ・第三軽騎兵艦隊(中将)一万隻

    ・第四軽騎兵艦隊(中将)一万隻

    ・第五軽騎兵艦隊(中将)一万隻

    ・第六軽騎兵艦隊(中将)一万隻

 

    ・有翼衝撃重騎兵艦隊(イゼルローン駐留艦隊・大将)一万二〇〇〇隻

 

    ・第一弓騎兵艦隊(大将ないし中将)

    ・第二弓騎兵艦隊(大将ないし中将)

    ・第三弓騎兵艦隊(大将ないし中将)

    ・第四弓騎兵艦隊(大将ないし中将)

    ・第五弓騎兵艦隊(大将ないし中将)

 

    ・宇宙軍陸戦隊

 

【銀河帝国地上軍】

・地上軍総司令部長官(元帥ないし上級大将)

 ・人事局(大将ないし中将)

 ・兵器局(大将ないし中将)

 ・徴兵局(大将ないし中将)

 ・管理局(大将ないし中将)

 ・地上軍参謀本部(上級大将ないし大将)

   ・第一部(中将)

     ・第一課作戦(少将)

     ・第五課輸送(少将)

     ・第六課補給(少将)

     ・第九課地図測量(少将)

     ・第十課築城(少将)

   ・第二部(中将)

     ・第四課教育訓練(少将)

     ・第十一課将校教育(少将)

   ・第三部(中将)

     ・第二課編成(少将)

     ・第八課技術(少将)

   ・第四部(中将)

     ・第三課対サジタリウス方面(少将)

     ・第十二課対帝国外縁部方面(少将)

     ・第十三課対フェザーン方面(少将)

   ・第五部(少将)

     ・第七課戦闘記録(准将)

     ・その他特務機関

  ・陸上軍(ライヒス・ヘーア)総監部(上級大将ないし大将)

  ・水上軍(ライヒス・クリークスマリーネ)総監部(上級大将ないし大将)

  ・航空軍(ライヒス・ルフトヴァッフェ)総監部(上級大将ないし大将)

  ・工兵総監部(大将ないし中将)

  ・野戦衛生総監部(大将ないし中将)

  ・地上兵站総監部(大将ないし中将)

  ・郷土臣民兵団総監(大将ないし中将)

  ・海兵隊総監部(中将)

  ・空兵隊総監部(中将)

  ・アスカリ軍団総監部(中将)

 

・帝国地上総軍司令部

 :地上総軍司令長官(元帥ないし上級大将)

 :地上総軍副司令長官(上級大将ないし大将)

 :地上総軍総参謀長(大将ないし中将)

 :地上総軍副参謀長(中将ないし少将)

     ・各司令部直属部隊・独立部隊

     ・各駐屯地守備隊

     ・第一野戦軍(大将ないし中将)

     ・第二野戦軍(大将ないし中将)

     ・第三野戦軍(大将ないし中将)

     ・第四野戦軍(大将ないし中将)

     ・第五野戦軍(大将ないし中将)

     ・第六野戦軍(大将ないし中将)

     ・第七野戦軍(大将ないし中将)

     ・第八野戦軍(大将ないし中将)

     ・第九野戦軍(大将ないし中将)

     ・第十野戦軍(大将ないし中将)

     ・第十一野戦軍(大将ないし中将)

     ・第十二野戦軍(大将ないし中将)

 

【地域軍】

・オーディン帝国クライス本部:上級大将

  ・帝都防衛司令本部:大将

    ・帝都防衛艦隊(中将)五〇〇〇隻

    ・帝都守護軍団(中将)

    ・その他部隊

  ・第一胸甲騎兵艦隊(中将)六〇〇〇隻

  ・第一親衛野戦軍団(中将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・バイエルン帝国クライス本部:大将

  ・第二胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)五〇〇〇隻

  ・第二親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・ニーダーザクセン帝国クライス本部:大将

  ・第三胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)五〇〇〇隻

  ・第三親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・フランケン帝国クライス本部:大将

  ・第四胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)四〇〇〇隻

  ・第四親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・シュヴァーヴェン帝国クライス本部:大将

  ・第五胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)四〇〇〇隻

  ・第五親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・ヴェストファーレン帝国クライス本部:大将

  ・第六胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)四〇〇〇隻

  ・第六親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・オーバーザクセン帝国クライス本部:中将

  ・第七胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)三五〇〇隻

  ・第七親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・クールライン帝国クライス本部:中将

  ・第八胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)三五〇〇隻

  ・第八親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・ブルグント帝国クライス本部:中将

  ・第九胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)三五〇〇隻

  ・第九親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

・オーバーライン帝国クライス本部:中将

  ・第十胸甲騎兵艦隊(中将ないし少将)三五〇〇隻

  ・第十親衛野戦軍団(中将ないし少将)

  ・その他部隊

  ・現地私兵軍

 

 

【その他部隊】 

・野戦機甲軍総監部(上級大将ないし大将)

  ・各装甲軍団

・狙撃猟兵団総監部(上級大将ないし大将)

  ・各猟兵軍団

・装甲擲弾兵総監部(上級大将ないし大将)

  ・各装甲擲弾兵軍団

 

 

 

 

【宇宙艦隊編成の分類】

 基本的に帝国軍主力一八個艦隊は三種類の編制に分けられる。即ち

 

 ・重騎兵編成:大規模艦隊戦想定の重装艦隊

 ・竜騎兵編成:多種多様な任務に適応可能な柔軟な編成

 ・軽騎兵編成:哨戒任務・回廊内での艦隊戦に秀でた軽装編成

 

の三種類である。それ以外に

 

 ・白色槍騎兵艦隊:帝国宇宙軍第一艦隊とも呼ばれる皇帝直属艦隊、司令官は皇帝の信任の厚い者が選ばれる

 ・黒色槍騎兵艦隊:武門貴族・士族・軍役農奴のみで編成された精鋭艦隊

 ・有翼衝撃重騎兵艦隊:イゼルローン駐留艦隊とも、常時最新鋭艦艇と熟練兵で充足された精鋭艦隊

 

の三種の特殊編成艦隊が存在するほか、主力艦隊ではないのものに

 

 ・弓騎兵編成:超光速移動手段を持たない大型戦闘艇より編成、輸送艦艇で恒星間移動を実施する

 ・胸甲騎兵編成:地方駐留艦隊、旧式艦艇主体であり担当地域の哨戒・警備・掃討任務に従事する

 

の二編成が存在する。

 

 

【帝国軍における宇宙軍・地上軍の対立】

 軍事史上、軍種による対立はどのような国家においても常に存在し、それは当然銀河帝国軍においても例外ではない。銀河帝国軍においてはその建国期より宇宙軍と地上軍による予算と指揮系統の対立を孕んできた。

 

 銀河帝国宇宙軍においてその第一任務は恒星間航路の治安維持、それによる物流網の安全保障である。後年、自由惑星同盟との慢性的戦争状態に陥るものの、それでも帝国軍においては対同盟戦争よりも治安維持にその第一存在意義を置いており、特に地方駐留の胸甲騎兵編成、宇宙艦隊司令本部所属の竜騎兵編成・軽騎兵編成、大型戦闘艇からなる弓騎兵編成艦隊は、艦隊戦より寧ろそちらの訓練に重点が置かれているほか、陸戦訓練も盛んである。

 

 一方、地上軍は自由惑星同盟との接触以前は寧ろ宇宙軍よりも多くの実戦を経験した経緯がある。

 

 帝政初期の地方平定や対宇宙海賊・軍閥・ゲリラ掃討作戦では地上軍が主体であり、宇宙軍はその支援として運用された。ジギスムント一世公正帝時代初期の大反乱では宇宙軍も数度に渡り大規模艦隊戦を経験したとはいえ、百万規模の地上戦を幾度も経験した地上軍に比べてはその戦歴は微々たるものであった。

 

 その後も『フランケン帝国クライスの反乱』、『シリウスの反乱』等の地方反乱、外縁宙域の平定、アウグスト二世流血帝時代のエーリッヒ救国軍による帝都解放作戦等で地上軍は実戦の洗礼を受け、同時に研鑽を重ねてきた。

 

 そのような状況にありながら、例年の国防予算が宇宙軍・地上軍の間で6・4である事(宇宙艦艇の建造・維持費が高額のため)、軍縮時代における宇宙軍ポストの維持のための陸戦部隊の増設、軍事作戦における主導権争い等、宇宙軍と地上軍の対立は流血こそ伴わぬものの熾烈なものであったと言える。

 

 その代表例が『帝国軍三長官』と呼ばれる標語であろう。この言葉は帝国軍において宇宙軍・地上軍で別の意味を持つものである。

 

 三長官といいつつも、銀河帝国軍において現実には『元帥』が任じられる事が可能なポストは計八個存在する。

 

 軍務尚書は文字通り軍務省の長官であり、帝国軍全軍の軍政を司る。大元帥たる皇帝を除けば帝国軍の頂点に立つポストである。

 

 序列第二位は統帥本部総長である。即ち軍令を司るポストであるが、より正確には宙陸両面における軍令を司る部署であり、宇宙軍・地上軍の調整機関であると言える。

 

 というのも、宇宙軍・地上軍には更にそれぞれ宇宙軍幕僚総監部、地上軍総司令部と呼ばれる元帥が着任可能な軍令部が存在するためである。宇宙軍・地上軍それぞれの運用に特化する、という面では決して間違った編成ではないが、それ故に閉鎖的であり、両者の意思疎通・意見調整のために序列第二位として統帥本部の存在が必要とされる。

 

 軍務尚書、統帥本部総長、そして宇宙軍・地上軍の軍令部の次が実戦部隊の最高司令官である宇宙艦隊司令本部と地上総軍である。それぞれ広範な実戦部隊の精鋭を有している。両軍の副長官も元帥が着任可能であるが、多くの場合は上級大将以下の者で占められる傾向がある。

 

 以上八つの元帥ポストがある訳であるが、ここまで記述すれば分かるように、宇宙軍・地上軍の序列は対等と見なしてよいものである。

 

 『帝国軍三長官』の呼び名はその点から考えた場合、極めて好戦的な呼び名である。

 

 宇宙軍においてはそれは軍務尚書・統帥本部総長・宇宙艦隊司令長官であり、地上軍においては軍務尚書・統帥本部総長・地上総軍司令長官を指す(双方の軍令部は統帥本部総長と役職が重複するために除かれる傾向にある)。軍務省等では『帝国軍三長官』の呼び名を忌避する傾向があるが、これは宇宙軍・地上軍の対立を招くためである。

 

 対同盟戦争は宇宙軍と地上軍の対立をより熾烈なものとした。ダゴン星域会戦では宇宙軍の敗北の結果、地上軍は揚陸前に同盟艦隊の餌食となり、その後は同盟軍の辺境侵攻において地上軍は宇宙軍の支援を得られないまま国境防衛を強いられる事となった。コルネリアス帝の親征時には宇宙艦隊は大規模会戦は二度しか行わなかった事と対照的に激しい地上戦が継続、撤退時には多くの地上部隊が同盟領に取り残される事となった。

 

 地上軍と宇宙軍の対立はイゼルローン要塞建設計画で頂点に達した。要塞の建設により帝国本土への同盟軍侵攻の可能性が無くなると地上戦の重要性・緊急性が低下、対照的に艦隊戦が激増し、宇宙軍が地上軍に対して優越しつつある傾向にある。

 

 予算面でも地上軍予算が削られ宇宙軍予算が増額されつつあり、軍務省・統帥本部の配慮が行われているものの、宇宙軍・地上軍の溝は埋めがたいものとなりつつあると言えるだろう。

 

 

【銀河帝国軍における貴族私兵軍の歴史と存在意義】

 銀河帝国軍において門閥貴族が私有する私兵軍は、辺境宙域における治安維持・物流航路維持戦力の一端を担う存在である。その存在により帝国正規軍は現地貼り付けの辺境・外縁部警備戦力を大幅に削減し、即応展開・遠征能力に優れた機動戦力(正規艦隊・野戦軍)を充実させる事を可能としている。

 

 門閥貴族の保有する私兵軍のルーツは銀河連邦末期から帝国初期において中央から派遣された辺境平定軍であるが、当時の内実は銀河連邦軍正規部隊をコアとしつつも中央政府の人員不足、予算不足もあり、現地司令官ないし責任者(後の門閥貴族)が私財を投じて傭兵や義勇兵を召集、更には現地の自警団や降伏・恭順した現地敵対勢力の中から規律面や思想面で厳選した兵士・部隊を途中で加入させる等様々な手段による戦力・人材確保が行われている寄せ集め部隊というべきものであった。

 

 帝政の安定と貴族所領の復興・発展に伴い私兵軍は大きく改革された。長年従軍した士官・下士官・兵士を従士や奉公人、軍役農奴等に封じて臣従させ私兵軍の中核を形成、そこに領民からの志願兵を加え、外部からの教官や食客の登用、購入・製造した兵器の導入により、寄せ集め部隊から洗練された軍組織へと進化した。

 

 私兵軍の第一目的は所領の治安維持であり、領主である主家の守護である。第二の目的が星間航路の維持と領民の生命・財産の保護であり、第三の目的が帝国正規軍と皇帝に対する軍役である。

 

 第一・二の目的のために、また門閥貴族の大多数が複数惑星からなる所領を持たないために、多くの私兵軍は地上軍を中核とした編成であり宇宙軍の保有艦艇はワープ能力を持たない大型戦闘艇を主力としている。遠距離まで進出できる大規模な宇宙軍を保有するのは多数の星系を保有し、その治安維持の義務がある伯爵位以上の大貴族に限定される。

 

 第三の目的は現実には殆んど行われる事はない。正規軍が私兵軍に求める存在意義は後方の治安維持と航路維持であり、それは第一・二の存在意義と重複しているためである。また、前線での軍役も、多くの場合は部隊で、というよりも主家や家臣の一族が正規ルートで士官学校等を卒業して帝国正規軍軍人に志願する形が多く、私兵軍が部隊として正規軍と同行する事は少ないためである。

 

 とは言え、私兵軍が正規軍に劣るか、と言えば必ずしもそうとは言えない。私兵軍は正規軍に比べて戦闘での損失は然程生じないために常に練度を高い水準で維持可能であり、ノウハウの面でも予備役に転じた帝国正規軍所属の家臣や臨時で食客とした士官から最新の戦略・戦術のフィードアップが可能であるためである。

 

 また所領での戦闘を主眼に置いてあるために地理に詳しく、要塞化された領内で潤沢な補給と地の利を得た状態で交戦する事になるため、侵攻する敵勢力に対して優位に立つ事が可能である。

 

 また、私兵軍は士官から兵士まで代々役職を継承する者が多く、その点でも私兵軍全体としてノウハウの蓄積と結束力が強い傾向がある。

 

 何よりも兵士の愛郷心と領主への(半ば刷り込みに近いものの)忠誠心から高い士気と特筆すべき勇敢さを発揮する傾向がある。私兵軍は領外への攻勢に関しては必ずしも有力とは言えないが、領内での守勢に回った場合には少ない戦力でも恐ろしいまでに粘り強く戦う事で知られている。

 

 自由惑星同盟においては私兵軍を門閥貴族の平民支配の手先とみる事が多いが、実際の所は私兵軍と領民の距離は多くの場合極めて近いものである。

 

 平時においては領内での労働支援や災害派遣、式典等に動員され、また領民にとっては一種の安定した就労先としても人気である。多くの場合は士官・下士官は門閥貴族子飼いの従士・奉公人・食客に独占されるものの、領民からの志願兵は軍役農奴と並んで私兵軍兵士の出自の大きな割合を占める。

 

 徴兵は殆んどの領地で形骸化している。平均して選抜徴兵制で簡単な訓練を二年から三年程実施するが、徴兵対象者の内実際に徴兵される確率は極めて低く、また実戦参加は志願兵が優先されるため、多くの場合は訓練と警備のみを経験して後即応予備役・予備役・後備役に編入されているのが現状である。

 

 

【銀河帝国軍正規軍設立経緯及びダゴン星域会戦までの歴史概略】

 銀河帝国正規軍の前身組織は銀河連邦軍である。銀河連邦軍自体は元を正せばシリウス政府崩壊後の群雄割拠時代である「銀河統一戦争」時代に覇権を争った列強諸国の正規軍及び旧「黒旗軍」残党、各地の自警組織を糾合して成立したものであり、建国期は特に中央政府よりも各惑星への帰属意識が強い「星系軍」の集合体と呼ぶべきものであった。

 

 宇宙暦106年頃より行われた銀河連邦軍の大規模な増強に際し、地方固有の所謂星系軍に対して機動展開能力に秀で、特定の担当宙域を持たない真の意味での連邦軍(当時としては銀河連邦中央軍と称された)が設立される。ミシェル・シュフラン、クリストファー・ウッドといった諸提督は主にこの中央軍による宇宙海賊退治により功績をあげた軍人である。

 

 とは言え、かつての地球統一政府が植民諸惑星を軍事力で威圧していた前例もあるため、連邦軍中央による要求が幾度も行われてもなお大幅な増員は行われなかった。最盛期の中央軍ですら各星系軍に対して質は兎も角物量の合計では大きく劣り(最大時でも3:7の比率であったとされる)、依然として中央政府による連邦加盟諸惑星やフロンティアに対する完全な治安維持体制の構築には困難を伴った。これだけ不均衡な状況でも連邦の支配体制が揺らがなかったのはあくまでも最盛期の銀河連邦が好景気にあり、犯罪行為に手を染める絶対数少なかったからに過ぎない。

 

 銀河恐慌とその後の政治・経済的混乱、それによる急速な技術力低下、治安悪化に実力を持って対応出来るのは銀河連邦軍だけであったが、諸惑星が有する星系軍は自惑星外における動乱に対する介入に消極的であり(能力的にも不足だった)、対応の意志と(最低限とは言え)能力を有する中央軍の派遣は議会の混乱により幾度も延期、それどころか財政悪化のあおりを受けて、装備の整備・更新の停滞、給金の滞納等寧ろ予算削減の憂き目に遭う事になる。

 

 幾名かの連邦軍人は少ない予算の中で装甲擲弾兵団、狙撃猟兵団等の前身組織を編成、現地司令官の裁量権の範囲内での小規模な軍事作戦の実施等努力を重ねるが、大半の幹部はこの不況と政治混乱、それによるこれまでにないレベルにまで達した犯罪や紛争の凶悪化に対してたじろぎ、あるいは道徳意識の低下により腐敗と不正蓄財に励むようになる。  

 

 宇宙暦280年代前半頃には長期に渡り中央からの給与支払いが滞る、あるいは通信網の老朽化・寸断により連絡が途絶えた事で遂に地方に派遣されていた中央軍の不満が爆発、宇宙海賊化や軍閥化、あるいは独自に収入を確保するために傭兵となる部隊まで現れる等、市民保護の義務を怠る事例が多発、連邦加盟諸惑星の中には連邦体制を離脱するもの、星系軍を持って周辺諸国を侵略するものまで現れる。

 

 連邦最末期には一部の有力軍人、青年将校による連邦再建のためのクーデター未遂事件、更には辺境艦隊が軍事独裁政権樹立のためにテオリア中央政府制圧を目論み反乱を起こす例すら発生する。

 

 宇宙暦288年、銀河連邦軍士官学校を首席卒業した宇宙軍法務士官ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム少尉はリゲル星系にて上官の不正追及・部隊の風紀粛清を行い、それを疎んだ上層部によりアルデバラン星系に追放、現地で暗殺されかける憂き目にあうが、一部の部下と共に現地の宇宙海賊を壊滅させ生還、長年にわたり連邦軍の腐敗と宇宙海賊の跋扈に苦しめられたテオリア市民は彼を英雄として賞賛する事になる。

 

 その後も幾度にも及ぶ暗殺を切り抜け、同時に昇進を重ねたルドルフは遂に宇宙暦296年3月を迎える。連邦辺境部を制圧し中央政府占領による軍事政権樹立を画策していた『救国市民議会軍』約二万隻を前に多くの上官が戦闘前に逃亡したがために、急遽特務中将として(当時准将であった)迎撃部隊五〇〇〇隻を率い、これを撃破する。

 

 ルドルフの率いた艦隊が敵の四分の一に満たぬ戦力であったこと、中央宙域に『救国市民議会軍』が侵入しないように外縁域ぎりぎりの宙域で撃破した等の理由もあり、これにより中央宙域市民によるルドルフ支持は決定的なものとなった。

 

 同年10月、ルドルフは銀河連邦軍少将昇進と共に退役(この時予備役中将に昇進)、同時に中央議会議員として地元プロキオン星系選挙区にて圧倒的投票率で当選した。

 

 当時の銀河連邦議会に席を占めた腐敗政治家はこの反骨精神の塊と言うべき若手議員のテオリア議会出席に反対し、時として暗殺者まで送りこまれたが、これらの魔の手から逃れ、宇宙暦297年5月にはその後の政局を決定的なものとする『テオリア行進』が実施される。

 

 暗殺者から逃れ着の身着のままテオリアのスラム街に逃れたルドルフは現地で幾度も演説活動を行い現地市民の圧倒的支持を得る事に成功、その後「市民の窮状を議会に伝える」との言葉の下に、支持者たる現地のスラム住民達を率いてテオリア中央議会行進を開始した(ルドルフの名言「強力な政府を、強力な指導者を、社会に秩序と活力を!」はこの時の演説で初めて発せられたものである)。

 

 途中次々と各階層の支持者が合流、最終的に六十万にも及ぶ市民による大行進は、議会からの鎮圧命令を受けた警察部隊および軍隊の兵士がテレビカメラの前で現地の指揮官の命令を放棄して行進に参加する様子までもが撮影され、全銀河に報道される事態に発展する。これにより警察・軍部の特に下級兵士のルドルフ支持が印象付けられ、議会はルドルフに対して警察・連邦軍を利用した排除が不可能である事を悟らされた。

 

 こうして市民の圧倒的支持を背景に連邦政界進出を政治家達に認めさせたルドルフは、国防通政治家として連邦安全保障会議に席を占めると数度の選挙の中で同じ国防族議員や革新派官僚、交易・金融関連大企業グループ、中央集権派若手政治家等をその手腕の元に集結させ新政党「国家革新同盟」を設立させる。

 

 その後、宇宙暦298年連邦議会選、宇宙暦300年のハービック事件等を通じて銀河連邦議会最大勢力を形成、宇宙暦301年に国家元首に就任した。宇宙暦302年には首相を兼任、宇宙暦304年の終身執政官就任を以て事実上の独裁体制が確立される。

 

 ルドルフによる大規模な風紀粛清と人事異動、部隊再編により銀河連邦中央軍は短期間の内にその能力を向上させ、その軍事力によって中央宙域の治安改善、星系軍の部分的統合、更には帝政初期にまで続く辺境平定作戦が実施される事となる。

 

 この一連の風紀粛清と人事異動の中で銀河連邦軍上層部は軍人時代のルドルフの同志、部下、有望視された若手将校によって占められるに至り、連邦中央軍は星系軍の大部分を吸収した新体制に移行、宇宙暦310年・帝国暦1年を以て銀河帝国軍に組織再編が為される事になる。

 

 かつての銀河連邦軍に比べ軍事力の拡充と中央集権化がなされた軍隊は、その後大規模艦隊や野戦軍すら保有したジギスムント一世公正帝時代の反乱勢力をも鎮圧、長期に渡り巨大な武力により帝国国内の体制維持に寄与する事になる。その後、リヒャルト二世忌血帝時代の『領内平和令』の布告後は貴族間の『私戦』や反乱の減少も合間ってダゴン星域会戦まで緩やかな軍縮が行われる事になり、同盟との全面戦争が始まるまで宇宙軍の主力は大型戦闘艇と陸戦隊、地上軍の主力は即応展開可能な旅団単位の独立部隊となる。

 

 

【銀河帝国軍徴兵制度】

 銀河帝国正規軍における徴兵制度は一八歳から二一歳までの平民階級以上成人男性を対象としたものである。これは皇帝直轄領における奴隷人口を除いた帝国臣民人口一三〇億人、そこから農奴階級を除いた一一〇億人の約三パーセント前後であり対象人口は例年三億九〇〇〇万前後である。実際の所この対象者の中から全員が徴兵される事はない。

 

 最も優先的に徴兵される対象は基本的には貴族階級及び士族階級である。この階級は各種の特権付与の代償として帝国に対する奉仕が求められるためである。

 

 とはいえ現実には帝国の徴兵令には階級ごとに複数の特例が存在する。各階級の特例については下記のものが挙げられる。

 

・全階級共通兵役免除特例

 ・士官学校等の軍学校ないし神学校・医学校・理工系学校・官吏学校その他学芸省の認可した学部学生である者

 ・体力検査・知力検査等において基準に満たぬ者

 ・懲役刑以上の前科犯

 

・貴族階級兵役免除特例

 ・家督を継ぐべき直系男子が一名のみ、ないし兄弟の中で二名以上の戦死者がいる場合

 ・特に下級貴族階級においては習剣士学校通学者

 ・自領の私兵軍に所属する者

 

・士族階級兵役免除特例

 ・家督を継ぐべき直系男子が一名のみ、ないし兄弟の中で二名以上の戦死者がいる場合

 ・三等親内で職業軍人・警察・消防士等の職業に就く者が四名以上いる者

 

・平民階級兵役免除特例

 ・一〇万帝国マルクの兵役代人料を支払う者

 

 現実においては貴族階級の多くはエリート教育を受けているために学力水準が高く各種軍学校、官吏学校等に通学する者が多いほか自領の私兵軍に所属する者も多くその点において特に門閥貴族階級は殆どの場合徴兵対象から除外される事となる。また士族階級の場合も多くの場合は軍学校ないし志願兵として帝国軍に所属する者が多いために実際に徴兵される者は少数に留まる。平民階級の中では富裕市民階級において兵役代人料を支払う者は少なくないが同時に兵役代人料による免除は不名誉なものであるという認識も存在する。

 

 また逆に生命の危機を伴う兵役を勤め上げる事は社会における公共の利益を重視する帝国社会において重要な社会貢献であると認識され、兵役従事者及び経験者は地元社会で英雄として扱われるほか在郷軍人会会員加入権、公共施設の優先使用権が与えられるほか縁談や就職において厚遇される傾向にある。また兵役全う後は二年間の即応予備役、六年の予備役の後に後備役に編入され『郷土臣民兵団』加入が義務付けられている。

 

 帝国軍における徴兵による兵員補充は決して主要な兵士供給源ではない。元々帝国正規軍は職業軍人と志願兵を主体として高級士官を貴族、下士官及び下級士官を士族、兵士を軍役農奴で編成するのが基本であり、その補助として徴兵制度があるに過ぎないためである。現実に徴兵対象者から徴兵されるのは全体の約四パーセント、一二〇〇万名前後に過ぎず、その中から最前線の対同盟戦争に投入されるのは更に一部に留まる。

 

 銀河帝国正規軍は平均して年間約七二〇〇万前後の兵力を保有するが先の通り徴兵比率は全体の一七パーセント前後となる。一五〇年に渡る対同盟戦争による軍拡と士族・軍役農奴人口が急速に減少する以前は更に徴兵率は低く、ダゴン星域会戦以前の帝国正規軍における徴兵構成比率は六パーセント前後でしかないものであった。

 

 帝国軍を構成する各階級において特異な存在は名誉帝国人からなる『アスカリ』が挙げられる。帝国地上軍のアスカリ兵団総監部により監督される彼らは自治領民・奴隷階級からの志願兵からなり二五年の兵役を務めるか戦死した場合本人及びその三等親までを帝国臣民平民階級に昇級させる制度である。但し厳しい思想検査・体力検査・知能検査等が為されるために倍率は高く、その総戦力は年間して平均六〇万から七〇万前後、帝国正規軍の一パーセントに満たぬ比率を占めるに過ぎない。

 

 

【銀河帝国軍における貴族階級と平民階級の軍役従軍比率の公平性】

一般的に銀河帝国軍において「貴族階級は平民を前線で戦わせて自らは宮廷の祝宴にばかり出席する特権階級」という風説が語られるがそれは正確ではない。

 

 私兵軍を除いた銀河帝国正規軍七二〇〇万の内、軍役と引き換えに特権ないし土地の領有を認められている士族階級・軍役農奴階級は全体の半数近い三五・六パーセントを占める事実がまずあり、また下級貴族を含む帝国正規軍所属の貴族軍人は約一〇〇万名、帝国正規軍全体の一・四パーセントを占めている(この数字は私兵軍所属の貴族は含まない)。

 

 これらを除外した場合、本当の意味で特権・財産的見返りがなく従軍する平民階級兵士は志願兵・徴兵合わせて全帝国正規軍の六〇パーセント、約四三二〇万名に過ぎない。

 

 帝国臣民(奴隷・自治領民を除く)総人口二五〇億の内、貴族階級(門閥貴族・下級貴族老若男女全てを含む)は約四〇〇〇万名、人口比率は総人口中の〇・一七パーセント以下であり士族階級は約五億人、全体の約二パーセントである。一方、帝国正規軍に所属する権利・義務を有する皇帝直轄領の平民階級は約一〇〇億名でありその内帝国正規軍に所属するのは四三二〇万人、総人口の〇・四三二パーセントである。

 

 これは帝国貴族の内、正規軍に所属する割合(約一〇〇万名が所属・私兵軍所属・予備役軍人は含まない)二・五パーセント、士族階級の内正規軍に所属する割合(約一二〇〇万名が所属・私兵軍・予備役軍人は含まない)二・四パーセント、皇帝直轄領における軍役農奴(全皇帝直轄領の農奴階級二〇億名の内、軍役農奴は三億名前後)からの兵員供出割合である一五八〇万名、五・二六パーセントよりも遥かに低いものであり相対的に富裕市民を含む平民階級の軍役負担は軽いものであると言える。

 

 無論、高級士官比率が相対的に高い貴族階級・士族階級ではあるが彼らの多くは正規の試験・訓練を受けた職業軍人である。貴族軍人を揶揄する「二、三回の戦闘で将官になる貴族軍人」とは基本的に出向している私兵軍出身の貴族軍人であってこの中の比率に含まれないものであり、その多くは文官貴族出身の予備役軍人でもある。帝国正規軍所属の貴族軍人の大半は軍功を基に昇進しており、彼らの昇進速度の速さはあくまでも士官学校等でのエリート教育及び人事における軍功の上げやすい部署に対する優先異動の結果に過ぎない。

 

 

【帝国正規軍と貴族私兵軍比率と対同盟戦争による軍備拡張】

宇宙暦780年代において銀河帝国正規軍の一個艦隊定数は最低一万隻、野戦軍の定員は最低二〇〇万名に及ぶがこれは約一世紀半に渡る対同盟戦争の結果による軍備強化の結果である。

 

 銀河連邦末期において銀河連邦中央軍の宇宙軍一個艦隊の定数は五〇〇〇隻、地上軍の諸兵科による統合機動軍の定員は八〇万名でありそれぞれ一〇個艦隊・統合軍が設けられていた。これらの戦力の多くは連邦政府と連邦軍の腐敗と予算不足により定数不足或いは幽霊部隊が多く存在していたがそれでも尚、相対的に見れば銀河系最大最強の軍事力を有していたと言える。

 

 銀河帝国建国により宇宙軍は一八個艦隊、地上軍は一二個野戦軍体制に増強されたものの、定数は変わらず、それは三世紀以上経た対同盟戦争の始まりまで変化はなかった。

 

 ダゴン星域会戦以前において、帝国軍正規軍の総兵力は四〇〇〇万前後、私兵軍の総兵力は三五〇〇万前後であったとされる。ダゴン星域会戦に投入された恒星間航行能力を持つ大型戦闘艦艇五万隻は帝国正規軍の一〇個艦隊に相当しており、実際帝国軍はこの会戦において九個艦隊、及び一部貴族私兵軍と独立部隊を投入していた。

 

 ダゴン星域会戦直前の時点で銀河帝国宇宙軍の保有する宇宙艦艇は正規軍・私兵軍ともにワープ能力を保有しない大型戦闘艇が主力であり全艦艇戦力の七割を占めていたとされる。元来治安維持・航路維持を主眼としていた銀河帝国軍にとってこの時代は軍縮時代であり、また任務の性質から恒星間航行可能である代わりにコストが高い大型戦闘艦艇よりもコストが遥かに安く、軽快で数を揃えられる大型戦闘艇の方が配備を優先されていた傾向があった。

 

 数少ない恒星間航行能力を保有する艦艇もまた戦艦は全体の五パーセント程度を占めるに過ぎず、殆どの艦艇は航路維持のために快速性能や航続性能重視であり、装甲や火力等の能力は大きく制限され、しかも艦齢三〇年以上の艦艇が多数を占めていた。それらを指揮する諸提督もまた反乱鎮圧や治安維持任務の経験は豊富であったが正規艦隊戦の経験は大きく不足し、それを想定した訓練も殆ど行わずノウハウ不足に陥り、それは帝国軍史上でも五本の指に入る大敗の遠因となった。地上軍もまた治安維持任務が主体のために戦車や火砲等の重装備が不足しており主力は軽歩兵や装甲車両、迫撃砲等の小口径砲が中心であった。

 

 ダゴン星域会戦以降、特に帝国正規軍は急速に軍備拡張を開始する。正規艦隊総数こそ変化はないものの独立部隊の増強、艦隊・野戦軍の定数の増量を行った。また艦隊における戦艦比率の増強や艦艇自体の艦隊戦機能の向上、高級士官の再教育、地上軍の重武装化が図られる事となる。

 

 銀河帝国の豊富な人的資源と巨大な工業生産能力は歴史的大敗であるダゴン星域での敗戦による損失を急速に回復させ、帝国軍の戦闘能力は五年余りで戦前のそれを凌駕した。それは当時の同盟政府の予想を遥かに上回っており後にコルネリアス一世時代の帝国軍の過小評価から来る『コルネリアス帝の親征』とその軍事的惨敗の遠因となる。

 

 第二次ティアマト会戦時代には艦隊定数は八〇〇〇隻前後、野戦軍定数は一五〇万前後に拡張された。帝国正規軍の総兵力は一五〇年継続する戦争から宇宙暦630年代の四〇〇〇万から宇宙暦780年代には七二〇〇万にまで増強された。だが余りに長く続く戦争により多くの武門貴族・士族・軍役農奴の一族が断絶した影響から平民の徴兵率は緩やかに上昇傾向にある。

 

 一方、貴族私兵軍の総兵力は三五〇〇万から殆ど増強はなされていないとされている。理由としては治安維持のための領域は殆ど変化しておらず国境地域の諸侯を除けば私兵軍の増強の必要がない事が挙げられる。また私兵軍の増強よりも各門閥貴族の子弟・臣下の従軍を帝国政府が求めたために私兵軍の中核を担うべき士官・下士官になるべき人材が正規軍に流れているためでもある。

 

 

【帝国軍における予備役制度など】

銀河帝国軍において正規軍に所属していない門閥貴族階級男子はその全員が予備役軍人の階級を保持している。これは門閥貴族階級が私兵軍を保持・指揮するための儀礼的なものであると共に『全ての門閥貴族は帝室の藩屏として軍務を持ってこれを守護するべきもの』、『門閥貴族は神聖なる国家に対する奉仕のために全てが軍人たるべき』という帝政・階級制度における建前からのものである。とは言え門閥貴族階級男子はその大半が幼年学校に入学する慣習こそあるがその教育内容は軍事教練の中では基礎中の基礎であり現実の軍務においては基本的理解・知識としては十分ではあるが実際に軍を率いるには不足気味の内容である事実は否定出来ない。

 

 全ての帝国軍人は志願兵・徴兵問わず退役後は即応予備役・予備役・後備役に編入される。即応予備役は退役後二年・年間四十日の訓練を、予備役は退役後六年・年間二十日の訓練を、後備役は退役後十二年・年間十二日の訓練を課せられる事になるが特に定年退職者の場合は訓練の一部が免除の場合も存在する。

 

 『郷土臣民兵団』は帝国軍における補助戦力の一つである。在郷軍人会の傘下にあり加入資格として各地方自治体に居住する貴族階級・士族階級・軍役経験者・その他志願者の内訓練及び試験通過者を対象としており一種の準軍事組織であり自警団とも呼ぶべきものである。小火器等を保管しており、基礎的な軍事教練も行われているこの組織は軍・警察の補助として機能しており平時と有事の治安維持、巡回、消防活動、地上戦等を行う事を想定している。特に帝国国境や主要拠点等の軍役農奴や退役軍人の多い地域は『軍役属領』とも称されており、そこに置かれる『郷土臣民兵団』は実戦志向の本格的な組織と保管装備を保有している。

 

 在郷軍人会は地域社会における徴兵管理と地元市民に対する啓発活動、広報、『郷土臣民兵団』の編制、傷痍軍人・戦死者遺族の生活保護、慰霊祭の協力、講演会、退役軍人の親睦会のために郡単位で設立されている。責任者は現地の予備役で最も階級の高い者、軍歴が長い者から選出される。特に地域の徴兵適齢者の簡易検査や徴兵令状の送付、兵役忌避者の確保、徴兵対象者の歓待・誘導等は最も重要な役目である。

 




旧日本海軍、ドイツ国防軍等を参考に作成しました
原作クラーゼンの幕僚総監が役職的に統帥本部総長と被っている?ように思えたので本設定ではクラーゼンの幕僚総監は正確には宇宙軍幕僚総監である、という解釈を行いました

尚、リップシュタットのシュタインメッツの辺境を土産にした発言は本人が中将であった事から帝国クライスの司令官(あるいは司令官代理)であったと解釈します

また原作一巻の時点で元帥が四名のみ(ラインハルト含めて五名)記述は当時の地上軍の総司令部・総軍司令部が上級大将であったため、と解釈します


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