帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
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新作最新話感想

「嘘だろ!?ギリシャも幼女もないマクシミリアン様なんてマクシミリアン様じゃない!」(意訳:せめて幼女だけでも出していいのよ?)


第四十話 マスコットは身長三十六センチ、七歳、標準体型

 リーゼロッテ・リンドグレーン氏は、銀河帝国亡命政府の外郭団体たるハイネセン亡命者相互扶助会の売り出している代表的なアイドルの一人だ。正確には相互扶助会の投資している法人団体「スタジオ・ワグナー事務所」のアイドルである。

 

 個人情報は当然ながらプロテクトがかかり、私も特に関心が無いために深くは知らないが、10歳の頃にデビューして以来6年に渡り人気を博してきた芸能部門の稼ぎ柱の一人らしい。歌手としては帝国で問題作となった「ごーるでんばーむくーへん」を始め24曲、アニメの声優や映画の子役としても相応に成果を上げている。特に謎の社会現象を巻き起こした深夜アニメ「べすてぃー・ふろいんと」(人間の少女と擬人化した動物達のほのぼの系(?)アニメらしい)の声優及びOP、銀河連邦中期の伝説的三次元将棋棋士を主役とした映画「ドラゴンキングワークス」における主人公の弟子役等で大きく評価された。

 

 その愛くるしい表情と生まれ持った透き通るような美声は極めて魅力的ではある。慰労として前線の同盟軍や亡命軍の基地や艦隊にて70回以上も慰労コンサートを開いたが(歌手や芸人が前線の慰労役として契約するのは珍しくない)毎回満席であったほどだ。フェザーンにおける年越しコンサートでも飛ぶようにチケットが売れた(そしてフェザーン人らしく転売した奴らもごろごろいた)。

 

 尤も、その裏では他派閥の押す新人アイドルグループや民間法人の無派閥アイドルに押され緩やかに業績が落ち、その勢いに陰りが見えていると噂だ。無論、それでも十分人気があるのも事実ではあるが。

 

「けどね!やっぱりあの時ヒナちゃんじゃなくてヤシャちゃん役のほうがよかったとおもうの!たしかにヒナちゃんのヤンデレな部分はけっこううまくできてたけど、あんな風にお料理つくったりお掃除するようなおかあさん役はあわないよぜったい!」

「さいですか」

 

 グリーンヒル准将に買ってもらったソフトクリームで口元を汚しながら熱く主演映画を論評する未来のヤン夫人。多分10歳になるかならないか位だった筈だ。原作の落ち着いた雰囲気とは似ても似つかない元気な娘さんである。

 

 グリーンヒル一家と叔父、ベアトと共に士官学校の敷地に建てられたコンサート会場に向かう。事はコンサートに向かう一家に恩を売るために、本来ならば事前販売の特等席を提供しようと提案した事から始まる。元々定期的に問題を起こしていないか見に行くチェックの意味もあった。態々人混みの中ぎゅうぎゅう詰めで立ってコンサートに行くのも辛いものだ。それにグリーンヒル夫人は体が弱い。叔父の友人であるためという理由も付け提案すると、夫婦は感謝しながら賛同してくれた。

 

 そんな訳でグリーンヒル一家と共に会場に向かいに行く訳である。ベアトは付き人として傍に、叔父はグリーンヒル夫婦と談笑目的でついてくる。となると、必然的に私がこのフロイラインの御相手をする事になる。

 

「しょーじきそろそろ路線変更したほうがいいとおもうの!リーゼちゃんかわいいけどさすがにもう子供っぽいよ!じむしょは路線変更するリスクがこわいだけだよ!」

 

 これだからおとなはだめだよね!とぷんすかと御立腹する幼女。栗鼠のように頬を膨らませて不満を表す。なんだろう写真撮りたい、魔術師との結婚式の時にこれを新郎の前で真顔で投影機に流したい(悪意はない)。

 

 そんな事を考えていると私が真面目に話を聞いていないのが分かったのかむっとこっちを睨む。

 

「おにいちゃん、わたしの話きいてないでしょ!だめだよ、しゅくじょのおはなしはちゃんときいていないと!そんなのだとおねえちゃんに愛想つかされるよ!」

 

ピシッとベアトを指差して指摘するグリーンヒル嬢。

 

「いや、大丈夫。ベアトは私の一番の忠臣だ。絶対私を見捨てない。というか見捨てられたら割かしショックで引き籠る」

 

その時は結構真面目に心へし折られる。

 

「若様、御安心下さい。このベアト、如何なる状況であろうとも若様に誠心誠意お仕えさせていただきます。断じて若様の信頼に違える事は致しません」

 

恭しく自身の忠誠を示して見せる従士。

 

「おにいちゃんは駄目だね。そんなの分からないよ?口ではそういっても内心ではげんめつしているかもしれないんだから!薄っぺらいおかねもちに愛想つかして下町のこうせーねんとかけおちとかふりんなんててっぱんだよ?むしろおもてでそう言ったほーがはいとくかんがあってねつじょーがもえあがるんだから!」

「フレデリカ、貴方明日からお昼のドラマ見るの止めなさい」

 

 少し引き攣った表情でグリーンヒル夫人が娘に注意する。やっぱり昼ドラは子供の教育に良くないと思うわ。

 

「若様、私の忠誠心は決して偽りでは御座いません。御疑いであられれば今すぐに潔白を証明致します」

 

 うん、疑って無いから。昼ドラの影響受けた子供の話真に受けなくていいから。だからナイフを自分の首元に添えなくていいから。真顔で言わなくていいから。

 

「おねえちゃんってもしかしてダメンズ好き?」

「おう、嬢ちゃんの軽やかな罵倒の嵐に私の心はもうぼろぼろだよ」

 

 お前さんだって将来首から下が不要な奴にゾッコンだろうが。ぜってぇー言ってやる。ぜってぇー式の時に祝辞読み上げてやる。覚悟しやがれ。魔術師の前で猫被りやがって。

 

 一回り以上年下の子供相手に内心ガチ目でムキになる情けない学生の姿がそこにあった。というか私だった。え、小者?小者で悪いか!

 

 こりゃあ、あの毒舌家しかいない艦隊でやっていけますわ。可愛い顔してとんでもねぇメンタルの持ち主だ。この歳でこの性格とは恐れ入るぜ……。

 

 そんな事をしている内に仮設コンサート会場につく。コンサート自体は見学自由だが座席は有料チケット制、更に最前列は関係者のみが座れる貴賓席であり、一般客は座る事が出来ない。というか観客の大半は立ちっぱなしだ。看板を掲げて観客を誘導する自由惑星同盟軍公式マスコットキャラクター「スターフリー君」(星型……というか黄色いヒトデのゆるキャラだ。なんか伝説なテンカイ王国の王子っぽい、妹の「スターピーちゃん」共々子供に纏わりつかれている)の横を抜け、会場責任者達に席を準備するように命じる。

 

「あ、スターフリーくん、スターピーちゃん抱っこして!」

 

 こら、フレデリカ嬢、こっち来なさい!スターフリー君とスターピーちゃん凄いしなびているでしょ!中の人汗だくで苦しそうでしょ!

 

「すみません、御気にせず」

 

 スターピーちゃんにへばりつく小娘を剥がしながら笑顔で固定されたゆるキャラ(の中の人)に謝罪する。スターフリー君は、大丈夫だよ!とばかりに手を振ってくれた。スターピーちゃんは完全に枯れた植物みたいにしおれているけど。ピンク色の笑顔のヒトデがぐでー、としている姿はシュールだ。

 

「ほら、席用意したからパパ達と一緒に見に行こうな?」

「うー、スターピーちゃんまたねー?」

 

 フレデリカを連行する私。正確には女の子にべたべた触る訳にはいかないのでベアトが抱っこする。一方フレデリカは一瞬むすっとするがまた後で来襲するつもりなのか、にこにこスターピーちゃん達にばいばいする。おい、兄は元気にばいばいしているけど妹が完全無視しているぞ。

 

 席に連行された娘を見てグリーンヒル夫人が謝罪と共に軽く叱りつける。

 

「本当すみません。この子誰に似たのかやんちゃで。はぁ……もう少し御淑やかに育ってくれないかしら」

 

 大丈夫っすよ奥さん。後何年かすればサンドウィッチで戦死しかける中尉さんに会うから。

 

「ははは、まぁ子供は元気なのが一番ですよ夫人。それだけ健康な証拠ですからな」

 

 寧ろ微笑ましくフレデリカを見つめうんうんと頷くロボス少将。さらりと自分の席に座っている。あんたも見るの?

 

「それはそうでしょうけど……」

「ははは、まぁお気になさらず。私の方も然程気にしておりません」

 

 メンタルを的確に抉って来るところ以外は年相応で可愛いものだ。妹がいればこんなのだろうとは思う。伯爵家に生まれて以来こんな世話を焼かせる子供を見たことが無いので新鮮……と言うよりは少し懐かしい。……別にロリコンでもシスコンでも無いよ?

 

「じゃあお兄ちゃん、後でクレープかって!」

「おう、前言撤回だ」

 

 こいつ、とんでもなくハングリーやでぇ。つーかお前も心読むな。

 

 こいつ言ってやる。結婚式の際魔術師の前で絶対この事を言ってやる。

 

 いい加減グリーンヒル准将にも注意され、どうにか大人しくするフレデリカ嬢。尤も、そのお淑やかさもすぐに消え失せるが。

 

「みんなー!コンサートに来てくれてありがとう!!リーゼ凄く嬉しいよー!!」

「あっ、きた!!」

 

 大音量の音楽が流れると共に照明が一斉に光る。同時に立体ソリビジョンが何も無いコンサートの壇上をサバンナの平原に変える。流石宇宙暦のコンサートである。まるで本物と見まごうばかりの大自然だ。

 

 そして少女の透き通った、帝国訛りの殆ど無い流暢な同盟公用語が会場に響き渡る。観客達(大きなお友達も多いけど)が一斉に声援で答える。

 

 コンサートの中央にいたのは俗にゴスロリ衣装に身を包んだ少女だった。

 

「あー、これはグリーンヒル嬢の言った通りだな」

 

 確かに美貌は本物だ。白い肌、肩まで伸びる濃い青みがかった灰色……紺鳶色の印象的な髪、黒真珠のように輝く瞳、上品な佇まい、そして何よりも印象に残る声、確かに才能と外面には相当に恵まれている。

 

 だが、明らかに方向性が、少なくとも今の彼女の持ち味とは方向性が合わない。デビュー仕立ての頃は良かったのだろうが、今の彼女の美貌は可愛らしい、というよりはクールな印象を与える。上品な佇まいがそこに一層子供らしさを消していた。その美声はソプラノのようにすみ渡るものの、却って曲と噛み合わせが悪い。

 

 無論、音楽に疎ければ十分に満足出来る程の技量だ。音楽の審美眼を鍛えられた私が言うのだから間違いない。だが同時に目が肥えた者にはそこが何とも言えない違和感を与えていた。

 

「さて、それでは私は少し失礼して……」

「だめ」

 

 一応の役目は果たしたので、裏手で会場責任者達とトラブル等が無かったか確認しにいこうとした所で学生服の袖を掴まれる。

 

「今からいろいろリーゼちゃんについておしえてあげるからにげちゃだめ」

「あいあいさー」

 

 むー、と逃亡しようとした私に対して不機嫌そうにするフロイライン。あれだな、子供って奴は自分の知っている事を聞かれても無いのに教えたがる。

 

「若様……」

「ベアト、いい。どうせ急ぎでもない」

 

 ベアトが何か言おうとするのを小声で制止する。子供相手にムキになることもあるまい。明日のシミュレーション戦闘の打ち合わせは夜にやるので時間的には少し余裕がある。それよりもグリーンヒル夫妻に聞こえてなくて助かったな。聞こえていたら叱られていたぞ?

 

 演奏が始まる。歌詞からして子供向けの歌であろう、フロイラインは目を輝かせて体を揺らしながら一緒に歌い始めた。

 

「Willkommen im ようこそライヒスパークへ!今日もドッカンバッキューン大乱闘!」

 

 体を揺らして足をばたつかせながら興奮しながら歌うフレデリカ。皆見てる?脅威的な記憶力を持つこのコンピュータの又従姉、好きな歌数十曲を全て一言一句違わず歌いあげられるんだって(能力の無駄遣いかな?)

 

「がおー!うー!高らかに唸って遠吠えあげればFreund!決闘して撃ったり斬ったり!でも本当は多分とっても仲良し!」

「本当、随分と御機嫌だなぁ」

 

本当に子供らしい。これが十年もそこらすればあの凛々しい副官になっているのか……。

 

「本当にすまないね。娘はなかなか頑固でね」

 

 傍に来たグリーンヒル准将が困った顔をする。尤も娘に向ける表情は本当に温かい眼差しであった。心底娘を大事に思っているのだろう。好感度(と私の生存率を)上げるためにサイン貰って来てやろうかな?

 

「いえ、こちらこそ、ロボス少将の御相手をして頂いた御礼です。……こう言っては何ですが叔父は少し押しが強いですし」

 

 特等席でうとうと眠そうにする叔父をちらりと見やる。もう昼頃だ。あの人は趣味は昼寝と呼べるくらいには良く昼寝をする。まぁ、最近は軍務で疲れている事も理由であろうが。まぁどの道ファンの皆さんが贅沢しやがってと思いそうだ。

 

「ははは、まぁ少し強引な所はありますが豪快で気前が良い人ですよ。少なくとも尊敬出来る人ではあります」

 

 部下に良く食事を奢り、私生活で困れば援助し、悩みがあれば真剣に相談に乗る叔父はその愛嬌のある外見と合わせてそれなりに慕われているそうだ。まぁ、宮廷でも結構社交的だったなぁ。

 

「そうですか……それは僥倖です」

 

 准将の心からの言葉に私は微笑みながらそう答えた。そしてふと思った。この人は原作のアムリッツァの際、叔父の所業を一体どういう風に思ってみていたのだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 コンサートが盛り上がっている頃、そこから少し離れたベンチにてヒトデ……では無く2世紀に渡り愛され続けている同盟軍公式マスコット「スターフリーくん」と「スターピーちゃん」がベンチでぐったりしていた。

 

「全く、とんだ災難だよ。唯着ぐるみ着て看板掲げるだけと思えば子供にあんなに纏わりつかれるなんて」

 

 ベンチに座りげっそりとした声を上げるスターピーちゃん。何故大して可愛いと思えないこのキャラクターにあんなに子供が纏わりつくのか、全く彼には理解出来なかった。

 

「すまんなぁ。俺の籤運が悪くて。今度飯奢ってやるよ」

 

 上下関係に厳しい同盟軍士官学校において雑用係とも呼ばれる同盟軍士官学校1年生は、イベント事や行事があれば大概一番きつい役回りをさせられる。上級生がソリビジョン越しに視聴者の人気を集める傍ら、彼らは掃除やら荷物運びやら見学ツアーの引率やら道案内やらをやらされる訳だ。特にこの二人の役回りは厳しいもので、動きにくく息苦しい着ぐるみを着て何時間も看板を持ちつつ子供の相手をしないといけないと来たものだ。学生の間では「着ぐるみ蒸しの刑」などと称される。

 

「これ、態々学生がやる事か?私に言わせればどこぞから人でも雇えばいいのに」

「経費削減、て奴さ。学生は唯でこき使えるからなぁ」

「そうか、士官学校はブラック企業だったのかぁ」

 

 まぁ、軍隊自体ブラック企業の代表みたいなものだけど、とスターピー(の中の人)はぼやく。命あっての物種、命を削って大企業の給与にも満たない賃金を受け取る軍隊は真っ黒くろすけであろう。所属する奴の気が知れない。尤も自分が正にそんな大馬鹿者の一人である訳だが。

 

「はぁ……」

 

 今更ながら何で自分はこんな所でこんな事をしているのだろう、どこでボタンを掛け違えたのだろうかと溜息をつくスターピーちゃん(の中の人)。

 

「おいおい、随分と疲れ切った溜息だな。大丈夫か?栄養ドリンクでも買おうか?」

 

 残業帰りの中年のような徒労感に満ちた溜息にスターフリーくん(の中の人)は尋ねる。

 

「出来れば紅茶の方が良いんだけどねぇ」

 

 西暦の頃、産業革命を歴史上始めて達成した古代ブリタニアにおいて砂糖を大量に含んだ紅茶が劣悪な労働環境の中働く庶民の数少ない娯楽であり、栄養補給の手段であった事実を思い出すスターピーちゃん(の中の人)。そうか自分は西暦19世紀の労働者なのか、等とぼんやりと考える。尤もそれを当時の人間が聞けば同じ扱いするな、と飛び膝蹴りされるだろうが。

 

「紅茶党なのは相変わらずだな。それならアイスティーにしようか?」

「ああ、悪いけどそうしてくれ」

 

 器用にも着ぐるみ越しにクレジットカードをかざし、自動販売機のボタンを押すスターフリーくん。見るからにシュールな光景だ。

 

「……すまん、助けてくれ」

「……どうしたんだい?」

「……引っ掛かった」

 

 自動販売機に両手を突っ込み、前かがみの態勢のままでスターフリーくんは答える。脱ぐのが面倒でそのまま手を突っ込み抜けなくなったらしい。

 

「………」

 

10分程ゆるキャラ2名は自動販売機の前で悪戦苦闘した。

 

「………で、無駄な体力を使った訳ね?」

 

 ベンチに仰向けに倒れる笑顔で固定された着ぐるみ2体の目の前に立つ少女が呆れたように肩を竦める。金髪がかった栗毛に澄んだ海色の瞳の少女。ブランド物と分かる白いワンピースに柔らかな物腰から、一目で良家の御令嬢である事が分かる。

 

「ははは、まぁそんなところかな?」

 

着ぐるみを脱いだ汗だくの好青年が苦笑いを浮かべる。

 

「はぁ、世話が焼けるんだから。ジャン、はいタオルよ」

 

 悪戦苦闘する二人を引っ張って救出した少女は、ジト目で幼馴染を睨みつけながら籠バックから汗を拭うためのタオルを差し出す。

 

「サンキュー、ジェシカ」

 

 文句を言いつつも細かい気配りを忘れない幼馴染に対して、人好きのする笑みを浮かべた長征系名家の変わり種の事、ジャン・ロベール・ラップ同盟軍士官学校1年生は謝意を示す。

 

「ほら、貴方も着ぐるみ脱いで。そんな脱力したスターピーちゃん見たくないわ。さぁ、折角お昼ご飯用意してきたから食べましょう」

「あ…うん……」

 

 タオルを差し出されたスターピーちゃん(の中の人)はぎこちなく、もぞもぞと着ぐるみを脱ぎ始める。

 

「お、サンドウィッチか!ジェシカの作るカツサンドと卵サンドは絶品なんだよ!」

「もう、現金なものねぇ」

 

 籠バックの中身を見て子供のようにはしゃぐ青年にやれやれと頭を振る御令嬢。そんな二人を見ながら本当仲良いなぁ、等と思うスターピーちゃん(の中の人)。

 

「ふぅ、ようやく解放されたな」

 

 ひんやりと濡れたタオルで首回りの汗を拭きながら、ぼんやりとした、見ようによっては美青年にも見えない事もない線の細い青年……「手ぶらのヤン」の事ヤン・ウェンリー同盟軍士官学校1年生はぼやく。その様子を見てジェシカがくすくすと笑う。どこに笑いの要素があるのだろうか?そんな事を思いながらバツの悪そうにヤンは頭を掻く。そこに一抹の気恥ずかしさがあった事は秘密だ。

 

まぁ、何はともあれ……。

 

「おい、ラップ。先に食べるなよ!あとよりによってカツサンドを!?」

「先手必勝は戦の常識だぜ、ヤン?」

「貴方達、だからいい歳して子供みたいにはしゃがない!」

 

 取り敢えず若い成長期の二人にとっては腹を満たすのが最優先であったのは間違い無い。

 

 

 

 

 




ラップとジェシカは多分ノイエ版がイメージ





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