帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
<< 前の話 次の話 >>

42 / 66
結構ガバガバな考察があります。場合によっては調整するかも


第四十二話 世の中は思い通りにいかない事が多いもの

 宇宙暦780年代において自由惑星同盟を席巻する携帯端末型ゲームは三つ存在する。そしてその全てがフェザーンのゲーム会社の開発したものである。

 

 一つは歴史上の同盟軍宇宙艦艇を擬人化した(そして何故か女性化した)存在がギャラクティック・エンパイアと呼ばれる存在と戦う「レギュラーフリートこれくしょん」、二つ目が同盟軍広報部のプロデューサーとして後方アイドル達を育成し帝国やフェザーンのアイドルと凌ぎを削る「ミリタリーアイドルマスターズ」である。そして三つ目が「Free planets force General Order」通称FGOである。

 

 遠い未来、人類史改竄を目論む「インペリアル」の野望を阻止するために歴代自由惑星同盟軍を始めとした将官が(何故か女性化して)登場し、議長(プレイヤー)の指揮の元に戦うと言う内容だ(今プレイすれば黒旗軍十提督の内一人貰える!)。

 

 正直同盟軍から突っ込みが入っても可笑しくないが、そこはフェザーンである。同盟軍にも手を回し、軍の広報への寄与やゲーム制作への協力として同盟政府(と政治家に)多くの報奨金が入っている。尚、その金の元を辿れば同盟の廃課金勢である事は言うまでもない。おい、シャトルフ(ツンデレ黒髪クール娘)手に入らないんだけど?ちょっと課金してきて良い?

 

「はははっ!知ってたよ!課金ガチャの押しキャラ入手レートくらいな!畜生めっ!」

 

 私は高笑いすると手元にあったハムサンドをトレーに叩きつける。その騒ぎに士官学校内ベーカリーの他の客が何事かとじろじろ見る。店員が咳をして注意したのですいません、と頭下げてすごすごと椅子に座り直す。ヘタレだからね、仕方ないね。

 

「畜生、守銭奴のフェザーン人め……300ディナール賭けてこの様かよ……。ウォードもムンガイも何人もいらんわ!」

 

 糞、いつかフェザーン占領してやる。そしてガチャ課金の確率を変更する事を最初に布告してやる!

 

「そう怒らなくてもいいじゃないか。課金して玉砕するプレイヤーなんて珍しく無いだろうに」

 

 ほかほかのディニッシュを口にしながらチュンが語りかける。

 

「チュン、お前には分かるまい。門閥貴族がそうそうガチャなんて出来るかよ!」

 

 私は涙目で語る。良く同盟人はガチャで大金を課金する者を「門閥貴族プレイ」と称するがそれは違う。

 

 偉大なる開祖ルドルフ大帝は酒・煙草・麻薬・賭博・売春等を人類を堕落させる不健全な娯楽として大いに規制した。流石に根絶こそしなかったが、酒は身分毎に飲める銘柄や酒類が決められたし、煙草は全て国営企業の物で税金の塊と化している。麻薬は普通に関係者は死刑だし、賭博や売春も場所や身分・営業時間・金額等で厳しい規制を受けた。

 

 ガチャ課金は賭博行為の一環として禁止された。銀河連邦末期、ガチャ課金に依存した者や破産した者は数百万人に上っていた。ゲームのデータ上の変化に過ぎないものにより生活を持ち崩す事に大帝陛下は嘆き悲しみ、課金ガチャを一種の電子ドラッグとして非合法化為されたのである。

 

 ……というのは帝国の公式記録である。余り鵜呑みにするのは良くない。実際の所その理由は良く分かっていない。一説では若い日のルドルフが課金にハマり貯金を失ったがそのゲームのシステム上絶対に押しキャラが出ない仕組みであった事を恨んでいたという説、大帝の寵妃の一人エッツェル侯爵夫人が課金ゲームを退廃した悪き文化と嫌い進言したためとも言われるが、真相は今を持って不明である。知りたいならばローエングラム王朝が成立するまで待つしかないだろう。

 

「そんな文化の中で従士の目の前で私が課金なんか出来るかよ……!」

 

間違いなく止められる。

 

「折角監視の目が無いんだ。私、羽目を外しちゃうぞ!?この後ティアマト46のコンサートいくぞ。チュン、お前も来るよな!?」

 

 長征派の押すティアマト46のコンサートなんて家臣が見ている前で行けるか!!

 

「内容がショボい……と言ったら駄目なんだろうねぇ」

 

 苦笑するように同情するチュン。私と付き合って彼なりに帝国人の価値観を理解しての発言だ。

 

 帝国人は誇りと面子を大事にする。余り賎しい行動を取るわけにはいかないし、まして大っぴらに大帝陛下の遺訓を無視する事なぞ不可能だ。知るか!俺は俺の道を行く?馬鹿野郎め、一番迷惑するのは一族や周囲の家臣じゃ!

 

 正直帝国貴族社会はかなり空気嫁……じゃない空気読め、な世界だ。単純に宮廷抗争のための粗探しという面もあるが、伝統の遵守が何よりも尊ばれる。帝国貴族は人類を支え導く者として、大帝陛下の御取り決め為されたきめ細やかな儀礼制度に沿った行動を求められる。大帝陛下の遺訓を軽視したり、異様な事をしようとすると気味悪がられる。ある程度なら変人扱いで目こぼしされるが、度を過ぎればガチ目に避けられる。

 

 こんな事言えば、外面なんか気にするな?そんな下らんものよりも質実剛健にガンガン改革しに行こうぜ?……なんて内政チート考える奴もいるだろう。馬鹿野郎、門閥貴族に求められるのは指導者・統治者としての権威であって、行政能力なんか求められてないんだよ。

 

 そもそも貴族領の大半は、特に惑星単位以上を有する伯爵以上の大貴族領はその中で需要と供給の殆どが自己完結している。男爵・子爵位となると流石に衛星一つだとか惑星の大陸やらその一部程度が領地のため自己完結出来ないが、大概その場合は周囲の顔たる大貴族を中心に中小貴族による緩やかな共同体が形成されている。

 

 元々、貴族に領地を統治させる理由は銀河連邦時代の経済的混乱、更に言えば連邦成立以前の戦乱の時代に端を発する。

 

 銀河連邦末期の経済の混乱は連邦成立の時点で約束されていた。シリウス戦役とタウンゼントの暗殺の結果1世紀に渡り混乱した天の川銀河を銀河連邦は統一した。だがそれは連邦体制としてだ。相争った各勢力は以前にも触れたがその影響力を維持し宇宙海賊を使い暗闘を繰り広げていたし、各々で勝手に植民星を開発していった。これら宗主星系と植民星の経済的な従属関係は資本主義体制を取る以上完全に拭い去る事は出来なかったし、旧勢力間の経済統合もまた容易では無かった。

 

 それでも賢明なる銀河連邦中央政府は段階的に星間連合国家の政治的・経済的統一を推し進めていった。人類社会全体を覆った経済発展がそれを後押しした。まぁ景気が良ければイデオロギーやら国家意識を然程気にしないのは何時の時代も同じだ。

 

 宇宙暦260年代に入ると、長らく続いてきた連邦内の宗主星と植民星の格差拡大、旧勢力の自治権による領域内での非効率的な経済体制・議会対立による政治の停滞によりその高度成長は終わりを告げた。特に領域内での通貨統一が徒となった。拡大する諸惑星間の経済格差に未だに強い地方自治権、議会の混乱による事実上の麻痺状態……まぁ21世紀のEUを思い浮かべてくれたらいい。

 

 効果的な経済政策が不可能になった以上、中央政府に可能なのは緊縮政策しかなかった。無論それは悪手である事は中央政府自体理解していた。だが議会が麻痺状態になり、税収も激減、国債の発行する手続きすら出来ない以上他の選択が不可能だったのだ。

 

 予算の削減による治安維持を担う軍と警察の弱体化は航路の治安悪化を招いた。科学技術への投資が削減されれば当然技術的停滞を招いた。公共事業も出来ないので失業者は増加したし、惑星開発は資金が無いので放棄された。社会保障費の削減により路地裏には社会的弱者が溢れかえった(実は劣悪遺伝子排除法の基になった法律がルドルフの政界進出以前に発布されたのは秘密だよ?)。そしてその責任を政治家や各政党は互いに押し付け合ったきりで、率先して行動する事は無かった。正直かなり詰んでいる。

 

 ルドルフが台頭する以前にもこの危機に対して幾度か連邦体制の抜本的改革を行うべきという意見はあったが全てが途中で頓挫した。民主主義体制の中で2世紀半、いやそれ以前から根強く続く体制を変えるのは、それも長期に渡る大不況や治安の対策を行いながら進めるのは不可能であった。

 

 まぁそりゃあ、「強力な政府を!強力な指導者を!社会に秩序と活力を!」とも言いたくなりますわ。

 

 ルドルフの下に銀河連邦の政治体制は改革された。彼は連邦……いや、帝国を統治を行う上で皇帝直轄領と貴族領(正確にはさらに幾つか区分があるが)に分割した。これらはシリウス戦役以降の「銀河統一戦争」期旧勢力圏、あるいは星系経済力、地理、治安事情事により区分された。

 

 ルドルフは巨大で多種多様な事情のある連邦領域を中央で一元的に統治するのは、例えどれだけ中央集権体制を敷いたとしても不可能である事を認識していた。しかも辺境になるとわりかし世紀末モヒカン状態である。あかん……。

 

 大帝陛下は比較的安定している帝国中央領域や航路上の重要拠点を皇帝直轄領(全領域の半分程度だ)とした。そして残りの辺境や低開発領域を門閥貴族に下賜して統治させた。

 

 彼らに求められたのは、圧倒的権威と覇気で混乱する人民を慰撫し、その軍事力で跋扈する宇宙海賊や軍閥、犯罪組織を討伐し、中央に頼らずに各領地が自給自足体制を確立する事(経済格差による貿易摩擦や搾取の回避のため)だ。

 

 古代チャイナの郡国制に近いと思ったら良いだろう。尤も、こちらは妥協では無くて大帝陛下が信頼する貴族達に命令して実施された事であるが。少なくとも初期の門閥貴族は好きで世紀末世界の領主になった訳ではない。中には下手に実力があるせいで無理矢理貴族にされ、辺境でモヒカン討伐しながら領主の仕事をさせられた者もいる。可哀そうに、元警察官僚たる初代ブラウンシュヴァイク家当主は生粋のテオリアっ子だったのに、リアルマッドマックスな辺境の平定と開発に胃に穴開けながら30年も従事した。何度怒りのデスロードに巻き込まれた事か。

 

 銀河帝国が中央集権的な体制でありながら、門閥貴族の領地に広範な自治権と軍事力がある理由だ。辺境の維持には金がかかるし、連邦時代に中央から派遣された官僚は中央に戻るまで不正蓄財に邁進していた。中央経済に関わらせたら住民が流れるし、大企業群の搾取が始まる。それらを阻止する事が貴族領の始まりだ。

 

 同時に、公的な官職を持たない限り門閥貴族は収入を領地からの税収で手に入れるしかない。家臣団や私兵軍を養うのもそこからである。となると中央から派遣される行政官と違い、自身で領地を開発・発展させねばならない。帝政に移行後、北斗神拳伝承者が放浪してそうな無法地帯状態の連邦辺境は門閥貴族とその家臣団の手で曲がりなりにも安定化した(尚、時代が進むと地元領主が搾取するようになるのは言ってはいけない)。

 

 当然だが、経済的には貿易産業や金融産業の市場が大幅に縮小した。流石に完全にそれらを絶っている訳では無いが、それでも連邦時代に比べれば激減した。本来ならば市場縮小の影響で経済的に大打撃の筈であるが、浮いた辺境維持コストや治安コスト、公共事業(ルドルフ像とか新無憂宮とかドイツ風都市とか)の拡大で相殺して見せた。元より治安悪化により辺境での商売は儲かりにくくなっていた。帝国中央と辺境を経済的に切り離してもダメージは最小限で済んだ。

 

 帝国の数字上の国力が同盟と均衡している理由でもある。帝国は250億の人口(と数字に出ていない奴隷階級等も数多く存在する)がありながら、人口130億の同盟との国力比率は5:4とされる。同盟の一部市民はこの数字を元に帝国を過小評価する者も多い。

 

 だが勘違いして欲しくないが、それは帝国領の多くで貿易や金融業が衰退(正確には投機行為の規制や預金準備率の引き上げ等政府の統制が厳しいため)したためだ。同盟経済は資本主義体制の信用創造により額面上の国力は高い。だが多くは有価証券や電子マネー等の概念的な物だ。重厚長大・物質的・実質的な面のみに目を向ければ、同盟より帝国が遥かに強大だ。軍事面に限っても、帝国は正規艦隊18個艦隊に辺境警備部隊・貴族私兵等50万隻を超える艦艇を有するが財政的には同盟よりもかなり余裕がある。なんせダゴン・ティアマト(そして原作には言及が無いがそれ以外でも数回の会戦)で宇宙艦隊が壊滅しても、すぐ軍事的優勢を回復させる程の工業力・生産力を有しているのだ。まるで不死鳥だ。アムリッツァで一撃死した同盟とはえらい違いである。

 

 帝国の宮廷は腐敗しているが、逆に言えばそれだけ腐敗していても同盟に対して互角以上の立場で1世紀半も戦争が出来る。開祖ルドルフの国家体制の整備がいかに優れていたか分かろうものだ。大帝は腐敗しても尚それだけの底力のある国家を生み出して見せた。

 

 少し脇道に逸れ過ぎた。まぁ、そんな訳で貴族領は外部からの干渉や投資が少なく、自給自足が基本のため改革する意味はあまり無い(改革しても人も金も領地を越えて動かせんので急成長出来ん)。基礎的な政治・経済感覚(と言っても十分な才覚がいるが)とそこそこ優秀な家臣団がいれば大体慣例に従い安定的に、少なくとも余程のへまをしなければ飢える事無く庶民は暮らしていける。

 

 そうなると門閥貴族に求められるのは、ずば抜けた才覚よりも貴族としての威風である。平民共は目を離すとすぐに近視眼的に物事を進める。先々の事なぞ考えず、刹那的にやれ改革だ、やれ権利だと騒ぎ立てる。貴族は長期的視野に立ちながら社会を安定させ、平民を御するために時に圧政者として鞭を打ち、時に慈悲深く飴を与えて身勝手で欲望のままに動くような事をしないように指導してやれねばならない。

 

 貴族に必要なのは権威だ。平民共が勝手に何かしようと思わせないように畏れられ、敬われ、崇められなければならない。

 

 そのために、平民共とは違うという証がいる。伝統に沿った、偉大なる大帝陛下の遺訓に沿った誇りと気品のある生活をし、平民共とは違う言葉遣いをし、平民共とは違う優美な所作を学ぶ必要があるのだ。愚民共に「自分達とは違う世界の存在」と、「自分達よりも上位の存在である」である事を知らしめ、見せつける。逆らう事に恐怖を抱かせる事が必要なのだ。愚民の良識や支持なぞ信用しない。奴らは幾ら群がろうとも馬鹿である事、風見鶏の如くコロコロと考えを変える事は、連邦末期の救いがたき歴史が証明しているのだ。

 

 なので内政チートはあまり意味無いし、あからさまに旧連邦時代末期の煽動政治家共のように人気取りをしたり、誇り高き貴族らしからぬ行動をする事は、大帝陛下から課せられた「人類の指導者」という重く名誉ある義務の放棄にほかならない。そんな恥知らずと関わりたい奴はいない。そしてその影響は本人だけでなくその家族や家臣にも向く訳だ。帝国は血縁の社会だ。おい、家族や家臣の嫁取りや輿入れを邪魔する気か?

 

 そう考えると、マリーンドルフ伯爵家とか割と深刻に娘の性格に困っていたんじゃなかろうか?当主も地味に苦労していたと思う。逆にそのおかげで他所の家との関わりが薄く、ローエングラム侯につく足枷が無かったのかも知れん。宗家のカストロプ公爵家も反乱鎮圧の後はグダグダしていて求心力は無かっただろう。伯爵家としては他の家に比べ行動の自由度は高かった筈だ。

 

「そんな訳で、ガチ目で外面ばかり気にしないといけないの!分かる!?食事一つ、読み物一つすら気にしないといけないのよ!何で貴族なのに共和主義者並みに監視されてんの!?」

 

 チュンに対して長々と帝国事情を交えながら愚痴る。あれ、ここは居酒屋かな?

 

「ははは、居酒屋の店長も悪く無いけど私としては退役後はベーカリーでも開きたいねぇ」

「前から思うけど何でそんなにパンに執着するのかね?」

 

 本人が言うには故郷ではパンが殆ど無かったからという事だが……。基本アジア系の米食ばかりでパン食に憧れていたらしい。明治時代かな?

 

「はぁ……流石にこれ以上は課金出来んなぁ」

 

引き際は弁えないとなるまい。後ろ髪を引かれながらも更なる課金の沼の誘惑を振り払う。

 

「その点先生はヤバいな。あれが無課金とかマジかよ」

 

 ネットで攻略動画を上げたり、専門攻略サイトを運営するの同盟宇宙軍退役大将と噂の「メイプルヒルなAL」氏は、課金無しで毎回イベント最速クリアしている化物だ。レアキャラな730年マフィアを全員揃えレベルカンスト、勲章付きだ。

 

『おら、議長諸君!今期の秋イベはティアマトだぞ!総員艦艇と地上軍の貯蓄は十分か!?課金は惰弱だぞ!愛があるなら無課金で乗り越えて見せろ!マジアッシュビーたんprpr!』

 

 同盟最大の無料動画サイト「アライアンスチューブ」に「メイプルヒルなAL」氏の昨日投下した動画が流れる。地球統一政府最後の首相を主人公にしたフェザーン映画の吹き出しだけが差し替えられている。

 

『ハイセンセイ!』『無課金でこの貯蓄とか嘘だろww』『ネ申降臨w』『悪いな、俺トパロウルちゃんが好みなんだ』『←塩教徒だ、殺せ!』

 

 視聴者の投稿したメッセージが流れる。皆ノリ良いなぁ。あ、アッシュビー元帥(赤毛高飛車お嬢様)よりもバルトバッフェル中将(金髪蠱惑系御姉様)の方が好みです。

 

「そう言えば君の御先祖様も実装されているね」

「まさか高祖父様も栗毛泣き虫系幼女にされるなんて思って無かっただろうな……」

 

 苦笑いして私は答える。現実の第23代第6艦隊司令長官は強面カイゼル髭の爺さんだぞ……。

 

「実装直前に亡命政府から指し止めされて話題になったな。細かい所まで検証されたそうだ」

 

 帝国系将官実装の際は毎回トラブルが起きる。時として脅迫すらある程だ。気にせずガンガン実装していくフェザーン企業の商魂魂は見上げたものだ。なんだかんだ言って最後は許可を受けるのは凄い。どんな手段使っているんだ?

 

「さて、そろそろ食い終わるぞチュン。ティアマト46の会場もうすぐ始まるし」

 

流石に変装していかんと行けないだろうが。

 

「え、やだ。りーぜちゃんのところいく」

「おう、何で貴様ここにいる」

 

 極自然に、当然のように席に座り要求を口にするフロイライングリーンヒルに私は淡々と突っ込みを入れた。

 

 

 

 

 

「あのねー、きょうはパパといっしょにきたのー」

 

おう、そうか。御母上は体悪いからな。

 

「それでね、パパが大人のひととなにかむずかしい仕事のはなししていたの」

 

 さいですか。まぁ御父上も将官だからね。色々仕事の話もあるだろうよ。

 

「パパが少しまっていなさいってお金くれたの」

 

 ポケットの小銭を見せる。うん、そこら辺の屋台で好きなもの食べてよいって意味だね。

 

「ベビーカステラもいいし、わたがしも好きなんだけどね。なにをたべようかすっごくまよったの」

 

 うん、限られた金でどう祭を楽しむか悩むのも一種の醍醐味だよね?

 

「するとね。スターフリーくんがね。風船くばってたの」

 

 うん、同盟軍公式マスコットキャラクタースターフリーくんは可愛いよね?

 

「うん、スターフリーくんに風船もらってね、そのあとついていってあそんでもらったの」

 

 スターフリー君(の中の人)大変だったろうね。お前さんにじゃれつかれて。

 

「でね。パパに待つよういわれたことおもいだしてね。もどろうとしたの」

 

 うん、そうだね。お父さんの言う事はちゃんと聞かないとね?

 

「それでね。ここ、どこ?」

「…………迷子か?」

 

私は張り付けた笑顔で尋ねる。

 

「ちがうもん。パパがどこかいっただけだもん」

「いや、移動したのお前さんだから」

「……パ、パパが迷子だからさがしてあげているだけだよ」

「おーい、目が泳いでるぞ~」

 

少し涙目なのは指摘しない。

 

「わ、わたしが迷子なわけないもん………よりによってし、しゅくじょのわたしが迷子なんて……」

「あ、パパだ!」

「ほんとっ!」

「嘘」

「おにいちゃんしね!」

 

 私の悪ふざけに勢いよく反応したフロイラインはすぐに顔を赤くして手元のパンを投げつける。おい、止めろ。それ私の買った奴じゃ。

 

「う~、パパどこぅ…おこらないからはやくきてよぅ……」

 

 ぐてっ、とテーブルに項垂れる幼女。いや、お前が怒られる立場だからな?

 

 電話で呼び出そうにも番号知らないしなぁ。ロボス少将にかけて間接的に連絡する。暫くすれば流石にやってくることだろう。

 

「まぁ、気長に待つ事だな。何事も焦らずにゆっくり行こうや?」

 

トレーを押してフロイラインの方にやる。

 

「……たべていい?」

「食いたそうにじろじろ見ているからだろうが」

 

明らかにお腹減っているのが分かる。

 

「……いただきます」

 

 少しの間プライドとの間で葛藤したが、最終的に食欲の前に敗れ去る。一旦決めれば行動は早い。言うが早いか両手ではふはふとパンを食べ始めるグリーンヒル嬢である。子供らしくがつがつと食べていく。多分こいつが軍人になるの決めた時も、こんな風に思い立ったら行動だったに違いない。正確にはこれからのこと、であるが……。

 

「んっ……!」

「おいおい、喉詰まらせるな。私に管理責任負わす気か」

 

 勢い良く食べたせいで咳込んだ幼女にアイスティーをやる。言っておくが、まだ手を出していないので中学生のように間接キスなんて騒ぎ立てるな(というかグリーンヒル父に筋肉バスターかけられたくない)。

 

「けほけほ……しぬかとおもった」

「良い食べっぷりだねぇ。これも食べるかい?」

 

 チュンが新たに購入したポテトサンドと玉子サンドを乗せたトレーを差し出す。

 

「いいの?」

「いいさいいさ。美味しそうに食べているところを見るとこちらも嬉しいしねぇ」

 

 チュンが言うには弟や妹を彷彿させるらしい。七人兄弟の長男のため下の弟妹が我先に飯を食べる姿をよく見ておりそれを思い出すのだそうだ。

 

「ありがとう!」

 

 にっこり目を輝かせてそう答えるグリーンヒル嬢。おい、私の時と態度違うぞ?

 

「餌付けかよ」

「なにかしつれいなこといった?」

「いんや」

 

 結婚式の時を戦々恐々して待っているが良い。貴様の食べっぷりは懇切丁寧に魔術師に伝えてやる。

 

「うわ、すっごい性格わるそうな顔してる。ぜったいこの人いやしい事かんがえてるよ!」

「誰が卑しい奴じゃ」

「こころがけがれているような人あいてに、おかしなんかじゃついていかないよ?」

「もうついていってるもんな!?」

 

 子供相手に低次元の争いを続ける私である。あれかな?私の精神年齢は十歳児並みなのかな?

 

 そんな馬鹿な事を考えているとようやく携帯端末が鳴り響く。出てみると相手は目の前の餓鬼のお父様である。

 

私は准将に懇切丁寧に事態を伝え、小娘に変わる。

 

 尚、彼女は父親を許すどころか軽くではあるが携帯端末越しに叱られた。ザマァwww。

 

「だっ……だってぇ……」

『だってじゃありません。お父さんとの約束はちゃんと守るように教えた筈だよ』

「ううう……ごめんなさい」

 

ショボくれながら項垂れるように謝る幼女。

 

『お父さんに迷惑かけるのは構わないが、フレデリカに何かあったらお母さんが悲しむんだからね?』

「……うん」

『分かってくれたら良いんだよ。フレデリカは賢い娘だからね。面倒見てくれているヴォルター君達にも謝りなさい』

「うー、わ…わかった」

 

 少し葛藤しつつも父親の言葉に従い謝罪の言葉を口にする。チュンは兎も角私への謝罪が不本意そうなんだけど?私そんなに子供に舐められる性格なの?

 

『ウォルター君、娘が御迷惑おかけしたね。チュン君も、本当に申し訳ない』

 

 グリーンヒル嬢から返された携帯端末越しに改めて准将は謝罪する。

 

「いえ、構いません。グリーンヒル閣下も事情がおありでしょう。お気になさらないで下さい」

 

 原作でも苦労してそうな顔だったしなぁ。余り責めるわけにもいかない。頭の前線が後退するかも知れん。

 

『それで……少し言いにくいのだが』

 

口ごもる准将。うん?何か嫌な予感がする。

 

『統合作戦本部長のホプキンス大将に絡まれてね。少し……いや、かなり時間を食いそうなんだ。悪いが少し預かってくれないかい?……ほら昨日みたいにコンサート見せればずっと見てるから』

「いや、私これからティアマト46のコンサート見に行きたいんですが……」

『そこをどうか頼むよ。借りは必ず返すから。「グリーンヒル君、どうしたのかね?」いえ、何でもございません。すまない。もうこれ以上電話できない。本当に済まない』

 

 見捨てるように鎮痛な声で、だが早口で言い切ると一方的に通話をプッツンされた。おいコラ待て逃げんな。

 

「………」

 

携帯端末を収納して糞餓鬼を見やる。

 

「……コンサートいこっか?」

 

さっきまで半泣きだったお嬢ちゃんは勝ち誇ったかのようなどや顔で言い放った。

 

「……後でパンの代金請求してやる」

 

引き攣った表情で私は返答した。

 

畜生、折角の自由時間が………。

 

 

 




大帝陛下「余の選びし門閥貴族達ならば必ずや世紀末覇者としてモヒカンが暴れる領地に君臨し、経済も治安も(自分の財布で)立て直すに違いない!」
初代門閥貴族一同「はは、ワロス」







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。