帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?   作:古ぼけた蝶番
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Youtubeで丁度良い動画があった。
亡命軍地上軍イメージは幼女戦記よりLOS!LOS!LOS!ナチス映像との合わせ技なイメージです。
「皇帝陛下と民主主義のために服従と忠誠と命を捧げろ!」
……民主主義とはなんだろう(哲学)


第五話 まぁ、住めば我が家だし多少はね?

 私がロボス中佐に会ったのはかなり早い。具体的には生後2カ月くらいだ。

 

 産後、母が体力を回復したところでこの新美泉宮のグスタフ爺さんのもとに参拝に出掛けた時に会った。

 

 外見こそ若いため、一目では分からなかったが次の瞬間に父が名を呼んで驚愕した。しかも次の瞬間にはこの親類に凄くエクストリームな高い高いをされて気絶しかけた。一瞬私が転生者だと気付いて殺りに来たのかと思ったがどうやら素であれらしい。

 

 しかも、この人結構私を可愛いがって来る(彼基準だが)。正直色んな意味で地雷な方なので御遠慮したいのだがそうもいかないのがこの狭い亡命貴族社会なのである。

 

 ラザール叔父さんはグスタフ爺さんの従姉妹の子供だった。アレクセイの親族であり、しかもその母が私の母の叔母にも当たる。一般家庭はいざ知らず、貴族社会においてはそれくらいの血縁関係は身内扱いだ。式典やパーティーもある。会わないのは不可能に近い。

 

 当然ながら、原作の彼は読者から同盟滅亡の原因トップ3にはいる事間違いないと言われる人物だ。帝国領侵攻作戦の総司令官であり同盟軍将兵2000万人を壊滅させたのだから当然だ。正直あれで同盟は死亡したといっていい。残りは完全に消化試合だ。

 

 同盟滅亡の大戦犯……逆にいえばこの人をどうにかすれば私の生存率は飛躍的に上がる筈だ。

 

だが……。

 

「む、ヴォル坊、そこは違うぞ?恒星間航行において気を付けるべきは周囲の天体質量だ。宇宙嵐よりも重力異常に気を配りなさい。超光速航行で計算外の重力にかかると虚数の海行きだぞ?公式の求め方は分かるな?」

「……アイアイサー」

 

 この太っちょ叔父さん、普通に私より優秀なんだよなぁ。

 

 そもそもコネの影響があったとしても同盟軍のしかも元帥に無能が成れる訳がないんですよね。原作ですらかつては優秀と書かれていたのだ。この人同盟軍士官学校次席だぜ?化け物かな?

 

 正直、私が今何を言おうとも仮定の、しかも穴だらけの話になるので語るのは得策ではあるまい。今は只、大人しく課題の答えを教えて……助言を受けるにまかせるのが正解だ。

 

 ちなみに今回の課題にこの人はベストマッチングだ。同盟軍での部署が宇宙艦隊司令本部の艦隊運用部だ。端的にいえば艦隊の航行や陣形変更に関わる部署である。私の課題を正に実戦で対処している身だ。

 

「ほう、それにしても幼年学校ではもうこんな課題をやっているのか?士官学校の2年相当の課題だぞ?」

 

 私の課題を見ながら感心したように語るラザール叔父さん。あの糞教官くたばれ!

 

「ヴォル坊は確か幼年学校の成績は……」

「はい、若様の御成績は上位でとても優秀でございます!さすがは誉れ高き帝国始まって以来の名門ティルピッツ家の跡取りでございます」

 

 はい、ベアト。要らんこと言わない。私ギリギリ上位だからね?毎回期末試験死ぬ気で勉強してこれだからね?お前さんいなかったら私リタイアしているからな?

こいつ、私よりも成績良いのに何で此処まで私を持ち上げられるのか謎だ。今だって本気で私の事讃えているのだぜ?目を輝かせて語っているんだぜ?門閥貴族と従士の関係これが普通なんだぜ?怖いわぁ。

 

「ほう、それは結構なことだ。どうだね?ヴォル坊は幼年学校卒業後はどうする?私としてはハイネセンの士官学校にいくのも良いと思うが」

 

 帝国亡命政府軍幼年学校の先の進路は大きく分けて3つある。

 

 1つはこのまま亡命軍に入隊する道だ。この場合准尉として入隊する。組織こそ違えどラインハルトとキルヒアイスパターンだ。最も、せっかく幼年学校卒業したのにこのまま入隊するのは余程の物好きくらいだ。

 

 2つ目の選択肢、これが一番多いが、亡命軍士官学校入校である。幼年学校卒業者には無条件で推薦枠がある。ここに入校、卒業して少尉として亡命軍に入隊するのが殆んどである。

 

 最後の選択肢が同盟軍士官学校への挑戦だ。曲がりなりにも亡命政府は同盟加盟国でありこの星の住民は同盟市民、同盟軍士官学校に受験する資格は当然ある。むしろ幼年学校上位卒業者は積極的に受験する事が求められる。

 

 当然だ。亡命政府の同盟軍への影響力を拡大させるために軍上層部に人を送る必要があるのだから。

 

 ちなみにだが、同じように同盟軍への影響力拡大や宣伝のために亡命者中心の部隊の設立もある。有名な例では同盟宇宙軍陸戦隊独立第501連隊、別名『薔薇騎士連隊』や宇宙艦隊指令本部直属同盟宇宙軍第4機動戦闘団別名『聖ゲオルギウス竜騎兵艦隊』等がそうだ。まぁ、例の『薔薇騎士連隊』は不祥事続きで最近は亡命政府との交流が疎遠らしいが。

 

 話を戻そう。そういうわけで同盟領全域から年間3000名から5000名の秀才が集う同盟軍士官学校には少なからず帝国亡命政府軍士官学校から受験・合格者が入校している。多い年には100名に迫ろうかと言う数の入校者がいる。ラザール叔父さんの言はその事を言っているのだろう。 

 

最も私としてはごめん被りたい。

 

「いやいや、無理ですよ。今の所でも辛いのにハイネセンの士官学校なんて」

 

 ぶっちゃけな話勉強こそ辛いがそれ以外の面では私は相当恵まれている。

 

 何せ私は門閥貴族だ。それだけでかなり教官の目は甘い。流石に限度はあるが逆にいえば大した事でなければ然程厳しく罰は受けない。

 

 それに他の生徒から悪意を向けられない。幼年学校生徒の内貴族出身が3分の2、3分の1が平民だ。しかも貴族の大半が帝国騎士や従士階級、門閥貴族としても伯爵以上なんてほぼあり得ない。というか私の年で身分が上の奴がアレクセイだけだ。つまり階級的には私は神に等しい。他人に気兼ねする必要なく気楽だ。これが同盟軍士官学校ならこうは行くまい。

 

 そもそも、同盟軍にいったら部署が怖い。いきなり回廊の哨戒艦隊の駆逐艦な?すらあり得る。少なくとも人事に関しては亡命軍のほうが融通が利く。……大丈夫だよな?父上、いきなり私を最前線に送らないよな?

 

「そんなところ行きたがるのなんて次席のホラント位だよ」

 

 私は肩を竦めて答える。あの向上心と反骨精神に溢れた平民なら喜んで行くだろう。貴族相手ですら平気で噛みつくような奴だ。むしろここより快適だと考えそうだ。成績的にも問題あるまい。

 

「そうか。残念だのう……。私としてはせめてヴォル坊だけでも、と思ったのだがなあ。アレク坊は行けんだろう?」

「残念ながら……」

 

 心から残念そうにアレクセイは答える。こいつは血筋が血筋だ。単純に警備上の不安があるし、ゴールデンバウムの末裔が同盟軍士官学校に通うのは虐めの原因になりかねない。同盟軍の反ルドルフ教育は民間教育以上だ。

 

 ちなみに我らが星で大帝陛下がどういう扱いを受けているかというと……前世の例で近いのは中国の毛沢東評価だろう。

 

「神聖なる大帝陛下は銀河連邦の不正・腐敗・怠惰・堕落から人類社会をお救いになり秩序を再建為された偉大な御方であらせらりるが人の肉体の身、その上それを取り巻く利己的な肝臣の陰謀により少なからず過ちを犯してしまわれたのだ!」

 

 ようは、皇帝として人類社会を安定させた偉大な功績があるが愚かな取り巻きと身体の衰えにより幾つかの失政もあった。劣悪遺伝子排除法や社会秩序維持局は正にそれで例えば前者はより漸進的にすべきであり、後者は実行者共が陛下の威光を傘に着て暴走した結果である、帝政初期の共和派議員は大帝を正しき道に引き戻そうとしたが君側の肝により阻まれ、議会を解散させられたのだ、と言うわけだ。

 

 そして、今の帝国の皇帝と貴族は大帝から課せられた人類社会と臣民の守護者たる義務を放棄した逆賊に過ぎず、我らこそが大帝陛下の教えに基づき議会を復活させ立憲君主政により人類の平和と秩序を取り戻すのだ!と言うことらしい。

 

 当然ながら同盟の一般的な価値観から見た場合限り無く黒に近い灰色だ。尚、これは建前なのでこの星の純朴な一般星民に大帝陛下について語ってもらうと限り無く灰色に近い黒になる。これはもう駄目かも分からんね。

 

「ふむぅ……私としてお前さん達の雄姿を間近で見てみたいのだがなぁ」

 

しょんぼりとした表情を作るラザール叔父さん。

 

「私もです。この生まれ育った星と民を守るのも大切な勤めではあります。しかしやはり願わくば大軍を率いて祖国に帰還し、臣民を解放したいと常々考えております」

 

 静かに、拳を握りしめ幼馴染が答える。あ、私は良いです。臣民の解放はローエングラム侯にでも任せますわ。

 

「私も……いつか若様の御傍で先祖の地を……!」

 

 おーい、ベアト、凄いシリアスな表情で呟かないでくれる?お前さんまでフラグ建てに勤しむのかい?

 

 この凄い私にフラグを言わせようという空気(抑止力かな?)を止めたのはこのサロンに参加しているちびっ子達であった。

 

「ラザールじじさま、もういーい?」

 

 声の方向を見ると5、6歳位だろう。ポニーテールに纏めた茶髪、ユトレヒト子爵家の姪っ子が海色の可愛いらしい瞳できょとんとラザール叔父さんを見上げていた。その両手は万歳の体勢だ。超エキサイティングな高い高いを御所望らしかった。

 

「ぬ、今はヴォル坊の課題を見て……」

 

 ラザール叔父さんが困った声を出す。そしてその言葉に潤っと表情を歪ませる幼女。あかん。その子泣き虫なんだぞ。

 

「いいよ、叔父さん。正直少し休みたいし」

 

フラグからも逃げたいので。

 

「ぬ、そうか?すまんな。ほれ、いくぞい」

 

 そういうやいなや笑顔で粗っぽく貴族令嬢を持ち上げるラザール叔父さん。一方子供の方は待ってましたとばかりにきゃっきゃとはしゃぐ。

 

「あ、リーゼぬけがけずるい」

 

 事態に気付いて最初に駆け寄るのは気の強いヴァイマール伯爵の長女だ。釣られてほかの子もより集まる。

 

「ははは、人気だね。叔父さんは」

「……ああ、そうだなぁ」

 

 なにも知らずに純粋に笑う親戚の子供と、同じ位に純粋に相手をする叔父を見て思う。

 

「……先祖からの悲願なんて、どうでもいいんだけどな」

 

 正直こんな立場に生まれたのは仕方ない。帝国の農奴より遥かに恵まれている。問題はこれから先だ。これから先原作の通りなら二人により銀河は嵐の時代がやってくる。   

 

 これまでの戦争が子供の遊びのように見える戦争が始まる。私にそれを止める情熱も実力も無いのは仕方無い。転生しただけの一般人に期待しないでくれよ。

 

 だが、せめて……自分の身内と故郷だけは守りたいとは思う。こんなネジのイカれた奴ばかりの故郷でも私を軍隊に入れる以外では大切にしてくれていた。それを捨てて逃げるほどには誇りは捨てていない。

 

「誇り?……私も毒されてきたかな」

 

 そんなことを思い苦笑する。正直怖いが……やれること位はやってみてもいいかな、などと私は皿の上の菓子を口に放り込むと、はしゃぐ親戚達を見つめつつ密かに思った。

 

 

 

 

 

 

 








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