エヴァ(偽)転生《完結》   作:照喜名 是空

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偽物、本物と会う。

「……似ているな」

「……似てますね」

 

エヴァンジェリンと私は双子のようにそっくりだった。

だけど違う。纏う雰囲気が、目つきが、生き様が。

はじめは同じ顔であっても、たどる道が違えば変ってもくる。

 

ちなみにエヴァは大人モードだった。多分幻影でそう見せているのだろう。

私は普通に大人姿で、仙女の服装で来た。

 

なんというか、エヴァの方が凜々しいというか、私の方が淫奔そうというか……

 

「だが違う。生き方がああも違えば違ってくるか」

「私のことをご存じでしたか」

「嫌でも耳に入る。私にそっくりな別人のことはな。曰く安土桃山時代に活躍した「歩き巫女・江羽」あるいは「仙女・混沌娘々」

またある時は南軍の英雄「エヴァ・ブラウン」なあ、エヴァ・ブラウン。お前は一体何者なんだ?」

 

いくつか推測は立てていた。答え合わせの時だ。

 

「あなたの予備、でしょうかね。あなたは誰かに真祖化されたのでしょう?

なら、その誰かは別の者にも試験的に真祖化を行っていてもおかしくはありません。

たまたま同じエヴァという名前の娘にもね」

「なるほど、私もそれは考えた。だがそれにしても似すぎている……そうは思わないか?」

 

顔立ちがおなじだものね……元がほぼ同じってのは言い訳できないレベルですわ。

 

「初めて対面して私もそう思いました。ところであなたはジェイルオルタナティブ理論をご存じですか?」

「いや、寡聞にして知らないな」

「運命論的な話なのですが……物事は全て代換物が存在し、故に運命は過程はどうあれ、同じ結果に行き着く、という理論だそうです」

「それで予備、か……どっちがどっちの予備なのだかな……」

 

ため息をついてワイン飲む姿が似合いますなー。おっこれうまい。

 

「……私は夢使いでもあります。夢とは時間の区別なく流れるもの。そこから未来を見通すこともあります」

「私の未来、か……お前はそれを見たと?」

「はい。あなたは数多の英雄の良き師となるでしょう。それが我々の運命、我々の役割。腹立たしいでしょうが、そう思います」

 

さりげなーく原作知識をぶっこんでいきます。かわいそうだけど、そういうことなのよね。

 

「ああ、腹立たしい事この上ないな。だったらそんな役目はお前がするがいい。

私は……疲れたよ。ブラウン。碌な人生じゃなかった。代換だというなら、お前のような呑気な人生がよかった」

 

たしかにエヴァさんに比べたら好き放題やってるし、とくに困ってないもんね……

 

「恵まれている自覚はありますよ。ただ私は運が良かった、たまたま強くなれた。ですが強くなった後は生き様次第だと思いますがね」

「私が間違っていたと?お前が正しかったとでも?」

「いいえ、私はただ小ずるかっただけですよ。あなたより図々しく、あなたより恥知らずだった。それだけのことです」

 

エヴァンジェリンさんも、もうちょい楽な生き方すればよかったろうにねえ。

それだけの力があればどこかに取り入って英雄にもなれたろうし。

こっそりと暮らして幸せをつかむこともできたろうに。

人殺ししたらってあの時代じゃしょうがないよ。

自分を悪党だと決めつけて可能性を狭めるのが悪い。

 

「そうだな、そうだろうよ。でなければロスのビッグママになどなれまい。もういい、興味が失せた」

 

けだるげな顔もいいねえ。自分と同じ顔だけど。

 

「でしょうね。出発点は同じでも辿った道が違う。たまたまここで交わっただけ……

呪いに飽いたらご連絡ください。同族のよしみで解きますよ」

「解けるのか?」

「解けるでしょう。ですが、今解けばあなたはまた闇の世界に引きずり込まれるでしょう。光に生きてみよ、と言われたのでしょう?」

「……そうだな。3年後、か……」

「では、いずれ」

「ああ、そのうちな」

 

うーん、エヴァ様ストイックで真面目でキツすぎるよ!

もうちょっといい加減に生きようよ!

そも正当防衛で殺っただけなのに気に病んで自分を悪党だとか幸せになれないとか思い詰める赤松先生メンタルが怖いよ!

そのくせこんな邪悪な結界はそのままだしなあ。わけわからんわ。

 

まあせいぜいその邪悪さを利用させてもらうけどね。

 

 

とはいえ、3年の間にやることやらなきゃなあー。あんないい人が登校地獄に囚われるのは間違ってるわ。

せめて記憶リセットだけはなんとかせんとね。

というわけで来ました学園長室。

 

「なんじゃね、ブラウン殿。突然わしにアポが取りたいなどと」

「エヴァンジェリンの封印について、です。不実はいけませんよ」

「さて、なんのことかのう……」

 

すっとぼける顔が黒いわー。お芝居はほっといて話先にすすめよ。

 

「では、約束通り3年後に彼女の封印を解くのですか?解かないでしょ。

戦力は必要ですし、あなたの性格からして彼女を哀れんで光に留め置こうとする。

その結果が永劫繰り返される地獄だとしても」

「なぜ、そう思うのかね?」

「ああ、証拠が必要ですか?それとも、実力であなたをねじ伏せましょうか?」

 

威圧してみます。森の獣に始まり、ロスでも活躍してくれたスキルです。

慣れたもんですよ。

 

「いやいや、そういきり立たないでくれるかのう。そも、3年後にナギが来ればいい話じゃろ?」

「来ませんね。彼は都合良くうっとうしい女を留め置くここを利用するでしょう。そしてあなたは彼女を利用する」

「哀れみかね?同族への」

 

そうだけど?悪いかい?

 

「悪いですか。普段から思っているのですがね、あなたは半端すぎる。

半端も不実も褒められたことではないです。さよの件も、長谷川さんの件も。

とりあえず問題が表面化しないから放置している。怠惰が過ぎますよ」

 

正論で殴るのたーのしー。オラッこれが正論棒だ!

 

「耳が痛いのう……じゃが、メガロから人々を護りつつ組織を維持するには仕方がない。それもわかるじゃろう?」

「わかりますが、その結果命だけ長らえて不遇の日々を送る……そんなのは私だったらごめんですね。

命よりも自由を。そう言って私たちはかつて銃をとったのですから」

 

西部開拓時代は良かったなあ、万事シンプルで。

 

「わかったわかった。つまり?」

「20億。それで彼女を買い取ります。それと私自身もつけましょう」

 

世の中金じゃよ。最終的には金がモノを言うのじゃよ。ふははは。

色仕掛けもそれなりに楽しいねえ。ほーら手の平で転がれ。

 

「なるほど、魅力的な提案じゃな」

「それ以上欲をかくというなら、ロスのやり方でどうにかしましょうか?」

「わかったわかった、では商談は成立じゃ。三年後に引き渡しになるがの」

「いいでしょう。では、これは手付金のようなものです」

 

ハイ、回れ回れ万仙陣。いい夢見ろよ学園長。

別にやってあげてもよかったけど面倒だった。というか好かん。

こういう黒い支配者も嫌いではないけど、被害者を何人も間近で見るとね……

 

20億は払ってやるからまあそれで多めに見てくれるとうれしい。

 

 

はいそういうわけで三年後。ナギはまあ来ないよね。創造主?想物主?に取り憑かれてるんだっけ?

卒業式前日に来ました。

 

「ブラウンか……なぜ来た」

「あなたの呪いを解くためですよ。かの英雄なら卒業式にぎりぎり間に合って呪いを解いてくれる……

あり得そうな、甘い夢ですね」

「奴は来るさ。そういう男だ」

「なるほど」

 

ハイ、夢を見たいという条件にハマったので万仙陣回せます。回れ回れ万仙陣。

てきとうに今日の夜にこっそり来てくれた、ついでに抱いてくれたみたいな都合のいい夢を見せておきます。

その間にエヴァさんだけサルベージして呪いの精霊だけ完全に万仙陣にぶちこみます。

うわあ触手モンスターになった……こういう所は本物の万仙陣そのままの仕様なのね……

 

とりあえずこんなムカつく邪悪な呪いはエヴァさんから取って踏みつけて殺しました。

呪い解除です。ミッションコンプリート。

 

エヴァさんはベッドに寝かせて置いて……よしOK!

 

ああ、学園長ですか?万仙陣で徐々に認識をゆがめて傀儡にしました。

都合のいい夢って素晴らしいですね。私自身そんなものでしょうし。

昼の現こそ幻、夜の夢こそ現、でしたっけ?いい言葉じゃないですか。

 

別に完全に取り込まなくても甘い夢そのものが中毒症状になりますからね。

いまや学園長は私の夢なしではいられない阿片窟の中毒者なのです。

20億も回収しました。まあ魔道ってそんなものですよ。

 

さてと……じゃあやりますかね、代役。

エヴァさん、あなたは光に生きればいいんじゃないですか?辞めましょうよ誇り高い悪党なんて。

潔癖さは夢以上に毒ですよ。

 

 

翌日の卒業式にさりげなく混ざっておきます。

いやー、エヴァさん晴れ晴れとした笑顔ですね。そのまま進学してください。

呪いの精霊は潰したので学友さんたちの記憶もそのまま残るでしょう。

 

「ブラウンか。どうだ、奴は来たぞ?」

「そのようですね。おめでとうございます。これで晴れて自由の身ですね」

「名目上はな。大学生までは魔法生徒扱いでこれからも夜間警備は続けることになるだろう」

「それなんですがね。私がその仕事買い取りました。つまりあなたの代役として私が出ます」

「何だと?」

 

うーん、怖い顔はやめてくださいよ。

 

「そこで申し訳ないのですが、あなたの技を教えて頂きたいのです。完全な自由との引き替えの取引ですよ。

ああ、もう払うもの払っちゃったので、申し訳ないんですが拒否権はないです」

「強引な奴め……まあいい、だがそれでは釣り合わん。貴様の技術もこちらによこせ。

つまりこれは技術の交換だ。それならば対等といえるだろう。見方を変えれば私の仕事を貴様が勝手に奪ったとも言えるのだからな」

「ああ、別にかまいませんよ。隠すほどのものではないですし」

 

万仙陣以外はね。元より教えるつもりだったしね……

はい、というわけでまた来ましたエヴァハウス。というかダイオラマ魔法球。

 

「ご託を並べるよりは、こちらの方がいいだろう。というわけでかかって来い」

「ああ、その方が私も解りやすいのでありがたいですね」

 

いやー大変でしたよエヴァさん戦。紫電掌やら斬岩拳から波動拳全部ぶつけていなされましたし。

エクスキューショナーソードとチャンバラやるのは楽しかったですけどね。

ちょっとでも距離開けるとえげつない段幕飛んでくるんで大変でした。

真空波動拳で相殺しましたけど、けっこうくらいましたし。

 

「真祖でありながら膨大な気による接近戦がお前のスタイルか。基礎はできている。実戦も積んでいるだろう。

だが、精度がいまいちだな。貴様の方の言い方だと功夫が足りん、だったか」

「そっちはやはり真祖らしい魔法の段幕に合気ですか……糸も使われるんでしたっけ?

ちょうど足りてない所なので助かります」

「魔法はそっちは素人同然らしいな。基礎からみっちりやるぞ」

「ありがとうございます」

 

1年くらいでしたかね。全部納めるのまで。魔法は段幕も闇の魔法も体得できました。

理論の方は専門的なのはあんまり理解できませんでしたけどね。基礎は大丈夫です。

それよりも糸ですよ糸!あこがれますよねワイヤー使い。

これがまた気による切断と抜群に相性よくてですね。糸でビル斬り飛ばすウォルターさんスタイルができるようになりました。

 

厳しかったけど得るものは大きかったです。

 

「さて、ではこっちが教える番ですね」

「うむ、貴様のそれは幻術ではないな?少女の頃に真祖化したのならどうやってそこまで成長した」

「ざっくりいえば旦那と房中術したからですかね……」

「くわしく教えろ」

 

まあエヴァが多分生きてるであろうナギと再会するには相当大変でしょうけどね。

 

「ですがいきなりそれは段階が早いので気の扱いから覚えましょうか。

慣れれば樹木やそのへんのマナから吸収できるようになるので、吸血の必要がなくなりますよ。霞を食って生きるって奴です」

 

いやー、覚えがめっちゃはええ。同じスペックのボディで経験値はあっちの方があるだろうからね。

すぐに霞を食うやり方は覚えてくれました。っていうかこれ近づいただけで吸血する感じになってませんかね。

本気で吸われるとごっそり気が減るんですけど。なんていうかローゼンカバリエ・シュバルツバルト?あんな感じです。

 

「すばらしいなこれは。やり過ぎると吸い殺してしまいそうだが」

「そうしたら私も吸い返すので循環してるだけになりますよ。ある意味房中術ですね」

「同性相手にセクハラはやめろ」

「あっ、ヘテロなんですね。私はバイです」

「やめろ」

「わかりました」

 

紫電掌や波動拳まで向こうの方が上手く使うんですから泣けてきますね。

まあそこは本物とパチものの違いですよね。仕方ないです。

 

「これからどうするんですか?」

「……光に、生きてみるさ。お前のようにな」

「それは喜ばしいことですね」

 

あれ?真っ先にナギを追いかけるんじゃないの?どうなんですか混沌さん。

えっ、他に女がいる事とかしばらく会えそうにないこととか上手く伝えてくれたんですか。

で、今生の別れという形に?すばらしい!ナイス邪神!

 

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