オゾンはそれからも毎日ごみを浄化し、祈り、そして空を見上げた。
空は時々曇ったり、飴や雪を降ったりすることはあれども、基本的に青い。
そして夢の島にはいつまでも果てることなくごみが運ばれてくる。
オゾンはその毎日感動も何も覚えることもなく、淡々と暮らしていた。
あるとき、オゾンが空を見上げると二人の天使が空を舞っているのが見えた。
オゾンはその様子に驚き、再び凝視する。
オゾンは思わず目を見開く。
彼女たちは帰っていく途中だろうか。
もうあの時に派遣された天使の帰還が始まったのだろうか。
そう考えると胸が騒ぐ。
もしかしたら捨てられてしまったのだろうか。
もしかしたらもう帰れないのだろうか。
そしてもしかしたら……
オゾンはまるで馬車馬のようにせいてくる自身の心をなだめるかのように十字架の前に立ち、そして祈った。
オゾンは祈りおわると、目を空に向ける。
そこにいたのはカモメだった。
「カモメ……」
オゾンは焦りの正体を知り、恥ずかしくなって顔を伏せた。
そしてオゾンは地面に座り、ぼんやりと前を向いた。
自分は何のために遣わされてきたのだろうか。
ここを浄化するためならばきっと誰でもできる。
自分が強いから?
でもそれだけの理由で遣わされたのだろうか。
答えは自分でもわかっている。
しかしなぜこんな、永遠と浄化をしていかなければならない所に派遣されたのだろうか。 オゾンはその目的を知りたいと思った。
こんなに汚染された場所を、永遠と浄化していかなければならない。
はじめは永遠について考えたこともなかった。
しかしいざ永遠に続くであろうものを目の当たりにすると、天使でも全く動けなくなるのだ、と初めて知った。
オゾンはそれ以降、ずっとカモメを見るたびに天使を見た。
飛ぶカモメの姿は確かに天使にも似ているところがある。
しかしそのカモメと天使とは違うのだ。
オゾンはそのことを理解しようとしていたが、心の中では納得がいっていないようだった。 天使を見るたびにオゾンは祈りをささげる。
オゾンの中ではすでにもう、神様に祈ることでしか自身のことを支えてくれるものや、ひとはなかった。
――私は何をした?
オゾンは自問自答をする。
もし罪を犯したというのならば甘んじて罪を受け入れるつもりだった。
しかしオゾンが振り返られる限りでは、まったく自分は純粋で無実だと思った。
――私の何が不満なのか。
強いことだろうか。
しかしそんなことで天界を追い出すほど野蛮な神様ではないはずだ。
でも……
オゾンをとらえたまるでヘドロのような感情は、オゾンを自由にすること無く、オゾンの心を数年かけて少しずつむしばんでいった。
オゾンの祈りは回を重ねるたびに強くなっていく。
祈る手の力も強く、言葉の力も強くなっていった。
空には続々と天使が天界を目指して飛んでいく。
その姿を見るたびにオゾンの気持ちははやり、そして祈りの声も大きくなっていく。
そしていつしか、オゾンは仕事をしなくなっていった。
実際には仕事をしていないわけではないのだが、それでも明らかに以前よりも仕事量落ちていた。
すでに祈りは彼女の支えになっており、まるで麻薬中毒のように祈りをささげていなければ不安が心を駆け巡った。
空の天使はもはや数えきれないほどになっている。
こんなに人間界に天使は派遣されていたのかとオゾンは驚く。
もしかしたらお迎えがあるのかもしれない――
オゾンは期待を胸に空を見上げる。
すると空から一筋の光が見えてきた。
それはオゾンのいる大地を明るく、そして暖かく照らしだす。
オゾンはゆっくりと立ち上がり、そして光のさす方向を見た。
――呼んでいる
オゾンはその嬉しさから笑顔を隠すことは出来なかった。
そしてオゾンは一歩一歩光を追いかけて歩いてゆき、そして空へと向かう。
久しぶりにこんなに高いところを飛んでいるような気がする。
オゾンはその興奮を胸に、ただまっすぐ、前を見据えた。
しかししばらくして、急に空に暗闇が差し始めた。
オゾンはその様子をただ信じられない光景として見つめる。
さらに天候は悪くなっていき、雷が鳴り始めた。
「オゾン、お前はとても強い。だから天界には危険なのだ」
オゾンはその言葉を聞き、目を見開いた。
――捨てられる
それは死刑宣告にも近い言葉。
オゾンはただ、その言葉をかみしめるのに必死だった。
「天使様」
どこかから声が聞こえる。 ――自分は天使なのだ オゾンは固く、心にしがみつく。
「天使様」
この声はトラッシュのものだ。 トラッシュが天使と言っているのだ。 自分は天使なのだ。
「天使様!」
三度目、オゾンを呼ぶ強い声に、オゾンは我に返った。
――夢か
しかし夢にしてはあまりにもつらいものだ。
オゾンは悪身を忘れるために息を吸い、そして吐いた。
オゾンはトラッシュの方を向く。
確かにトラッシュだった。
ただ、トラッシュは以前よりもずっと大きく、大人になっていた。