相棒 episode Drive   作:カサノリ

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お待たせいたしました!

ドライブからあのキャラクターが参戦する第七話、開始いたします。

今回は四パートで終了予定。

ですが、彼の登場シーンだけで結構な文字数になってしまったので、今回はプロローグみたいなもの。事件は次話から始まります。

それでは、第七話どうかお楽しみいただけると幸いです。


第七話「心霊写真が語るものは何か I」

 その日は、月の隠れた夜だった。杉下右京は平穏な一日を終えて帰路に就く途中。色鮮やかな街の灯りに照らされながら、疲れた人々の間をいつもの早足で進んでいた。しかし、

 

「……おや?」

 

 その途中、右京が足を止めて後ろを振り向く。そのまま数秒、雑踏の中から探し物をする様に見つめる。

 

 気のせいかもしれないが、だれかに見られているような気がした。ただ、視線の先には人混み。その雑多な中では、何者がいたとしても顔までは分からないだろう。

 

 普通の人間ならば、気のせいで済ませ、そのまま帰り路へと戻るはずの場面である。

 

「……おかしいですねえ」

 

 右京もそうしてつぶやいた後、前へと向き直して。そのまま帰ると思いきや。

 

「……!!」

 

 数歩歩いた後、全速力で逆走した。後ろを歩く通行人が何人か、仰天してひっくり返りそうになるが、本人は「失礼」の一言で済ませてしまう。そして、右京が走った先は、横に伸びる小さな小道。そこへ慌てた人影が逃げ込んだのを、彼の目がとらえた。

 

 だが、右京がそこまで戻ると、その先には誰もいない。ただ、湿った暗い道が伸びるだけ。

 

 繰り返し言うが、常人であれば、「気のせいだったか」と考えて、そのまま帰る場面である。だが、杉下右京という人間は、細かいところを気にするくせに、人の目というものを気にしない変人。

 

 ゴミ箱の中身をひっくり返し、猫も入れないような隙間にまで顔を覗き込ませ始めて。通行人の訝し気な顔などは何のその。彼はそんなことを気にせず、気のすむまで不審者を探し回ったのだ。

 

 十数分の探索の末、結局、杉下右京はその何者かを見つけることは無かった。だが、彼の奇行を見て冷や汗をかいた男がいた。黒い頭巾をかぶって、見るからに怪しい風貌の男。彼は遠く離れたところに隠れながら右京を見つめ……。

 

 そして、その口から漏れたのは、

 

「なんだ、あの人。やべえ……」

 

 至極真っ当な感想だった。

 

 

 

 相棒 episode Drive

 

 第七話「心霊写真が語るものは何か I」

 

 

 

「誰かにつけられてる、ですか?」

 

 泊進ノ介は朝、特命係にやってくるなり右京が述べた言葉へと素っ頓狂な顔で感想を述べた。右京はここ数日、誰かの視線を感じるのだという。ただ、物騒な言葉とは裏腹に、彼は顔色も変えず、いつもの調子で紅茶を淹れているのだが。

 

 進ノ介の返答は右京の考えを、「いやいや、そんなことは無いだろう」と言外に否定するものだった。すると、右京は進ノ介に少し不満げな視線を向けて、

 

「……そんなにおかしいことを言いましたかねえ、僕は」

 

 進ノ介は肩をすくめて弁明する。

 

「いやいや、おかしく、はないですよ」

 

 考えるのは人に認められた自由である。そして進ノ介は人の自由を尊重する。

 

「そうですか、僕を尾行する人などいるわけない、と。そのようなことを考えているように思えたのですが。僕の気のせいでしたか」

 

 進ノ介はその声に、思わず口に手を当てた。本当に人間の心でも読んでいるのだろうか。だが、右京は少し視線を向けただけで、気にした風ではなかった。進ノ介も気を取り直して、右京に主張する。

 

「けど、実際問題として、杉下さんを尾行する人なんていないでしょう? ここは特命係ですし」

 

 右京も、不本意ながら進ノ介も、逮捕権・捜査権がない窓際部署の刑事だ。犯罪者にとって脅威にもならない部署。そんな刑事が何の理由で追い回されなくてはいけないのか。

 

「いえいえ、意外と僕を尾行する人もいるものですよ。暴力団に、汚職警官に、公安部などということもありましたねえ」

 

「ははは、ご冗談を」

 

 進ノ介は苦笑いを浮かべた。何のラインナップだ、それは。日本の裏社会の面々が挙って右京に注目していることになってしまう。

 

 進ノ介も杉下右京の奇天烈さと、事件における不思議な優秀さは既に理解している。事件を共に捜査することで、強制的にだが、慣れさせられた。

 

 今では右京が奇行を行っても、『なんだこの人は』ではなく、『またか』、と心の余裕を保てるようには。

 

 だが、この時点の進ノ介の杉下右京への認識は甘かったと言わざるを得ない。彼が国家権力だろうとテロ組織だろうと、そして底なし沼だろうと素手で躊躇いなく突っ込む、爆弾のような男だとは考えていなかった。後々、それを嫌と言うほど思い知らされることになるのだが、この時点では、まだ。

 

 先のことはともかくとして、右京は取り逃がした尾行者、あるいはストーカーの正体が気になって仕方がない様子である。こんなことまで言い出す。

 

「冗談ではないのですがねぇ。まあ、良いでしょう。ただ、少々長く続いていますし、今日は思い切って犯人を特定してみようと思います。確保した折には君にも連絡をしますので、待っていてください」

 

 その発言を聞いて、進ノ介は少しよからぬことを考えてしまう。いつもいつも、右京には振り回されてばかり。少しくらいは、進ノ介にも彼をやり込める材料は欲しかった。

 

 似合わないのに格好つけたがるのは、進ノ介の悪い癖である。こんなことを言ってしまう。

 

「本当に犯人なんているんですかね……。じゃあ、そんな人が本当にいたら、一度、花の里で奢りますよ」

 

「我々も公務員なのですから、賭け事の類は止めておいた方が良いと思いますが……。君が勝手にやるというのなら止めはしません。……意外に君は子どもっぽいところがありますねえ」

 

 右京は言葉こそ非難してはいるが、どこか楽しそうに進ノ介の提案を受け入れた。あるいは、彼の調子のよい様子に誰かの言動が思い起こされたのか。

 

 この時点で、進ノ介は賭けに負けることはないだろうと考えていた。まさか、本当に犯人はいない、と。そして、その賭けが見事に間違いだったと気づかされたのは、その日の晩だった。

 

 

 

 結局、事件も起こらずに勤務が終わり、車で自宅へと戻った丁度その時。進ノ介の携帯にメールが届いた。差出人は誰あろう杉下右京であり、文面は。

 

『犯人確保。花の里で待ちます。約束、どうかお忘れなく。……君、弟さんがいたのですね』

 

 その画面を見たときの進ノ介の表情は、どうにも文面に起こしにくい、珍妙なものだったと述べておく。

 

 次いで、彼の顔から冷汗がふきだした。飲み物を含んでいたら、漫画のように噴き出していただろう。『犯人』『弟』と言う単語だけで、進ノ介の考え得る限り最悪の出来事が起こったのだと想像がついたからだ。

 

 彼にとって、弟という言葉が当てはまり、こんなはた迷惑な騒動を引き起こす人間は、一人しかいない。

 

 進ノ介が家を飛び出し、花の里へと辿り着いたのは十数分後。これまでにないほどに猛スピードで向かった進ノ介は、勢いよくドアを開く。

 

 そこにいたのは、まさしく進ノ介が予想した通りの人物で。しかも、呑気に刺身を美味そうにつまんでいるのだ。右京はその人物の隣に座って、なぜか上機嫌にお猪口を口に運んでいる。

 

 そんな光景を見た瞬間、進ノ介の堪忍袋の緒が切れた。

 

「剛ぉおおお!!」

 

「うぉ!? びっくりした!!」

 

 進ノ介は若者へ向かって掴みかかると、首根っこを掴んで揺すり始める。

 

「おま! 剛! お前なー!!?」

 

「ちょ! ストップ! 落ち着けって進兄さん!!? 醤油こぼれるから!! ほら、服に付いちゃうからさ!?」

 

「これが落ち着いていられるか!?」

 

 進ノ介が揺らすのは、髪を染め、少し立たせた活発な青年だった。トレードマークの白いパーカーもいつも通り。そして、何事につけても落ち着きが足りなく、トラブルを起こすのも変わらない。

 

 失った仲間を取り戻す旅に出たはずの戦友であり、弟分でもある詩島剛がそこにいた。

 

 しかも、杉下右京のストーカーとして。

 

「すみませんでした! うちの剛が本当に!!」

 

 剛を無理やり立たせて、進ノ介は頭を無理やり下げさせる。自分も深く下げることを忘れない。今朝は右京にストーカーがいるわけないと一笑に付していたのにも関わらず、犯人がいて。しかも、その正体が身内等ということがあり得るのか。進ノ介の動揺も推して知るべしだろう。

 

 すると、右京は少し苦笑いを浮かべて。

 

「まあまあ、剛君も深く反省しているようですし、そのくらいで。……ああ、約束だけはお忘れなく。剛君、今日は泊君の奢りだそうですよ」

 

「いやー、悪いね! 進兄さん!!」

 

「……剛、あとで霧子に伝えるから、覚えとけよ」

 

 調子よく幸子へと注文を始めた二人へ、進ノ介は濁った眼を向けるのだった。剛への制裁は、彼の実姉よりもたらされるに違いない。

 

 そして進ノ介もあきらめたように大きくため息を吐き、ノンアルコールビールを頼むのだった。今日は飲まないとやってられない。ところで、なぜ右京と剛がここまで打ち解けているのか。進ノ介が得た情報が正しければ、剛こそが右京をストーキングしていた犯人。つまり、右京が被害者なのだが……。

 

 進ノ介が素直にそれを尋ねてみると、

 

「それがさあ、今日も警部さんの後を追いかけてたんだけど、気が付いたら袋小路に追い詰められちゃって」

 

「すると、剛君がいきなり土下座を。特に僕は何をしようともしていなかったのですが……」

 

 右京としては冷静に警察官として対応する予定だったそうだ。追い回されていたとして、直接危害を加えられたわけではない。目的を聞き出し、厳重に注意しようと思っていた。

 

 ただ、剛が行ったのは見事に地面へ頭をつけた土下座。そうとなってはさしもの右京も許すことにしたらしい。むしろ、剛について興味がひかれたのだと。

 

「だって警部さん見てたら、何されるか分からないじゃない! 戦々恐々だよ……。で、その後、この店に連れてきてくれてさ」

 

 剛は当時のことを思い出したのか、ぶるりと体を震わせた。

 

 ともかくとして、二人して花の里を訪れ、慌てた進ノ介が駆けつけてくるまでのしばらくの間。その間に右京と剛は親交を深めたようだ。さらに、

 

「私も、また色紙いただいちゃいました! ふふ、霧子さんの弟さんも仮面ライダーだったんですね。それに、泊さんのことを兄さんだなんて、可愛い義弟さんじゃないですか」

 

 幸子がはしゃぎながら言う。少しミーハーの気がある美人女将は剛のことを気にいったようだった。

 

 店の奥にある神棚には、進ノ介の色紙の隣に『追跡、撲滅、いずれもマッハ! 仮面ライダーマッハ!!』と調子よく書かれた色紙が鎮座していた。真実を述べておくと、警察官である進ノ介はともかく、剛が仮面ライダーマッハとして戦ったことは公表されていない。

 

 世間における、マッハは未だに正体不明の民間協力者である。

 

「……ばらしたのか」

 

「話の流れで、つい」

 

 ごめんなさい、と頭を下げる剛を軽く叩く。しかし、軽薄な態度に見えることがあるが、剛はこれでも口は堅い。そんな彼が正体を明かしたというのなら、この人たちが信用できると判断したのだろう。一応、色紙には剛の名前は書かれていなかった。

 

「で、どうして杉下さんを追跡したんだ。まさか、撲滅するつもりじゃないだろうし……」

 

 進ノ介としては気になるのはそこだった。なぜ、剛は警察官を、しかもよりによって杉下右京を追跡しようとしたのか。すると、剛は進ノ介を指さし、

 

「そりゃ、進兄さんが左遷されたなんて聞いたからだよ。で、姉ちゃんが変人だって言ってる警部さんを追っかけたら、なんか面白いこと分かると思ってさ。進兄さんが出世するときにも役に立つかもしれないし」

 

 そんなことをずけずけと言う。

 

「君の知り合いが仲間思いなのは分かりますが、なぜ、皆さんが僕を標的にするのか。わかりませんねえ……」

 

「はは、警部さん、面白い冗談だね! 姉ちゃんや進兄さんも、そういうユーモアは見習ったらいいのに」

 

 右京がぼやき、剛が笑う。だが、剛は冗談だと解釈したようだが、右京は至極真面目に分かっていないのだろう。

 

 霧子に始まり、りんな、追田警部、と皆が皆、最初は右京を警戒したり、睨み付けたり、歴史改変を図ったり、怒鳴ったり。それが疑問だと右京は言う。

 

 杉下右京は、他では察しが良すぎるくらい頭が回るのに、分からないものなのだろうか。人間の心に疎いのか、単にとぼけているだけなのか。

 

 ともかくとして、剛は意外にも右京を気にいった様子だった。歳の差はかなりあるが、元々剛は年齢が上の相手になつく傾向がある。そして、右京の型破りで暴走特急のような人柄は、剛と親和性が高いものだったのかもしれない。

 

 進ノ介は剛のブレーキを自認しているが、右京の場合は外付けのジェットエンジンみたいなものだ。二人とも思い立ったら一直線である。

 

 そして、二人には不思議な共通点も存在した。

 

「剛君はカメラマンとして活躍されているそうですね。実は、僕も写真に興味があるのですが、とても趣のある良い写真でした」

 

 そう言って、右京が小さな本を進ノ介へ渡す。それは遠い異国の景色を映したフォトブックだが、撮影者の名前がない。出版に関与した人だけが写っている。

 

「へー、良い写真ですね」

 

 そんな呑気な感想を述べた進ノ介に、

 

「それ、剛君の写真だそうです」

 

「これ、剛のなんですか!? なんで撮影者の名前で、出てないんだ!?」

 

 進ノ介が驚きながら尋ねると、剛は少し恥ずかしそうに頬を掻きながら、

 

「名前売りたいわけじゃないし、世界を回る資金と、その写真見て、人が喜べばいいんじゃないかって思ってさ。ほら、今は写真の仕事よりもやらなくちゃいけないことあるから」

 

 と言うのだ。剛の言い分を聞きながら、進ノ介はページをめくっていく。進ノ介も剛の写真は何度となく見せてもらったことがあるが、やはり出版用の写真は構図や光の入れ方に工夫が凝らされていて、絵画のようにも見える。写真とは、撮り方によってここまで変わるのか、と進ノ介は感心した。

 

「出版には、アメリカのご友人が協力をしてくれたそうですね?」

 

「親切な奴が手を貸してくれて。あと、知り合いのフォトグラファーも何人か、ね。……そういえば、NYで世話になった人に杉下さんって人がいるんだ。警部さんと同じ苗字で、杉下花さん」

 

「へえ……。杉下も珍しい苗字じゃないですけど、アメリカの杉下さんに剛がお世話になるなんて。面白い偶然ですね!」

 

 進ノ介は本気でただの偶然だと考えていた。彼が言うように、杉下というのも、珍しい苗字ではない。しかし、奇妙な縁という物は、確かに存在するようで……。右京から漏れ出たのは驚くべき真実であった。

 

 右京はなんでもないことのように、ぽつりと、

 

「ああ、彼女と会ったんですね。……僕の姪です」

 

 そうつぶやいた。

 

「「姪!?」」

 

 右京の言葉に二人は仰天する。何と世界は狭く近いのか。よりにもよって右京の血縁だとは思わない。そして、その事実を聞いた剛は興奮したように笑みを深くすると、右京に少し身を乗り出して。

 

「ふっしぎなこともあるもんだなー。ねね、じゃあ、警部さんも頭いいんじゃないの?」

 

「はい?」

 

「いや、花センセのとこに勉強に行ったときにさ、事件が起こったんだよ。殺人事件。で、センセが解決しちゃって。そりゃ見事なもんだったよ。警察前にして大立ち回り」

 

 話を詳しく聞くと、下手すれば剛も花も誤認逮捕されるところだったとか。その事態を前にして、杉下花は事件を勝手に捜査し、見事解決に導いたのだという。

 

 卵が先か鶏が先か。杉下の系譜は変人かつ天才のようだ。

 

「まったく彼女は……、そういう風に興味本位に事件に首を突っ込むのは止めておきなさいと、釘を刺したんですがねえ……」 

 

 ただ、姪の活躍が右京には不満なようで、少し怒ったようにお猪口を口に運びながらぼやく。

 

 ただ、その言葉に大いに文句があるのは進ノ介。

 

「……その姪っ子さん、杉下さんにそっくりですね」

 

 どの口が言うのだ、とは言わないでおくことにした。

 

「進兄さんの今ので、警部さんがどんな人か分かったよ」

 

 そして、疲れたように呟く進ノ介の横で、剛が笑いながらグラスを呷るのだった。

 

「ちょっと待て! 剛、お前、酒飲んでるのか!?」

 

「だーいじょうぶ、大丈夫。俺、もう二十歳だから。バイクも置いてきたし」

 

「……剛が酒を呑むってだけで心配になるんだよ、俺は」

 

「相変わらず、心配性だねぇ。兄さんは。あ、姉ちゃんにはナイショに」

 

 そうして幸子を交えた四人は、剛の世界の土産話やら仮面ライダー秘話を肴に、のんびりと交流を温めるのだった。

 

 だが、その長閑な話が奇妙な方向性に変わったのは、二時間ほど経ち、剛が最近撮った写真を全員で回し見ている時だった。

 

「剛君。この写真は、一体どこで?」 

 

 右京がとある写真を剛へとみせた。どこか、その顔には興奮の色が浮かんでいる。その目は爛々と輝いており、進ノ介には嫌な予感しかしなかった。また、変人が何かを嗅ぎつけたのだろう。進ノ介の背中を嫌な汗が伝い始めた。

 

 それに気づかない剛は、その写真を見ると、撮影した場所などを解説し始める。

 

「えーっと、この写真なら東京だよ。多摩のほうの御首山。最近は今頃が紅葉のピークだろ? 隠れた場所だけど、良い画が取れてさ」

 

 写真はある山の斜面を写している。その中心は見事な枝ぶりのもみじ。何より、その紅葉の色が鮮やかだった。ただ、進ノ介が見る分には、杉下右京が興味を惹かれるほど面白い、あるいは奇妙な存在は写っていないように思える。

 

「普通の写真に見えますけど……、杉下さんはどこが気になったんですか? その写真の」

 

 進ノ介が尋ねると、右京は写真の隅を示した。だが、そこは被写体の中心から外れて、目立つ場所ではない。

 

「泊君。ここ、よーく見てください。何か、半透明のものが写っているように見えませんか?」

 

「ん……?」

 

 進ノ介が目を凝らすと、確かに何か白い靄のようなものが存在する。いや、見様によってはそれは、

 

「僕には、どこか女性のように見えるのですが! 如何でしょう?」

 

 そう言って、右京は目を輝かせて尋ねてきた。

 

「えー……、剛、お前はどう思う?」

 

「そうだねぇ……。警部さんの見間違えじゃないの? 俺、写真撮った時は何も見なかったし」

 

「幸子さんは?」

 

「さぁ……。私もそんな風には思えませんけど……」

 

 二人ははっきりと否定するが、右京はなおも主張を続ける。

 

「いえ、剛君が何も見えなかったということは、この存在はカメラを通さなければ視認できなかった。そういうことになります。そして、自然に発生した靄にしては形は不自然ですし。……ここ、この部分ですが。もう一度よく見てください。ここが胴体で、ここに顔」

 

「だから、見間違えで……しょ……う……」

 

 進ノ介は額に皺を寄せながら、右京に言われるままその場所を見る。だが、そのように細かく指定されながら見ていくと、何かがある様に思えてしまい……。

 

「うわっ、なんか、顔に見えた!?」

 

 進ノ介が思わず仰け反った。右京に言われるまま見たからなのか、進ノ介にも靄のてっぺんにボンヤリと、若い女性の顔が見えたのだ。

 

「……進兄さん、気にしすぎじゃない?」

 

「いやいや、剛! 幸子さんも! ほら、ここ! これ間違いなく顔だって!!」

 

 剛も幸子も、その言葉には首をかしげる。だが、ここまではっきりと写っていたら、進ノ介にはそうとしか思えなくなってしまった。

 

 そして、右京もますます興味が深まったようで、饒舌に語り始める。

 

「ええ。これは、間違いなく心霊写真ですよ! 世の中にはいくつも偽物の写真があると言いますが、剛君がわざわざそんな細工をするとは思えません。となると、これはまさしく本物の心霊写真!!

 実は、僕は幽霊やオカルトは信じているのですよ。けれど、まだ一度も見たことがない……。とても興味深いですねえ。……泊君、それと時間があるならば剛君、明日、ぜひ付き合ってくれませんか?」

 

「杉下さん、まさか……」

 

「ええ。無念を抱えた霊がいるとしたら、警察官として何かをできるかもしれません。調べてみるべきだと思いますよ」

 

 右京は笑みを深めながら、そう告げるのだった。




ということで、ドライブでの二号ライダー(実際には三号かもしれませんが)、仮面ライダーマッハこと、詩島剛の登場です。

書いていると、写真のことだったり、性格だったりと右京さんとの親和性が高そうに思えた剛。書いていて楽しいですね。

前回に続き、幽霊がらみの話になってしまいますが、今回はオカルトが事件に絡むということはないので、ご心配なく。

それでは第二パートも近日中にお届けいたしますので、お待ちください。
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