霧子のために買ったプレゼントの指輪。不運に巻き込まれた進ノ介はそれを紛失してしまう。荷物を紛失した三田という男は、殺人事件が起きたと特命係を呼び出すも、それは偽装だと判明する。
失踪した谷口が指輪を持って逃げたと思われる中、谷口の闇金に赴いた捜査一課は、そこで倒れる男性を発見し……。
三田九郎
:サンタなど、アルバイトを過去持ちしながら生活している中年男性。前夜に谷口の部屋で飲み明かし、事件の第一発見者となった。
谷口洋平
:闇金を営む暴力団員。自宅から金品をもって失踪した。部屋は殺人事件が起きたかのように偽装され、谷口による工作だと考えられている。
世間一般でイメージされるサンタの家というと、雪が積もった深い森。レンガの家に煙突から、もくもくと煙が立っている。
しかし、そのような場所は現代においては少なくなっている。さらに、子供がいる都会とは大きく離れた場所は彼らの職業には不合理だろう。
では、果たして現代のサンタはどのような家に住んでいるのか。
「ここがサンタさんの家ですか……」
古びたアパートの一室、その部屋に入った瞬間、内装をじろじろと見回しながら、右京は興味深げにつぶやいた。イントネーションは、またも変な調子で。
狭い室内、固い畳、水道を見ればカップラーメンの汚れた器が積み重なっている。生活感が染み付いた部屋は決してサンタの家ではなく、寂しい中年男性のものであった。
右京のぼんやりした声を失望だと受け取ったのか、
「サンタでなく、三田の家です……。すみません、こんな狭い家で」
三田が恐縮しきりに呟く。そうはいっても、明らかに無礼なのは右京である。
とはいっても、右京自身は他人の家を評価するような、下世話な感覚すら持ってはいないだろう。非常識なことだが、純粋な興味が元になった言葉に違いない。
上司とは違い、少なくとも常識という物を自覚している進ノ介は苦笑いを浮かべる。
「気にしないでください。あの人、変な人なんで」
「……なんとなく、そのことは分かります」
二人がげんなりとした表情で見つめる先で、変人は壁に掛けられたサンタ装束をべたべたと触り始めていた。
相棒 episode Drive
第八話「ギフトの行方 III」
「粗茶ですが、どうぞ」
数分後、三田が丸い体を揺らしながら、すこし小綺麗な湯呑に緑茶を注いでくれた。特命係の二人は、ちゃぶ台を挟んで三田と向き合っている。その過程で、右京を半ば無理やりにサンタ衣装から引きはがすのには苦労したと書き残しておく。
進ノ介は少し疲れを感じながら、差し出された湯呑に口をつけ、驚きの表情を浮かべた。三田本人は謙遜しているが、中々に美味しい。それを素直に伝えると、三田は照れ臭そうに。
「昔から、色々なところで仕事をしていましたから。工事現場に、喫茶店の店員に、事務仕事とか。まあ、どこも長続きしない根無し草です。けれど、色々と細々とした技術は身に付きました……」
「ですが、中々においしいお茶だと思いますよ? もう一度、喫茶店などで働くのもいい選択肢かもしれません」
「そうですね……。サンタは寒い割に賃金も低いですし、潮時かもしれませんね」
右京の誉め言葉に感じるものがあったのか、三田はしみじみと呟く。
三田がサンタを辞めるなんて、実に奇妙な文言だ。
そう思うほどに彼の日常はサンタに染まっていた。事実として、進ノ介が壁に掛けられたカレンダーへと目を移すと、月曜日から日曜日まで、全部サンタの仕事が埋められている。
(月曜が午前、火曜が午後、水曜が夜勤……。その前週は月曜が午後に……)
それ以外の空いた時間にも様々なバイトが入れられているが、そちらは工事現場や、病院等への配達仕事。雑多なアルバイトばかり。毎日行っているのはサンタの仕事しかない。
「……サンタの客引きも、随分と忙しい仕事なんですね」
それを見ながら、進ノ介が呟くと、三田はまたも頭をぺこりと下げた。あいも変わらず、随分と自信がない様子である。進ノ介が三田の表情の変化へと注目する一方で、右京はどこか興味深そうに、そのカレンダーをじっと見つめていた。
ただ、そうした生活を送ることに、三田本人も思うところがあり、そして、そうしなければならない事情があるようだ。頭を上げると、彼は肩をすくめて呟きだす。
「前科者の中年男なんて、真面な働き口は少ないですから。回数増やすくらいしか、生活を成り立たせる方法はありません。やりたい仕事を選ぶ余裕なんて、ないですよ」
「……さっき、芹沢さんも言っていましたね。詐欺の前科があるって。三田さんが詐欺なんて、いったい、どんな事情があったんですか?」
進ノ介がこれまで見たところ、三田という人間は自分に自信がなく、ひどく不器用に思える。彼が詐欺という行為を行うには、何か事情があったのだと、進ノ介は思えてならなかった。
すると、三田は気まずげに頬を掻き、
「……ある事情で金が必要だったんです。で、建設会社の同僚に話したら、良い稼ぎ口があるって。それが詐欺の片棒を担ぐことでした。その後はずるずるです。
詐欺だけじゃなくて、窃盗も何度か行って。けど、体のいい使い走りでしたから、満足な金も得られず捕まりました……。金目当ての犯罪なんて、随分と割に合わないものですね」
そんなことを告白する。
それは、警察官である二人には数多の実例と共に知っていることでもあった。
「ええ、その通りです。ですが、それに気づかず犯罪を繰り返す人も……、本当に多い。貴方は一度の過ちで気づけ、二度とは犯罪を行っていない。罪を償ったのなら、ご自分を卑下しなくてもいいと思いますがねえ」
右京が真面目な調子で言うと、また、三田は頭を下げた。骨身に沁みたという言葉は彼にとって事実なのだろう。ただ、進ノ介には未だ、気になる点が。
「けど、なんでお金が必要だったんですか? このお部屋を見る限り、あまりお金のかかる趣味とかなさそうですし……」
見回す部屋には仕事に使う作業着や簡単なパソコン、クーラーボックスに、少し古びた食器くらいしかない。不躾な質問だとは理解していたが、進ノ介も右京よろしく気になってしまった。すると、三田は今度こそ顔を暗くし、大きく肩を落ち込ませる。
「……いまさら、どうしようもない理由です。結局、金は手に入らなかったのですから」
投げやりな言葉。その事件をきっかけとして、何かを失ってしまったような悲しい姿だった。
進ノ介はかける言葉を失くし、気を取り直して本題へ入ることにする。
「……変なことを聞いて、すみませんでした。三田さん、血液が付着した衣服を見せてもらってもいいですか?」
「え、ああ、そういうお話でしたね……。ちょっとお待ちください」
さすがに長々と全く違う話をしていたので、三田も二人が何の目的でやってきたのかを忘れていたようだ。そうだった、そうだったと呟きながら、駆け足で部屋の奥の押し入れへと向かっていく。そして、二人にその場で待つように伝え、中から大きなビニール袋を引きずり出してきた。
三田はそれを、畳の上に置き、二人へと広げて見せる。
「これが当日着ていた服です」
「拝見します……」
右京と進ノ介は三田に確認し、袋から服を取り出した。薬剤処理されているとは言え、血液。生ぐさい臭いが広がって、二人は手で口の前を覆う。三田などは、大急ぎで窓と換気扇を開けていた。
ビニールに包まれていたのは、薄手のシャツに、少しほつれたジーンズ。
それは三田の体形に沿って緩んでおり、彼が随分と長い間に着続けていたことが伺える。だが、それらを着ることは、もはやできないだろう。
「……べっとりついていますね、血が」
進ノ介がぼやく通り、腹のあたりに血が撒かれている。どれだけ洗濯したとしても、痕は残ってしまう。サンタのコスプレを日常的に行っているとはいえ、血まみれの真っ赤な服を着る趣味は、彼にはないだろう。
ただ、そうなると再び進ノ介には疑問が浮かぶ。
「けど、三田さんは谷口の家で寝込んでいたんですよね? これだけ派手に撒かれたら、気づいてもおかしくないですか?」
ぼたぼたと上からこれだけの液体を垂らされたのだから、いかに寝ていたとはいえ、普通は目を覚ますだろう。谷口は部屋を荒らしたのだから、騒音もひどいものだったに違いない。安眠をむさぼるには、程遠い環境だったはずだ。
進ノ介が尋ねると。三田の答えは酒を飲み、泥酔状態だったから確認できなかった。そういう当たり障りのない答えだった。
「……なるほど」
と進ノ介が頷き、視線を移動させる。その先では右京が部屋をじっと見つめていた。床に置かれたクーラーボックスや、サンタコスプレの一部である、白い大きな布袋。その視線はずずいと動いて……。
彼は立ち上がると押し入れの方へとつかつかと歩きだした。
「ちょちょちょ! 杉下さん!? なんでうちの部屋を探しているんですか!?」
三田はその行動に慌てて、右京の前に手を広げ、立ちふさがった。右京は彼に手をあげて、微笑みを浮かべつつ謝罪する。
「ああ、申し訳ありません。サンタの家ということですから、プレゼントなどはどこにあるかと、そう思いまして」
「はぁ!? いや、だから三田ですし、サンタはサンタと言っても、サンタは客引きのコスプレですから!!? 泊さん、まだ分かってなかったんですか、この人?」
三田は困惑しきりという表情で、進ノ介に尋ねてくる。確かに、今の右京の言動から、まともな人間だとは思えないだろう。進ノ介はまたも、三田をなだめ、右京の無礼を謝ることになった。
進ノ介のスマホが鳴らされたのは、ちょうどその時であった。進ノ介が差出人を見ると、それは伊丹から。
「……伊丹さんです。ちょっと、出ますね?」
「どうぞ」
右京に断って、進ノ介は耳をスマホに近づける。
伊丹の地面から震えるような声が、その耳へと響いてきた。その内容は、
『特命係の泊……。お前、まだ三田と一緒か?』
「……ええ、その通りですけど」
『今、俺たちは谷口の事務所にいる。で、そこで見つけたのがなあ……』
続く言葉を耳にして、進ノ介は大声を上げた。
「事務所で人が襲われていた!!? ええ……、聞いてみます。
それと、伊丹さん、その事務所の場所がどこにあったか、教えて貰えると助かるんですけど。分かりました。……ありがとうございます」
進ノ介は通話を切り、右京と三田へと真剣な表情を向ける。案の定、漏れ聞いた内容だけでも、右京は興味が引かれたのだろう。食いつくように何が起きたのかを尋ねてきた。
「谷口の事務所に向かったら、部屋が荒らされ、殴り倒されている男が発見されました。意識不明ですが、発見が早いのが功を奏して、命に別状はないようです。
被害者は谷口の共同経営者だった荒木という男。凶器は現場に落ちていた金属バット、そこに谷口の指紋がべっとりとついていたそうです。そして、金庫からは現金等が持ち去られた痕跡がある、とのこと」
状況から見て、失踪した谷口が第一容疑者である。
「しょ、傷害事件!? え!? 谷口さんの事務所で、人が襲われていたんですか!!?」
その言葉を聞くと、三田が仰天して、腰を抜かす。まるで予想がつかなかったと、驚愕に満ちた顔。そんな彼に、進ノ介は深くうなずき、同意を返した。
これで、正真正銘、失踪事件から刑事事件へと変化してしまった。
この情報で谷口の失踪理由にも見当がつく。事務所に残された凶器と、奪われた金品。中には債務者の書類も含まれているという。いずれも大金へと繋がるものだ。
「谷口は事務所で荒木さんを襲撃し、貴重品を強奪した。そうなると、元の仲間であった暴力団も警察に加えて動き出す。逃げ切るのは、難しいと言わざるをえないでしょう。
なので、谷口は追跡を防ぐ、ないし遅らせるために拉致・殺害されたように偽装した。……そのような経緯と考えるのが、妥当でしょうねえ」
右京が三田を横目に見ながら、そのように告げる。
「時間を稼いだ後、谷口が考えるのは十中八九高飛びですよね? 死んだと思われているなら、どこへでも動きたい放題。今なら、まだ間に合うかもしれませんが……。彼の行先がわからない」
進ノ介も同様に、視線を三田へと向けた。
谷口の逃亡から、既に半日が経つ。事前に逃亡準備を進めていたなら、空港、港、いずれの場所に既にたどり着いていてもおかしくはない。海外にでも逃げられたなら、探すのは困難になるだろう。
「時間はあまり残されてはいませんが、僕たちには手掛かりがあります。……三田さん」
「……はい?」
「谷口はずいぶんと貴方に気を許していたようです。仕事がうまく行かないなどと愚痴まで零していたりと、ええ、酒も随分と助けていたのでしょう。
その時に、何か手掛かりとなることを話してはいませんでしたか? 例えば、どこかに行きたい、などと」
「いやー、そんなことは……」
あいまいな笑みを浮かべる三田へ、一歩、右京は近づく。そして、もう一度、至近距離から三田へと尋ねた。
「どうか、よく考えてください。特定の地域でなくても構いません。彼の好みや気にかけていた場所など。何か覚えていないでしょうか?」
その妙な迫力に押されたのか、三田は再び腕をでっぷりとした腹の前で組む。そして数分ほど考える仕草をとった後、ゆっくりと目を見開きながら口を開いた。
「あの、もしかしたら、何ですけど……」
「それでもいいんです。何か、思い当たることがあるんですね?」
「はっきりとはしないんです。本当に、酒の席で、すこし呟いていただけなんですけれど……。彼はタイかどこかに、世話になった人がいるとか、いないとか……」
三田の言葉を聞き、右京と進ノ介は顔を見合わせる。ほとぼりが冷めるまでタイへと逃亡。それは十分に逃亡犯にとってあり得る選択肢だ。
その証言を受けて、直ぐに進ノ介は捜査一課へと連絡を入れた。伊丹は特命係に従って動くことに難色を示していたが、逃亡犯を逃がすわけにはいかないと考えたのだろう。動き出すと返事を返してくれている。
一方で右京は角田へも連絡を入れる。谷口は暴力団の傘下。それならば、谷口の交友関係などに詳しいのは組対五課だろう。情報を伝えると、一課の手柄を奪ってやると、角田は張り切っていた。
二人は通話を終えると、携帯をしまい、互いに頷き。
「……それでは、僕たちも動くとしましょう。一課と組対の人員で捜査を行えば、すぐに谷口の居場所は特定できるでしょうから」
「ええ、そうですね。……三田さん、ご協力ありがとうございました。それと、こちらの服、証拠品として提出いただきますが、良いですね?」
「は、はい。私なんかが仮面ライダーさんや警察の方のお役に立てたなら、光栄です」
大げさに腰を下げた三田。部屋を出るまで見送ってくれた彼へ、最後に会釈して、二人は進ノ介の車へ乗り込んで発進する。
そして、数分が経ったころを見計らい、右京は携帯をゆっくりと懐から取り出した。それを開き通話を始める。
「ああ、米沢さん。まだ、谷口の自宅にいらっしゃるでしょうか? 至急、調べていただきたいことがあるのですが……」
そうして右京は何か仕事をやり遂げたように、微笑みを浮かべるのだった
それから二時間後、成田空港近辺のビジネスホテルにて。
その一階にある喫茶店で、一人の男が座っていた。地味なシャツにパンツ姿。サングラスをかけ、帽子を目深にかぶり、神経質そうに周りを見回しながらコーヒーを飲む男。
彼は夜の便でタイへと発つ予定であった。大きな荷物を抱えて、一目散に。けれど、まだ時間は少しだけある。それまでは安心できない。そのため、今、彼はしきりにニュースを確認していた。
とある有名検索サイトを開くが、政治家の失言が大見出し。彼の行った犯行に関しては一片も書いてはいない。
このままなら、海外への旅立ちも成功できる。そうなれば、向こうのつてを使って、身分を変え、新たな事業にも手を出すことができるはず。
そのはずだった……。
だが、犯罪者が都合よく逃げ切ることなど、できはしない。
「……ちょっと失礼」
突然、彼へと野太い声が男へとかけられた。その声の主は、どかりと無遠慮に男の前へと座る。般若のような厳つい顔をしたスーツ姿だ。
裏の社会に長く浸った男にとって、目の前の男の職業を理解するのに、手帳も何もいらなかった。
「!!?」
勢いよく、男は立ち上がろうとして、その両肩ががっちりと捕まれる。右側は細いながらも、ぴくりとも動かせない女性の手。もう片方は少し力が弱いが、それでも逃がすまいと強く握られた手。
後ろを振り向くと、厳しい顔を浮かべた男女が、男を見下ろしていた。
そして、最後に。
「あぁ!!? まったく、一歩遅れかよー!!!」
等という叫び声。声の主である少し禿げた小柄な男は、厳つい数人の男を引き連れて、部屋へと走り込んでくる。けれど、彼の手柄は少しだけ届かず。
般若のような男は、勝ち誇りながら、次のような言葉を口にするのだった。
「谷口洋平だな……。人を殴り倒して逃亡なんざ、そううまくいくと思うなよ」
その伊丹刑事の底冷えする声を聞き、男は、逃亡していた谷口は悲痛な声を上げて、床へと崩れ落ちるのだった。
一方そのころ、同じホテルの上層。客室の近くにこっそりと身をひそめる二人組がいた。
杉下右京と泊進ノ介。二人だけの特命係。彼らは廊下の隅に隠れていた。見る人すべてが不審者だと思うだろう、そんな場所。
そうしてまんじりともせず待っていた二人へと、一本の着信が入った。進ノ介はバイブレーションに設定していたソレを取り出して、ゆっくりと応答する。
「はい、泊です……」
『一体、どうなってるんだ!!? 谷口は確保したが、ヤツの証言が全く事件と噛み合わねえぞ!!!』
電話の向こう側から届いたのは、伊丹の心底訳が分からないという怒鳴り声だった。
(あー、やっぱり)
と、進ノ介は内心で申し訳なさを得る。本来なら、逐一説明するべきだと思うが今は時間がない。
「すみません! あとでちゃんと説明しますから!」
『お、おい!? どういうことだコラァ!!? 待……』
進ノ介は直ぐに通話を切る。
既に、特命係の目当ての人物は到着していた。
視線の先は、とある部屋。谷口が宿泊していた部屋であり、今、その前に一人の男が立っている。彼は不器用にドアを押し引きし、やはり自動ロックのせいで開けることはできない。そのため、時間がない彼は荒っぽい手を使うことにしたのだろう。
男は背後にからっていたリュックから、工具まで取り出した。そして、それを実行すれば立派な器物損壊。警察官が見過ごすことはできない。
「泊君!」
「ええ!」
進ノ介と右京は廊下の角から飛び出すと、人影へと向かって一直線に駆け出した。当然、目標の男からも、彼らの姿は容易に視認できる。逃げる間もないほどの勢いで走り寄る、男たち。
その姿にさぞ驚かされたのだろう、男は丸っこい腰をぺたりと廊下へとおろして、呆然と二人を見上げた。口が小さく震え、次のように呟く。
「……一体、どういうことなんです?」
右京はそんな彼に微笑みを浮かべつつ、ゆっくりと話しかけた。
「それは僕たちが聞きたいところですが。まず、僕が言いたいことは、一つです。サンタが部屋へ入る方法は、煙突と決まっているではありませんか? 押し入るとは、芸がないと思いますよ? 三田さん」
右京の語った皮肉ともとれる言葉。それを聞いた三田は、悲し気に笑い声を漏らすのだった。
次回がラストパートになります。