相棒 episode Drive   作:カサノリ

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捜査編第2パート

ここまでの状況のまとめ
被害者:岡田一仁氏
町長の素行の悪い息子。自宅の二階で首を吊り死亡。損壊状況から自殺に疑問が残る。
かなりの巨体。薬物の常習犯。

岡田町長
英雄視される町長であり、被害者の父親。殺害時刻は住人総出での誕生日会を行っていた。

飯森校長
被害者とトラブルが起こっていたという小学校の校長。

大樹少年
推理小説好きな少年。祖母と二人暮らしだが、祖母が入院している。

沢村巡査
特命係の案内役となった町の巡査。


第一話「誰がこのシナリオを描いたのか IV」

 ほんの数時間前、大樹少年は目を輝かせていた。好きな小説の話をしたり、仮面ライダーに握手とサインをもらって喜んでいたり。そんな普通の少年の姿。

 

 けれど、進ノ介が彼の元へと向かった時、大樹少年はどこか所在なさげに小さい体をすくませていた。

 

「大樹君、どうしたんだ?」

 

 進ノ介が話しかけると、大樹少年は少し肩を震わせる。どうしてか、怖がっている。

 

 心配いらないよ、と示したくて、進ノ介は高い背を屈ませて、目線を合わせる。大樹君は少し、息を整えると口を少し開ける。少し声を震わせながら、

 

「あの、泊さん。人が死んだって聞いて。その、それも町長の息子だって」

 

「えっと、それは誰に聞いたんだい?」

 

「町のおばちゃん達がみんな話してたんだ。……家で首を吊っていたって」

 

 狭い町だ、広まるのが早い。こんな子ども達にまでもう伝わってしまったとは。このくらいの年の子どもは人の死や身の回りの事件に敏感だ。今は保護者も入院中だという大樹君は不安を感じても仕方ないだろう。

 

 進ノ介はぽんぽんと大樹君の頭をなでて、安心させるように笑顔を浮かべ、考えて言葉を送る。

 

「大丈夫、大樹君が危ないことなんて絶対に起こらない。それに、事件は俺達が解決してみせるから」

 

「……」

 

 大樹少年はその言葉に瞳をわずかに震わせながら進ノ介を見つめる。

 

「安心して、な?」

 

「うん……」

 

 大樹少年は小さく頷く。よし、と最後に軽く背を叩いて。

 

「それじゃあ、ここは危ないから家に戻るんだぞ」

 

「わかった。……ねえ、泊さん」

 

「うん?」

 

 少し言いよどんで。

 

「……きっと、殺人事件だと思う」

 

 小さく、けれど、確信しているように少年はつぶやいて、駆け足で去っていってしまった。

 

 子どもの戯言、そう断言しても良いかもしれない。けれど、進ノ介には彼が何かを知っているのではないか、そんな漠然とした、ありえない考えが燻りだした。

 

 

 

 

相棒 episode Drive

 

 第一話「誰がこのシナリオを描いたのか IV」

 

 

 

 右京は窓からそんな二人の様子を眺めていた。少年の姿を見かけた瞬間、飛び出していってしまった泊進ノ介と、少年とのふれあいの姿を。

 

「仮面ライダー等と立派な名前があるものですから、もっと厳つい人かと思っていたのですが。意外と純朴な青年ですな」

 

「米沢さん」

 

「どうですか? 新しい相棒は」

 

「さあ、まだ何とも。それに、相棒とは言っていませんよ? 彼もすぐに辞めるかもしれませんし」

 

「いやいや、この米沢の目には、亀山さん、神戸さんと同じく長く居付きそうに見えます」

 

「なるほど、意外と米沢さんの勘は当たりますからねえ」

 

「意外とは何ですか、意外とは!?」

 

 ただ、と右京は戻ってくる青年の姿を眺めながら、ひとりごちる。

 

「冷静な観察をしているかと思えば、直情的。……中々、変わった人ですね」

 

「杉下警部がそれを言いますか」

 

 米沢は仕返しに小さく言い返す。

 

「ああ、そういえば。米沢さん、先ほどお伝えした写真に写っていた若者たちの照合は済んだのでしょうか」

 

「……それがですね、いろいろ厄介なことになること請け合いです」

 

 と、米沢はタブレットを操作して、スキャンした写真を取り出す。

 

「こちらの彼は、最近人気急上昇中のバンドのボーカルです。こちらは、与党議員の二男。別の写真になりますが、大企業の若手役員等、写真に写っているのは中々のメンバーです」

 

「なるほど、一仁氏は都心部で働いていたときに広く人脈を作っていたようですね」

 

 右京は部屋を見渡す。あちらこちらが散らかり、分かりづらいが、大画面TVにBDプレイヤー、酒や無造作に放られたパイプ、そして、あの覚せい剤。

 

「無職というには、高価な嗜好品をお持ちのようでしたので……」

 

「彼の収入がどこから来るのか、予想ができますな。そのための隠し撮り写真。つまり、彼らは動機がある、と」

 

「ドラッグの使用に留まるのか、おそらくはもっと多くのスキャンダルが隠されているのでしょう」

 

 ただ、住民の聞き取りではそういった外から来た人間は見られなかったという。小さい町であり、出入りする人間に対する目は厳しい。昨日の右京と進ノ介の姿も、しっかりと覚えられていた。夜間に移動するとなると車が必要だが。見慣れぬ車などは特に目につくだろう。

 

「杉下警部」

 

 右京が考えをまとめていると進ノ介がようやく戻ってくる。

 

「ああ、戻りましたか。彼の様子はどうでしたか?」

 

「……事件があって、少し怖がっているようですね」

 

「なるほど、小さな少年です。仕方ないでしょう。君がついていてあげても良いんですよ?」

 

「それ、俺は厄介者、ということですか?」

 

「そうは言ってませんよ」

 

 この後は沢村巡査と共に被害者とトラブルを起こしていた飯森校長を訪れる予定となっている。簡単な情報共有をし、米沢に部屋中の記録媒体を探るように頼むと、巡査と合流した。

 

 倉の外で涼んでいた沢村巡査は疲れ果てたように腰を下ろし、昨日よりも老け込んだように見える。

 

「沢村さん、大丈夫ですか?」

 

 進ノ介が声をかけると弱々しく微笑み、よっこいせなどと言って腰を上げる。

 

「ええ、すみません。いろいろあって老骨にしみてしまっとります」

 

「お身体が悪いんでしたら、休まれた方が……」

 

「いや、私の町で起こった事件です。解決に全力を尽くさなければ」

 

「……分かりました。無茶しないでくださいね」

 

 そう言うと、しっかりとうなずく。その様子に胸をなでおろし、右京と共に町の小学校へと向かった。

 

 小学校の外見はオーソドックスの鉄筋のもの。ただ、やはり児童数は少ないのか、二階建て。巡査に案内され、来客受付を澄ませると、校長室へと向かう。

 

 黒塗りの立派な校長室の前に立つと、中から子ども達の楽し気な声が聞こえた。

 

「校長先生、失礼しますよ」

 

「ああ、沢村さん。すまんね、ちょうど児童クラブが終わった時間だったんだ。ほら、みんな今日は帰りなさい」

 

 校長席に座る飯森氏は手元にたくさんの折り紙を置き、子ども達とそれを折って楽しんでいた。進ノ介たちが入ったことを確認すると、少し白髪が混じった髪を少しかいて、申し訳ないねえ、なんて周りに集まっていた児童へ帰りを促す。

 

「さわむらさん、さようならー!」

 

「はい、さようなら。帰り道には気をつけるんだよ」

 

 等と沢村巡査は子ども達一人一人に声をかける。

 

「あんなことがあったもんで、みんな不安に思ってるようだ。どうだね、沢村さん、自殺って話を聞いたんだが」

 

「それを確認するためにも、この人たちに協力をお願いします、校長」

 

 そうだな、と校長はつぶやき、進ノ介と右京に着席を促す。来客用のソファへと座ると、校長も対面へと座った。

 

「ここで校長を務めている、飯森武と申します」

 

「警視庁特命係の杉下です」

 

「警視庁の泊です」

 

「本庁の刑事さんがいらっしゃるとは。まさか、他殺、ということでしょうか?」

 

 顔をしかめながら尋ねてくる校長へ、右京は答える。

 

「今は何とも、ただ、いくつか不審な点もありまして」

 

「なるほど。それなら、彼とトラブルを起こしていた私が疑われるのも仕方ないですね」

 

 納得したように飯森校長は頷く。

 

「他の住人達は岡田さんの手前、強くは出れないようですが、私は校長として、子ども達を守る責任があります。この先の町を支え、未来ある子ども達が被害を受けることなんて、許容できない」

 

 そのように訴える飯森氏は先ほどの子ども達へと向ける柔和な微笑みが無くなり、ともすれば苛烈とも言えるような表情。なるほど、子を預ける相手として、この頼もしさは相応しいだろう。

 

「一仁氏の行動で子ども達に被害が出た、と話を聞きましたが?」

 

 右京が質問をする。

 

「ええ、あの車、見たでしょう? あれで農道だろうとかまわず走り回るもんだから、あわや人身事故、なんて場面が日常的にあった。それに、川端大樹君の件で堪忍袋の緒が切れました」

 

「それって、あの大樹君ですか? 推理小説が好きな」

 

 意外な名前が出てきて、進ノ介は驚く。右京も少し興味深そうに身を乗り出した。

 

「お知り合いでしたか。大樹君、ご両親が少し前に亡くなりまして、おばあさんと二人で暮らしていたんです。町にも慣れてきて、笑顔も戻ってきたというのに……」

 

「何があったんですか?」

 

「あの一仁が運転する車、畑仕事に出てたおばあさんが、避けようとして側溝に落ちたんです。足と手を骨折して、今は入院を」

 

「そうだったんですか」

 

「あればかりは許せなかった。彼女、川端春名さんといいますが、この沢村さんを含めた幼馴染でしてね。何より、春名さんの入院がきっかけで大樹君もまたふさぎ込んでしまいました」

 

 そう言うと飯森校長は沢村巡査に同意を求める。

 

「ええ。ただ、事故を起こしたわけでもないので、逮捕もできず。それでも厳重に注意したのですが、真面目に聞いている様子はなかったんです」

 

「これもあの岡田の奴がつけあがらせているからだ! って、町長宅に乗り込んでしまったのですがね。結局、町長と私の仲がこじれただけで終わってしまいましたよ。

 

 この期に及んで息子を庇うとは、かつての英雄も地に落ちたもんです。顔も見たくない」

 

 なるほど。話を聞いていると、飯森氏は激しい怒りを一仁氏に向けていたことがわかる。本人も隠そうともしていない。

 

「失礼ですが、昨夜の十時頃は?」

 

「おお、アリバイというやつですね。私は家で仕事を。運動会が迫っていたので、いろいろと立て込んでしまっていまして。奴の誕生会にも行く気はありませんでしたし」

 

「それを証明する人は?」

 

「いませんな。妻も他界し、息子も若いうちに。ですが……」

 

 と飯森氏は左手を出す。手の甲に大きな傷跡が存在した。

 

「確か、あの一仁は首を吊ったんでしたな。あの大きい体を持ち上げるのは、私には難しいですし、若いころにバッサリと怪我をしたことが原因で左手には力が入らないのです」

 

 進ノ介は一応、その手を取り、力を入れてもらうが、弱弱しいものだった。利き手でないので日常生活には障りがないというが、犯行は無理だろう。

 

「なるほど。貴重なお話、ありがとうございました」

 

「刑事さん、亡くなった人を悪く言うのは好きませんし、道徳的に間違っているのも教育者として理解しています。ですが、奴が子ども達の未来を奪う前に死んだことで、私は安心しています」

 

「……」

 

 その強い言葉に右京と進ノ介は反論をしなかった。ただ、二人そろって頭を下げて、部屋を出る。

 

「沢村さんもこの町の出身だったんですね」

 

「ええ、生まれも育ちも。……校長先生のこと、悪く思わんといてください。少し激しやすい人ですが、子ども達を想う心に嘘偽りはありません。町の住人にとって本当に良い先生なんです。

 小さい町ですから、私たちも含めて、子どもと関わる人らにとって、町の子どもは自分の子供と同じなんです」

 

「それは、分かります」

 

 警察官として倫理的に反した言葉に同意はしかねる。だが、その校長先生の考え方にも感じるものはあった。

 

 再び現場へ戻ろうとするも、歩いていくと少し時間がかかる。これまでの話をまとめてみようと、進ノ介は右京へと話しかける。

 

「少し、整理してみませんか? 被害者の一仁氏は首吊りの状態で発見。ただ、遺体には不自然な損壊があって、睡眠薬の服用が明らかになっている。殺人の可能性は捨てきれません。

 殺人の場合、あの巨体を持ちあげて、ロープにかける腕力が必要ですよね」

 

 進ノ介は現場の映像といくつかの証言を組み合わせていく。少しずつパズルのピースが集まっているが、まだ歯抜けだ。

 

 その言葉に応じて右京も考えを伝えていく。

 

「ええ。ロープの準備、殺害にもかなりの時間と体力が必要でしょうね」

 

「となると、この町で一番強い動機をもち、アリバイも不完全な飯森氏に犯行は不可能。他に犯人になりえるのは誰だ」

 

「隠し撮りをネタに脅されていただろう、被害者の知人。ただ、住人に気づかれずにここまで来るのは中々難しいでしょうが。

 犯行が可能な体格を焦点とするならば、岡田町長も可能でしょう」

 

 ラグビー選手のように大きく、立派な体格をしていた。あれなら、被害者を持ちあげることも可能だろう。

 

「まさか、町長が!?」

 

 沢村巡査は心外だとでも言うように抗議の声を上げる。

 

 その声にも右京は冷静に返していく。

 

「ただの仮定の話です。ちなみに、町長の当日のアリバイは?」

 

「……公民館に集まっていた皆の話では、十時頃はずっと会場にいたと」

 

「その後は?」

 

 沢村巡査は淀みなく答える。

 

「少し手洗いなどで抜けることはあっても、終了した午前一時までは会場にいたのが確認されています」

 

 住人のほとんどと一緒にいたのだ。これほど強固なアリバイはないだろう。

 

「町長も無理か……。一つ、疑問なんですが、被害者にご近所トラブルや車による被害は出ていますが、それが殺す理由になりますかね? 飯森校長だって分別のある方でしたし。それなら、恐喝の線をあたったほうがいいような」

 

 右京はその言葉に同意を返す。二人ともに、これまでの被害者像に殺人に至るような動機が見えていない。

 

「おそらく、一課が彼の過去の裏付けを進めているでしょう。そこで何が出てくるか、ですね」

 

 

 

 その機会は案外早く得られた。運よく現場の入り口の前で一課と鉢合わせたからだ。

 

「伊丹さん、芹沢さん、それと、詩島さんでよろしいでしょうか?」

 

 右京は言葉を交わすのは初めてとなる霧子へと声をかける。

 

「……はい、元特状課の詩島霧子です」

 

 霧子は半ば睨み付けるような、警戒するような目で右京へ返す。進ノ介のことがあり、右京へ対する疑問と憤りは残っていた。

 

 そんな霧子の様子には気にも留めずに、伊丹は右京へと威嚇するように肩をゆすって語気を強める。

 

「で、特命係でふらふらしてる警部どのはどうしたんですかねえ!」

 

「ごめんさいね。先輩、いつも通り気が立ってるみたいで」

 

 茶化すように言う芹沢を伊丹の裏拳が襲った。

 

「何か、他殺を裏付ける証拠や、動機につながるものは出てきたかと」

 

「それ、知ってたところで警部どのに話す理由がありますか?」

 

 伊丹はますます顔を変にしながら嫌味を言ってくる。だが、

 

「あの、芹沢先輩。俺のサインなら後であげますから、その代わり少し情報を教えてもらっても、いいですか?」

 

「いいよ、いいよー! なんでも聞いて!」

 

 進ノ介が少し媚びるように頭を下げると、芹沢は見るからにテンションをあげた。

 

「芹沢ぁ!!」

 

「良いじゃないですか、先輩。こっちもほとんどわかってないんだし。

 えっと、被害者の岡田一仁。若いころから補導に微罪の常習犯だね。元々、岡田家が地元の名士だから、小中は町から少し離れた名門学校。

 高校から都内で一人暮らしをしているけど、この頃から素行が乱れ始めて、最後には高校を退学してる。その後は違法風俗の客引きやら、怪しい飲食店で働いては、トラブル起こして辞めてるみたいだ」

 

 資料を渡されて進ノ介は目を通す。本人の前科とはなっていないが、共に行動していたという反社会的グループでの活動も示されている。

 

「うわ、こちらへ越す直前まで、線路への石の放置や道路封鎖で動画サイトへアップしたりも。これ、微罪とはいえ愉快犯の気が強いな。しかも常習」

 

「それがどうしたわけか五年前に戻ってきたら、のんびりダラダラと。羨ましいね」

 

 と、部屋の中にあったオーディオ機器、俺も金があったら買いたい奴だった等と、愚痴をこぼす。

 

 そこへ二階から降りてきた米沢が合流する。

 

「おや、みなさんお揃いで」

 

「米沢さん、僕が頼んでいたことはどうでしたか?」

 

 右京が朗らかに尋ねると、待ってましたとばかりに米沢はビニルに入ったUSBを掲げる。

 

「警部どのの慧眼は流石ですな。部屋中に隠し扉と、ゆすりに使っていたと思われる写真や音声が。どれも、若者の若気の至りとは言えないような犯罪行為の証拠となります。

 それと、少し毛色が違うものが一点」

 

 いうと、米沢はタブレットに保存されていたそれを示す。少し長い動画だ。

 

 狭い視界の中に写っているのは、

 

「これ!?」

 

 霧子が思わず声を上げ、男性陣も皆、顔をしかめる。

 

「こんな児童の隠し撮り映像が十本ほど。どれもダウンロードされたものではなく、オリジナルです。撮影は五年ほど前に行われ、おそらく小型のビデオカメラを使用したものでしょう

 映像から、場所は近隣のいくつかの小学校と特定されました。今、該当学校へと所轄が連絡を取っているようですが、ほとんどがこういった行為や侵入を確認していませんでした」

 

「素行に加えて、性癖も異常とはなあ」

 

 伊丹が吐き捨てるようにこぼす。

 

 常識があるならば、こういう映像へと嫌悪を示すのは当然といえた。

 

「こんなの持ってるって知ったら、あの校長先生は殺意を抱くこともあるかもしれないですね……」

 

「近隣小学校とはいえ児童たちが被害にあっています。もし、これがアングラサイト等を通して拡散したら、彼らの未来に大きく影を落とすことになるでしょうね。そして、この町の子ども達に被害が起きない確証はないでしょう」

 

 右京も硬い声で告げる。表に出してはいないが、彼も憤りを感じているのは確かだった。

 

「……他には、何か見つかりましたか?」

 

「不審な点とはいえませんが、ロープの巻き付けられていた天井の梁。そこに強く擦られたような跡が確認されています。それと、足の裏の傷はやはり、死後のものでした」

 

「じゃあ、やっぱり殺人」

 

 進ノ介のつぶやきに、米沢は頷く。

 

「血中の薬物濃度もかなり高く、まともに動けたものではないそうです。おそらくですが、他殺でしょうな」

 

 進ノ介は急速に頭を働かせていく。

 

 容疑者はいくつも浮かんでいくが、どれも動機や手段の欠落、あるいはアリバイによって犯人足り得ない。一見すると、できすぎなくらいだ。

 

 あと少し、あと少しなのだが。そして、この違和感は何だ? ぐるぐると沢村巡査、大樹少年、町長、校長、近所の方々。様々な人の発言が複雑に結びついていく。

 

 と、右京が米沢に何でもないことのように尋ねる。

 

「米沢さん、先ほどの映像、もう一度見せてもらえませんか?」

 

「え、ええ。もちろんどうぞ」

 

 右京はじっくりと、映像を眺めていく。次、次、と。どの映像も記録時間は二時間ほどで一定。ロッカーの隙間などから撮られたものだろう。そして、一通り、それらを確認し終えると。

 

 なるほど、とうなずく。そして、踵を返すと、足早に移動を始めた。

 

「杉下警部!?」

 

「犯人がわかりました」

 

 杉下右京は、呆然とする全員を置いて、すたすたと歩き去っていった。




ふと見てみると、多くの方の評価とランキング入りが!

マイナーなジャンルですし、堅苦しい文章ですので評価は望むべくもなかったのですが、多くの方に楽しんでいただけているようで、ありがたい限りです。期待に応えられるように頑張ってまいります。

そんな皆様の嬉しい評価に喜んで書きあげた捜査編第2パートをお届けしました。

さて、犯人は誰なのか?


次回の解決編1も早めにお届けしたいと思います。
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