重傷を負ってから艦娘が過保護すぎる件   作:青ヤギ

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魔性の春雨 後編

 認めよう。俺は少し調子にのっていた。

 これまでの過保護艦娘たちによる試練をなんやかんやで解決してきた経験が、自信というよりも慢心と化していたことに俺は気づかなかった。

 その結果、いま俺はこんな目にあっている……

 

「うふふ……それじゃあ司令官、そろそろ入れちゃいますね?」

 

「あ、ああ、やめるんだ春雨。そんなことしちゃいけない……」

 

「でも司令官、とっても物欲しそうな顔をしていらっしゃいますよ?」

 

「そ、それは……」

 

「あはっ、司令官かわいい♡ ほら、もうこんなにトロトロになっちゃっているんですよ?」

 

 春雨は蠱惑的な笑顔を浮かべて『蕩けたソレ』を見せつける。

 俺はゴクリと喉を鳴らす。

 口では言いつつも誘惑に揺らいでいる俺の様子を見て、春雨は「クスリ」と嬉しそうに嗤う。

 

「司令官、春雨にはわかっていますよ? 本当はこれが欲しくて欲しくてたまらなかったんですよね?」

 

 春雨の言うとおりだった。もう、抗えない。こんなものを見せつけられてしまった以上……

 

「さあ、司令官。遠慮しないでください。たんと召し上がれ♡」

 

「ああっ、春雨!」

 

 俺の絶叫に合わせるように、春雨は『蕩けたソレ』をグチュグチュと掻き混ぜ、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい♪ このチョコレートパフェにさらにトロトロに溶けたチョコレートソースを入れちゃいます♪ えーい♪」

 

「ああっ! 春雨! なんてことを! 滅茶苦茶おいしそうじゃないか!」

 

 目の前で広がる夢のような光景に俺は感動を抑えることができなかった。

 

「うふふ♪ 春雨、知ってるんですよ? 司令官こういう甘いものが大好きなのに、恥ずかしくて艦娘の皆に隠していたこと」

 

「ぐっ……しょ、しょうがないじゃないか。いい歳した男が女子みたいにスイーツが好きなんて知られたら上官としての威厳がなくなってしまうじゃないか」

 

「そうですか? 春雨はとってもかわいいと思いますけど?」

 

 そういって春雨は今日何度目かの男心をくすぐる流し目を向けてほほ笑んだ。

 

「司令官? 今日一日、春雨はあなただけのメイドです。精一杯ご奉仕しますから、我慢なさらずに何でもお願いしてくださいね?」

 

 その言葉どおり、メイド服に着替えた春雨はニコリとスカートの裾を持ち上げて恭しくお辞儀をした。

 

 

 

 コーヒーに一服盛られて、一時はどうなることかと思ったが……幸い、地下に監禁とかベッドに拘束されているとかいったお約束の状況には陥っていない。

 というか春雨はただ純粋に寝不足気味の俺を気遣っただけらしい。確かに最近は不知火の夜這いの影響で満足に睡眠時間を確保できているとはいえない。そんな俺を心配したらしき春雨は無理やりでも寝かせたかったようだ。

 目が覚めると、いつのまにかメイド服に着替えていた春雨はずっと寝床の横で添い寝をして、俺をあやしてくれていた。

 

『司令官、いつもお疲れ様です。今日ぐらいはゆっくりして疲れを取ってくださいね? よしよし♪』

 

 という具合に俺を(ねぎ)いながら頭を撫でるぐらいで、貞操を危うくするような行為にはいたらなかった。

 睡眠薬を盛ったのはさすがにやりすぎとは思ったが、おかげで久しぶりに快眠らしきものができた。

 

 そしていま、春雨は俺のためにお手製のチョコレートパフェを食べさせてくれている。

 

「はい、司令官。あ~ん♡」

 

 照れくささを感じつつも、文字どおり甘い誘惑には逆らえない。差し出されたスプーンをパクリと頬張る。

 うまい。

 子どもの頃大好きだった極甘チョコレートパフェを再現したかのような味に、思わず懐かしさで涙が出そうだ。

 周りの目を気にして日頃から食べることを我慢していたスイーツ。そしてそれをメイド服の似合う美少女に食べさせてもらえる二重の幸福で、俺の心は感激で満たされる。

 

 春雨が危険、と不知火は忠告した。

 しかし、このとおり彼女は俺を気遣って健気にお世話をしてくれる。さらには口にしてこなかった願望にも敏感に気づいて、それを叶えてくれている。

 まさにそのメイド姿にふさわしい献身さでもって、俺に癒やしを与えているのだった。

 春雨に対して恐れるようなものは、何もないように思える。

 ただ……

 

「司令官、おいしいですか?」

 

「あ、ああ。こんなにうまいパフェは久しぶりに食べたぞ」

 

「そうですか。よかったぁ、ふふふ♪」

 

 春雨はそうしてひとしきり喜んだあと……

 

 

 

 

 

 

「で、それって白露姉さんの作る料理よりもおいしいってことですか?」

 

 

 

 

 

 

 瞳孔から光を消してそう尋ねた。

 至福の感覚も一瞬で消え失せる、背筋が凍りつくような眼差しだった。

 

「……お、おう、もちろんさ」

 

「本当に?」

 

「ほ、本当さ」

 

 冷や汗をかきながら俺は答える。

 

 白露はお転婆少女の印象が強いが、絶品の鍋料理を作れたりと意外と女子力が高かったりする。しかし、あの鍋の味といま食べているパフェの味を比べたところで評価するには部門違いなところがあるし、正直「甲乙つけがたし」と言いたいところだったが……いまの春雨相手にヘタなことを言うわけにはいかない。そう本能が警告を発している。

 

「そうですか、白露姉さんよりも……うふふ。嬉しいです」

 

 機嫌をよくした春雨はそのまま俺にキュッと抱きついてくる。

 子どもが甘えるようにするハグとは違う。まるで誘惑するように絡みつく抱擁だ。

 

「お、おい、春雨」

 

「司令官、遠慮なさらず春雨にもっと甘えてくれていいんですよ?」

 

「い、いや、そうじゃなくて胸が当たって……」

 

「あ、当ててるんですよ」

 

 照れくさそうに言って、春雨はぷにゅと押し返してくる可愛らしい胸元で俺の顔を包み込む。

 なんと大胆な。以前の春雨なら決してこんな真似はしなかっただろう。

 どうやら春雨は本気で俺を喜ばせるためいろいろご奉仕してくるつもりらしい。乳房の感触を堪能させるように一層強めに押しつけてくる。

 

「司令官、おっぱいお好きですよね?」

 

「ま、まあ、嫌いな男はいないかと……」

 

「春雨、あれからちょっと大きくなったんですよ?」

 

「なん、だと?」

 

 思わず食いつくように反応する。

 確かに、メイド服を押し上げる乳房は前よりも大きくなっているような気がする。

 とはいえ姉たちの発育ぶりが異常なだけで春雨も決して小さいワケではなかった。いわゆる成長中というやつだ。現にあてがわれているふたつの膨らみは、順調に育っていることを物語るように俺の顔面を柔らかく包み込んでいる。

 

「司令官、春雨の胸、好きですか?」

 

 なんとも答えにくい質問をしてくる春雨だったが、いまさら誤魔化せるようなものでもないので素直に頷く。彼女の胸の感触にときめいたのは事実だ。

 俺の答えを聞くと春雨は……

 

 

 

 

「……村雨姉さんの胸よりも、好きですか?」

 

 

 

 

 

 またもや瞳孔から光を消して鬼気迫るように聞いてきた。胸のドキドキは、別の意味でのドキドキに変わる。

 

 これである。

 先ほどから春雨はやたらと姉たちを引き合いに出して、春雨のほうが上かどうかと尋ねてくる。

 俺に対してお世話したい気持ちは紛れもない本心なのだろうが、しかしそこには『自分が一番でないとイヤ』という拘りがあるようだった。まるで長女の性格が伝染してしまったかのようである。

 

「ねえ、司令官。どうなんですか?」

 

 春雨が急かすように聞いてくる。

 だんまりは否定と同義だ。このままだと良からぬことが起こると予感した俺は咄嗟に答える。

 

「お、大きさとかは関係なく俺はおっぱいならどんなものでも……」

 

「司令官……春雨は、村雨姉さんよりも好きですかと聞いてるんです……」

 

 恥を忍んだ答えのつもりだったが、春雨はお気に召さなかったようだ。

 

「……春雨ぐらいの程良いサイズが好きです」

 

 刃物のように鋭い剣幕で聞かれたら、こう答えるしかない。

 

「よかったぁ♪ 春雨嬉しいです♪」

 

 またもや上機嫌になる春雨。なんとまあ、コロコロと態度が豹変する娘さんである。俺も激しい温度差の変化で天国と地獄を同時に味わっている。寒暖差で風邪ひいちまいそうだ。

 とほほ。いったい、なんでこんな目に……

 

「……それじゃあ、司令官にもっと喜んでもらえるように春雨、勇気を出しますね?」

 

「はい?」

 

 なにやら意を決したらしき春雨は顔を真っ赤にしながらメイド服の胸元に手をかけ始めた。

 シュルシュルとリボンを解いて、プチプチとボタンを外していき……ってちょっとちょっと!?

 

「司令官のためなら、私こういうことだって……」

 

 いまにも泣きそうな潤んだ瞳で、熱い眼差しを向ける春雨。

 やがて黒いメイド服から生白い谷間が現れ……

 

「司令官、どうか春雨を、もっと味わってくだ……」

 

「ストップ! それ以上は怪しいメイド喫茶みたいな感じになっちゃうからやめるんだ!」

 

 とんでもない過剰サービスをしようとしだす春雨を慌てて制止させる。

 こればかりは素直に受け入れるわけにはいかない!

 

「離してください司令官!」

 

 春雨はイヤイヤといいながら、俺の両手で拘束された腕を振り解こうとする。

 

「これぐらいしないと春雨は司令官の特別になれないんです!」

 

「何をワケのわからないことを言ってるんだ!」

 

「だ、だって……じゃないと、また姉さんたちに司令官を取られちゃいます!」

 

「え?」

 

 白露たちに取られる? いったい、どういうことだ?

 

「春雨はもうイヤなんです。聞き分けのいい子を演じて姉さんたちに遠慮するのは。だからワガママになるって決めたんです。司令官の特別な存在になって、ずっとお傍にいられるように……」

 

 春雨はことの経緯を語り始めた。

 どうやら春雨はこれまで、ずっと姉たちを気遣って自分の気持ちを押し殺してきたらしい。

 

「秘書艦としてお傍にいられるときは、本当に幸せでした。……でも、姉さんたちがいるときは、春雨はいつも我慢しなくちゃいけなかったんです」

 

 仲睦まじいと思っていた姉妹の間で、まさか春雨がそんな気持ちを抱えていたとは……。

 だが過去の記憶を掘り起こしてみると、確かに思い当たる節はいくつもある。

 他の白露姉妹といるとき、春雨はいつも姉たちの影に隠れていた。

 

 たとえば白露といるとき。もともと自己アピールの強い長女だ。一番上の姉ということもあって、大人しい春雨は頭が上がらず白露に遠慮するほかなかった。

 

 たとえば時雨といるとき。物静かで穏やかな時雨だが、そのぶんその空気を壊してはならないような雰囲気が生まれ、消極的な春雨は沈黙を決め込むしかなかった。

 

 たとえば村雨といるとき。姉妹の中でも特に春雨をかわいがっている姉だ。きっと多少ワガママを言っても村雨はかわいい妹の希望を聞いただろう。だがそれと同じくらい春雨は村雨を尊敬している。姉の威厳をたもつためにも、春雨は一歩引くしかなかった。

 

 たとえば夕立といるとき。とにかく自由奔放にふるまい、自分の欲求に忠実な夕立の前では、春雨はいつもストッパーにならざるを得なかった。そこに自分の気持ちを打ち明ける暇などあるはずもなかった。

 

 春雨のそういう性格は知っているはずだった。

 けれどそれによって、ここまで深い鬱憤を溜め込んでしまうことになるとは想像できなかった。

 そして、その鬱憤が爆発した原因はいうまでもない。

 

「司令官が死にかけて、二度と会えないかもしれないって思ったとき、決めたんです。もう我慢しないって。姉さんたちには負けないって。私だって、姉さんたちに負けないくらい司令官のこと大す……大切に思っているんですから!」

 

 滅多に主張をすることのなかった春雨がここまで強い主張をするだなんて……

 いや、そうでもなかったか。言葉にはしなくても、春雨は前から主張を続けていたんだ。

 

 あれはいつのことだったか。

 確か大雪の日に限って軍の会議が行われたときだ。

 帰りは遅くなるだろうから先に眠っているようにと艦娘に言い残して俺は大本営に向かった。

 会議は夜遅くまで続き、やっと解放されて鎮守府に帰る頃には、雪はますます強まっていた。

 そんな寒い中で……

 

『司令官、お帰りなさい』

 

 傘をふたつ持った春雨が笑顔で出迎えてくれた。

 

 いま思えば、あれは春雨なりの訴えだったんだな。

 もっとあなたの役に立ちたい。もっと自分を頼ってほしい。だから姉たちだけでなく自分にも構ってほしいと。

 

「司令官……お願いです。どうか春雨を、司令官の『一番特別な女の子』にしてください……」

 

 そしていま、我慢の限界を超えた春雨は、そうして切なる思いを伝えるのだった。

 

 

 

 俺は一人っ子だから、春雨のように姉妹間で抱えるコンプレックスを理解しきれるわけじゃない。

 だが、本来なら大人しい春雨をここまでらしくない行動に駆り立ててしまった責任は取るべきだろう。

 覚悟は決まった。

 

「……春雨、俺もお前のことを大切に思っている」

 

「司令官……」

 

「でもだからってお前を一番贔屓するわけにはいかない」

 

 春雨の顔がショックで彩られる。

 だが予想していた答えでもあったのか、はっきりと言われてしまったぶん錯乱する素振りは見せなかった。昏い瞳にも、徐々に理性が戻りつつあるようだった。

 

 提督である俺にとって艦娘はみな平等に大切な部下だ。誰が一番という例外はない。そのスタンスは今後も変えるわけにはいかない。

 ならば……

 

 

 

「だが春雨……兄としてならお前を全力で大切にするぞ!」

 

「……はい?」

 

「つまり春雨! 俺を独り占めしたいのなら俺の妹になってしまえばいいんだよ!」

 

 ポカンと呆然とする春雨に俺はそう提案する。

 提督として、ひとりの艦娘だけを特別扱いすることはできない。だがそれでは春雨は傷ついてしまう。

 だから考えた。

 ない知恵を絞って必死に考えた。そして思った。

 

 上官と部下とは関係のない、擬似的な兄妹になればいいんじゃね? と。

 

 学園では教師と生徒。家では仲良し兄妹……みたいな、よくあるあのシチュエーションだ。『妹枠』という、ある意味で特別扱いみたいな例外を設けることにはなるが……これが一番平和的な解決法であるように思われた。

 

「まあ有り体いってしまうとだ……一人っ子である俺は春雨みたいなかわいい妹がずっと欲しかったんだ!」

 

「え、ええ~!?」

 

 素っ頓狂な提案に困惑しているのか、かわいいという言葉に照れているのか、春雨は顔を真っ赤にして目に見えて慌て出す。

 

「さあ、春雨! 俺を兄だと思って存分にこの胸に飛び込んでこい! 兄である俺がいくらでも妹のワガママを聞いてやろうじゃないか!」

 

「そ、そんなこと急に言われましても……あうあう~!」

 

 どうした春雨! さっきまでのちょっとエッチで余裕ある魔性の女っぽい雰囲気が微塵もないじゃないか!

 はは~ん? さては攻撃ステータスに全振りした結果、防御がペッラペラに薄いというアレだな?

 ならば好都合。

 こっからは、ずっと俺のターンだ!

 

「来ないならばこっちから行くぞ春雨! 兄である俺が抱きしめてやる!」

 

「ふえええええ!? しししし司令官~~!?」

 

「辛い思いをさせてすまなかったな! 鈍い兄を許してくれ! お詫びとしてたくさん構ってやるからな!」

 

 ぎゅっと春雨を抱きしめ、その頭をよしよしと撫でる。

 なんてサラサラで触り心地のいい髪! ずっと撫でていたい!

 

「ひゃあああん! し、司令官、そんな、春雨まだ心の準備が~!」

 

「心を開くんだ春雨! 生粋の妹キャラであるお前ならばできるはずだ!」

 

「な、なんですかソレ~!?」

 

「俺を兄と思え!」

 

「ふああああん! 違うのにぃ! 春雨が司令官となりたいのはそういう関係じゃなくて~!」

 

「……俺が兄じゃイヤか?」

 

「ふえ? い、いえ、そういうわけでも……。ときどき『司令官がお兄さんだったらな~』って想像したことはありますけれど……」

 

「なら呼んでくれ」

 

「あう……」

 

「春雨が呼びたいように、俺を呼んでくれ!」

 

 しばしの沈黙。

 赤くなった顔を俯かせていた春雨だったが、やがてゆっくりと顔を上げると……

 

「……さん」

 

「ん? 何だって?」

 

 もじもじとしながらも、か細い声ながらも春雨は……

 

 

「お兄、さん」

 

 

 と、甘えるように呼んだ。

 

 瞬間、俺の中で理性の糸が切れた。

 

「かわいいぞ春雨! もう二度と悲しい思いなんてさせてたまるか!」

 

「ひゃあああん! し、司令官!?」

 

「司令官じゃなくてお兄さんだろ!?」

 

「お、お、お兄さん?」

 

「うおおお! お兄さんだぞ!」

 

「ひゃん! お、お兄さん、強く抱きしめすぎです♪ あうぅ、春雨、恥ずかしいです♪」

 

「無理だ! 春雨がかわいい過ぎるのが悪い!」

 

「そ、そんなぁ♡」

 

「ああっ! なんでこんなにかわいいんだ春雨! そのメイド服も滅茶苦茶似合ってるぞ! 食べちゃいたいぐらいだ!」

 

「ほ、本当に食べちゃっても……いいんですよ?」

 

「小生意気なことを言うんじゃない! そんな()()()()な子はナデナデの刑だあああ!」

 

「ひゃうううん♡ お、お兄さんの頭ナデナデ、気持ちいいですううぅ♡ こんなのただのご褒美ですぅうう♡」

 

「んぅ、それは困った! でもかわいい妹にヒドイことはできないから仕方ないな!」

 

「し、仕方ないですね♡」

 

「というわけで、もっとかわいがられろ春雨えええ!」

 

「はい♡ かわいがられちゃいます♡ お兄さああああん♡」

 

「春雨えええ!」

 

「お兄さああああん♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぽいいいい! 夕立やっぱり提督さんが心配だから戻ってきたっぽい! 春雨! 早まるなっぽい! いくら提督さんが大好きだからって監禁なんて……」

 

 

「クンカクンカ! 春雨の髪、なんていい香りなんだ! いつまでも嗅いでいたいぞ! クンカクンカ!」

 

「あん、嬉しいです♡ お兄さんなら、いつまでも嗅いでてもいいですよ♡」

 

「なんて兄想いの妹なんだ! 愛しているぞ春雨!」

 

「は、春雨も愛しています♡」

 

「お前のかわいい顔をもっと見せてくれ!」

 

「はい、お兄さん♡ もっと春雨のこと見て♡ 姉さんたちよりも、いっぱいかわいがって♡」

 

「いくらでもかわいがってやるさ!」

 

「ん、あっ♡ お兄さんのナデナデ、好き♡ はう、お兄さぁん♡ チューしてください♡ 春雨にチューして♡」

 

「おう、してやるとも! チュッチュッとな!」

 

「あん、お顔じゃなくて唇に……でも幸せだからいいです~♡ お兄さん♡ もっと、もっとぉ♡ 妹の春雨を、いっぱい愛してえええ♡」

 

「望むところだあああ! 春雨えええ!」

 

「お兄さあああん♡」

 

 

「……見なかったことにしよう、っぽい」

 

 途中から誰かが来た気がしたが、疑似兄妹として絶賛愛を育んでいる俺たちの耳には届かなかった。

 

 なにはともあれ。

 春雨の悩みは無事に解消され、鎮守府に再び平和が戻ったのだった。

 

――――――

 

 後日。

 なぜかやたらと俺のことを『お兄ちゃん』とか『お兄様』とか『兄くん』とか呼ぶ艦娘が増大した。

 駆逐艦のみならず、いい歳した戦艦や空母までもがだ。艦娘の間でシスプリでも流行ってるんだろうか?

 

 しかし生憎、妹枠の艦娘はひとりだけと『彼女』と約束したのだ。

 

 

 

「お兄さん♡ はい、あ~んしてください♡」

 

 チョコフォンデュしたイチゴを輝かんばかりの笑顔で食べさせてくれる我が妹……もとい大天使春雨。

 

「おいしいですか?」

 

「もぐもぐ……おう、もちろんさ!」

 

 かわいい妹が食べさせてくれるから2倍うまく感じるぞ!

 

「えへへ♪ 司令官……じゃなくて、お兄さんとこうなれて、春雨は幸せです♡」

 

 春雨に持ちかけた提案は現在も継続中だ。

 執務以外の時間帯で基本的にふたりきりのときは、こうして春雨と兄妹のように触れ合うようにしている。

 春雨はそれで満足しているらしく、あの不穏な雰囲気もすっかり消え失せた。気まずくなっていた姉たちとの関係もどうやら修復したらしい。

 

 春雨の豹変から一時はどうなることかと思ったが……今回もなんとか無事に問題を切り抜けられたようだ。

 

 いやあ、しかし。ほんと妹的存在がいるってのはいいものだな。

 こんなかわいらしい妹分を持てて、俺は心底幸せ者だと思う。

 

「あっ……くすくす、お兄さんたら♡ 口元にチョコがついてますよ?」

 

「ん、ここか?」

 

「いいえ、こっちですよ。ん……ちゅっ」

 

「っ!」

 

 唇と唇が触れ合うスレスレのところで春雨はチョコレートを舐め取った。

 

「ぺろっ。ん……ふふ、とっても、甘ぁい♡」

 

 舐め取ったチョコを味わうように、春雨はペロリと唇に舌を這わせ……

 

 

 

 あの魔性にあふれた流し目を俺に向けた。まるで、獲物を狙う蛇のように。

 

 

 

「どうかされましたか? お兄さん?」

 

「え? いや、なんでもないぞ! ははは!」

 

「そうですか? じゃあ、もうひと口どうぞ召し上がれ? はい、あーん♡」

 

 き、気のせいだよな。

 春雨の悩みは解決したんだから、もうあんな男を誘惑するような妖しい表情を浮かべるはずが……

 

 

 

「お兄さん?」

 

「ん?」

 

 呆然とする俺を愛おしむかのように、春雨は「クスリ」と笑いながらチョコでコーティングされたイチゴを差し出す。

 

 

「これからも、春雨を末永くかわいがってくださいね? ()()()()……くすくす♪」

 

 

 甘いはずのチョコフォンデュは、どこかほろ苦く、アダルティな味がした。

 




 やっぱり春雨ちゃんは魔性というよりもキュートなのが一番の売りだよね()

 以上アーケード版のPVを見たために暴走的に始めた「魔性の春雨」でした。
 評価していただけると大変嬉しいです!

 さて話は変わりますが、登場する艦娘がさすがに駆逐艦に偏りすぎていると感じている次第です。
 駆逐艦の総数が多いことと書きたい艦娘が駆逐艦に集中しすぎていることもありますが。
 なので対策として、それ関連のアンケートを下記の活動報告で行っております。よろしければご参加ください!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=207560&uid=161153
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