あかんこれ   作:シャケ@シャム猫亭

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取り敢えず、思いついたので投下しておきます。
書かないとすぐ忘れちゃうからね。



ここは「かんこれ」の世界

 諸君、私は転生者だ。

 神様に会った転生者だ。

 チートを貰った転生者だ。

 

 第一の人生に未練が無かったなどとは口が裂けても言えない。

 父や母、妹のことを思えば、胸が張り裂けるような悲しみがやってくる。何度も読み返してボロボロになった漫画が、この世界に無いと知ったときはひどく落ち込んだ。発売を楽しみにしていたゲームのため、せめて後一週間遅く転生させてくれていればと神を恨んだこともある。

 

 それでも、第二の人生をくれた神には感謝している。

 新たな両親は愛を持って私に接してくれたし、今世でできた兄上は、口では何だかんだ言いつつも私が困っていると手を差し伸べてくれる。サブカルチャーはまだまだ芽を出したばかりではあるが、この黎明期を見守っていくのも悪くない。

 

 そして何よりも、この世界が「艦隊これくしょん」というだけで、転生した甲斐があったというものだ。

 

 諸君に今更「艦隊これくしょん」が何たるかを語るのは、釈迦に説法というやつだろう。

 語ったところで字数稼ぎにしかならぬし、読み飛ばされるのが目に見えている。

 ここで重要なのは、艦これの世界に転生した、この一点のみ。付け加えるとしても、チートを持って、の一つくらいだろう。

 

 ここが艦これの世界と知っているのは、神に言われたからだ。お前の転生先は「カンこれ」の世界だと。もちろん、チートもそれに合わせたものを貰った。

 艦これの世界で高性能インテリジェントデバイスを貰ったところで、相談相手くらいにしかならぬし、アイドルの才能を貰ったところで、アイドルという概念がまだないこの時代では歌と踊りが上手いくらいにしかならない。

 自分で選べなかったことが少し不満ではあるが、ハズレなどとは口が裂けても言えぬチートに十分満足している。

 

 この世界は「艦これ」の世界である。

 当然、提督になってゲーム知識とチートでもって無双するのが筋であろう。もちろん三次元の艦娘たちと会ってみたいというのもあるし、あわよくば仲良くなりたい。

 そのためには、まず海軍に入らなくてならない。それも、エリートコースの士官学校だ。

 提督というのはとても偉いのである。最低でも准将にならなければならない。たくさん階級がある中で、准将は上から四番目、会社で言えば事業所長や執行役レベル。艦娘らが呼んでいる「司令」が本当の階級だったとして、それでも中佐以上。それはつまり、一兵卒では決して成れないことを意味する。

 

 そのことを齢3つの時に気づいた私は、幼少期から知を高め、武を磨いた。すなわち、海軍士官学校の受験勉強を始めたのだ。

 全ては艦娘と仲良くなり、ハーレムを築くため。それを可能にするチートを私は持っているのだ、目指さぬわけがあるまい。

 幸いにして家は裕福であったため、学ぶ時間は十分に取れた。貧しい農家の子であったのならば、きっと参考書を買ってもらえることもなく、勉学の時間は家業の手伝いに当てられてしまっただろう。

 

 ただ、少々面倒であったのは、両親に不信を抱かせないようにすることだった。

 考えても見て欲しい、字も習っておらぬ我が子が「航海術の参考書買って!」などと言ってもまともに取り合ってはもらえぬだろう。ましてや孫子を読み解いていたのなら「この子は妖しの類ではないか?」と思われてしまう。

 段階を踏まなければならない。まずは絵本を買ってもらい、字を知ったフリをした。

 次に児童書を読み、字を学んだフリをする。

 ちょうどこの頃、兄上が小学校に入学したので、算術の教科書を読んで内容を理解したフリをした。

 ここまで行くと、両親や兄上に「この子は天才なのでは?」と思わせることができる。小学校の教科書を全部買ってもらい、一年生から順に読んで理解したフリをした。そして、ついに周囲の人に「この子は天才だ!」と確信させることができたのである。

 

 これで参考書の類をいくらでも買ってもらえると確信した私は、中等学校、高等学校の教科書以外に、士官学校で使えそうな参考書をどんどん購入し、紐解いていった。

 流石に高等学校の教科書は少し躓いたが、それでも復習の域を出ない。必然的に、航海術や兵術、統率学の勉強時間が増えていった。

 そして小学校を卒業するころには、海軍士官学校での座学は全て終わってしまったのである。これで存分に実習に精を出せるというものだ。

 

 一方、武の方はと言うと。

 無論、こちらでも少々面倒ごとはあった。

 古いのだ、考え方が。

 根性論が当たり前、剣は朝から晩まで振り続けよなどと平気で(のたま)う。

 それが世間の普通で、私の師になったものは皆そうだった。スポーツ科学など存在しないのだから、彼らが悪いわけではない。悪いのは時代だ。

 仕方がないので普段は基礎鍛錬を自身で行い、実戦経験のため、週一回半日だけ道場に通うことにした。

 そうやって剣術、柔術、水泳を磨いた。一つに絞らなかったため、全国大会優勝のような輝かしい記録は取れなかったものの、中等学校を卒業するころには士官学校でも十分に通用するレベルになっていた。 

 

 さて、中学を卒業した私の進路は、当然海軍士官学校である。

 両親からは多少の反対はあったものの、海軍への熱い思いと謎の生物から母国を守るという強い護国の心を告げれば納得して頂けた。兄上だけは最後まで粘っていたが、それでも最後には折れて、笑って送り出してくれた。

 

 海軍士官学校での入試は、当然主席合格を果たした。

 それだけでなく、私の「天才」は風の噂で海軍にも届いていたようで、現鎮守府提督とも面談をする機会を頂けたのはかなりの行幸だった。大きなコネができた瞬間である。

 ただ、一つだけ順風満帆とは言えぬことがあった。

 

 艦娘がどこにも見当たらないのである。否、見当たらないどころか噂すら聞かない。艦隊これくしょんの世界で艦娘が居ないとはどういうことだと、私は何度も首を捻った。

 だが、士官学校一年目の冬、割とあっさりその疑問は解決した。

 海軍が「新兵器」で謎の生物を撃沈させたというニュースが流れ、万歳三唱したのである。

 なんてことはない、まだ艦娘が開発されていなかっただけであった。

 

 これで一安心した私は、士官学校でその天才性を振るいまくった。試験は毎回満点、武術では先生すら打ち負かした。

 そして、私の名を士官学校で知らぬ者がいなくなったころ、大本営からお声がかかったのである。

 もちろん私は飛びつき、士官学校を飛び級で卒業し、少尉として大本営務めとなった。

 だが、そこはまだ私のゴールではない。スタートラインにすら立っていない。

 

 私は寝食を削り、成果を上げ続けた。

 元々、大本営は私を佐官にしようとしていたこともあり、とんとん拍子で位が上がる。

 二十歳になる少し前には、ついに目標である中佐を超えて大佐になることができたのである。

 

 大佐になって少しした頃、一つの噂が流れてきた。

 なんでも、新兵器を預かっている現提督が栄転で大本営務めになるらしい、とのこと。

 私はすぐに行動を起こした。

 現鎮守府提督にアポイントメントを取り、用事で大本営に来るという日に会食の席を用意した。直接噂の真偽を確かめ、事実ならば後釜になろうと画策(かくさく)したのである。

 

 しかし、予想外に私の評価は高かった。

 会食では、逆に後釜にならないかと話を切り出されたのである。

 心の中では諸手を上げて賛成していたが、そこは努めて冷静に。

 

「若輩の身で不安が無いといえば嘘になりますが、御国のため、粉骨砕身させていただきます」

 

 謙虚さを織り交ぜながらも、承諾の意を返した。

 なお、後に誰も居ないところで快哉(かいさい)を叫んで喉を痛めたのは内緒である。

 

 そして半年後、ついに私は鎮守府提督に任命された。

 二十年近い努力が報われた瞬間である。

 もしチートが知力や体力の上がる能力向上系だったら、もっと楽だったのにと思わなかったわけではない。だが、もし能力向上系のチートであったならば、これほどの喜びを得ることは出来なかっただろう。

 自身の能力に何ら関与しない生産系チートだったからこそ、今ここで提督になれたことは純粋に私の努力の成果なのだ。

 

 私は執務室で新しい軍服を手に取り、ニヤニヤと眺める。

 肩の装飾が変わり、胸の階級章は金ピカになった。服の質は大佐と変わらないはずなのに、前よりも肌触りが滑らかな気がする。

 

 私はスタートラインに立ったのだ。

 挫けそうになったことなど、数えきれぬほどあった。

 だが、己のチートの持つ可能性を信じ、ここまで走ってきた。チートを使えば艦娘とのハーレムが築けるかもしれぬのだ。それだけが私の原動力だった。

 

 着替えも済み、鎮守府着任に関する書類に目を通していたところで執務室の扉がノックされた。

 扉の向こうから下士官が入室の許可を求める。

 許可を出して入室させると、下士官は鎮守府より迎えの艦体がまもなく到着する旨を報告した。

 私は報告の任を労うと下士官を下がらせる。

 ついに、艦娘と会える。

 やっとだ。やっと私のチートが活かせる時が来たのだ。

 

 この「書類一式&指輪の無限生成」というチートが!

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぬが新しい提督か──」

 

 やはり画面越しに見るのと、こうして現実で対面するのでは全然違う。

 話し方の違いもそうだが、それよりも驚いたことがある。

 

「我は島風型駆逐艦 島風──」

 

 大人だ、あのちんまい島風が大人になっていた。

 だが、服装はちんまい頃のまま。服がぱっつんぱっつんである。

 私は大艦巨乳主義ではなかったが、この立派な胸部装甲を見てしまうと、主張を変えてもいいかも知れないと思い始める。

 それと、思っていたよりも背はずっと高い。私は断じて背が低いわけではないが、その私を軽々と超えてきた。

 

「よろしく頼むぞ」

 

 何よりも目を引くのは、露出したその肉体である。

 脂肪など存在しない、鍛え抜かれた腹筋。所々に付いた古傷がまるで勲章であるかのよう。

 成人男性の腰ほどもある上腕二頭筋は、鉄の棒など易々と折り曲げることだろう。

 城壁とも言える肩幅を持ち、戦場でこの島風の背に守られたならば、何者も通さぬ鉄壁として安堵するに違いない。

 

 

 

 そう、つまりは、

 

 

 

 

 この世界は「漢体これくしょん」だったのである。

 

 

 

 

 




面白かったら、感想に「草」とでも書いといてください。

「漢これ」もっと増えないかな……。
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