ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? another 作:ark.knight
始まり
私、ハイド・クロフィは冒険者である。一時期は英雄視もされたが、今は堕ちるところまで堕ちた
家を追われたため、誰も来ることがなさそうな場所に新居を構えたが如何せん大きく作りすぎてしまったのはどうかと思った。これから人の世から離れ、隠居する私には家の大きさなど意味が無いというのに。暮らせればそれで十分だった。万が一の為の設備もあるが暇つぶし程度にしかならんだろうさ。
この時の私には、後にありえない体験をすることになるとは思うはずもない。さすがデイドラということなのだろうか、異世界に飛ばされるなんてことになるとは思っていなかった。
唐突ではあるが、これは堕ちた英雄が再び人としてやり直す物語である。
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草木が夜風に揺れ動き、その中をただ一人で拠点へと帰る。半月ほどダンジョンへと赴き探索をしていたが、今回の収穫は特になかった。禁忌とされているデイドラアーティファクトやらドラゴンプリーストの仮面、はたまた
ここ最近の夢見は最悪だ。自分がしてきたことをされる夢。延々と殺され続ける夢。殺されては蘇りまた殺される、それが何度も何度も続く夢。私の
――叶えてやろうか?
夢の中だがあの
――ならば、その望み叶えてやろう。制限は付くがこの
あ奴が何を思ってそう判断したのかは私の知る由は無いだろう。ただ、この時だけは感謝しておくとしよう。それからの夢見は良くも悪くも変わらないが何か変わるのだろうか。
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「ん……」
窓から朝日が差し目を覚ました。今日も悪い夢を見たような気がしたが外からは人の喧騒が聞こえてきた。山賊の襲撃と思い、脱ぎ捨てた装備一式を着なおして急いで外に出てみると、そこには今までとは違う光景が広がっていた。今まで見てきた街並みに該当することのない家の数々。そして、人々の日常が広がっていた。一旦、家の中に戻り何が起きているのかを整理してみたが中々思いつかない。
「分からないのであれば周囲を探索してみることにしよう」
そうと決めてからの行動は早かった。最低限の武器としてエルフのダガー二振りにある程度の金を持って出た。いくら金があるか確認してみたら、袋の中には見慣れない金貨、銀貨、銅貨がびっしりと入っていたのだ。これがこの場所の金銭なのだろうか? それも含めて探索及び調査するとしよう。
家から出てみるが会話はできそうだが見たこともない文字で構成されているため解読は不可能。そのため適当にぶらつくしかなかった。道中も武器をぶら下げている奴がいたため気づかれない程度の距離でついていく。行先の最後には巨大な塔が聳え立っていた。その塔の内部に武器を持った集団だったり個人で入っていっていた。その近くには大きな建物もあり、そこから塔の内部に入っていく者も多い。あそこに入れば何かわかるだろうと思い入ってみた。
内部はとても広く、人がそこらじゅうでせわしなく動いていた。腰には武器を携えていたが、ここは護身しなければならない程に危険なところなのだろうか。人混みを掻き分けてカウンターに辿り着くと一人の女性がやってくる。
「はい、本日はどの用件で?」
「すまんがここがどこだか教えてほしい。何分、旅をしていたもので場所も文字すらわからんのだ」
私としては至って普通の事を話しているというのだが、対面している女性は怪訝な表情を浮かべていた。
「は、はぁ……ここは迷宮都市オラリオです。ここにはいろんな願望、思惑を持った冒険者がこの街に集ってきてます。ちなみにここに入ってこられる前に見たかもしれませんが隣にある大きな塔の入口、あれがダンジョンへの入り口となっております」
あそこがダンジョンへの入り口とはな。あんなに人が出入りしては邪魔になりそうだが中に入って見なければ分からないこともあるだろう。
「まずはファミリアに入って、
少しばかり、ここのモンスターがどれほどの実力を持っているのか確認しに行きたいところではあるが……どちらを優先させるべきだろうか。ファミリア探しと実力調査、どちらも優先度は高いので困りものだ。
「では、聞くがどこか募集をかけているファミリアはあるだろうか?」
「ありますよ。その見た目なら探索系でいいですか?」
「問題のあるところでも構わん。入れればどこでもいい」
「は、はぁ……なら、【ロキ・ファミリア】とかどうですか? ここ最近で問題を起こして団員と住居を追われていますが、元々は探索系のファミリアですし経験もあるので丁度いいかと思います」
善良なだけの集団なんかよりは十分にいい。善行を為す偽善者など見飽きたし、近くにいるだけで虫唾が走る。過去の私を見ているようで。
「仮の拠点を教えますのでそこに行ってもらう必要があるのですが、地図をお渡ししますのでそこへ向かってください」
「ん、助かる。それともう一つ、たぶんここの通貨なんだろうがこの通貨の価格を教えて貰いたい」
袋にあった金銀銅の3種の通貨を取り出す。ある程度の予想は付くが聞いておきたかった。金銭で恥を掻きたくはないからな。
「金貨は千ヴァリス、銀貨は百ヴァリス、銅貨は十ヴァリスです。山籠もりでもしてたのですか?」
「あながち間違いではないな。旅もしてきたが基本的には自給自足だったし、通貨はあまり使わなかったので忘れてしまっていた」
嘘ではないが主な入手先は山賊やらフォースウォーンだっただけで。とはいえ、これとは違う通貨ではあったが使ったことはある。ゴールドがヴァリスか。完全に私のいた場所とは変わっているな。異なる世界に来るとは思わなかった。スカイリムには居場所が無かったのでこれでよかったのだと思う。
「情報助かる」
「これも仕事ですので。とりあえず
「そうさせてもらう。本当に助かった」
地図を受け取り、ギルドを出ることにした。だいたいの事細かに書かれているルートによって目的の場所である場所へと向かうことにした。問題がどれほどの規模かは知らんが大事をやってのけたのだろう。今はそんなに人もいないということなので好都合だが場所も追われるとはな。境遇が似ていると勘違いしてしまいそうだ。
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歩いて早十分が経過しただろうか。それぐらいの距離だったのかはたまた他の物に目移りしてしまって遅くなったのかはどうでもいいが、目的の場所はどうも宿だったようだ。文字とかは読めんがその場の雰囲気でだいたいの予想が着くというもの。
「お客さん、ご利用ですかい?」
この宿の店主と思わしき男性が声をかけてくる。こちらの建物とはいえ初めて見る構造故に呆気に取られていた。
「ん、ああ、私か。ギルドに案内されて来たのだが、ここに【ロキ・ファミリア】なるものがあると聞いて来た」
「そういうことね。おーい! ロキの嬢ちゃん! 客人が来たぜー!」
「聞こえてるっちゅーわ! こんな朝っぱらやってのに、ウチは二日酔いなんやで?」
部屋の扉を壊さん勢いで開けた先にいたのは朱色の髪、細目の女性だった。
「一応言っておくがそろそろ昼時だ。二日酔いは貴様の自業自得だろうに」
「そうなん? てか、何の用があってウチのところに来たんや? 団員も住居も金も失ったウチに何の用や?」
「団員を募集しているのだろう? そのために来た」
「……なら、少し待っとってや。気合入れなおしてくるわ」
そう言って部屋の中に戻っていった。同胞団の時のように何かあるのだろうか。
「お客さん、あの出来事を知らないんですかい?」
「ん、何がだ?」
「つい先月のことなんですが、このオラリオ最大のファミリアを潰した主神ですぜ? 悪名高い、神ロキですぜ?」
たかがそれだけか、と言ってしまいたくなる。今の私が恐れるものは無いのだ。失うものなど一切ないのだから、何も怖くない。
「私としては善良な集団よりも好ましい。それにどんな立場にいたとしても潰された方も悪いさ」
「お客さんもそっち側なんですかい……だとしたら、相性はいいかもしれやせんが神ロキは物騒ですんで気を付けてくだせぇ」
ただ物騒なだけならそれはそれでいい。この身に降りかかるのなら払うだけだ。最悪なのはデイドラみたいな連中だった場合だ。あいつらは本当に手に負えない
「おーい、そこの真っ黒。入ってきてもええでー」
「お呼びですぜ、お客さん」
扉を少しだけ開けて、顔を覗かせているロキ。招かれた部屋の中に入ると何の酒瓶が数本転がっているのと積み重なった箱。部屋と言うよりも倉庫と言っても過言ではない程の空間だった。適当な箱の上に座り、私の方を見るロキはどこか窶れて見えた。
「もう一度聞くんやけど、今更ウチのファミリアに何の用や?」
「入りに来た。人もいなくなり人目を気にする必要が無くなった。私にとっては十二分な条件だったからここに来た」
「新規、零細ファミリアなら他にいくらでもあるんや。わざわざウチじゃなくてもええんやで?」
「無論、そんな考えは無い。こう見えても私は人の道を踏み外した者だ。善良な集団よりも貴様の方が付き合いやすい」
「嘘は吐いてないみたいやな。人の道を踏み外したって人でも殺ったんか?」
何の躊躇いもなく、人であれば隠し通したいところを聞いてきた。先程の言葉を考えるとこのロキという人物には嘘は通用しないのだろう。だから正直に話すことにした。
「ああ、殺したさ。自己防衛のため、依頼のため、必要であれば殺した。今更悪びれるつもりは無いがやってきたことには変わりない」
私がしてきたことは見る位置によって変化する。一般的に考えれば普通じゃありえない行為ではあるが、依頼されたからやったのであって他意はない。快楽を求めるために殺人をしたわけではない。強いて言うのであれば生きるためとも言えよう。殺らねば殺られる、そんな状態だったのだから。
「昔、ウチにも似たようなことをしてた時期があったなぁ」
「で、今回はやりすぎた結果として見放されたと」
「うぐっ……ま、まぁ、ホンマにウチで後悔しないんやな? 拠点も金も何にも無いで? アンタが思ってるよりも面倒な神やで?」
「拠点も金もある。半月ほど放置していたせいか埃臭いが掃除すれば何とかなる。貴様がどれほど面倒かは知らんが、最悪というものを知っている。思い出したくもないがそれよりかはマシだろうさ」
「ホンマのホンマにええんやな?」
「くどい、私はそれでいいと言っているのだ。それとも何か、自分に自信が持てないのか?」
あまりにも自信無さげに言うものだからつい煽ってしまった。するとロキは、眉間に皺を寄せて立ち上がりズカズカと近づいてくる。
「おうおう、なんちゅーこと言ってくれんねん! なんならこっからトップクラスのファミリアまで持ってってやるかんな!」
「言うだけなら誰にでもできる。さてロキとやら、ここまでお膳立てしたのだからファミリアとやらに加入させてもらえるのだろう?」
「当たり前や。むしろ
さて、これで準備は万端だろう。これでようやくダンジョンへ潜ることができる
「そういや、あんたの名前聞いとらんかったな。なんちゅー名前なんや?」
「私はハイド・クロフィだ。どうかこの名前で憶えていてほしい」
「忘れるわけないっちゅーに。ほな、早よ拠点まで案内してくれや」
この部屋から出て、店を出ようとしたところで店主に呼び止められた。
「おや、もう話は終わったんですかい?」
「せやで。今まで世話になったな」
「ならとっととツケを払ってくだせい。飯代に宿泊費、酒代とで198730ヴァリスとなりやす」
こちらの物価がどれくらいかは知らんが結構使い込んだのだろうか。私がロキの方に顔を向けると苦笑いを浮かべた後、私の方を見てくる。
「ハイド……頼む!」
「出会って十分も経っていないというのにこれか。店主よ、これで間に合うか?」
今持っているヴァリスを差し出すと店主は計算し始めた。如何せん、どれくらい持っていたかなんて数えていないので知っている奴に任せた方がいいだろうという魂胆だ。計算し終わって費用以外のヴァリスを袋に詰めなおし渡してくる。
「ツケた費用は全部回収させていただきやした。もうここの厄介にならんでくださいよ?」
「今回は助かったで、おっちゃん。ハイドもありがとな」
「払った分はいずれ回収するからな。ほれ行くぞ」
今度こそ宿から出て自宅へと向かう。地図である程度、自宅の位置を確認していたので簡単に到着した。どうやらあそこの宿からの距離はそう遠くなかったみたいだ。
「なぁハイド、もしかして自宅ってのはここなんか?」
「その通りだ。一人暮らしにしては大きすぎるのは分かっているが、満足してもらえたか?」
「零細ファミリアにとっちゃ十分過ぎるぐらいや。これからもっと
金持ちというにはどのくらい持っていればいいのだろうか。スカイリムではそうかもしれんがこちらでは流石にわからん。それよりもこれからも人が増えるというのであれば、その内改築も視野に入れなければならないな。家の中に入ると埃の臭いが漂ってくる。
「うっわ、埃臭っ!?」
「だから言っただろうに。ほれロキ、掃除するぞ」
「面倒やな~。でも、これから世話になるんやしこれくらいはやっちゃる。道具はどこや?」
「着替えてくるので少しばかり待っていろ」
「おー、そういやまだハイドの顔を見とらんかったな。いったいどんな顔なんや?」
私としてはあまり見せびらかすほどのものではない。暗殺者として顔を認識されてしまうと人物の特定がしやすくなるというのがある。どうやって特定したのか分からんが、そのせいで居場所をなくしてしまったのだから。それ以外の要因はあるものの、今回はこれからも関係を築く上で避けられないことだろう。3階の部屋に戻り、装備をストレージボックスに入れて代わりに刺繍の施された服に身を通しカフス付きのブーツを履く。いらん心配ではあると思うがこの顔を見られるという覚悟をしながら部屋を出た。
「ようやっと出てきおったな……って、何やその顔?」
「
私、ハイド・クロフィの最大の特徴は男であるというのに顔は女性そのものなのだ。昔、従者リディアには容姿端麗と評されたが皮肉にしか思えなかったのだ。なぜ、こんな顔で生まれてきてしまったのかと幾度と思ったことか。
「グヘヘ……ウチの大好物やで~。金色の長髪につり目、整った顔。男やけど最高やないかい!」
「やはり、どこに行こうとその反応は変わらんのか……」
いやらしい手つきをしながら適当な席に着きながら私の方を見ていた。正直殴りたくて仕方ないが今は堪えるとしよう。
「ほれ、とっとと掃除ぐらいせんか」
「しゃーないなー。ほれ、モップ貸しいや」
そこらへんにあった掃除用具を手渡すと、椅子から立ち上がりそのまま受け取った。
「んじゃやるで~」
「それと貴様の部屋も決めておけ。家具とかは配備されてると思うが、必要なものは用意する」
「ん、そん時はウチも一緒に買いに行くかんね」
「というよりも来てもらわねば困る。私自身、今日ここに来たばかりで地理も何もわからん」
私の一言で頭を抱えるロキ。これに関しては本当に済まないと思っている。流れるままにここまで来てしまった感が否めないが、今までも何度かあったせいか慣れてしまっている自分が悲しく思えた。
「自分、いろいろと大丈夫なんか?」
「聞きたいことがあるだろうが後できちんと話す。落ち着いてるようにも見えるかもしれんがいろいろと困惑しているのだ」
「そうは見えへんけど、嘘はついとらんみたいやしな。信用しちゃるけど、いろいろ聞かせてもらうで」
「了承した」
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あらかた掃除が終わり、私とロキはテーブル越しに対面して座っていた。
「さてと、いろいろ聞きたいことがあるんやけどええか?」
「構わん」
「なら一つ目や。ハイドはなんでオラリオに来たんや?」
最初に来る質問としては妥当なものであった。だが、私はこの質問に対して言葉を濁らせていた。
「なんや? 言えない事でもあるんか?」
ロキもさすがに怪しく思ったようで突っ込んで聞いてくる。どうして、と聞かれてもなぜこの場所にいるのかさえ分からない。目的も、意味も、何も無くこの場所に気づいたらいた。
「いや、意味はあったか」
「なーに1人で呟いてるん?」
「元々いた場所には私の居場所なんて存在しなかった。自業自得だと言ってしまえばそれまでだが、私はこの家にあるもの以外全て無くしてしまったよ」
ロキは私の虚しい一人語りを遮ることなくそのまま聞いていた。
「地位も、名誉も、居場所も何もかも全て失った。一時は英雄と称えられたが、それも無くなった私にとってはもうどうでもいい存在になってしまったのだろう」
「んで放浪しとるっちゅー訳やな? にしても英雄か~、ならそれ相応の知名度になりそうなもんやけど一切耳には入ってこうへんかったで? ちなみにどこの出身なんや?」
「タムリエル大陸南西のサマーセット島という場所だ」
「そんな大陸あったか?」
ロキの一言でなんとなく察してしまった。ここは私のいた場所ではなく、全くの別物。だが、どうして私がこのオラリオという場所にいるのかが分からん。以前と同じように何か使命を果たさなければならないのだろうか?
「まぁええわ。今の話には嘘はなかったし、なんとなくやけど素性もわかったで。んで、もう一つなんやけど、もしかして記憶喪失なんか?」
「断じて違う。ここと文化……は多少近いかもしれんが言語や歴史が違うのだろう。時にロキよ、九大神という単語に聞き覚えはあるだろうか?」
「あらへんけど……ハイドがいたとこにはそいつらがおったんやな、もちろん神が」
「無論。貴様が知りえないだけという線もありえなくはないが、ただ単に何かが違うのだろう」
例えば、私がいた時代からかなり未来の世界だとかな。以前、星霜の書を使って過去に行った事があるし、過去の英雄がアルドゥインを未来に送ったこともあった。どういう原理で行えているのかはさっぱりだが、そういうものなのだろうか?
「そこは不明やな。ま、おいおい知っていけばええよ。んで、ハイドから聞きたいことはあるんか?」
「いや、今のでなんとなく分かったので質問はない」
「ならええわ。んじゃ正式に新生ロキ・ファミリアの発足や! これからもよろしくな!」
常に誰かが見ているというのは何十年ぶりだろうか。今回の事は流石にどうなるかは予想することができない。何せ、スカイリムとは全く別の環境下での生活となる。それにロキが神だとしても