ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? another 作:ark.knight
自宅から歩いて十数分、それくらいのところにロキが目指した店があった。その店は外見からはそこまで大きく見えなかったがロキ曰く、地上2階建てで地下に個室があるという設計らしい。地下空間と聞くとデルフィンを思い出すな。思い返すだけで無性に腹が立ってくる。
「んな訳で到着や。ほな、入るで!」
店内に入るなり、肉や魚を焼く匂いに芳醇な酒の匂い。それらが一気に私の食欲を掻き立てた。
「個室なんやけど空いてるん?」
「個室ですね。二名様ご案内でー……っす!」
店員と思わしき人物が私を見るなり一瞬、息を止めたがすぐに持ち直していた。すまんな、顔や姿を見られるわけにはいかないために
「こういうので良かったんやろ?」
「助かる」
私は仮面とフードを外し、素顔を晒す。いつもは人目があると仮面の下から食物を入れて食べていたので新鮮な気分だ。
「にしても……ええな! 男やけどその顔気に入ってるで!」
「あまり触れてほしいところではないのだが……」
「自信持ってもええと思うんやけどな。それはそれとして注文するけど、ハイドは酒いけるんか?」
「大丈夫だ。余程不味くは無い限り飲める。ただ、量が飲めるわけではないからな?」
酔っても意識はハッキリしているが一気に飲むのは好きではないというだけだ。悪酔いだけはしないという私のルールの中であればいくらでも飲むつもりではいる。
「ならこれからは晩酌に付き合ってもらおうか?」
「気が乗ればな。注文するなら勝手にしてくれ」
ロキは手慣れた様子で紙に何か書いて専用の窓口に出していた。
「最初はこんなもんやろ。さてハイド、ちぃと聞きたいことあるんやけどええか?」
「重要なことでなければな。こんな店で聞くことなんて知れているが」
「そこは気にせぇへんでもええよ。この店の地下はなファミリア同士の密談が交わされたりするもんでな、外に声や音が漏れない設計なんや」
パッと見ではただの店だというのに聞いたこともない機能があったのか。もしかしたらあらゆる物に付呪できる人物がいるのだろうか?
「だから、聞くんやけど。なんやあのステイタスは?」
ロキが分からんものを聞かれても私にもわからんよ。そう言いたかったがロキはそれを許してはくれなさそうだ。ステイタス、それはロキから
「そういえば、ほとんどが黒く塗り潰されていたな。あれが普通ではないのか?」
「アホか。ステイタスっちゅーのは経験を元に向上するもんなんや。だっちゅーのに授けた側も授かった側も見れないなんてのはおかしいんや」
経験を元にするのであればここに来るまでのもので幾らあるのだろう? 正直、どんな基準で上昇していくのかも分からんというのは味気なく感じてしまう。
「そこでやハイド。過去に
ロキの言葉を聞いて思い返す。過去に契約を結んだ神か……今でも思い返せるのが一柱いる。仕方なくと言えばそうではあったが、半強制的に契約を結んでしまっていた神がいる。それを忘れないように、常に装備しているナイチンゲール一式も全て私を私たらしめる一つの要素。
「いるな」
「じゃあそいつに何かされた訳やな。面倒なことしてくれるわ!」
ロキは頭を抱えながら身体をくねくねと唸らせていた。確かに私は
「待て、奴に何かをされた訳ではないぞ。現状では何もないはずだ」
「なら、今後何かあるんやな?」
「まぁ……無いとは言わん。奴を庇うわけではないが原因は別にあると思う」
どうせ
「別だったとしても面倒なことには変わらんわ。全く……ちなみにどんな
「ん……盗賊に関する神ではあったが自身の持ち物を盗まれるような奴だぞ。デイドラではあるが、わざとやっているのではと思うがな」
不壊のピックを盗まれ、結果として二人の契約者を得たノクターナルは先見の明でもあったのだろうか? 巻き込まれた側としては堪ったものじゃないが。
「思ったんやけど、何回かデイドラとか言う単語が出てくるんやけどもそのデイドラって何なんや?」
「説明してなかったか? 以前に九大神の話をしたと思うがデイドラも同じく神だ。まぁ、最も九大神がロキだとかと同じ普通の神だとするのであればデイドラとは邪悪な神だろう」
驚愕しているのか言葉も出ず、口を大きく開けて固まってしまった。無理もない。人殺しをしたというのは伝えてはいたが邪悪な神、もとい邪神と契約しているというのは印象が最悪である。スカイリムでもデイドラに関する装備を所持しているだけでもステンダールの番人と対峙せざるを得なかった。それまでにデイドラという存在は危険視されていたのだ。ロキが驚くのも無理はない
「つまり……いわゆる邪神と契約をしたんやな。それにしてもおかしいんやけどな」
「何がおかしいのだ?」
「
どういう原理で冒険者が誕生するか、そして強化されていくのかが垣間見えた瞬間でもあった。契約することでモンスターに対抗しえる力を得る。その力でモンスターを屠り、再度神によって力を得るというサイクル。至って簡単に思えるサイクルではあるが大体は今まで通りのやり方に近い。私の場合は経験が全てだったので多少の違和感を感じえないが。だとすると、ノクターナルと契約した後にステイタスが上昇している可能性もあるかもしれん。初期状態であれば隠す理由もない。
「まぁ、私が知っていることはほとんど無い。結局は何も分からず仕舞いだ」
「そこなんや。だからハイドに聞いてみたっちゅー訳よ。多少は知れたけど藪を突けばなんとやら、余計に要らん情報が溢れ出てくるな」
「なんか……その、すまない」
これは私の失態だ。道を踏み外したばかりにその手の道に進んでしまったことが原因なので申し訳なくなる。一方、ロキはというと驚愕こそしていたが今では目を閉じて口角を吊り上げていた。
「なーに、世の中にはいい言葉があってな? バレなきゃ犯罪じゃないんやとさ」
確かにそれは思うことではある。だが、やりすぎも良くは無いがな。
「堅苦しい話はここまでにしといて、こっからは楽しく酒盛りでもしようや!」
「流石に酔いつぶれるまでは呑むなよ?」
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「おーいハイドーちゃんと呑んどるか~?」
酒や食事などが出てくるなり、尋常ではないスピードで消費していった。あの小柄な体系のどこにそれだけの物を収納しているのか? と問いたくなってしまった。まぁ、今現在では顔を赤くし、座っているのにも関わらずフラフラとしている。
「私のペースの中で呑んでいるさ」
「にしても甘いもんばかりいっとるな~」
「この果実酒、初めて呑むのだが意外とうまくてな。というよりもロキよ、貴様は呑みすぎだ」
「んな訳ないよろうが! もっとのみゅんや!」
言わんこっちゃない。早速酔いが回って呂律が回ってないではないか。ああ、だからまた新たに注文しようとするな。
ロキが注文書に書き始めようとすると個室の扉が開いた。その先にいたのはこの店の店員と思わしき人物だった。
「本日はこれでラストオーダーとなります。最後にご注文はなされますか?」
「私はいらん。こいつには冷たい水を頼む」
私はロキが書いた注文書を奪い取るとロキは机に顎を乗せて不満そうにしていた。店員はかしこまりましたと一言告げて扉を閉めていった。その後、ラストオーダーが来るまではだんまりとしていた。最後に呑めなかったのが嫌だったのだろう。多少は遠慮してくれてもいいではないか。
「ぶ~」
注文した品が来るや否やロキが反応を示すようになった。アルコールも幾らか消化できたようで滑舌も良くなっていた
「むくれるな。ここに至るまでに何杯呑んだ?」
「ジョッキを……何杯やったっけ?」
「サイズを問わなければ三十は超えているぞ」
別に酒を飲むのは構わん。ただ、飲みすぎてもいけないというだけだ。正直、勘定は私が持つのだから勘弁してほしいというのが含まれる。後で自宅にある金庫を確認しておくべきか……
「そんなもんやろ。今まで5、6本位しか呑めへんかったしなぁ」
「それは呑みすぎだ。鬱憤でも溜まっていたんだろうが別のところで発散しろ。体調に支障をきたすぞ」
「へ~ウチの事、心配しとるんやな?」
これから一緒に過ごす奴が体調を崩されても面倒になるだけであって、心配しているかというと……いや、しているか。神とはいえ、
「どうでもいいとは言わん。だが、不健康なのはいただけないと思っただけだ。関係を持つ以上はある程度は許容するつもりではいるが、流石に今日の分は許容できん」
「ケチやなー。でも、ウチの事を思っての事やしええわ。毎日とは言わんが晩酌には付き合ってもらうで」
「そこまで強くないがそれでいいなら手を打とう。それで貴様が満足するのであればな」
「ええで、ええでー! 秘蔵の酒があるならもっとええでー!」
さっきとは打って変わって上機嫌になっていた。神というのはいつの時代、場所が変わろうとも現金な奴だ。このようにわかりやすくあれば私も生きやすかっただろうか……考えるだけ無駄か。私だけでは過去には戻れないのだから。
「さーて、今日はたらふく食ったし呑んだし帰るで―! ふかふかなベッドで寝れるでー!」
今日に至るまでの一月は倉庫での暮らしはさぞ窮屈なものだっただろう。せめて今日ぐらいはゆっくりと過ごすといいさ。
「んじゃ、帰るで。それと勘定な」
「ん、了承した。酒を呑んだ以上は家に帰るまでは面倒を見ないからな」
「分かっとるっちゅーの」
個室から出て勘定を済ませたのだが三万ヴァリスを少し超えた金額となっていた。これが安いのかどうなのかは知らんが必要経費だったと思えば安いのだろう。酒が入った状態なので体が本当に照っているが、それを相殺するかのように吹いている冷たい夜風が心地よい。久しぶりに美味いと思える酒と料理に出会えた気がする。スカイリムでは煮るか焼くか甘くするか、もしくは食材をそのまま食べるかしかなかったからな。ここで食べる物は新鮮で病みつきになりそうだった。
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時間帯ということもあってか自宅への道のりは人気が無く、ロキの足音だけが響いていた。私の場合は今装備しているのに消音が付呪されているため、足音が全くと言っていいほどにたたない。しかし、なんだ? 人気が無いにしても誰かしらに見られている感覚に陥る。
「ロキよ、少しばかり早く行くぞ」
「あ? なんでや?」
「貴様目当てかももしれん。有り体に言えば監視、または追跡されている」
私は本日からこのオラリオに来たばかりなので怨恨沙汰に発展するような関係は持ち合わせていないはずだ。だとすると、オラリオ最大のファミリアを潰したロキにはそれだけのことをされる理由はある。さすがに事の重要性を理解したようで早足になっていた。暗殺してもよかったのだがロキと離れるのは得策ではない。だから、今はロキと距離を離さずに遠回りして自宅へと戻ったが撒くことができなかった。一旦、ロキを隠して闇夜に紛れて仕留めるか?
「なぁハイド。今日は一緒にいてくれへんか?」
ロキも色々と不安なのだろう。団員が一人しかいないということは攻めに応じ辛い。どうしても受けに回ざるをえない。ロキは何を思ってそう言ったのかはわからんが今は近くにいるとしよう。私は溜息一つ溢してロキに対面した。
「今日だけは近くに居てやる」
「ありがとな、ハイド。だけども、どうにも怖いんよ。一度団員を全員奪われたウチにはまた同じ事が起ってしまうんじゃないかと思うんや」
分からなくもない。私にも近しい人との離別は経験したことがある。ただ、ロキには守る手段はない。その差が私とロキの差なのだろう。
「……神、ロキよ。一度しか言わんから聞き逃すなよ」
「急になんや?」
深呼吸を一つ、少しの間を置いた。
「今、私が信仰している神はロキ、ただ一柱のみだ。私の事を見てくれている限りは貴様の盾となり剣となろう」
私の事を見てくれている。ただそれだけでいい。ロキは既にしてくれている。ならば、私はそれに応えるだけでいいのだから。
「貴様を狙う輩は悉く破滅させてやる。どんなに汚い手を使ってでもだ」
今までもそうしてきた。人を殺すのに罪悪感は感じなくなってしまい、人としての善悪なんてものは私の中には存在していない。だからこその発言。
「……病んでるんかワレ?」
「そんな訳あるか」
私の誓いの言葉がそんなにも悪かったのか……
「普通に聞いたら白い目で見られんぞ? まぁ……言おうとしてたことは理解できたんやけども、今のところは望んじゃいない」
「今は、か」
私の返答に対して、ロキは言葉を発することなく頷いていた。ロキの立場上、後に争いごとに発展しかねんというのは、先手を打てるチャンスがあるが調査する必要があるな。
「今は受けに回るで。ウチもハイドの事は何も知らん。よって、相手を警戒しつつ情報を得るんや」
「分かった。万が一の事態を考慮しつつ、こちらでも探りを入れておく」
私は二度と理解者を失うわけにはいかない。ならば、私が持てる全てを使うだけだ。
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魔石灯に照らされる純白な城。そこには一つのファミリアが存在していた。美しく光り輝く美貌を持つ男神。その神を中心としたファミリア。
「ただいま帰還いたしました、我が主よ」
純白な城の一室に団員と思わしき人物が入ってくる。
「ご苦労。それで何か報告することはあるか?」
「はい。ダンジョンから帰還する際、かの神ロキが団員と思わしき人物を連れているのを目撃いたしました」
ようやく追い詰める事ができた。それはとても喜ばしいことであった。奸計にあい、自身が死に目に遭わされた元凶をこの手で始末できるのだから
「……続けよ」
「追跡したのですが振り払われてしまいました。ですが、ある程度の場所は判明したので捜索いたしましょうか?」
「ああ、捜索することを命ずる。力を無くした
をようやく……積年の恨みを晴らす事ができる!」
二つのファミリアが衝突する時は間近まで迫っているのが目に見えていた。
新社会人、引っ越しの連続……こんなの絶対におかしいよ!