こんなVRは嫌だ   作:猫黒

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なんで

 

 

 茅場視点

 

 

 

 

 ——それは衝撃だった。

 

 

 

 

私の思い描いている天空に浮かぶ城。

 

それは数多の冒険者達が己の身を賭してでも駆け上がらんとする鉄の城。

 

それは何時も頭の中では鮮明に姿を見せる。

 

——ある筈だ、必ず、そう、この世の何処かに、夢想の中に、夢幻の彼方に、たとえこの世界になかったとしても、それでも必ずある筈だ、例え、仮想の世界でも。

 

・・・そう、ないのであれば、作ればいい、私が、この手で。

 

 

 

——これだ。

 

 こ れ なのだ、そうか、この方法ならば、現世にあるこの身を仮想の世界に移し替える事ができる。

 

浮遊城、アインクラッド。

 

そう名付けた夢の城へと続く世界を構築する為、ソードアートオンラインというゲームを通じ、数多のプレイヤーをあの世界で生きる冒険者へとする為に先ずはその世界へと続く道を作らねばならなかった。

 

同時に、世界を作るのだ、初期構想段階であるARヴィジョンプログラム、これではとてもではないがあの世界を、私が夢見たあの幻想を現実にする事ができない。

 

側なら、創り上げた。

 

その世界で必要なファンタジーを、剣を用意し、怪物を用意し、依り代を用意し、ありとあらゆる仮想のプログラムを作り上げた。

 

空飛ぶ城さえ、夢見たソレさえ、作って見せた、一人寂しく、漂う城を。

 

 

——やはり、ARでは駄目だ、現実を仮想化する手段では、プレイヤーは、彼らは本気では生きてくれないだろう、VRという仮想の世界を現実としなくては夢見た冒険者へと、あの勇敢な勇者へとはなってはくれないだろう。

 

そう思い、ARプロジェクトを破棄し、本格的にVRへと移行する為に人の意識を、仮想の身体を用意する為にプログラムを組んでは、自分自身で試し続けた。

 

だが、人の脳をプログラム化するには余りにも解明されていない部分が多すぎる、その人の、肉の身体をプログラム化するというその作業こそに、五感さえ再現する事がままならない、味覚も、嗅覚も、触覚も、視覚も、聴覚も、特に味覚は酷いもので、様々な食べ物を仮想現実世界で再現しては、擦り合わせという非効率極まりない手段でしか直していく事が出来ずにいた。

 

だからこそ。

 

 

 

——それは、あまりにも、都合が良すぎた。

 

 

 

 

 

 

「初めまして、私が君に会いたいと申し出た、茅場昌彦というプログラマーだ。・・・本来ならば、私自ら赴きたかったが、生憎と止められてしまってね、アーガスに無理を言って、君を連れて来てもらったのだ、会えて嬉しく思うよ――――神代 天城(かみしろ あまき)君。」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

対面した彼の印象を端的に表すならば、若い少年。

 

別段、変わりのない普通の少年の様に思えるこの少年は、私でさえも驚く内容の研究をしてた。

 

脳そのものを読み取り、再現する技術、それに至るまでの手段、そして、実験を行ったと思わせる程の仮定の実験の数々。

 

どれが良くて、どれが駄目であったか、実験からは何が読み取れ、読み取れなかったのか、どうすれば、良くなるのか、こうすればよいのではないだろうか?、こうしてみた結果——。

 

それらの論文の最後には取って付けた様に子供の悪戯の様に、多分、やそーなる筈だからこれで進めるとする、等といった、所用、誤魔化しの様に付け加えていたが、論文を読めば読む程、これが真実であると断定できる。

 

そしてさらにいえば、冗談だと思いたいが、これが中学生の自由研究で行われるコンクールに出ていたという事実である。

 

この世の新たな可能性へと至るその一歩をまさか本当に若者の手から生まれるとは、このコンクールの主催者も分かってはいなかっただろう。

 

それに加えて、このコンクールにおいてレベルが違うこの論文。

 

当然といえば当然ではあるが他の作品群を押しのけ、最優秀賞を受賞したこの研究、元々このコンクールの出資者はアーガスであり、優勝者にはアーガスにおいての研究を行う事が約束されている。

 

さらにいえば、この論文———。

 

 

「早速で悪いが単刀直入に言わせてもらう、この論文の——続きが見たい、君が、君の思い描いたこの先の研究が必要なんだ。」

 

「・・・」

 

 

警戒する様にこちらを見つめるその双眸は、前置きは良い、とでもいう様にこちらを観察していた。

 

天才、そういわれてきた私ではあるが、目の前のこの少年も紛れもなくこちら側であると確信すると同時、彼のアーガスから送られてきたプロフィールが頭を過ぎる。

 

 

「・・・何に、という顔だね、口で言うより見た方が早い、付いてきてくれ。」

 

「・・・」

 

頷き一つ、表情の変化に乏しい、といえるその表情はまるで冷え切った鉄の様に感じ、これが中学生であるという事に驚嘆とそして出会えた奇跡に感謝する。

 

 

彼の境遇——小学生のある時期を境に周囲から人を遠ざけるようになり、常に孤独であった事、家族である親にすら、他人の様に応じ、自らのパーソナルスペースには決して人を寄せ付けなかった事、学校では常にトップの成績を維持、成程、ギフテッドと言って過言ではないその頭脳も、日常ではそれ程ではないが——。

 

彼は、企業やゲームのサイトにて頻繁にアクセスしていた記録が残っている。

 

ログを見る限りは、ただのゲームについてのバグ報告や攻略情報だが、これを見る限り、私としては、彼はただの好ましい、何処にでもいる少年の様に思えてしまうのだ。

 

——彼は、ただのゲーム好きな、少年だ、と。

 

 

 

 

「馬鹿だ、バカがいる―――――」

 

「おれなら——」

 

「俺なら、もっと上手くやる」

 

 

そう言ってくれた彼に、思わず笑みが零れながら——宜しく頼む、と手を指し伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、彼専用の研究室が与えられ、学校が終わればここに、酷い時は行かずに研究を進めていた。

 

彼は、話してみれば、まるで年配の研究者に思え、無邪気な少年に思え、愉快な青年に思える、不思議な少年だ。

 

まるでトリックスターだ、と彼の事を評すると、彼は薄く笑いながら、お前にそんな事言われたくない、と軽口を叩いてくる、よき友人だと思った。

 

そんなある日の事だった。

 

やけに上機嫌な彼は見せたいものがあると自分の研究室へと招いてきた。

 

そこにあったのは、二つのパソコン、普通との違いがあるとすれば、仮想世界用のサーバーに接続されているという事だろうか。

 

正直、見ただけではさしもの私も、彼の研究の全容を知る事は出来ない。

 

 

——彼は、その二つのパソコンに映し出された老人と少年の姿を見せ、己が分身であると説明した。

 

——彼は、こう語った。

 

 

「最初は、自分自身を再現できたら、と思ったんだけどね、やっぱり自分だね、どちらが本物か、という話になった途端——面倒だからゲームで決めようってなってさ、脳の記憶容量というか情報処理速度というか、やっぱりスペックが悪かったみたいで、あっさり勝っちゃってさ。」

 

 

——だから、分解しようと思うんだ。

 

自分という人格を二つに分ける、それに納得しているのは自分だ、元々の私と元々の僕、それと俺とで分けよう、何、勝者は絶対だ、罰ゲームぐらい訳ないだろう?

 

元々死んだこの命、俺は一体誰なのか・・・正直、お前がちょっぴり羨ましいよ。

 

・・・岡部もこんな気持ちだったのかねぇ、いいさ、やっちゃってくれよ、ああでも——もしもゲームに勝てたのなら、ソードアートオンラインをやってたのは俺だったのになぁ・・・悔しいなぁ・・・・・・・・・

 

 

 目の前で行われたその実験を、見ていて、息を暫く無意識のうちに止めていたのか、その偉業に、異業に、そして——やがて私が考えている通りなら、私が辿る一部の未来に、畏れを抱かないといえば、嘘になるだろう。

 

 

「「ゲームをやらせろよ、俺」」

 

「・・・ああ、いいぜ、僕/私、最高のゲームを始めよう。」

 

 

後に私が彼の理論を利用して自身全ての仮想世界への、文字通りフルダイブを行う事になるそのシステムの切れ端を、彼はこう呼んでいた。

 

 

——アマデウス。

 

 

 

 

 





モチベが湧けば書くのでお気に入りするんだよオラァァン?
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