やはり俺が記憶喪失になるのは間違っている。   作:小波

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来訪者

朝目を覚ますと知っている天井だった。流石に二日連続で知らない天井ということは無いようだ。別に学校に行く必要も暫くは無いので寝ていられるのだがお腹が空いてしまいふらふらと階段を降りていく。寝て起きたばかりで足元がおぼつかず階段を踏み外してしまう。二、三段落ちただけなので少し痛い程度で済んだが小町が慌てて此方に走ってきた。

 

「お兄ちゃん!?どうしたの!」

 

「ああ小町。悪い、ちょっと踏み外した」

 

「もう...お腹すいてるんでしょ?ご飯出来たら部屋に持っていってあげるから暫くは無理しないでよ」

 

「いや流石にそこまでは」

 

「お願い。小町にそれくらいはさせて?」

 

余計な心配をかけてしまったと哀しそうに顔を染める小町に何も言えず部屋に戻った。

 

小町は直ぐにご飯を持ってきてくれた。ご飯を持ってきてくれたのは良いが何故俺の隣に座る?そして何故スプーンで掬ったご飯をふーふーしてるの?

 

「はい、お兄ちゃん。あーん」

 

「いやいやいや自分で食べられるから」

 

流石にここまでしてもらっては兄の威厳も何もあったものではない。可愛い妹からあーんとか罪悪感に押し潰される。

 

「駄目だよお兄ちゃん。暫くは小町がお兄ちゃんのお世話するから」

 

「....お前学校は?」

 

「何言ってるのさ。今日は休むよ?」

 

いやお前が何言ってるんだよ。休むよ?じゃないよ。行けよ学校。

 

「何言ってるのじゃない。学校には行けよ」

 

「でもそれだとお兄ちゃん一人になるし?小町が奉仕してあげるから!あ!今の小町的にポイント高い!」

 

「高くねえ。良いか?学校に行く金は俺達の両親が働いた金で行かせてもらってるんだそれを俺なんかの為に休むんじゃない」

 

少し強く言い過ぎたか?

 

「だって....お兄ちゃんがこんなになっちゃったの小町の責任だから。小町が、小町が牽かれてればお兄ちゃんは」

 

「ばっかばかお前な、小町牽かれて俺が無事だったらそれこそ俺は自殺してるか自分許せなくて自暴自棄になってるわ。俺は小町を、いや小町達を守れて良かったって思えてるんだよ」

 

「お兄ちゃん...」

 

「だから学校には行ってくれ。俺の為なのは嬉しいがそんな小町は見たくねえよ」

 

小町の頭を撫でながら言うと小町は、学校に行ってくれた。さて一人だな。特にやることもないし机に座り教科書類を開く、だが...やり方が全然分からない。ぶっちゃけ今の俺の頭なんて小学生6年程度だ。分かる筈もない。なんとなく分かるのは国語くらいか。読めない漢字もあるが前の文読めばなんとなく分かるし。

 

 

どれくらい勉強しただろうか時計を見ると12時を回っていた。昼御飯どうしようかと考えていると家のチャイムがなった。最初は居留守を使おうとしたがしつこい。粘着性抜群かよって突っ込みたくなるくらいにはしつこい。仕方がないので教科書を閉じて玄関を開ける。

 

「ひゃっはろー♪」

 

物凄い美人がそこにいた。昨日見た雪ノ下さんと由比ヶ浜さんもかなり美人、由比ヶ浜さんは可愛い類いだが目の前の人は大人の雰囲気を持った美人だった。

 

「あの...両親いないんですけど。どちら様でしょうか?」

 

「ありゃありゃ比企谷君。本当に私のこと忘れちゃったの?お姉さん傷付くなぁ。これでも一度会ったら忘れられたことないんだぞー?」

 

頬を少し膨らませた目の前のお姉さんはどうやら知り合いらしい。こんな美人な人と何処で知り合ったんだ?と自分に言い聞かせたいが先程からのボディータッチやら優しげな声やら、どうも胡散臭い。男の願望をそのまま人にしたみたいな人だ。だがそれが逆に偽物っぽさを感じさせる。ニコニコと微笑んでいるがそれすらも嘘っぽく感じてしまう。

 

「はあ...すいません。記憶が無いもんで。それじゃ用もないようですしこれで」

 

玄関の扉を閉めようとしたら足をいれられた。顔が少しひきつっているように見えるが気のせいだろう。

 

「ちょっとちょっとー比企谷君。折角お姉さんが来たのに連れないなぁ~。中には入れてくれないのかね?」

 

「いえなんか関わってはいけないと本能が訴えてきまして」

 

「えーひどーい。こーんな綺麗なお姉さんに話しかけられたら普通喜ばれないかな?」 

 

「俺は普通じゃないんで。それじゃ、足危ないので退けてください」

 

「嫌♪中に入れてくれるなら退けるよ」

 

「はあ...分かりました。どうぞ何もありませんが」

 

「ありがとね、それじゃお邪魔します♪」

 

「あ、そう言えば名前何て言うんですか?」

 

「んー?私?雪ノ下陽乃だよ」

 

雪ノ下?...雪ノ下雪乃さんのお姉さんか?それにしても美人なところ以外は...性格と言わないが人間的特徴の一部分が似てないな。対称的と言っても良いくらいだ。

 

「雪ノ下さんのお姉さんですか?」

 

「そっ。雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃。でも雪ノ下さんのお姉さんって呼ばれるの長いなぁ。陽乃って呼んでよ」

 

いやいきなり女性を名前呼びとかしかも歳上を呼べるわけがない。

 

「....陽乃さん」

 

「陽乃♪」

 

「陽乃....さん」

 

「んーまっそれでいっか」

 

遊ばれている。分かっているが何故か逆らえないこの人は何者なのだろうか。

 

「それで何しに来たんですか?」

 

「用がないと来ちゃ行けないのかな?」

 

「そういう訳じゃ無いですけど」

 

「なら構わないでしょ?まあ今回は用事あるんだけどね。まっそれを言う前に比企谷君お腹すいたでしょ?」

 

「まあ」

 

今からご飯どうしようか考えていたし。

 

「よしお姉さんと外食しに行こっか♪」

 

「え?」 

 

そして着いたのは某一流レストラン。服はそのままで寝間着に身を包んだ俺は手を引かれ黒塗りのリムジンに乗せられて現在に至る。にしても周りに誰もいない。広々とした洋風のレストランには現在俺と陽乃さんしかいない

 

「あの陽乃さん...完全に俺場違いなんですけど」

 

どう見てもドレスコードが必要な店である。陽乃さんもドレスコードはしてないがお洒落にかぼそい俺でもお洒落に見えるくらいはお洒落である。そんな中で俺は寝間着。居たたまれない。この場にいるのが辛いまである。

 

「気にしなくても大丈夫だよ。今日は私と君の貸し切りだから。さっ早く頼も」

 

は?この人は何を言ったんだ?

 

「貸し切り....?」

 

「そっ貸し切り。だから何も気にしなくて良いんだよ」

 

「えっと...え?」

 

戸惑い最中頼んだのはよく名前が分からない料理。運ばれてきた料理はフィレ肉という肉にフォアグラが乗っているらしい。てか物凄く小さい。綺麗な皿の中央にちょこんと乗せられているそのお肉は一口口に含むと何十倍?と聞きたいくらい濃厚で柔らかく気付いた時には喉を通っていた。殆ど噛んでいない。それだけでもジュワーと口の中に拡がる肉汁と旨味が俺の空腹を促しご飯が進む。

 

「ふふ、気に入ってくれたようで良かったよ。ここ私の御気に入りのお店なんだ」

 

「凄く美味しいです。一つ聞いても良いですか?」

 

「うん、答えないかもしれないけどね」

 

「ここに俺を連れてきた理由は、雪ノ下さんの事ですか?一昨日の事故の事ですよね?」

 

「んーまっ半分正解かな」

 

「半分?」

 

「残りの半分は君が無事かどうか確認しておきたくてね。君は知らないと思うけど、私結構君のこと気に入ってたんだよ?」

 

「...陽乃さんみたいな綺麗な人に気に入ってもらえていたなんて記憶を失う前の俺って凄かったんすね」

 

「ふふ。今もあまり変わって無いけどね。ほんと、君は優しいね.....比企谷君」

 

ふざけた態度は何処にやら急に真面目な態度になった陽乃さん。

 

「雪乃ちゃんを、私の大切な妹を助けてくれてありがとう。本当にありがとう」

 

深く頭を下げてくる陽乃さん。

 

「あ、頭を上げてください。俺はそんな対したことは」

 

「君があそこで庇ってくれていなければ雪乃ちゃんは轢かれていた。それにね...あのトラックの運転手だけど元々雪乃ちゃんを狙っていたの」

 

「っ....どういう事ですか?」

 

「その話をするには一度車に戻ってうちに来てくれるかな?何処で誰に聞かれているか分からないから」

 

「分かりました」

 

食事を終えて車に乗り走る車。陽乃さんは終始黙ったまま窓から外を見ていた。

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