やはり俺が記憶喪失になるのは間違っている。   作:小波

3 / 3
雪ノ下家

陽乃さんの家に着いて思ったことは、兎に角家が大きいだった。金持ちだとは思ったが予想を遥かに越えていた。

 

屋敷のような豪邸に入って一つの部屋に通された。そこには少し怖そうな男性と和服を来た綺麗な女性が椅子に座っていた。二人とも年齢は30過ぎだろうか。なんというか風格がある。つまり恐い。

 

「やあ君が比企谷八幡君だね」

 

「ひゃひゃい!」

 

唐突に呼ばれ声が裏返ってしまった。俺の後ろでは陽乃さんが笑いを堪えている。というか殆ど吹き出しているのでまるわかりだ。

 

「私は雪ノ下雪乃と雪ノ下陽乃の父親の雪ノ下夏乃」

 

「初めまして私は晶乃」

 

「え、えと俺は、いえ私は比企谷八幡です」

 

先程から陽乃さんが笑っているのがうっすらと聞こえる。ほんと後でどうしてくれようかこの人。

 

「陽乃。比企谷さんの前でなんですかその態度は」

 

「ご、ごめんなさいママ!」

 

あれ?陽乃さんのイメージが....何この素直な子。ママのんそんなに恐いの?やだな帰りたいなぁ。てかどうして雪ノ下さんの両親の所に俺が来てるんだ?

 

「比企谷君。すまないね態々こんな場所まで来てもらって。本来なら私達の方から伺わなければならないのだが話をするならここが良いと思ってね」

 

「まずは、雪乃を助けてくれて本当にありがとうございます」

 

雪ノ下さんの母親が頭を下げてくる。

 

「いえ本当に気にしないでください。俺が勝手にしたことです。何かしてもらおうとしてしたわけではありません」

 

「陽乃と雪乃に聞いていた通りの人間なのだな君は」

 

え?あの二人俺をどんな風に言ったの?録なこと言われてる気がしないんだが。

 

「それでは比企谷さん。椅子に座って下さい。これから貴方に大切な話があります。陽乃も此方に座りなさい」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

「私から話します。比企谷さん、雪ノ下建設を知ってますか?」

 

「少しは」

 

「ならそこは省きます。雪ノ下建設の社長が私の夫である夏乃さんです。ですが夏乃さんにはもう一つの顔があります」

 

え?社長以外にもこの人肩書き持ってるの?何それヤバすぎるだろ。

 

「そのもう一つの顔は県議会議員です。職業柄恨まれもします」

 

成る程、社長であり尚且つ県議会議員か、そりゃ恨みを持たれてもおかしくない。

 

「一昨日のトラックの人を調べました。どうやら敵会社の一人だったらしく、その会社を潰したんですがその逆恨みで雪乃を狙ったようです」

 

え?なんか不穏当な言葉が行き交っているんですが?潰したんですか?会社を?まじ何者だろうかこの二人は...。職を失ったことに対しての逆恨みか...。話の流れは分かったがどうして俺をここに連れてきたんだ?

 

「やっぱり雪乃の独り暮らしを許した私の責任。雪乃は連れて帰るべきね」

 

「お母さん、今回は雪乃ちゃんのせいじゃないし、それで連れ戻すのは」

 

「陽乃、何を言っているの?雪乃が狙われたのよ?そもそも雪乃が独り暮らししているのだって認めたわけでは無いのよ。あの子に独り暮らしはまだ無理だわ。貴方もそう思うでしょ?」

 

そこで何故俺にふる?いや分からんし、家族の揉め事に他人を巻き込むなと言いたいが陽乃さんが俺をここに連れてきた目的はこれか。母親の説得か。いや無理だろ。ママのんめっちゃ恐いんだけど。

 

「えーと...その陽乃さんが一緒に暮らせば安心なのでは?」

 

独り暮らしより二人でいる方が安全だろう。何よりシスコンだし。

 

「それでは駄目よ。陽乃だけでは安心出来ません」

 

いやならいっそのことママのんも住んじゃえよ。でも雪ノ下さんはいやがるんだろうなぁ。そもそも一緒に暮らしてないってことはそういうことだと思うし。

 

「ならこうしたらいいんじゃないか?」

 

おっパパのんが動いたぞ。俺必要なかったな。

 

「比企谷君の家で雪乃も住まわせてもらえば安心できるじゃないか」

 

「え?」

 

俺の戸惑いの声は空を切るようにママのんも同意して話が進んでいく。いやおかしいだろ。

 

「あの...」

 

「どうしたの?」

 

「いえ雪ノ下さんが知らない男と一つ屋根の下は不味いのではないかと」

 

「知らない男ならそうだが君なら信用している。それになんなら結婚だって認めている」

 

「は?」

 

「元々私は君の人柄を見るために呼んだのだよ。君という人間を見させてもらった。君になら雪乃を任せられる」

 

いや任せられるっておかしいでしょうが。そもそも俺には記憶が欠落している。それを知ってるのか?

 

「俺はそんな立派な人間ではありません。それに記憶だって無くしています、今のままでは大学を行くにしても就職するにしても厳しいと思います」

 

「そのことなら問題ないよ。雪乃と陽乃が教えてくれるだろう。それに雪乃と結婚すれば私の後を継いだって構わない。まっそれなりに覚えてはもらうがね。何結婚は決定ではないさ、頭のすみにでも置いておいてもらえればそれで構わない。どうかね」 

 

「俺は構いませんが、俺の両親と雪ノ下さん本人は」

 

「君の御家族には既に許可を貰っているよ。雪乃は、まあ陽乃が何とかするだろう」

 

「任せてパパ」

 

自信満々に言い切ったな。てか俺の両親にいつ許可を取ったのかな。

 

その後ようやく解放された俺は家に帰ってきた。時刻は4時を回っており少し日が落ち始めている。陽乃さんは雪ノ下さんを迎えに行くらしく飛び出していった。俺は自分の部屋に戻り少し休むためにベットに入った。

 

 

どれくらい眠っていたのだろうか一階から聞こえてくる声で目を覚ました。

 

「この声は...」

 

三人の声が聞こえた。一人は最愛の妹である小町の声。二人目は今日一日騒がしてくれた陽乃さんの声。もう一人は、病室で見た雪ノ下さんの声だった。

喧嘩しているわけでなく何処か楽しそうな声が聞こえてくる。

 

楽しそうな声が止んだと思ったら階段を上がってくる足音が聞こえた。慌てて何故か寝たふりをしながら少し目を開けると雪ノ下さんだった。

 

「まだ、寝ているのね....」

 

すいません。起きてます。

 

「ごめんなさい。私は本当に貴方に頼ってばかりね。姉さんの言う通り」

 

寝てるふりをしている俺の近くまで来た雪ノ下さんは、優しく俺の頭を撫でてくる。ひんやりとした手は心地よく恥ずかしさと嬉しさで悶えそうだった。

 

「比企谷君...八幡。私を助けてくれてありがとう。でも次はきっと私が貴方を助けるわ」

 

雪ノ下さんは立ち上がり部屋を出ていく。俺の顔は、リンゴのように真っ赤になっているだろう。

 

少ししてから一階に降りると小町と雪ノ下さんと陽乃さんが夜ご飯を作っていた。

 

「あ、お兄ちゃん。おはよー」

 

「今は夜だぞ」

 

「あ、そっか。それじゃこんばんわ?」

 

「比企谷君お邪魔しているわ」 

 

お邪魔している、というより住むんだよな?頬若干赤いけど熱でもあるのか?

 

「雪ノ下さん、少し頬赤いけど熱でもあるんですか?」

 

「なっ!」

 

ガシャンと調理器具が落ちる音がする。

 

「雪乃ちゃん、慌てすぎだぞ」

 

「うう...ごめんなさい。それと比企谷君」

 

「はい?」

 

「敬語は止めてちょうだい。酷く不愉快だわ、それと前のように私のことは雪ノ「そうそう

前みたいに雪乃って呼ばないと!」ね、姉さん!」

 

え?俺、雪ノ下さんの事、雪乃って呼んでたの?まじで記憶失う前の俺って一体...。

 

「雪乃ちゃん。お母さんから伝言。比企谷君と結婚するのは私でも良いらしいよ?」

 

何か言っているが声が小さすぎて聞こえない、何を言ってるんだ?

 

「なっ!....比企谷君」

 

「は....おう」

 

「私のことは雪...雪乃って呼びなさい」 

 

「ゆ、雪乃」

 

「っ...そ、そうよ」

 

「あはははは。もう最高。さっ妹ちゃんご飯作っちゃお!」

 

「合点です!!義姉さん!」

 

何故か小町のお姉さんが違う風に聞こえるんだが...気のせいだろうか。

 

顔を真っ赤にした雪乃と笑顔が絶えない陽乃さんと可愛い妹の小町と一緒に食べるご飯は凄く美味しかった。陽乃さんと雪乃の料理のレベルがおかしいくらい高いらしいが小学生6年生レベルの俺に分かるはずもない。




次回は一色いろはが登場します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。