コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~ 作:スターゲイザー
感想で描写不足を指摘されたので、本話を第十一話として、昨日投降した『ダモクレスの空』を第十二として修正します。
一週間後ほどに正しい順番に修正予定です。
ですので、本話は昨日投降した『ダモクレスの空』の前、『シュナイゼルの仮面』の後のお話となります。
続きを期待された方には申し訳ありません。
シュナイゼルとの会談から一時間後に、アッシュフォード学園に黒の騎士団の幹部が集結していた。
斑鳩の艦長である南とパスしたラクシャータを除いて大体のメンバーが揃っていた。逆にジノとアーニャはホテルへと戻された。
アーニャに口止めはしなかったので、ジノにも大体の話は伝わるだろう。
旧扇グループから扇と杉山、元日本軍から藤堂と千葉に朝比奈、超合衆国の議長である神楽耶と議員である天子、その護衛の星刻。ルルーシュとC.C.、カレン、ジェレミアを合わせた面子が生徒会室に集まった。
「急な呼び出しにも関わらず、良く集まってくれた。礼を言う」
会談が行われた生徒会室に集った面々を前に、仮面を被ったゼロが深々と頭を下げた。
「ディートハルトの姿が見えないが」
「あいつには先にこの集まりで話すべきだった内容を話して、別の仕事をしてもらっている」
しっかりと藤堂の隣の席を確保している千葉が集まった面々を見ながら聞いてきたので、とあることをしてからディートハルトに通信を行ったルルーシュは淀みなく答える。
「ブリタニアとの決戦が近いということを分かった上で集めたのなら、大事なことだと考えてもいいのだろうな」
「残念だが、シュナイゼルとの会談とは直接の関係はない」
天子と共に出席した黎星刻はシュナイゼルの恐ろしさを知るだけに、対策の為の会議だと思って来てみればゼロから関係のない話であると前置きされて眉を潜める。
「君も…………いや、ここにいる全員が興味があることだ」
朝比奈省吾から集められた理由を直接聞いていた藤堂鏡志朗は仮面に手をかけたゼロを静かな眼差しで見つめる。
「お、おい……!?」
訳も分からないまま斑鳩から呼び出されてやってきた扇要はゼロが仮面を外そうとしているのに気づいて慌てて席を立った。
「――――――改めて、自己紹介しよう」
外した仮面を机の上に置き、世界中の人が知りたいと思っている奇跡の男ゼロは素顔を晒していた。
「俺の本当の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…………神聖ブリタニア帝国の第11皇子であり第17位の皇位継承権を持っていたことがある」
世界を動かす一大勢力のトップといっても過言ではないルルーシュは全ての真実を明かす。
「ブリタニアの皇子…………それは俺達を騙していたってことか?」
「見方によってはそうなる」
恐らく最も衝撃を受けているであろう扇が唇を震わせている姿を見ながら、ルルーシュはいっそ穏やかに答える。
「皇子といっても皇位継承権は捨てている。八年前の日本侵攻時にブリタニアでは死んだことになっているから皇子でもない」
「八年前? 日本侵攻時って……」
「俺とナナリーは留学という名目で日本に送られている。戦争のドサクサに紛れて死んだことにした」
朝比奈が眉を顰める。ルルーシュが見た目通りの年齢であるならば、戦争前の日本に兄妹が送られたのが人質であったことは誰の目にも明らかだからだ。
「全ての始まりは俺の母マリアンヌが暗殺されたことに端を発している」
今でもルルーシュの胸の奥に、ジクジクと血が染み出すように傷を自覚しながら口にする。
『死んでおる。お前は、生まれた時から死んでおるのだ。身に纏ったその服は誰が与えた?家も食事も、命すらも!全て儂が与えた物。つまり!お前は生きたことは一度も無いのだ!然るに!何たる愚かしさ!! ルルーシュ、死んでおるお前に権利など無い。ナナリーと共に日本へ渡れ。皇子と皇女ならば、良い取引材料だ』
まだルルーシュは年齢が二桁になったばかりの子供だった。親の愛情を疑わず、皇室の一員として与えられるばかりだったことに疑問を挟むことすらもしなかった時にシャルルが発した全てがルルーシュを圧倒し、幼き体は耐えることすら出来ずに倒れ込んだ。
「俺達は常に暗殺の危険に晒されていた。日本は敵地で、ブリタニアからも狙われる可能性があった」
「ブリタニアからも? 皇子だったのに」
「皇子だからでしょう」
良くも悪くも一般人だった杉山賢人に、キョウト六家として高き地位を持つ皇神楽耶は強い理解を示していた。
「立場が変わろうとも血は変わりません。何かの切っ掛けでブリタニアに戻り皇位継承権が復活しないとは限りませんから、その前に敵を排除しておこうという考えを持つ者がいても何もおかしくはありません」
「ブリタニアは皇族同士で血みどろの争いを繰り返している。前皇帝シャルルも皇位継承権を持つ皇子・皇女同士を競わせ、勝ち残った者を跡継ぎにするというスタンスをとっていた。碌な護衛もいない元皇子達を排除しておこうと考えてもおかしくはない、か」
高い地位の者が権力争いをするのは珍しいことではないと知っている星刻も重く頷く。
大宦官によって天子が振るうべき権力を握られていたから中華連邦ではそのようなことは起きなかったが、ブリタニアで起こった血の紋章事件は有名な話であったから、ルルーシュが日本にいても暗殺される可能性を危惧していたのも無理はないと捕捉する。
「話が早くて助かる」
「藤色の目をした鬼に躾けられましたから」
一般人には理解し難い話を分かりやすく表現してくれた二人に礼を言ったルルーシュに神楽耶は少し拗ねながら言った。
「鬼?」
席に座っている他の皆と違ってルルーシュの味方であることを示す為に立っていたカレンが頭を捻る。
「覚えてらしたのですね、神楽耶様」
ルルーシュですら暫く後になってから思い出した八年前の出来事に、十歳にもなっていない年頃だったはずの神楽耶が覚えているとは思っていなかったので少し驚く。
「未来の旦那様に躾けられましたもの」
冗談めかして神楽耶が言うとルルーシュの傍に立つカレンとC.C.の目が剣呑さを持った。
「変なことを言わないでもらいたい」
「嘘は言ってませんわ」
皇家の力を自分の力だと錯覚して増長していた神楽耶の思い上がりを正してくれた藤色の瞳をした鬼は困ったように口をもごもごとさせる。
「それに以前に言った三人官女のお話が本当になりそうですわね」
初めて自分で見つけて自分で選んだ殿方が、今の神楽耶が進む道を示してくれた鬼であったというなら運命の相手に他ならないと笑う。
「三人官女って?」
「さあ、私も知りません。後で神楽耶様に聞いてみるのが良いかと」
三人官女の意味を理解している日本組はともかく、分からなかった天子が隣の星刻に聞いている姿にルルーシュは焦りを覚えた。
「それはともかく」
これは軌道修正しないと自分が不利に追い込まれると判断したルルーシュは話を本筋に戻そうとする。
「ルルーシュ、後で話がある」
「校舎裏がいいかしら?」
「いや、クラブハウスでいいだろう。誰の物か体に思い知らせてやる」
ルルーシュの後ろでC.C.とカレンがそんな話をしていたが聞こえないことにしておいた。
三人の後ろに立つジェレミアはカカシの如く黙しながら、鈍い主君に後で女心の指導をしようと心に決める。
「暗殺の危険を恐れて死を偽装して、この学園を経営しているアッシュフォードに匿われて学生として過ごして来て、去年に日本側のレジスタンスによるテロに巻き込まれた。そのレジスタンスグループこそ扇グループだったことは今更言うまでもないことだが」
つまりは平和に暮らしていたルルーシュを結果的にとはいえ、闘争の場に引きずり込んだ遠因は扇らにあるということで視線が集中する。
「俺は扇らを非難する気は無い。寧ろ感謝しているぐらいだ」
手を上げて宥めたルルーシュは苦笑を収める。
「あの日から俺はずっと嘘を吐いていた、生きているって嘘を。名前も嘘、経歴も嘘…………嘘ばっかりだ。全く変わらない世界に飽き飽きして、でも嘘って絶望で諦めることも出来なくて……」
C.C.からギアスの力を与えられて、ルルーシュは幼い頃に決めたブリタニアを壊すという誓いを果たす為に動き出した。
「ゼロという仮面を被ったのは正体を知られないようにする為だった。ブリタニアの皇子である以前にブリタニア人が日本を解放すると謳っても誰も信じてはくれない」
「ああ、恐らく素顔だったら俺も容易には信じなかったと思う」
助けられたといってもブリタニアに対するレジスタンス活動をしていた扇もゼロを信じることはなかっただろう。なにしろ、素顔を晒したルルーシュはどう見ても学生ぐらいの年頃にしか見えず、学生の戯言と哂ったかもしれない。
「それじゃあ、枢木スザクの処刑の時にジェレミアがゼロを逃がしたのは」
「あの一瞬にルルーシュ様より命令を下されたからだ」
ずっと疑念を覚えていた杉山も、ルルーシュに仕える今のジェレミアの姿を見れば納得せざるをえない。
「オレンジというのは口からの出任せだ。ジェレミアが協力してくれるかは未知数だったが」
「皇族の命令とあらば、どんな不名誉を被らされようとも」
騎士とはかくあるべしというように、ルルーシュの一歩下がった場所で立つジェレミアを見てギアスのことに思い至る者はいない。
「素顔を晒さない者を信じる者はいない。支援者はいたが、日本人に俺を信じさせる為には結果を示し続けるしかなかった」
帝国の皇子からただの学生に、そしてテロリストしての仮面を被ったルルーシュが他者に信じてもらうには結果を出すしかない。
「だが、次の総督であるコーネリアにはレジスタンス程度では勝てないことが分かった」
「だから黒の騎士団を作った、か」
ルルーシュの予定では黒の騎士団の結成を明かすのは、もう少し後に公表するはずだったがホテルジャックの件で身内を助ける為に早めたことまでは言わない。
「ゼロ、いやルルーシュ。一つだけ聞きたい」
「なんだ、藤堂?」
ホテルジャックのもう少し後に黒の騎士団に入ることになった藤堂に顔を向けるルルーシュ。
「八年前、君や妹君のことは人伝ではあるが聞いていた。当時、政府と強い繋がりがあった桐原翁は君を知っていたのだろう」
「桐原様は私と共にルルーシュ様と会っていますわ」
「そうか。ならば、キョウト六家が支援を決めたのも納得できる」
当時、藤堂はルルーシュが住んでいた枢木神社の麓の武道道場で門下生だったスザクと面識があった。ルルーシュとの面識はないが、彼の話はスザクから何度も聞いてた。
神楽耶の言もあって桐原泰三とルルーシュが面識があったのならば、全面的な支援を行った背景にも納得がいった。
「黒の騎士団は、君が作り上げた超合衆国は世界の命運を握るまでの力を手に入れた。シュナイゼルに勝てば、世界を支配することだって出来る」
望む望まない以前に、出来るということが重要なのである。
ルルーシュがシュナイゼルと同じ血を引いている以上、同じことをするかもしれないという懸念がある。
「ゼロ、君はどんな世界を望む?」
ルルーシュではなく、ゼロとしてどんな世界を作るつもりなのかと藤堂は問いかけた。
「…………ナナリーは歩けず、目も見えない。世間的に見れば弱者になる。匿ってくれているアッシュフォードも何時、手の平を翻すか分からず、ブリタニアが存在する限り俺達は怯えながら暮らさなければならない。ブリタニアを、皇帝シャルルを廃しなければ俺達に平穏はないと思っていた」
問いに対しての返答に誰もが耳を傾ける。
「誰もが怯えて暮らす必要のない優しい世界を俺は望む」
ルルーシュが立ち上がった理由であり、行動原理でもあった。
「…………意外にロマンチストだったんだな」
「否定はしない。一度はお前達を見捨てようとしたこともな」
皮肉屋な朝比奈が思わず笑った直後に、再びの衝撃がルルーシュの口から暴露されて例外なく全員の目が見開かれた。
「ブラックリベリオンの時、改造されたジェレミアと戦ったのは本当のことだ。だが、その前、トウキョウを離れたのはナナリーが誘拐されたと聞いたからだ。焦って、扇を捨て駒にしようとしたことも否定しない」
逆にルルーシュは懺悔をするように目を閉じ、自身の視界を閉じた。
「扇さんに言われてゼロの後を追った私は神根島で向かい合っているゼロとスザクを見つけました。そこでゼロの正体がルルーシュだと知って動揺して逃げ出しました」
カレンの声を耳に入れたルルーシュはゆっくりと瞼を開く。
「ジェレミアとの戦闘をC.C.に任せて降りた神根島でスザクに捕まり、そのまま皇帝の前に引きずり出された俺はゼロであった記憶を消された」
「記憶を……? そんなことが出来るのか?」
「現に俺は記憶を失いエリア11に戻されて、思い出すまでただの学生をやっていた」
杉山が困惑しているが、ギアスのことを説明するわけにはいかないので事実だけを告げて納得させる。
「思えば、あの式典でのユーフェミアは、ユフィはおかしかった。彼女は俺の正体に辿り着いていて、皇籍を返上して受け入れようとしていた。そんな彼女に負けた俺と握手した瞬間、何かに抗うようにして飛び出し、日本人の虐殺を指示した。それまでのユーフェミアからは考えられない行動だ」
「つまり、ブリタニアには記憶や意識を操作する技術があると?」
千葉が信じれない様子で藤堂を見る。
人は自分を納得させる材料を提示させれば後は勝手に折り合いをつける。
「あのシャルルならば皇族が自分に逆らわないように、意の沿わない行動をしないように生まれた時から何らかの処置や偽装を施していたとしても驚かんよ俺は」
ギアスという力を知らなければ、後は事実を繋ぎ合わせた結果が真実となる。
ユーフェミアに罪はない。辻褄は後で幾らでも合わせられるのだから、ユーフェミアに恨みが行かないようにしたかった。
「シュナイゼルは倒す。ブリタニアをぶっ壊す。そして優しい世界を作る。それが今の俺が行うことであり、全てだ」
大まかなことを語り終えたルルーシュはゼロの仮面を手に取り、被った。まだゼロでいる為に。
「各自が呑み込むにも時間がかかるだろう。しかし、時間は待ってくれない。このことを公表するも良し、俺の下に付くことは出来ないと離れるも良し」
結局、ルルーシュは仮面を被るしか生きることを許されないのかもしれない。それでもこの足を止めないと決めたのだから。
「今日一日で決めろ」
決めるにしてもルルーシュがいては邪魔になる。生徒会室を出ると、そこには幹部にも関わらず、面倒事は嫌いと言って参加しなかったラクシャータが立っていた。
「どうした、ラクシャータ」
「ゼロにプレゼントを持ってきたのよ」
そう言って渡されたのはタブレット型端末だった。
受け取ったタブレット型端末を見下ろしたルルーシュは仮面の中で目を細める。
「何かの設計図…………この大きさは、まさかダモクレス?」
表示されているデータ内の構造の寸法に符合する物で真っ先に思い浮かんだのがダモクレスだった。
「ラクシャータ、これは」
「プリンより、だってさ。似合わないことをするもんでしょ、伯爵も」
物憂げなラクシャータが告げた送り主に心当たりのあったルルーシュは、シュナイゼル側も一枚岩ではないことに気付いた。
「助かる。感謝するぞ」
「本人に言ってあげたら」
キセルをユラユラとさせて、用は済んだとばかりにラクシャータはルルーシュに背を向ける。
「ああ、そうそう」
何歩か進んで足を止めて顔だけ振り返る。
「幹部連中を集めたのに、玉城がいないのはなんで?」
「口が軽い奴が幹部なわけがないだろう」
「ははっ、違いないっ!」
一応、初期からの付き合いなのに集まりに呼ばれもしなかった玉城であった。
「一つだけ聞いていいか?」
エンジン音だけが響く中で、仮面を付けっ放しのルルーシュは前を見たまま両隣に聞いた。
「奇遇だな。私も聞きたいことがある」
「そうそう、この車はどこに行ってるのよ」
機上の人ならぬ車上の人となったルルーシュはジェレミアに運転を頼んで車を出してもらったのだが、何故かC.C.とカレンも付いて来てしまった。
「それはともかく、どうして助手席に座ろうとした俺を後部座席に引き込んだ? 三人で座る必要はないだろう」
頑なに目的地を明かそうとしないルルーシュは手元のタブレットを操作しながら口にする。
「ルルーシュって本当に女心が分かってないのね。C.C.、今ならアンタが言っていたことが理解出来るわ」
「分かってくれるか、カレン」
本来ならば二人用の後部座席に三人で座ると狭いことこの上ないのに、タブレットを操作する為に前傾になっているルルーシュの頭の後ろで勝手なことを言う二人。
「人の頭の後ろで勝手なことを言うな」
「流石、アーニャだけでなく神楽耶にまで手を付けていた男は言うことが違う」
「手を付けてなどいない。だから、腕を抓るなカレン」
アーニャのは騎士としての忠義だし、神楽耶は言っては悪いが勝手に妻を自称しているだけ。
ルルーシュに非はないのにC.C.は剣呑な目を向けて来るし、カレンは服の上から腕を抓ってくるしで引っ掻き回されている気しかしない。
「じゃあ、せめてどこに行くかぐらい言ったら?」
「はぁ、分かった」
シュナイゼルと戦う際の作戦案を五十ほど入力したところで観念したルルーシュは頭を上げて嘆息する。
「病院だ」
「病院? 誰か入院してたっけ」
心当たりのないカレンが考えるも答えは出ない。当然だ。黒の騎士団やその関係者に会いに行くのではないのだから。
「コーネリアに会いに行く」
「やっぱり女の所か」
「何故、そうなる?」
コーネリアがどうして日本の病院にいるのか、今のタイミングで会いに行くのかを疑問に思うはずである。思わずルルーシュは呆れた様子で言ったC.C.を見た。
「本当のことだろ」
「そうだが……」
生物学的に言えば間違いなくコーネリアは女性だがC.C.の言い方には棘がある。
「それで、コーネリアに会いに行く理由は何だ?」
それを先に聞いてほしかったルルーシュは憮然とした面持ちを浮かべていたが答えないわけにはいかない。
「ここまで付いてきたんだ。来れば分かる」
ルルーシュがこの件についてはもう語る気は無いと分かると、カレンは気になっていたことを確かめようと口を開いた。
「ねぇ、ルルーシュ。ギアスって私にもかけれる?」
「どうした、急に」
「いいから答えて」
やがて見えて来た目的の病院を視界に入れながらルルーシュは考える。
「ジェレミアのギアスキャンセラーを受ければ、恐らく可能だ」
ロロに撃たれたシャーリーに『死ぬな』とかけたギアスが効いたのを覚えていた。
その前に、ジェレミアがギアスにかけられたSPのギアスを解く為に街中でギアスキャンセラーを何度も発動させたことを聞いた時、一つの推論が出来上がった。
(一度ギアスを使った人間にも、ギアスキャンセラーを使えばもう一度ギアスにかけることが出来る)
当然、その場合は以前にかけた命令は打ち消されるが利点は十分にある。
「俺はもうギアスを使う気は無いぞ」
「え、なんで?」
「ギアスは、王の力は人を孤独にする、か」
「ああ、今の俺にギアスは必要ない」
便利な物があるのならば使うべきと考えたカレンだったが、ブリタニアと同じ土俵に上がったのならば下手な行動が命取りになると知っていたルルーシュはC.C.の言葉にうなずきながら安易な手に頼らないことを告げる。
「失うのが怖いからだろ」
ボソリと呟いたC.C.が本音を言い当てていたが、ルルーシュはもう何も言おうとしなかった。
「でも、今のままじゃスザクに勝てない」
「スザクに勝つのは簡単だ。ジェレミアのギアスキャンセラーを使えば。生きろというギアスが常時発動している状態のあいつには致命的だ」
ギアスが発動し続けているということは、死にたいと思い続けていると同じ。ギアスが解ければスザクは躊躇いも無く自死を選ぶ。
「それでいいの? 本当に」
「良いも悪いもない。アイツは敵だ。それ以上でも、それ以下でもない」
仮面を被っているルルーシュの表情は伺い知れない。だが、カレンはそれで良いとは思えなかった。
「でも、そのギアスキャンセラーで確実にランスロットに乗っているスザクを捉えられるの? 足の遅いジークフリートで」
「難しいと言わざるをえんでしょうな」
テレビで見た、エナジーウィングから見て紅蓮と同じ第九世代のランスロットの機動力を思い出したジェレミアも正直な感想を口にする。
「キャンセラー発動時はどうしても無防備になってしまいます。仮にギアスを解除したとしても、攻撃が止まるかは未知数」
ジークフリートの大きさも考えれば、ギアスキャンセラーが効く間合いにまで接近されれば如何なジェレミアであっても撃墜されるのは目に見えている。試すにはあまりにも分の悪い賭けだろう。
「ぬぅ、そう言われると」
改めて考えたルルーシュも唸らざるを得なかった。
「だから、私にギアスをかけて」
「ギアスをカレンに?」
「ナイトオブワンの映像を見たけど、今のスザクに勝つ為には私はもっと強くならなくちゃいけない。でも、紅蓮はもう限界まで強くなってるし、人間そう簡単に強く成れたら苦労もしない」
その為にカレンが思いついたのがギアスだった。
「スザクもギアスを受けて強く成ってるんでしょ。なら、私だって」
「…………だが、なんとギアスをかける? 『生きろ』とかけたスザクのあれは尋常ではない精神状態で初めて有効に活用できるものだ」
「簡単よ」
ルルーシュではなくゼロが黒の騎士団のエースであるカレンに望む物はたった一つ。
「『勝て』、に決まってるじゃない」
ジェレミアがギアスキャンセラーを発動して危うく事故を起こしかけたことで、これは仕方ないとルルーシュはカレンにギアスをかけた。
その直ぐ後、病院に到着し、ゼロの姿に騒然となる待合室に頓着せず、案内図を見て目的地の病室へと向かう。
「お久しぶりと言った方がいいかな、コーネリア」
ノックもせずに病室に入ったゼロは、開口一番にベッドで横になっているコーネリアに向かって挨拶する。
「ゼロ!? 何故ここに!」
「いい、ギルフォード」
主人の見舞いに来ていたギルバート・G・P・ギルフォードが立ち上がっていきり立ったが、ベッドから起き上がることも出来ないコーネリアが制止する。
「姫様、しかし……」
納得のいっていないギルフォードだったが、ゼロが仮面を外すとそちらに視線を移して目を見開いた。
「ちょ、ちょっとゼロ……」
「黙ってろ、カレン。私達が口を挟んではいけない」
仮にも何度も戦って来たコーネリアに正体を明かそうとしているルルーシュを止めようとしたカレンの腕をC.C.が抑えた。
「やはりお前がゼロだったか、ルルーシュ」
素顔を晒したルルーシュの顔を見ても驚きもしないコーネリアは落ち着き払っていた。
「ええ、その様子では誰かから聞いていましたか」
「シュナイゼルから、な」
恐らくそうだろうと思っていたルルーシュにも驚きはなく、嘗ては仲が良かった腹違いの姉弟はその過去を思わせない凍てついた視線を交わし合う。
「ゼロがルルーシュであると聞いて、寧ろ納得したよ。動機はやはり復讐か」
ダールトンの分析は当たっていたな、とブラックリベリオンの時と同じことを言うコーネリアにルルーシュは目を細める。
「復讐、か。今は、どうだろうな」
「何?」
復讐だけが動機だった時間はもう過ぎ去った。ナナリーの為という理由も、一度は死んだと確信しても歩みを止めなかった時点で使えない。
「今の世界を壊し、新しい時代を作る。ナナリーが…………ユフィが求めた優しい世界を作る為に俺は戦う」
ギリッ、と歯を食い縛る音が病室に響いた。
「ギアスという卑劣な力でユフィを操り、捨て駒のように殺した男の言葉とは思えんな……!」
体が動けるならばどんなことをしても殺してやると苛烈な目で語るコーネリアから放たれる殺気は、思わずカレンが身構えるほどだった。
「ユフィをギアスで操ったのは確かに俺だ。だが、ああするしかなかった」
「貴様ぁっ!!」
「コーネリア様っ!?」
激昂するコーネリアが痛む体を押して起き上がったのを見たギルフォードが慌てて抑えつける。
「あの時にはギアスを解除する方法が無かった。俺が冗談で口にした日本人を虐殺しろという言葉でギアスにかかってしまったユフィに、あれ以上の罪を重ねさせないようにするには殺すしかなかった」
「誤ってかけただと……っ!? 世迷言を!!」
「信じれないだろうが事実だ」
傷口が開きかねない勢いにギルフォードが必死で抑える中でルルーシュは、特殊コンタクトを外してギアスのマークが常時浮かんでいる左目を見せる。
「ユフィは独力でゼロの正体に辿り着いていた。あの式典で邪魔だったユフィにゼロを騙し撃たせるのが俺の計画だった」
ルルーシュの目的は最初から皇帝シャルルとブリタニアという国の在り方を壊すだけで、多くの犠牲を望んでいたわけではない。
日本人を虐殺させては無駄にブリタニアに対する憎しみを煽り過ぎてしまう。犠牲を出すにしても最少に留めることを目標にしていた。何よりも日本人を虐殺させるなど、言ってはなんだが効率が悪すぎる。
「俺はユフィに負けた。皇位継承権を返上してでも、俺とナナリーを守ろうとしてくれたユフィに絆されたんだ」
皇族の地位にある人間にとっては自分の全てを奪われるに等しい、あの孤独と絶望感を知るルルーシュだからこそユーフェミアの決断の重みを知っていた。
「…………ギアス嚮団にあったレポートに、ギアスの力を使い過ぎればいずれはそれに呑み込まれてしまうとあった。あの時、あの瞬間にそう都合良くそんなことが起きるというのか」
「ユフィは俺の初恋だった」
腹違いの妹だったけれど、疑り深いルルーシュをして彼女に仮面は不要と思えたほど裏表がなく温厚で心優しい性格をしていたユーフェミアがきっとルルーシュの初恋だった。
「だから――」
何かを言おうとしたルルーシュは口を閉じた。
許しを乞おうと、謝罪しようと、どんな建前や言い訳を述べようとも、死んだユーフェミアが生き返ることはないのだから。
「あなたには、俺を撃つ理由がある」
ルルーシュは懐から銃を取り出し、コーネリアが横たわるベッドに向かって投げた。
危なげなくキャッチしたギルフォードから銃を奪い取ったコーネリアが銃口をルルーシュに向ける。
「ルルーシュ、アンタ……!?」
カレンが止めようとしたがC.C.に止められた。
服に防弾対策をしているジェレミアは病室の外で見張っており、幾らカレンの身体能力が並外れていようと、この間合いでは銃を撃つ方が早い。
「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」
迫る死を前にしてもルルーシュは怯えず、ただコーネリアを見つめる。
「ルルーシュっ! 私が撃たないと思ったか!」
「いいや、あなたがユフィを溺愛している姿を良く知っている。その愛情はブリタニアや世界を想う気持ちよりも強いこともな」
「ならば何故、私に銃を渡した!」
「言ったはずだ。あなたには俺を撃つ理由がある」
銃に弾が入っていないなんてこともない。
ジェレミアから銃を借り、弾が入っていることを確認してコーネリアに渡したのだから。
「どんな理由があろうとも、言い訳をしようともユフィを殺した事実に変わりない。シュナイゼルとの戦いにおける作戦案と非常時の対応策は一通り記しておいた。星刻と藤堂達がいれば、ゼロの中身がすり替わっていようと問題はない」
ここでコーネリアに撃たれて死んでも、ルルーシュがいなくても回るように事前に準備は終えている。
「それだけの覚悟があるなら……」
コーネリアは未だ収まらない感情を無理に押し留めながら銃口を下げ、烈火の目でルルーシュを見つめる。
「―――――――――――になれ」
「何だと?」
「それこそがお前に与える私からの罰だ」
ギルフォードやカレンにも予想外なコーネリアの要求にルルーシュは片眉を上げた。
原作との変更点
・ルルーシュが自分から身バレする。
・ドラマCD R2 Sound Episode 6の「皇神楽耶 鬼に 会う」の流れを汲んだ神楽耶とルルーシュの関係(「皇神楽耶 鬼に 会う」の後に桐原と一緒にルルーシュ・ナナリーに会う)
・でも、ギアスのことは言わない。
・ロイドの情報流出
・ハブられる玉城。
・真実を知ったコーネリアとの対面。しっかりと生きていたギルフォード。
・ギアスのことを知っているので本当の意味で全てを話し、生殺与奪権を預けたルルーシュにコーネリアが与える罰とは?
アーニャは残りたがったが、ジノに連行されて行きました、残念。
アーニャから話を聞いたジノは顎を落とし、コーネリアが最後に言った罰に絡む■■になった面白いなと思ったそうな。
ジノのやる気も当社比120%で上昇。
流石に毎日更新はもう厳しいかも。