コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~ 作:スターゲイザー
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帝都ペンドラゴンにあるアリエス宮は嘗て悲劇の地であった。
テロリストが襲撃し、皇妃マリアンヌと執事二人が死亡。目撃したナナリー皇女殿下も足を撃たれ、事件のショックで目も見えなくなった。事件の数日後、ルルーシュ皇子は当時のシャルル皇帝に謁見を求めた末、不評を買って日本に留学という名目で人質として送られた。
その彼が皇帝に成るなど、当時は誰も予想だにしていなかっただろう。その当人であるルルーシュ本人もまた。
「不思議なものだ」
ある意味で因縁の地であるアリエス宮の屋外テラスにて、第百代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは己の数奇な運命を振り返って紅茶の入ったカップを揺らす。
「何がだい?」
「こうやって俺とお前が向き合って紅茶を飲んでいることにだ、スザク」
既に賢帝とも名高いルルーシュに雑な言葉を向けられたスザクは自身の為に淹れられた紅茶には手を付けずに苦笑する。
「まあ、僕達は敵同士であったこともあるわけだけど」
「嘘をつけ。大体、敵だったじゃないか」
ちょっと天然が入っている親友の前で優雅に足を組んで座っている麗しい皇帝は鼻を鳴らした。
「俺がどれだけスザクに苦しめられてきたと思っている。二度や三度ではないぞ」
戦術で戦略をひっくり返すランスロットを操り、黒の騎士団の前に立ち塞がったことを皮肉る。
「あんまり人のことは言えないんじゃないかな」
皇帝に気を使って明言はしなかったスザクはようやく紅茶の入ったカップに手を伸ばす。
「この話題は止めておこう」
「その方が良いと思うよ」
あの頃のことは傷を穿り返すだけなので暫し無言を挟む。
「取りあえず、ご苦労と言っておいた方が良いのか」
先に次の言葉を吐いたのはルルーシュだった。
「どう致しまして…………っていうのも変な話だね。僕本人としては、こんなに早く出てきてしまったことに納得はいっていなけど」
「寧ろ現場の兵でしかなかったスザクには重すぎる罰だと思うぞ、十年は」
「そうかな……」
やはり紅茶よりも緑茶の方が好ましいと思うのは日本人だからだろうかと、スザクは一飲みした紅茶にそんな感想を抱いた。
「あのフレイヤのことで最も責を負うべきは指示していた
とはいえ、それでスザクもあのトウキョウ租界でフレイヤによって消滅した者達の遺族は納得しなかった。
「それで、これからどうするんだ?」
帝位を簒奪したシュナイゼルに民意はつかなかった。当然、その第一の騎士であるスザクにも。
軍事裁判にかけられ、厳罰を望む民意もあって自ら収監されることを望んだスザクは、つい先日に刑期を終えて出てきたばかりであった。そこをルルーシュが呼び出したのである。
「さあ、どうしようかな」
「何も考えてないのか?」
「ずっと後悔と反省ばかりでね。未来のことなんて何も考えてなかったから……」
そう語るスザクの顔には影があった。
「じゃあ、丁度良い。土地の一部を俺が預かっている。そこの管理人をするといい」
恐らくそうだろうとスザクの考えを読んでいたルルーシュは机の上の鈴を鳴らして執事を呼ぶと、預けていた書類を受け取り渡してくる。
「これって僕達が出会った……」
「お前が持つに相応しい土地だろう」
枢木神社はその名の通りスザクが所有するに相応しいと、ルルーシュは戦時のことを持ち出して土地を手に入れようとする者の機先を制して、早めに利権を奪い取られる前に対策を取っていた。
特にツッコミどころの多いスザクのことに関してはルルーシュが直々に動いていたので抜かりはない。
「君って奴は身内には甘いね」
「お前もその身内に入るんだぞ。どうせなら喧伝してみるか?」
「まさか…………賢帝ルルーシュ様にそう言って頂けるだけでも、大罪人としては申し訳ない限りだよ」
「どうせなら俺の護衛でもしてみるか? スザクなら俺も安心だ」
「嬉しい話だけどジェレミア卿の仕事を奪う気は無いって。それに僕が傍にいたらまた厄介なことになるんじゃないのかい?」
「俺がその程度で怯む人間に見えるのか」
「まさか。ただ、やっぱり止めておくよ。今は静かに世界を見てみたい」
以前よりも更に卑屈が過ぎるようになった友人に鼻を鳴らしたルルーシュは敢えて直させようとはしなかった。
これはスザク自身が直そうとしなければならない問題であるからだと知っているから。
「それはそれとして、僕を連れてきたのはなんでなんだい? わざわざ忙しい皇帝陛下が会うほどの人間ではないだろう」
「シャーリーの出産に立ち会うのを禁止されてな」
予想外の理由にスザクは目を丸くしてルルーシュを見る。
「仕事しようにも落ち着きが無くて他の者の邪魔になると追い出されて、暇になっていたところにスザクのことを思い出した」
「オメデトウと言った方がいいのだろうけど、僕は暇つぶしの口実と言うわけかい?」
カップを持ち上げて紅茶を含んだルルーシュはニヤリと笑って明言はしない。
用意が良かったことや、皇帝が我儘を言ったからといって服役した元罪人を安易に周りが会わせるはずがない。
スザクにはルルーシュの考えが読めない。
「しかし、あのシャーリーが出産か。奥さん達の中じゃ一番遅かったんだっけ?」
「ああ」
ルルーシュには賢帝と同時にハーレム皇帝という異名を付けられていることを思い出して内心で笑ったスザクは、全員が知り合いである彼女達のことを思い出す。
「みんなは元気にやってる?」
「元気過ぎて俺の方が持て余しているぐらいだ。どうしてこうなったんだか正直今でも分からん」
「ルルーシュらしいね」
敵意には聡くとも好意には鈍かったルルーシュには皇帝になった経緯よりも自分に嫁いで来た女性たちの心情こそ理解できないものがあった。
「あのルルーシュに子供が出来てるなんてねぇ」
幼少期と悪かった時期を知っているだけにスザクの感慨も一入だった。
「世間一般からして遅いという年齢でもないぞ。世的にも戦後の今はべビーブームで子供を作る年齢も大分早くなっている」
若干、言い訳ちっくながらもルルーシュの言が正しいことを、ベビーブームの話をテレビで見たスザクも否定しない。
「僕には縁のない話だよ」
「何を言っている? 俺は家族の為にもまだまだ働かなければならんというのに、お前は一人だけ日本で隠居をする気か」
「随分抽象的だね。本題を言ったらどうだい?」
隠居するには早すぎるだろうと暗に込められているのを感じ、スザクは苦笑する。
「身を固めたらどうだという話だ。どうせならナナリーと結婚して俺の義弟にでもなるか?」
昔ならばともかく、今となってはありえない話に苦笑を深めたスザクは首を横に振った。
「冗談にしても笑えないよ、ルルーシュ。それにナナリーは君の弟のロロと付き合っているって話じゃないか」
「結婚していなければ付き合いは自由だ。節度は守るべきだがな」
女性陣の猛攻にあって恋愛観が色々と変わってしまったルルーシュは割と本気で言っていた。
「しかし、俺の弟と妹が付き合っているというのは字面だけで見ると凄いな」
冷静に考えてみた結果、遠い目をしたルルーシュに何を今更とばかりの顔をしたスザクは消極的なツッコミを入れるべく口を開く。
「皇帝の妹弟ってだけで凄いと思うけどね」
要はルルーシュに関わる全てが凄いことに分類されると結論付けることにしたスザクの顔は晴れ晴れとしていた。
「そういえば、シャルル様は?」
先々代の皇帝であるシャルルのことはあまりニュースには流れないので気になったので聞いてみる。
「毎日、孫の相手をしてデレデレしてる」
「それは……」
厳しいシャルルの姿しか知らないスザクにはデレデレしている姿など想像することも出来ず、言葉に困って表情の選択に困ってしまう。
「自分はさっさと隠居してる癖に、俺が仕事を手伝えと言っても忙しいの一点張りだ。何が忙しいと言うのか。俺は子供達に会えぬ日だってあると言うのに……っ!!」
ぐぬぬぬぬ、と嫉妬やら何やらを抱えて憤懣を覚えているルルーシュが叫ぶ。
「ふふふふ、仕事を押し付ける準備は出来ている。明日は丸一日の休暇を取ったからな! 誰にも邪魔をさせん」
「皇帝として、それはどうなんだろう」
「俺より偉い者はいない。従って俺が法だ」
「立憲君主制に移行しようとしている皇帝が言うこととは思えないね」
ルルーシュがあまりにも賢帝過ぎて、紛争以下の衝突しか起こっていない中で合衆国達も内政に集中している。
ブリタニアが敵国である以上、警戒はしているが戦争をするエネルギーを飢餓や貧困に向けられているので緩やかな平和が維持されていた。ルルーシュが次代からは絶対君主制から立憲君主制に移行しようと準備をしているのも要因の一つであった。
「あまりにも俺に権力が集まり過ぎている。次の皇帝が欲に駆られないように備えは必要だ」
ルルーシュが帝位を退いた際、神聖の名は消えるかもしれないがまだまだ皇帝の座を譲れる人材はいないので大分先のことになる。
無論、ルルーシュが不意に死ぬ場合もあるので備えはしてある。
「準備の良いことだね」
「第二、第三のプランを作っておくのは普通のことだろう?」
だとしても、ルルーシュの場合はそのプランが十や二十もありそうな上に、その第二プランすらも突破することも簡単ではないのだから容易には頷けない。
「ルルーシュの基準は普通じゃないんだから」
「ミレイにも同じことを言われたな」
「奥さんの言うことは聞いておいた方がいいよ」
ルルーシュの周りを固めている奥さん達がまともで良かったと一安心するスザクであった。
「まあ、何はともあれ世界が平和に向かっているのは良いことだと思う」
五人のお妃様と一人の愛人みたいな人がいるルルーシュの手腕だと思うと少し笑ってしまうが、これでブリタニアの歴史上で最も偉大な名君になるのではないかと噂されているのだから世界はどうなるか分からない。
「それがユフィの望んだ世界だからな」
「ああ、そうだね」
少ししんみりした空気になった二人の間に沈黙の帳が下りる。
「む」
互いに一口紅茶を含んで唇を湿らせるほどの時間の後、ルルーシュは懐からバイブモードにされている携帯端末を取り出す。
「どうかした?」
気になったスザクは携帯端末に目を落とすルルーシュに問いかける。
緊急事態なら電話などせずに先程の執事などが駆け込んで来るだろうから、それほど心配はしていなかった。
「アーニャからだ。どうやら子供が生まれたようだ」
「は?」
「さて、行くぞ」
奥さんの一人から連絡を受けたルルーシュが立ち上がりなら言っても、まるで一緒に行くことが当然のような言い方にスザクは当惑する。
「行くって、まさか僕も?」
「決まっているだろう」
何が決まっているのか、とスザクは言いたくなった。
「だから、なんで僕が」
「シャーリーがお前も連れて来いと五月蠅くてな」
当惑したままスザクはルルーシュは半ば連行されるような形で皇宮の一つに連れて行かれた。
「あ、スザク君」
「やぁ、シャーリー……」
奥さんが勢揃いしている中で場違いな気分を味わっているスザクは、十年振りに出会った少女から女性に変化したクラスメイトと再会した。
「なんだ、その頭は。ちょっと触らせろ」
まだ産後直ぐで動けないシャーリーや生まれた赤ん坊に興味津々な奥様達の中で、ルルーシュ以外は本名を知らないことが話題になっているC.C.が成熟した体で近寄ってきてスザクの丸坊主の頭を触ろうとして来る。
「ちょ、ちょっと」
「止めなさいってば、C.C.。スザクが困ってるじゃない」
この十年、禁欲生活だったスザクにとって毒過ぎる接近に窮していると、これまた嘗ての活発な雰囲気から艶やかに成長したカレンがC.C.の頭を軽く叩いて止める。
「何をする?」
「じゃないわよ。十年振りに会ったんだから、もう少し言うことがあるでしょうに」
「私もちょっと触ってみたいかも」
パシャリ、と携帯端末で写真を撮ったのは、これまた十年の間に大人に成長したアーニャである。
「少し私も同意かな。なんか中毒性がありそうな感触がありそうだもんね」
「会長……」
「今は会長じゃなくてお妃さまでしてよ、スザク君」
気取った物言いが似合う姿に成長したミレイにもスザクは驚くばかりである。
「ほら、スザク。この子を抱いてやってくれ」
時の流れに取り残された気分のスザクは困惑するばかりで、そんな中で生まれたばかりの我が子を看護師から受け取ったルルーシュが言った。
「え、でも」
「決めていたんだ。子供の一人には必ずお前に名付けてもらおうってな」
渡されようとしてもスザクは彼らの大事な子供を受け取ることなど出来ない。
「駄目だよ。僕みたいな人殺しが」
「それを言ったら俺はどうなるんだ?」
「私もね」
「私も」
「…………規模が違うよ、みんなと僕は」
ギアスで人を操ってきたルルーシュや戦場で人を殺して来たカレンやアーニャと違って、トウキョウ租界をフレイヤで消し飛ばしたスザクとでは被害の桁が違う。
「何も変わらないさ。例え誰であっても俺は子供が出来たらスザクに抱いてもらって名前を決めてもらおうと決めていた」
「ルルがこう言っちゃって聞かないんだ。悪いんだけどスザク君」
母になった顔で、旦那の我儘を聞き分けてやってほしいと横で言われて微妙な顔をしているルルーシュの腕に包まれた女の子を見たスザクは一大決心をして受け取った。
「小さいね……」
「そりゃ生まれたばかりだからな」
何を当然のことを、と言いたげなルルーシュは成長しても根本的な部分では変わらないとスザクに感じさせ、同じことを思ったであろうミレイ達は微笑んでいた。
「そら、早く名前を決めてくれないと俺達も呼べないだろ」
急かされたスザクは名前を付けろと言われた時に思い浮べた単語を口にする。
「ユーフォリア」
主であったユーフェミアに似た語感の、この幸福な世界に生きる女の子を抱いたスザクは涙を流しながら名付けた。
「君の名前はユーフォリアだ」
腕の中でユーフォリアと名付けられた赤ん坊はスザクに赦しを与えるように手を伸ばして無邪気に笑ったのだった。
これにて本作は完結でございます。
本当と嘘を突き進んだ√は終わりです。
後はクロヴィス生存√も考えたのですが、その場合
・クロヴィスを撃てずに覚悟が定まらないので反逆できずにゼロにならない
・川口湖の事件に一緒に行ってユーフェミアによって身バレ、ナナリーと話しをした際にブリタニアに戻るのも良いのではないかと言われて絶望。
・まさかのルルーシュ自殺endになってしまい、暗くなるのでお蔵入りになりました。シャルルがラグナレクの接続の話をして、ナナリーが計画の賛同者になる。でも、実際に接続したらルルーシュに拒絶されるという、これまた救いようのないendに。
後はマリアンヌ生存√は、
・アリエス宮の悲劇で、目撃者であったアーニャが声を上げたことでマリアンヌが銃撃を回避しして生き延びる。
・V.V.逃亡。
・シャルルが計画を遅延させていたら、そんなことは知らない腹違いの姉妹とも仲良くするルルーシュとナナリーに迷い、マリアンヌもシャルルがそうならと賛成。
・急ぐ必要が無かったのでエリア政策も遅れ、日本から人質としてスザクと神楽耶が送られてルルーシュ達と仲良くなる
・V.V.はギアスをバラまいていく。
・両親の友人ということで紹介されたC.C.にルルーシュが求婚。
・原作の名有りキャラクターがギアス能力者になる予感?
なんて、ことを考えてところで思考停止した次第です。
映画や噂の第三期次第で新たな√をやることは十分あり得ますが、一応本作はここで完結とさせていただきます。
4/29時点で
UA 244,045
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一ヶ月半の間、皆さまありがとうございました。
次回作にてお会いしましょう。でも、次は何にしよう……。