コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~ 作:スターゲイザー
さあ、最後の平穏だ
行政特区に入る際に可能な限りの身分証明と資格や免許の登録が求められたのは、仕事等を割り振る為と言われている。しかし、海外で取得した物はともかく、日本で取得した物は七年以上前に取得したということになり、有効性が疑問視されている。その為、実際に仕事を始める前などに講習などが行われるのは当然のことだった。
教員免許を持っていた扇要も自身の希望もあって、教員関連の人間が集められた講習会に参加していた。
「さて、諸君」
講習会に参加した全員が目を疑うほどに眼帯姿の男――――ジュリアス・キングスレイが挨拶もそこそこに教壇に手を置いて、黒いカラーコンタクトを付けた右目で生徒よろしく席に座る教員候補達を見渡す。
「ここに集められた者は言うまでもなく教員免許を持つ者であるが、この七年の間に教師として働いていない者も多くいると思う」
扇にしても戦前は教師をしていて、敗戦後も暫くは学校を建てて勉強を教えていたがレジスタンス活動をしていたので、以前のように教えられる自信はない。講習会があって助かったとは彼だけの秘密である。
「仮に君達が生徒だとして、そんな者達に教わって安心できるだろうか? 私ならちゃんとした者に変えてくれと言うだろう」
一々動作が大仰な上に、明らかに若そうな見た目の割に真意を突くのだから優秀な人なのだろうなとは思った扇は、その通りだと頷く。
「しかし、そうなるとブリタニアから派遣される者ということになる。それは君達も望むことではあるまい」
当のブリタニアから派遣されている扇達教員候補の指導係みたいなものであるジュリアス扮するルルーシュが挑発的に言いながら唇の端を上げる。
「学校を開設するまで後数日ほどかかるだろう。その間に諸君らには、こちらで用意したカリキュラムを頭に叩き込んでもらう」
行政特区に来た者達の中には、戦前ならば学校に通っていた年齢の子供も多くいる。その者達の為に特区の責任者であるユーフェミアは学校を開校することを宣言していた。
入る際に申し込みをし、年齢や受けて来た教育等を考慮して振り分けられることになるが、完了するまでに教員側の教育も終わらせなければならない。
「基本的なカリキュラムは戦前の小学生のものが残っているので参考にするとして、学ぶのは小学生相当の子供だけではなく、まともに教育を受けられなかった者達も含むので覚悟はしておいてほしい」
日本が征服されて七年が経過しており、その間に教育を受けられなかった者達への再教育の機会も兼ねているので扇達に責任は重大である。
だが、ブリタニア側のカリキュラムを押し付けられるわけではないと分かると、教員候補達もやる気の炎を燃やす。
「では、まずは簡単なテストから始める……」
そこからはテストテストの連続。
最初は扇達ならば鼻で笑っても出来るようなレベルだがテスト毎にレベルが上がっていき、最後には死屍累々とした屍だけが机の上に残っていた。
「こんなものか。少しは期待していたんだが」
テスト中に採点を続けながら屍を作り上げた張本人であるルルーシュは、あまり振るわない結果を見て鼻を鳴らす。
「では、次は少しの休憩を挟んで一人一人に模擬授業を行ってもらう」
三十分の休憩の後に行われた模擬授業も教員候補達の神経をすり減らした。
「評価は各自で付けてもらう。意味は今更言わせるなよ?」
始める前にルルーシュは生徒役の教員候補達に評価を付けさせ、自身は完全に沈黙して見ているだけだったのだから教師役をやる方としては堪ったものではない。
「次」
貴族よりも大柄な態度なのに、模擬授業の出来が良かったのか悪かったのかも分からないまま、次の教師役が教壇に上がらざるをえない。
「本日はここまでとする。明日は違う教科を行う。学校外に資料の持ち出しは禁止だが、図書館で書き写す分は自由だ」
物言わぬ屍となった教員候補達を見下ろしたルルーシュは、今回の為に使った教材類を纏める。
「私はここで席を外すが、残りの一時間は君達に与えよう。帰るなりなんなり好きにするといい」
規定就業時間よりも一時間前に終了し、教室から去って行くジュリアスを見送った扇達は顔を見合わせた。
特区日本の参加者は自給自足が出来るようになるまではブリタニアからの援助を受けることになっているが、だからといって甘んじて甘受しているだけではわざわざ特区を作った意味がない。
食料の配給などを受けるには一定の就業を行う必要が有り、扇達がジュリアスの命令でテストを受けていたのもその一環である。
「どうする?」
「あっちが帰っても良いって言ってるんだし」
「疲れたから寝たいよ、俺は」
神経をすり減らした教員候補は互いの顔を見ながら誰も動こうとしない。
「なあ、皆。聞いてくれ」
奇しくも黒の騎士団から脱退する時と同じ状況になりながら、老若男女が揃った教室に留まっている者達に向けて扇が声を張り上げた。
「俺の授業で何かおかしいところはなかったかな? 分かり難いとか、こうしたらいいっていうのがあったら教えてほしいんだ。ちゃんと授業の形になっていたか自信なくて」
扇が率先して発言すると不安が他の者達も追従を始め、徐々に授業の改善案や行い方の討論が始まった。
「扇か。凡庸な男だが、だからこそこういう時に良く動く」
去ったと見せかけて、こっそり戻って教室の中を窺っていたルルーシュは黒の騎士団の副指令だった扇の長所が発揮されている姿に目を細めた。
場の中心は別の人物達が握っているが、それでも扇が外に弾かれることはない。
決して集団を引っ張っていくリーダーのようなタイプではないが、潤滑油のような役割を果たす者がいると大分違うことは今のルルーシュにも分かった。
「お前はカレンを除けば俺を最初から認めてくれていた。その借りは返そう」
ルルーシュはブリタニアの組織に入った際に、特区に入ろうとしている扇と共にいる千草から、シャーリーが撃ったブリタニア軍人の血液を照合してヴィレッタ・ヌウの存在に辿り着いていた。
行政特区に入る際に、簡単な身元チェックが行われる。そこで扇と共にいた女は記憶を失っていたという話になって、身分証明書を持っていなかったので採取した血液で照合した際に、シャーリーが撃ったブリタニア軍人だと判明したのだ。
軍のデータベースでは行方不明だったので、行方が知れたらルルーシュに一報が入るシステムを構築していたら、まさか扇と一緒にいて記憶を失っているとは思いもしなかったが。
「秘密を抱えていたのはお互い様だ。このまま何も知らないまま平穏に過ごすといい」
最初に信用してくれたよしみでギアスで千草のことを忘れさせ、秘密裏にヴィレッタ・ヌウの始末を既につけていたルルーシュは今度こそ教室から去って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
行政特区が成立してから早三ヵ月と少しが経過していた。
「ジュリアスさん、この案件に対して相談が」
「こちらも少し行き詰っていて」
今や特区の中心人物となったジュリアス・キングスレイ扮するルルーシュの下へ訪れる者は日に日に多くなっていた。大体がルルーシュの処理能力を当てにした相談なのだが場所が問題だった。
三ヵ月で異例の昇進を果たしたルルーシュの執務室はユーフェミアの隣の部屋なのである。
「皆さん、ジュリアスの方に来るのですね」
隣の執務室からやってきたユーフェミ・リ・ブリタニアは、それはとてもとてもご立腹であった。
「それだけ俺が優秀だということだ」
「否定はしませんけど……」
ジュリアスが休憩時間に入るので人の出入りが無くなる時間帯を見計らってやってきたユーフェミアは、ルルーシュが優秀だということは骨の髄まで理解しているので物凄く何かを言いたい顔をしながら言葉を続けなかった。
「では、こう言った方が良いのか? ユーフェミア副総督が予想以上に使えない人物だと」
「ルルーシュ、幾ら本当のことでも言っていいことと悪いことが」
「お前はその天然をどうにかしろ、スザク。後、俺はジュリアスだと何度言ったら分かる」
スザクの何のフォローにもなっていないフォローに涙をちょちょ切れさせながら、ユーフェミアは改めて優秀過ぎる義兄を見る。
「どうして、ジュリアスはそこまで仕事ができるのですか?」
「いや、どうしてって言われても。少し前まで学生をしていた副総督様に聞かれても答えられん」
一向に学習しようとしないスザクの頭の中身を見てみたいと考えていたルルーシュは、根本的にどうにもならないことを聞かれて困った。
「そうだよ、ユフィ。ルルーシュみたいな規格外と比べたら駄目だって」
ユーフェミアはエリア11の副総督に就任するまでは本国で普通とは言い難いが学生をしていた。ルルーシュのような規格外と比べてはいけないだろう。
「規格外なのはお前だろ、スザク。なんだあのナイトメアの変態機動は? 本当に人間か?」
改修されたランスロット・エアキャバルリーの動作実験の時に、同じく改修されたガウェインの動作実験も同時に行われたのでルルーシュも参加したのだが、相変わらずスザクが本当に同じ人間なのか疑わしい動きをしていた。
「普通の人間じゃないか、ほら」
「ほらって。壁を走るような奴を何時から普通の人間と呼ぶようになったんだか」
自分の体を見下ろして腕を広げるスザクに、マオの一件で壁を走ったのを見たことを思い出したルルーシュは少し遠い目をする。
「僕からすれば、あのドルイドシステムを扱うルルーシュの方が人間なのかどうか疑うよ」
一度試しに乗り込ませてもらったガウェインでルルーシュがドルイドシステムを操る姿を見たスザクは非人間を見るような目を向けて来る。
「あれこそ、情報処理能力さえあれば誰でも扱える代物だ」
「機能を限定したウァテスシステムでも適性が無いと使えないって話らしいけど」
要はどっちもどっちであると、二人を見ていたユーフェミアは暗い目をしていた。
「普通ってどこに行ったのかしら?」
ユーフェミアが現実逃避気味に言うと、ルルーシュとスザクが驚いた目を向ける。
「皇女殿下に言われても」
「ブリタニアで異端なことを始めた奴が普通だと」
処置なしと首を振るスザクと、鼻で笑うルルーシュの姿にユーフェミアは膨れた。
「やっぱり私って頼りないのかしら……」
世間一般常識に当てはめて考えれば普通ではない自覚があるユーフェミアはプシューと膨れて頬を萎ませ、現状に対する不満と不安がない交ぜになった呟きが口から洩れる。
「ああ、頼りない」
実際、三ヵ月で行政特区日本の実権を握りつつあるルルーシュの目から見ればユーフェミアはお飾りの責任者に近い。
「ちょっと、ルルーシュ」
「だから、お前はいい加減にジュリアスと…………もう、いい」
諌めようとするのは良いことだが設定を守ろうとしないスザクにルルーシュは諦めた。
「皆が俺の下へ来るのは、それに値している能力を示しているからだ。それは分かるな、ユフィ」
コクリ、と頷くユーフェミアを視界に収めながら、眼帯をしている左目で書類を見ながら手はサインを止めない。
ルルーシュにとって休憩時間とは一人で仕事に集中できる貴重な時間なのだから。
「信頼とは実績を示すことによって得られる。あのコーネリアにしても戦場での結果ばかりがクローズアップされることが多いが、政務に関してはしっかりと行っているから部下から慕われているんだからな」
武力だけで持て囃される時代ではない。特にエリア11の総督という立場ともなれば、手を抜いたり投げ出したりすれば規律も保てないし、部下もついてこない。
「今のユフィは頼りない。それだけの能力と実績がないからだ。正直、今のユフィは皇族の地位が無ければそこらの文官よりも能力で劣る」
「ルルーシュ、そんな言い方は」
「まずは現実を受け入れ、そこからどうするべきかを考えるべきだ。認識を改めなければ何時までも成長はない」
行政特区の中心であるこの特庁において、職員達が責任者であるユーフェミアではなくルルーシュの所に多くやってくる時点で周りから向けられる目がどうなっているかは簡単に想像がつく。
「出来ない、能力が低いで止まるのであればお前もここまでだ、ユフィ」
この程度で止まるようであれば、そもそも行政特区を立ち上げるはずがないとルルーシュにも分かっている。
「止まるつもりはありません。ルルーシュ、私に仕事のやり方を教えて下さい」
それでいい、と頷いたルルーシュは一定の仕事をやり終えてペンを置いた。
「俺にそんな時間はない。サインしてある書類から判断の傾向を読み取るなり、例えばここで一緒に仕事をして横で学ぶなりしろ」
「え? この流れでそれを言っちゃうの」
漫画ならば師弟関係になるような展開でのルルーシュの手の平返しに、スザクが肩透かしを食らったような顔をしながら突っ込みを入れる。
「ただでさえ、ランペルージとジュリアス・キングスレイの二重生活を送っているというのに、更に俺に苦労を背負えと言うのか」
ルルーシュだってまさかここまで深くにまで特区日本に関わる気は無かったのだ。精々が下っ端役員程度で裏から実権を握る程度に収めるつもりだったのに、想定以上に特区日本に関わる職員達の質が低く、このままでは失敗すると判断してこうなったのだ。
特派のロイドに気に入られた所為でウァテシステムの構築を手伝わされるし、自分でやったこととはいえ泥沼に嵌っている感は否めない。
「特区は私が始めたことです。ジュリアスと一緒に仕事をします」
「ユフィ……」
「無駄なプライドなど邪魔になるだけです。早速、机を運び入れましょう」
貴族でもない日系ブリタニア人に教えを乞うなど皇族のすることではない。特区日本を始めるにあたってナンバーズに慈悲を与えるなどと言われ、ただでさえ本国で下がっているユーフェミアの評価のことを聞いていたスザクは、止めるべきか迷っていたが当の本人はやる気に満ちた目をしている。
「スザクもどうだ? お前はもう少し事務能力を身につけないと、その内に俺がユフィの騎士になってしまうぞ」
「あら、それも良いですわね。ジュリアスが騎士になってくれれば私も嬉しいです」
「えぇっ!?」
冗談で言ったルルーシュの言を割と本気で捉えたユーフェミアがにこやかに告げると、武にばかり偏重している割に戦場に出る機会が無くて最近は専ら警護が仕事になりつつあるスザクも慌てた。
「冗談はよせ、ユフィ」
「私としては結構本気ですよ。ジュリアスがいてくれれば心強いですもの」
「俺の事情を考えろと言ってるのだ」
このままでは押し切られると判断したルルーシュは切り札を出す。
「今でさえ、かなりの綱渡りをしているんだ。これ以上の責任は負えない」
「分かっていますよ。言ってみただけです」
ユーフェミアの理想を実現させる為にはルルーシュが騎士になってくれれば、とても頼りになることは事実ではある。武寄りのスザクと文寄りのルルーシュの二人が騎士として仕えてくれる姿は、とてもユーフェミアの胸を熱くしてくれる。
ただ、ナナリーのことやルルーシュが皇族であることを知られるわけにはいかないので、特区という箱庭の中での夢想に過ぎない。
「行政特区を広げて、経済特区や工業特区の構想もしてあるんです。手伝ってくれますか、ルルーシュ?」
狭い箱庭でもルルーシュとナナリーを守るため徐々に広げて自由を獲得していくために、ユーフェミアは更なる構想を練っていた。
「先を見据えるのはいいが、今はまだ構想段階に留めておいてくれ」
「この行政特区を安定させてから、ですよね」
行政特区を発表した時のように先走るのではなく、今はまだその時ではないと判断が出来るようになっただけでもユーフェミアの成長は見て取れる。
「個人的にも、今の時期にこれ以上の仕事が増えても困る」
ルルーシュとしても特区を拡大させておくことは必要と感じているが、ようやくユーフェミアの直属になってスザクから離れて部下も出来たことで減って来た仕事量を増やせない事情もある。
「ナナリーの手術が出来る医者も見つかったんですよね」
「隠れたままでは最新の医療を受けることが出来ない。ユフィには本当に感謝してるよ。お蔭でナナリーの足を治せる目途もついた」
「目途がついたのは良いことだけど、まさかその医者がロイドさんの知り合いだったことには驚いたよ」
「世の中、どこで繋がっているか分からないものよね。えっと、ラクシャータさんだったかしら」
全部お膳立てをしたのはルルーシュではあるが、ブリタニアの干渉を極力減らせる特区にユーフェミアが責任者としている意味は大きい。その騎士であるスザクも昔馴染みという、この環境でしかナナリーに最新の医療を受けさせる機会はなかった。
図らずも表に立って実権を握る形になってしまったことは誤算ではあるものの、より表立って動けるとなれば悪いことではない。
「毎日、ロイドさんと喧嘩交じりに意見をぶつけ合っているよ」
二人がやり合う所為で、ナイトメアの格納庫が静かになることはない。ルルーシュにユーフェミアの側近の仕事を任せて特派に出向いている時に巻き込まれることが多いスザクはうんざりとした顔で苦労を吐露する。
「二人とも天才なことに変わりはないが主義が大分違うからな」
「ぶつけ合って良い物を作ってくれるから文句は無いんだけど、周りを巻き込むのは本当に止めてほしい」
緩衝材のセシルも偶にその輪の中に入って三者三様に意見をぶつけ合う時などは、客観的な意見を求められてスザクまで引き込まれそうになる。
「ルルーシュは良いよね。口八丁手八丁で逃げれるし、巻き込まれても窮することが無いから」
ガウェインの調整やウァテシステムの構築に協力しているルルーシュも特派に出向くことはあるが、スザクと違って困る状況になることはない。
三人と対等な話を出来る知性と、流石に付いていけない時は抜け出せる話術を持っているからである。
「あまり特派で問題を起こすとカレンに喜ばれるからな」
「ああ……」
ルルーシュ扮するジュリアスが特派に出向く度に物凄い目を向けているカレンの姿を思い出しているのだろう。スザクの顔が酸っぱい物を食べたような感じになっていた。
「黒の騎士団の方ならば正体を教えて差し上げればいいのに」
「秘密は、秘密を知る者が少ない方が良い」
つまりはカレンに真実を打ち明ける気は無いと暗に言っているルルーシュにユーフェミアは少し哀しげだった。
「特派の取り込み交渉も続いている。正式に異動が決まれば、少しは見直してくれるだろう」
「良くシュナイゼル殿下が認めてくれたよね」
「あの三人が作る技術は本国を上回っているからな。フロートユニットや飛翔滑走翼は俺から見ても素晴らしいと思えるものだ。変に崩すよりもブリタニアの利益になると判断したんだ。スザクも面倒な事態にならないですむんだ。感謝ぐらいしたらどうだ?」
シュナイゼルの牙城を切り崩す為に特別派遣嚮導技術部を一定期間の期限付きではあるが、正式にユーフェミアの傘下に収める交渉は纏まりつつある。ロイド自身も最良のデヴァイサーであるスザクの下を離れる気は無いようなので交渉を手伝ってくれたお蔭でもあった。
「日本を離れないで済むのは助かるけど、あの三人に挟まれる未来は嫌だなぁ」
スザクの愚痴を聞きながら、今日やるべき仕事を片付けたルルーシュは道具を手早く片付けて立ち上がる。
「あれ、今日はもう上がり? 何時もより随分と早いね」
帰り支度を始めたルルーシュに、時計を見たスザクが既定の時間よりも早いことに気付いて問いかける。
「早引けの許可は既に貰っている」
もう冬に入って大分冷えてきたのでコートを羽織りながらルルーシュは答えた。
「今日、なんかあったっけ? あ、ナナリーと何か約束でもしてるのか」
「一時間後にナナリーの手術がある。当初予定した仕事は終わらせているから問題はないだろう」
「「はぁっ!?」」
事前の申請があったので早引けすることは知っていたユーフェミアも、ナナリーの手術が今日と聞けば驚かずにはいられない。
「全く、会長が修学旅行の計画を今日中に仕上げろなどと言われなければ、今日一日はナナリーの傍にいれたのに……」
ブツブツと言いながら、さっさと執務室を出て行くルルーシュの聞き捨てならない言葉にスザクは執務机に置かれた一番の上の書類を手に取る。
「これ、修学旅行の日程表じゃないか」
ブチッ、と近くでユーフェミアの堪忍袋の緒が切れる音がスザクの耳に確かに聞こえた。
「ジュリアァァァァァァァァァァァス―――――――ッッッッ!!!!」
ルルーシュが仕事中に平気で生徒会の仕事や学校の宿題などを普通にやっていたとユーフェミアが知るまで後五分。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ナナリーの手術が行われている頃、中華連邦の外れの砂漠地帯にあるとある場所で、部下から報告を受けていた少年は薄らと笑った。
「へぇ、ナナリーが手術をね」
ブリタニア皇宮にて同じ報告を受けた皇帝は僅かに眉を動かした。
「これは動かねばならんな。兄さんが何かをする前にビスマルクを動かすか」
事態はルルーシュの与り知らないところで動いていた。
ルルーシュに抹殺されてしまった人、ヴィレッタ・ヌウさん。
さよなら、ゼロの正体を知ってシャーリーに撃たれたことが悪いのだよ。身内を護る為なら容赦しないルルーシュに関わってしまうから。
扇、千草の記憶を消されて平穏に生きる。もう、君の出番はないのだよ(多分)
隠していても、やっぱりシャルルやV.V.にバレてるナナリーの手術。
次回予告 『STAGE6 最高にして最悪な』
ルルーシュよ。これだけ多くの人を操り、殺しておきながらどうして自分だけが例外だと思った?