コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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『亡国のアキト』のタグを追加しました。




STAGE8 軍師の謀

 

 

 

 ユーロピア共和連合軍に属するレイラ・マルカルが指揮する特殊部隊wZEROは、ユーロ・ブリタニア軍に『ハンニバルの亡霊』と呼ばれている。

 しかし、スロニム戦から一ヶ月が経過してもレイラ達の隊は帰還できず、それどころかワルシャワの補給部隊に左遷された前司令官のピエル・アノウの嫌がらせによってIDを抹消されて路頭に迷ってしまう。

 そんな状況下、旅の老婆達と出くわしたアキト達は暫くの間共同生活を送る事となった。

 

「レイラ、優しくて良い子だから占ってあげよう。アンタの未来をね」

 

 少年少女が久しく体感していなかった穏やかな日々の中で、老婆達の中心である大婆様にそう言われたレイラ・マルカルは美しい眉を顰めた。

 

「未来ですか?」

「まあ、試しで良いから受けてみな」

 

 占いを信じているわけではないが、敢えて断る理由も無いのでレイラは占いを受けた。

 馬車の中に入り、二人で向かい合ってカーペットの上に座りながら大婆様が良く分からない呪文のような物を呟きながら両手に握った石のような物を振る。

 

「昔、森の魔女に会ったんだね」

 

 二人の間の床に敷かれた五芒星の陣が描かれた布の上に渦巻きが幾つも描かれている石を転がした大婆様が徐に言った。

 

「魔女?」

 

 魔女、という単語が肌を走る感覚にどこか覚えがあったレイラは単語を繰り返した。

 

「そうさ、アンタはその魔女に呪いをかけられた」

 

 呪い、と繰り返したレイラの脳裏に記憶が蘇る。

 父がテロで殺され、母も暗殺されて雪が降る中でレイラは一人で森を駆けた。

 幼きレイラは凍った池に落ち、そのまま死ぬと思った。凍った湖面から抜け出すことも出来ずに意識が闇に沈もうとしたその時だった、森の魔女が現れたのは。

 

『生きたいのか?』

 

 魔女としか思えない人だった。

 雪と同じ色のローブを全身に纏い、フードを目深に被った人の声がレイラの頭の中に木霊する。

 

『力があれば生きられるか?』

 

 生きたい、と只管に願ったレイラは魔女の手を取った。

 

『これは契約』

 

 助け出されたレイラは魔女の手を握りながら凍った湖から離れる。

 

『契約すればお前は人の世に生きながら、人とは違う理で生きることになる』

 

 夢幻のような姿と声がレイラの心身に響く。

 凍えて消えかけていた命の灯に火をくべた魔女が、雪のように白い手で自らのフードを外す。

 

『異なる摂理、異なる時間、王の力はお前を孤独にする』

 

 緑髪の魔女は悲し気な目でレイラを見る。

 

『その覚悟があるのなら、その力を使うがいい』

 

 魔女から何かを与えられたような気がした。でも、その何かが分からない。分からないが、魔女はレイラが力を使うことを望んではいないのではないかと幼心に考えたことを思い出す。

 

『しかし、お前はまだ幼い。その選択はお前が成長するまで猶予を与えよう。一度使えば、もう後戻りは出来ないが使わなければ存在しなくなる』

 

 物語の魔女のように年老いてもいなければ、寧ろ優しい声で告げて彼女は去っていた。

 

「あれは夢じゃなかった……」

 

 ずっと夢だと思っていた魔女との遭遇を思い出したレイラの前で、石が僅かに傾いたのを見た大婆様は右手の人差し指を僅かに動かした。

 

「未来が変わった? いや、より大きな闇が小さな闇を呑み込んだか」

 

 この瞬間に変幻する未来を感じ取った大婆様はピクピクと動く人差し指を抑える。

 

「どういうことですか?」

「アンタと似て非なる呪いを持つ者が未来を変えたんだよ」

 

 大婆様のことからレイラは自分と同じように魔女に力を与えられた者がいることを悟る。

 

「その者からアンタは選択を迫られる」

 

 予言者のように大婆様は続ける。

 

「選択……」

「その時が来れば分かると石は示している。決して間違えるんじゃないよ」

 

 低く重く、あの時の魔女の時と同じく大婆様の声も何時までもレイラの頭の中に反響し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カエサル大宮殿の客人の間でルルーシュ扮するジュリアス・キングスレイは痩身の男と向かい合って座っていた。

 

「作戦の遂行中にチェスなどしていてよろしいのですか、キングスレイ卿」

 

 ルルーシュの前に座るシン・ヒュウガ・シャイングが言いながらチェスの駒を動かす。

 

「ユーロ・ブリタニアの兵は本国に負けず劣らず優秀だ。今の段階で私自らが動く必要はない」

 

 白い衣装を纏うシンが白の駒を動かし、背後にナイトオブラウンズのアーニャ・アールストレイムを従えた黒い衣装を纏うルルーシュが黒の駒を動かす。

 

「噂の天才軍師様に褒められるとは、我が軍の兵に教えれば喜ぶでしょう」

「成り上がりに過ぎん私程度に褒められて喜ぶとは思えんがな」

「謙遜を」

 

 結果は出しているが後ろ盾も何もない一代限りの伯爵に褒められたところで喜ぶとは思えないと本気で思っているルルーシュの前で、シンは真意の読めない笑顔で駒を動かす。

 

「貴殿の作戦記録を参照しましたが見事なものでした。一度話をしたいと思っていたものです」

「私もシャイング卿に二、三聞きたいことがある」

 

 貴族が本音と建て前を使い分けることは良く知っているので、気を良くした振りをしながらルルーシュも駒を動かす。

 

「最近の戦闘記録に気になる物を見つけた。ハンニバルの亡霊のコードネームで呼ばれるユーロピアの遊撃部隊。シャイング卿、君はその詳細を知っているようだな」

 

 シンの駒を動かす手が一瞬だけ動揺したように揺れたのをルルーシュは見逃さなかった。

 

「二ヶ月前のスロニムで戦闘しました。残念ながら打ち漏らしましたが」

「打ち漏らした、か。才人である君にはらしくない言い訳だ」

 

 悪手とまではいかないが、互角だった戦況を崩すには十分な一手を放ったシンに若さを見たルルーシュは内心で苦笑する。

 

「才人などと、私には過分な言葉です」

「ユーロ・ブリタニアの四大騎士団の一角である聖ミカエル騎士団の総帥に若くして成ったシャイング卿が才人でなくては、全ての者が凡愚となってしまうよ」

 

 拮抗が崩れれば後はルルーシュのしたい放題だった。

 盤面は明らかにルルーシュ有利に傾いていく。

 

「マンフレディ卿のことは残念だった。一度、会ってみたいと思っていたんだが」

 

 元々はナイトオブラウンズの序列2位であるナイトオブツーだったが、自ら辞退しユーロ・ブリタニアに転籍したという異色な過去を持つ人物である。

 

「その言葉だけでも、きっとマンフレディ卿も喜んでくれるでしょう」

 

 ミケーレ・マンフレディがイスタンブルールで自決をしたことは大きなニュースとなった。接触を図りたかったので自殺したと聞いた時、ルルーシュもその死を悼んだ。

 

「貴殿のヴェルキンゲトリクスも本来ならばマンフレディ卿が乗ると聞いたが」

「ええ、元はサグラモールと名付けられる予定の機体だったのですが、後任である私が受領した際に名前を変えました。あの機体に乗っているとマンフレディ卿に守られているように思えます」

 

 しかし、ルルーシュにはマンフレディが自殺を図ったことに対して疑問を抱いている。

 それだけではない。ここ数ヶ月のユーロ・ブリタニアでルルーシュの目を引く出来事が他にもあった。

 ペテルブルグに侵攻してきたE.U.軍と戦闘になったこと、これ自体は問題ではない。作戦計画を察知していたことで進路を阻み、ペテルブルグ南西の街ナルヴァで包囲し、敵軍を孤立させた。問題は孤立した部隊を救出に来た突撃部隊によって、ユーロ・ブリタニア軍も多大な犠牲を強いられている。

 

(イレブンはどこの国でも扱いは変わらんか)

 

 戦闘中のナイトメアを特攻させ、周りを巻き込む自爆を遂行させる指揮官の考えを理解しようとも、ルルーシュ個人の考えとしては好ましいものではない。

 

(ハンニバルの亡霊か、少しは楽しめそうだ)

 

 スロニムでの戦術はルルーシュも少し感心させられたものがある。

 足りない戦力を有効に活用しようとする指揮官の苦労が滲み出て来るような戦術は、黒の騎士団を発足した前後で最も厳しかった時代を思い起こさせてセンチメンタルな感情を覚えた。

 

「この私に掛かればユーロピア攻略などわけもない。戦略も後は詰みだけだ」

「キングスレイ卿の作戦であれば、マンフレディ卿の悲願でもあったユーロピアの攻略も直ぐでしょう」

 

 追い込まれたクイーンを見捨てずに余計に劣勢になったシンを見るルルーシュの戦略に誤りはない。

 

「チェックメイトだ」

 

 カツン、と白のキングに迫った黒のポーンの一手で勝敗は決した。

 

「お見事です」

「ふふっ、君はこのゲームで現実の世界と重ね合わせたのではないかな」

 

 称賛してくるシンにルルーシュは含み笑いを漏らした。

 こういう心理ゲームにおいて、指し手の好みや考え方は打ち手に如実に表れる。シュナイゼルなどはその内面の虚無さを示すように変幻自在であるが、シンの手には微かにその傾向が見えた。

 

「あの時、君がクイーンを見捨てていれば私は敗けていたかもしれない」

 

 かもしれない、とあくまで可能性に留めているのが黒のクイーンを手の中で弄ぶルルーシュの自信の表れでもあった。

 

「どういう意味でしょうか?」

「君には見捨てることが出来ない者が、いる。違うかな」

 

 シンが甘かったのではなく、単純にルルーシュの方が上回っていた。そう評するのは簡単だが、今この時点において見捨てることが出来ない者がいないルルーシュに隙は無い。

 

「人は誰しもそのような弱みがある。親、子、友人、恋人、それとも兄弟か」

 

 今のルルーシュにとっては全てが縁遠きもの。だが、シンには違ったようで反応を見るルルーシュの目の前で目を鋭くする。

 

「…………キングスレイ卿、あなたが立てたバベル作戦を聞いた時、私は一人のテロリストのことを思い出した。エリア11にいたテロリストをね」

 

 露骨に話を逸らしたシンに今度はルルーシュの方が動揺して、黒のクイーンを弄んでいた手を止めてしまった。

 

「キングスレイ卿の巧妙な作戦はそのテロリストの物と良く似ている。いや、そのものだ」

「それが?」

 

 藪蛇を突き過ぎたルルーシュは表面上、冷静を装いながら問い返す。

 

「あなたは反逆者ゼロだ」

 

 突きつけられた推論にルルーシュは苦笑を浮かべる。

 

「馬鹿げた推論だ。ブリタニアの敵であったゼロの正体がブリタニアの伯爵だったなどと、三文映画にもならないシナリオではないか」

 

 黒のクイーンを盤面に戻し、足を組んだルルーシュにもう動揺はない。

 

「ゼロが消えたのは一年前、エリア11で特区が始まる時だ。その直後にジュリアス・キングスレイは特区に現れた。時期は合う」

 

 しかし、シンの追及が止むことはない。

 

「特区での働きが認められ、皇帝によって分不相応な伯爵位を授けられている。確かに成り上がりと称されてもおかしくないが、幾分過大過ぎる評価だというのが当初の大勢の見方だった」

 

 せめて男爵にでもしておけば良かったのに、中途半端な爵位などにするから疑われることになる。

 いきなり伯爵にされて、実績を積むまではかなりイビられてきたルルーシュもそれはそうだと納得せざるをえない。

 

「軍師として活躍したその能力は疑いようのないものだが、文官でしかなかったジュリアス・キングスレイの適性をどうやって見抜いたのか…………簡単だ、皇帝は如何なる方法を使ったかは知らないが卓越した戦略家であるゼロだと知っていたからだ」

 

 そして何よりも、とシンが続ける。

 

「ナイトオブラウンズが護衛していることこそが何よりも証拠」

「それ以上の邪推は己の身を滅ぼすぞ、シャイング卿」

 

 護衛であるはずのアーニャが携帯電話を弄ってばかりで反論する様子もないので、シンを止める為に仕方なく自分で言うしかないルルーシュだった。

 

「ユーロ・ブリタニアの貴族達にブリタニア本国と戦う気概はないだろう。下手な言動は本国を敵に回すことになる」

 

 ルルーシュとしては寧ろ敵対してくれた方が有り難いが背後にナイトオブラウンズがいる状況ではそう言わざるをえない。

 

「ジュリアス・キングスレイ、私はあなたに深い共感を覚えている。初めて会ったその時から」

 

 パチン、とシンが指を鳴らした直後、三人がいる客人の間に繋がる大きな扉が外からナイトメアフレームによって破壊される。

 

「グラックスとサザーランド、ミカエル騎士団のナイトメアか」

 

 客人の間に侵入してきたグラックスとサザーランド四機を座ったまま見上げるルルーシュに驚きはない。

 

「シャイング卿、皇帝の使者である私がいる間にナイトメアで踏み込むことがミカエル騎士団の礼儀なのか」

 

 更には銃を持った歩兵も入ってくるのを見たルルーシュは、立ち上がって安全な位置まで下がって距離を取るシンに問いかける。

 

「反逆者であるゼロを捕まえようというだけです」

 

 未だチェス盤の前から動かないルルーシュに疑念を抱きながらも、シンは腕を上げて下ろした。

 サザーランドが高価なカーペットを抉りながらランドスピナーの音を立ててルルーシュに迫る。ようやくアーニャも携帯電話を仕舞ったが、それ以上の動きはない。

 

「深い共感を覚えるか、私もだ。考えることは同じということがな」

 

 迫るサザーランドが左腕の近接戦闘用トマホークを振り上げたのと同時に、聖ミカエル騎士団が侵入したのとは別の扉が外から開かれて、オレンジ色に塗装されたヴィンセント・ジークが現れる。

 

『我が主への無礼は許さん!!』

 

 放たれたスラッシュハーケンによってトマホークが弾き飛ばされる。

 

「成程、そちらも備えていたということか」

 

 天井に突き刺したもう一つのスラッシュハーケンを使い、一足でルルーシュの前に着地したヴィンセント・ジークのメーザーバイブレーションソードがサザーランドの右腕を切り落とす。

 

「アーニャ、聖ミカエル騎士団は本国に野心有りと見た。敵を殲滅せよ」

「イエス・マイロード」

 

 切り落とされたサザーランドの右腕が歩兵とルルーシュの間を遮る壁となり、間髪入れずに放たれたルルーシュの命令を受けたアーニャが携帯電話を仕舞った時に取り出したナイトメアの起動キーをボタンを押す。

 

「相手はナイトオブラウンズであろうと恐れることはない。見事、打ち取って家名を上げよ!」

 

 ヴィンセント・ジークに牽制されて、遠隔操作でやってきたモルドレッドに身軽な動作で飛び乗ったアーニャを止めることが出来なかった。

 グラックスに乗るシンの参謀であるジャン・ロウが顔を顰めながら味方を鼓舞する為に叫ぶ。

 

「ほう、ジェレミアと互角に戦うか。良い部下を持っているな、シャイング卿」

 

 ナイトメアフレームではナイトオブラウンズには及ばないにしても、そこらの兵よりも優れたパイロットであるジェレミアと互角に戦っているグラックスにルルーシュは驚きを露わにしながらシンに話しかける。

 

「オレンジ卿の姿がなかった時点で伏兵を疑うべきでしたな。私も、まだまだ甘い」

 

 機体の世代差はあれども、聖ミカエル騎士団のサザーランドもチューンナップにチューンナップを重ねた特注品である。乗るパイロットも百戦錬磨のエースパイロット。一機は片腕を失っているとはいえ、四体一の戦力差。

 アーニャのモルドレッドは白兵戦に向いている機体ではないが、だからといって相手がエースパイロットであろうとも負けるような技量ではない。

 

「ナイトオブラウンズの戦場に敗北はない」

 

 機体特性、戦力差、そんなもので敗れていてはナイトオブラウンズに成れるはずがない。モルドレッドのコクピットで誇りと共に呟かれたアーニャに焦りはない。

 

「さて、もう一局行おうか」

 

 結局、一歩も動くどころか立ち上がることもしなかったルルーシュがシンに向けて言いながら盤面を戻す。

 

「豪胆だな、戦場の中において揺らがないとは」

「我が騎士達を信頼しているまでだ。そちらは違うのかな」

「まさか、我がミカエル騎士団に敗北はない」

 

 モルドレッドのランドスピナーに轢かれた歩兵達の血が頬に掛かろうとも泰然自若としているルルーシュに、知略の差を思い知らされながらシンは逆転の一手を放つ為に誘いに乗って席に戻る。

 

「不躾な行為をしたのはこちらが先だ。先手は譲ろう」

 

 シンに先手を譲られたルルーシュは薄く微笑み、黒のキングを動かした。

 

「ほう、キングを動かすか」

「王が動かなければ部下はついてこない。これは私の持論でね」

 

 ナイトメアが戦う戦場から少し離れた場所で、二人の男が繰り広げるチェスの第二局が続く。

 

「君と私は本当に良く似ている、シャイング卿」

 

 揺らがない。全てを読み切っていたジュリアス・キングスレイが揺らぐはずがない。

 

「血と死に満ちた世界。世界を憎み、人に絶望している。私と同じだ」

 

 戦力差など、ナイトオブラウンズの前では何の意味もない。一機、また一機とサザーランドがモルドレッドに沈められていく。

 戦場ではただ強き者が勝つ。その理を時にひっくり返して来たゼロであるルルーシュは、己が有利な状況において余裕を崩すことはない。

 

「貴殿の心の闇が私には良く見えるぞ」

「…………面白いことを仰られる。あなたに私の何が分かるというのか」

 

 モルドレッドの強さは際立っていた。サザーランドを相手にしながらもルルーシュに迫ろうとする歩兵を容赦なく轢き殺す。悪戯に犠牲を増やすばかりで、状況はシンにあまりにも不利。

 

「言っただろう、共感だ。分かる必要などない」

 

 また一手、黒のキングが進んで白が追い込まれて行く。

 一方的にシンが追い込まれて、今度は先程のように互角になることもない。仮に戦略家としては一歩も二歩も劣ろうとも、チェスにおいての彼我の実力差はさほどないはずだ。

 にも関わらず、第二局でここまで追い込まれているとすれば、先程の一局目ではルルーシュが本領を見せていなかったか、それとも……。

 

(私が動揺しているとでもいうのか……)

 

 残る一つは打ち手であるシンの思考が乱されていること。立ち合っているシンにはルルーシュの手が劇的に変化しているようには感じないのだから、後者の理由が劣勢の原因である。

 

「あなたは危険だ、キングスレイ卿…………いや、ゼロ」

「良く言われる」

 

 後少しで訪れる二度目のチェックメイトを前にして、モルドレッドと戦っていた三機目のサザーランドが沈む。一対一となれば碌な時間稼ぎも出来ないだろう。

 そしてジャン・ロウのグラックスもジェレミアが操るヴィセント・ジークを相手にして満身創痍に陥っている。

 

「時間もない。ここで止めさせて頂こう」

 

 ルルーシュがチェックメイトをする前に、下手に武器を取り出そうとすればモルドレッドが飛んで来るのでシンは一か八かで左目にギアスを発動させて殺そうした。

 

「ああ、これで終わりだ」

 

 それよりも一瞬だけ早く、ルルーシュの右目(・・)にギアスの紋様が浮かび上がる。

 

「それは……っ!?」

「君と同じ力だ――――我が軍門に下れ、シン・ヒュウガ・シャイング」

 

 二人の左右の目から放たれたギアスがぶつかり合い、より強い力が勝利して相手をねじ伏せる。

 

「チェックメイト、俺の勝ちだ」

 

 ルルーシュは最後の一手を進めてチェックメイトをかける。

 

「私の負けです。我が主、何なりとご命令を」

 

 立ち上がり、膝を付いたのはシン・ヒュウガ・シャイングの方だった。

 

「まずは聖ミカエル騎士団を止めてもらおうか」

「イエス・マイロード」

 

 最後のサザーランドが沈められ、倒れたグラックスにメーザーバイブレーションソードを突きつけられているが、聖ミカエル騎士団総帥であるシンの言葉があるのとないのとでは意味が違ってくる。

 

「マンフレディ卿の自決はギアスを使ったものだったという予測は正しかったな」

 

 聖ミカエル騎士団を説得するシンの背中を見ながら、可能性の一つとして見ていたミケーレ・マンフレディの死の理由に納得がいったルルーシュは白のクイーンを指で弾いて倒す。

 

「ルルーシュ様」

 

 大破したサザーランドからパイロットが全員降りたので、ルルーシュの護衛としてヴィセント・ジークから降りたジェレミアが近くにやってくる。アーニャはモルドレッドで見張りだ。

 

「ジェレミア、良くやってくれた」

また(・・)使いましたね」

 

 ジェレミアはジャン・ロウと何かを話しているシンの背中を見ながらルルーシュを責める口振りで暗喩を使う。

 

「これが一番面倒がない。殲滅戦などやりたくはないだろ?」

「ですが……」

「これ以上はマリアンヌに気付かれる。さあ、聖ミカエル騎士団と話し合いと行こうじゃないか」

 

 ルルーシュは説教しようとしてくるジェレミアから逃げるように椅子から立ち上がり、嘆息を背中に感じながら聖ミカエル騎士団と共にいるシンの下へと向かうのだった。

 

 

 




亡国のアキトで敵役だったシンがルルーシュにギアスをかけられて軍門に入ることになりました。

勝敗を決したのは、ギアスか人か。

右目でもギアスが使えるのは、『STAGE6 最高にして最悪な』でリヴァルにギアスを発動している時に右目にもギアスの紋章が浮かんでいると描写してありました。
ルルーシュ自身も後になって気づき、このことはジェレミア以外、知りません。

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