コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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STAGE11 花婿を奪還せよ

 

 

 

 ルルーシュが目を覚まして最初に見たのが仮面だった。

 

「ふんっ!」

 

 世にも最悪な目覚めに身の危険を感じたルルーシュが思わず拳を放ってしまっても仕方がない。

 

「ぉ、おぉぉ……っ!?」

 

 仮面にジャストミートしたが相手に効いた様子はなく、寧ろルルーシュの拳が大惨事である。

 反面、仮面を被った人物は堪えた様子も無くルルーシュが寝ているベットを覗き込み続ける。

 

「大丈夫、ルルーシュ?」

「だ、誰だお前は!?」

 

 人が痛みで悶えている中で呑気に聞いてくるゼロの正体を問い質す。

 

「あ、仮面被りぱなしだったけ」

 

 こっちが必死であるのにどこか空回りしているような空気に覚えがあったルルーシュは、仮面に手をやって外そうとしているゼロの正体に物凄く嫌な予感を覚える。

 ウィィン、と機械音がして外された仮面の内側の顔はルルーシュが予想した通りだった。

 

「スザク……」

「久しぶりだね、ルルーシュ。元気そうで良かったよ」

 

 一年近く前のことが随分と昔のように思える再会に微笑む枢木スザクと違ってルルーシュは容易には喜べない理由があった。

 

「何故、お前がゼロを」

 

 しかし、ルルーシュの口からそれ以上の言葉は言えなかった。

 ルルーシュがゼロであることを今も知っているのは自力で辿り着いたユーフェミアと、そして協力者であるもう一人だけだから、幾らスザクが相手とはいえ下手なことを言って藪蛇を突くわけにはいかなかった。

 

「私がルルーシュがゼロであることを教え、その衣装を渡したからだ」

 

 シュッ、とドアが開いてルルーシュとスザクがいる部屋にC.C.が髪を靡かせて入ってくる。

 

「C.C.、お前まで」

 

 皇帝の飼い犬に成り下がったルルーシュの前によくぞ顔を出せたものであった。

 

「なんのつもりだ。今更、俺の前に出て来るなど」

「その様子ではシャルルから計画のことを聞いたようだな」

 

 皇帝の前に引き出された時のことを思い出したルルーシュが敵意も露わにしていると、どこか悲し気なC.C.がベットの近くまで歩み寄る。

 

「信じられないかもしれないがお前を助けに来たんだよ、ルルーシュ」

「俺を……何故?」

 

 ルルーシュには理解できない。

 マリアンヌの死後、皇帝に『生きていない』と宣告されたあの時から誰一人としてルルーシュを助けてくれた人などいなかった。いたとしても利己的な理由を抱えていた。

 他人を信用できないからルルーシュは正体を隠し、その能力で人の信頼を得て来た。だから、ルルーシュはこんな変なタイミングで自分を助けに来る人物などいないと心の底から思っている。

 

「理由は自分で察しろ、馬鹿」

 

 本気で分からない様子のルルーシュに溜息を吐きながら、人を信用できなくさせた責任の一端を間違いなく担っているC.C.は最後の一歩を詰めた。

 困惑しているルルーシュが体を起こして座っているベットに膝を乗せて体を伸ばす。

 

「おい、何を」

「黙ってろ」

「っ!?」

 

 突然の接近に身を離そうするルルーシュの行動よりも早く、C.C.はごちゃごちゃと五月蠅い口を自身の唇で物理的に塞ぐ。

 横に退いていたスザクが突然のC.C.の行動に頬を赤くしながらも、ルルーシュの為を想って顔をそっと逸らした。

 

「そんなに慌てなくてもいいだろう。もしかして誰かと比べているのか?」

 

 唇を離して余裕を見せていたC.C.はルルーシュの目が泳いだのを見逃さなかった。

 

「何を怒っている?」

 

 図星だったルルーシュがC.C.に視線を戻すと、目の奥に苛烈な光が宿っていた。

 

「怒ってなどいない」

「いや、怒っているだろおっ!?」

「知るか」

 

 ナリタ攻防戦の後、シャーリー・フェネットに唇を奪われたことを思い出していたらC.C.の機嫌が目に見えて悪くなり、指摘したルルーシュを押し倒した。

 

「んな、ちょ……あぁ……」

 

 顔を逸らしていたスザクの耳にペチャクチャと湿っぽい音とルルーシュの喘ぎ声のようなものが聞こえたが、ゼロの仮面を見ることで好奇心を抑える。

 

「あ、こんなとこまでスライドするんだ」

 

 スザクが現実逃避気味に意外に作りこまれているゼロの仮面に感心していると、C.C.かルルーシュのどちらかがぷはぁと息を息を吸う音が聞こえた。そしてまた湿っぽい音とルルーシュの声が続く。

 

「――――これで勘弁しておいてやろう」

 

 それから暫くの後にC.C.の声が聞こえたので、スザクが振り返るとルルーシュがベットでダウンしていた。

 はぁはぁ、と息を荒げているルルーシュの腰の上に乗っているC.C.が口元を拭っているのを見て、背筋がゾクッと来たスザクは女の恐ろしさを知った気分である。

 

「えと…………大丈夫、ルルーシュ?」

 

 中性的なルルーシュが頬を赤くして息を荒げていると、その気もないスザクですらドキッとする艶やかさである。

 

「…………これが大丈夫に見えるなら医者に行くことを勧めるぞ」

 

 口元をテカらせたルルーシュが袖で拭いながら言った。

 

「取りあえず助けに来たよ、ルルーシュ」

 

 スザクは今までの全てを見なかったことにして再会からやり直すことにしたらしい。

 

「まずはこのピザ女から助けろよ」

 

 先程まで襲われていた我が身の情けなさを噛み締めつつも、スザクほど受け流すことも出来なくてC.C.を指差す。

 

「僕には無理だ」

「そこで諦めて一体何から俺を助ける気だ」

 

 珍しく場の空気を読んだスザクにルルーシュは憤った。もっと空気を読むなら別のシーンで発揮してほしかったものである。

 

「自分の人間関係ぐらいは自分でなんとかしてよ。特にカレンとか、カンカンなんだから」

 

 全く以てご尤もな意見だが、手助けの一つぐらいしてくれても罰は当たらないだろうと言いかけたルルーシュの頬をムギュッと挟む者がいた、C.C.である。

 

「私を無視するとは良い度胸だ。さっきよりももっと激しいことをするぞ」

 

 間近で凄まれては経験の少ないルルーシュにNoとは言えない。

 

「もう一度だけ聞く。何故、また俺の前に姿を現した。俺がお前のコードを受け継げると判断したからか?」

 

 ルルーシュが達成人になったことを知っているのはジェレミアだけであるが、ギアスを与えたC.C.ならば何らかの方法で分かったとしても不思議ではない。

 シャルルから聞かされた話が全てとも思っていない。しかし、C.C.の目的に関しては過去の彼女の言動からして嘘ではないと判断した。

 

「私の共犯者が心配だったからではいけないか」

「嘘をつくな」

「本当だよ。自分が嘘をつくからと他人も嘘をつくと決めつけるのはお前の悪癖だぞ」

「ぬぅ……」

 

 人は嘘をつく生き物であるから相手をまず疑うこと、それがルルーシュの生きていく為の処世術であった。

 C.C.に指摘された通り、悪癖であることは理解しているが改めることはきっと出来そうにもない

 

「今までのことを思えば難しいかもしれないが、少しは素直になれ」

 

 例え悪意などない善意であっても疑ってしまうルルーシュに助言を送ってC.C.は腰の上から下りる。

 ようやくC.C.が下りてくれたので、安堵の吐息を漏らしながらルルーシュは起き上がってベッドに端に腰かける。

 

「…………仮に俺を助けに来たとしてだ」

 

 実の親にすら利用されて来たルルーシュには、もう見返りの無い人の善意など信じられない。

 

「何故、このタイミングで俺を誘拐などした? というか、ここはどこだ?」

 

 状況が落ち着いてきて、いい加減に聞かなければならないことを聞く。

 周りを見渡せばどこかの一室のようだが、ルルーシュには見覚えがない。それに今まで気づかなかったが断続的な振動も感じる。

 

「ここは斑鳩、って言っても分からないか」

 

 スザクが手の中の仮面を弄びながら苦笑する。

 

「アヴァロン級二番艦斑鳩。ロイドさん達が作った艦で、今は天帝八十八陵に立て籠もったところだから」

「待て、展開を飛び越えて理解が追いつかん」

 

 誘拐された、今は斑鳩に乗って天帝八十八陵に立て籠もっていると言われても、その大事な間が抜けてしまっては意味が分からない。

 

「確かゼロ…………スザクに銃を突きつけられて」

 

 朱金城の迎賓館で黎星刻が起こしたクーデター騒ぎの中に天井から現れたゼロに銃を突き付けられたことは覚えている。

 

「腹を殴られて気絶させられた、のか?」

 

 妙にズキズキする腹部を撫でながら記憶を想起すると、銃を突き付けられた直後、腹部に衝撃を受けたと思ったら急速に意識が遠くなったことを思い出す。恐らくスザクに腹を殴られて気絶してしまったのだろう。

 

「ルルーシュって相変わらず弱いよね。もう少し鍛えた方が良いよ」

「身体能力お化けのお前と比べるな」

 

 壁を走れるような人間と比べられてもルルーシュの方が困る。

 

「俺が意識を失った後、どうなった? 天子様は?」

「…………もしかして本気で天子様に気があったの?」

「馬鹿か、お前は。一国の元首に何かあったら一大事だろうが」

 

 例え政治の実態を大宦官に握られているとしても、対外的には天子が中華連邦の代表であることは間違いないからルルーシュが身の安全を心配することは当然のことで、そこに下世話な考えは微塵もない。

 年下の少女である天子にナナリーを投影していないかと言われれば答えに若干窮するが。

 

「天子なら星刻の部下と別の部屋にいるぞ。勿論、怪我一つしていない」

「星刻……? ということは、あのクーデター騒ぎは囮。俺と天子を誘拐する為の芝居か」

「流石はルルーシュ。僕らが三ヵ月もかけた計画をあっさり見抜くなんて」

 

 あのタイミングでルルーシュ達が誘拐されたことを考えれば、察しの良い者ならば誰だって直ぐに気づく。

 

「半年前に方舟の船団っていうパリに爆弾を落とすって予告していた動画があったけど、あれはルルーシュだろ?」

「ああ、しかし、良く俺だと分かったな」

 

 ユーロピア共和国を内部から切り崩す為の嘘のテロ予告動画は意図的に映像を荒くしてあった。光の当て具合も計算していたので、よほどのことがなければ個人を特定することは不可能のはずであった。

 

「ゼロの手口そのものだかったら、ゼロ=ルルーシュであると知っている者なら直ぐに分かるぞ」

 

 隣に座ったC.C.が近すぎず遠すぎない距離感の所為で何とも言えない顔をするルルーシュ。

 

「僕もゼロっぽいなとは思ったよ」

「嘘つけ。私が言っても信じなかったくせに」

「ルルーシュがゼロだとは思いたくなかったんだよ」

 

 そういえばスザクにゼロであることをバレていたのだと思い出したルルーシュは少し気まずい思いで顔を逸らす。

 

「まあ、ルルーシュがゼロだとしたら色々と納得出来ることもあったんだけどね」

 

 クロヴィス殺人の容疑をかけられた自分を助けたことや、なんといってもユーフェミアが皇籍を奉還してでもゼロを特区に受け入れようとしたことに。

 

「…………すまん」

 

 スザクが駆るランスロットには散々邪魔されてきたからルルーシュにだって言い分はある。が、それでも騙していたことには違いないから謝罪を口にする。

 

「カレンじゃないけど、気絶させた一発でチャラにしてあげるよ」

 

 未だにズキズキと疼痛が続く腹部だけで受け入れてくれるというなら安い物だろうと思うことにする。

 

「茶化すな。しかし、よく二人纏めて誘拐出来たな」

 

 あの場にはナイトオブラウンズのアーニャ・アールストレイムやジノ・ヴァインベルグがいた。ジェレミアにはミレイの護衛を頼んだが、幾ら体力バカのスザク一人では二人も抱えて脱出は難しいはず。

 

「藤堂さんの斬月が直ぐに降りて来てくれたからね難しくはなかったよ」

「待て」

 

 幾らルルーシュの明晰な頭脳でも、知った名前の登場に混乱して追いつかなくなってしまった。

 

「藤堂だと? あの奇跡の藤堂鏡志朗が何故、中華連邦のクーデターに協力しているんだ」

 

 特区設立と共に解体した黒の騎士団を抜けた藤堂とその部下である四聖剣が桐原の手で中華連邦に逃げたことは知っているが、どうしてこのクーデターに関わっているのかルルーシュにはさっぱり分からない。

 

「お前の所為だぞ、ルルーシュ」

「俺の?」

 

 C.C.に指を突きつけられてもルルーシュには理由が思いつかない。

 

「ルルーシュ、君がE.U.を纏めちゃっただろ。そして残るブリタニア以外の勢力である中華連邦の元首である天子様と結婚しようとしている。これは事実上、中華連邦を呑み込むに等しい。ユフィはそれを防ぐ為に桐原さんを通して藤堂さん達に協力を要請したんだ」

「そして黒の騎士団時代に中華連邦と代理交渉をしていた私が伝手を使って、天子に近すぎて大宦官によってエリア11に左遷されていた星刻と繋ぎを取って今回のことを示し合わせたんだ」

 

 確かに三極であったユーロピアは併呑され、残る中華連邦も政略結婚によって呑み込まれんとしていた。

 しかし、神聖ブリタニア帝国の皇女であるユーフェミアが防がんとした理由がルルーシュには分からない。

 

「事情は分かった。分かったが、どうしてユフィが動く必要がある。そしてお前達も」

「だから、ルルーシュが発端なんだよ」

 

 堂々巡りである。自身の影響力を顧みていないルルーシュにスザクは溜息を漏らす。

 

「特区成立の式典の時、G1ベースで君はユフィに言ったよね。ナンバーズを区別するのはブリタニアの国是で変えるとなれば皇帝になるしかないって」

「確かに言ったが…………まさか!?」

「ユフィは決めたよ、皇帝に成るって」

 

 全てはルルーシュが戯れに放った言葉が発端だと知ったルルーシュは手で顔を抑えた。

 

「あれは、だが、いや」

「リヴァルが殺されて、でもその犯人は裁かれもしない。そしてナナリーを人質に取ってルルーシュを良い様に使う。コーネリア様から総督の座を継いで、エリア11で行われて来た虐殺のことも知って決めたんだ。ブリタニアの世界を変えるしかない、その為には自分が皇帝にならないといけないって」

 

 スザクの言葉を安易にルルーシュは信じられない。

 今まで、ルルーシュは人を疑って生きて来た。こいつだけは信じても良いと思って自身の命よりも大事だと断言出来たナナリーを任せられると判断したスザクもユーフェミアの騎士となった。例えユーフェミアに絆されたとしても、リヴァルの死で間違いだと思い知らされた。

 

「もう、一人で何もかも背負い込まなくてもいんだよ」

 

 肩にスザクの手が置かれたルルーシュの荷が下ろされようとしている。

 

「最初から俺は何も背負ってはいない」

「素直じゃない奴」

 

 C.C.が思わず呟くほどに意地の張り具合で、これにはスザクも苦笑するしかない。

 らしいと言えばらしいルルーシュの姿にどう説得したものかと二人が悩んでいると、三人がいる部屋のドアが思い切り開けられた。

 

「ルルーシュ、目を覚ましてないでしょうね!」

 

 パイロットスーツを着たままの紅月カレンが息を荒げながらそこに立っていた。

 

「か、カレン!?」

「あ、起きてたんだ。じゃあ、丁度良いわ」

 

 ゼロであったことやジュリアス・キングスレイとして脅したことなど、カレンには知られたらマズいことを幾つもしてきたルルーシュは、ニコニコと顔は笑顔だが邪悪な雰囲気を纏って拳を鳴らしながら向かって来ることに多大な恐怖を覚える。

 

「落ち着け、話し合おう。俺達はクラスメイトだったじゃないか」

「問答無用! 歯を食い縛れ!!」

「ぐあっ!?」

 

 あまりの剣幕に横に避けたスザクと飛び退いたC.C.が逃げたことで、ルルーシュを両手を前に出してカレンを制止しようとしたが放たれた張り手が頬を抉る。

 

「ふん、拳じゃない分だけ感謝しなさいっ!」

 

 カレンなりの優しい気遣いであったが、その甲斐もなくルルーシュの意識はあっさりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カレンがルルーシュをノックアウトしてしまったので、目覚めるまで待つという彼女に場を任せたスザクはゼロの衣装を着替えてKMFデッキに向かった。

 

「む、スザク君か」

「藤堂さん」

 

 スザクがKMFデッキに入ると、出撃から戻ってきてデッキに固定された斬月から藤堂が降りてきたところだった。

 

「随分と早いですね。交代時間はもう少し後のはずでは?」

 

 全く損傷していない斬月のエナジーフィラーの交換だけなので、手の空いている整備員からタオルを貰って汗を拭いてる藤堂に話しかけると、何故か遠い目をされてしまった。

 

「代わりに星刻が出た。戦闘は拮抗状態に陥っているから休憩がてらエナジーの補給に戻って来ただけだ。直ぐに戻る」

 

 確かにラクシャータが設計した星刻の乗機である神虎がない。

 

「幾ら星刻さんが凄いといっても藤堂さんが抜けて大丈夫なんですか?」

「紅月が粗方片付けてしまったから敵も恐れて碌に近づいて来ようとしない。第九世代のナイトメアの相手など、俺でも御免だが」

「あの、僕の乗るランスロットも第九世代なんですけど」

「敵にも味方にも畏怖されるほどの力を持った自覚をしろということだ」

 

 言われてスザクは、そうとは分からないほどに偽装されたランスロット・アルビオンと、月下タイプに偽装されている紅蓮聖天八極式を見上げる。

 

「凄い力であることは分かっていますよ。というか、流石にフロートユニットも付けていない鋼髏と比べるのはどうかと思うんですが」

 

 斑鳩の艦載戦力は全てフロートユニット、もしくは飛翔滑走翼を取り付けた第七世代以降の機体ばかりである。第九世代の二機を第五世代以下の鋼髏では比べる気にもならない。

 

「鋼髏の数と射程は脅威だぞ」

「それぐらいしか脅威になることがないと言っているようなもんですよ」

 

 中華連邦の量産型KMFである鋼髏はサザーランドにも劣るが生産性と射程距離においては他の追随を許さない領域にある。

 藤堂が乗る斬月はラクシャータが作った月下タイプの最新鋭機で、今までカレンが乗る紅蓮弐式にしか搭載されていなかった輻射波動機構が搭載されていて輻射障壁で鋼髏が撃った弾を確実に防御できるがエナジーが減る。

 

「鋼髏の搭載火器じゃ輻射障壁やブレイズルミナスを突破するほどの破壊力もないから、ごり押しでなんとかなるじゃないですか」

「紅月が完全にそうだった。が、なんというか彼らが気の毒でな」

 

 鋼髏は数だけはいるので撃たれている弾数はかなり多い。避けるのも難しいほどで、ならば防御しながら突破するという方法をカレンは取った。

 

「殺さないように手加減出来るほどの力の差がある。完全に及び腰になっている相手を無理に倒しに行くのも気が引ける」

「中華連邦を怯えさせた当の本人はルルーシュ皇子を気絶させてアタフタしてました」

「彼らが知ればどう思うだろうな」

 

 首を置いていけ、とばかりに奮戦したカレンの所為で中華連邦は一定距離以上まで斑鳩に近づかなくなってしまった。

 遠距離から砲撃してるが、斑鳩が入った場所は歴代の天子が眠る天帝八十八陵なので攻撃の規模は小さい。しかもブリタニアの皇族であるルルーシュを人質に取ったような物なので、余計に手が出しずらいのだろう。

 

「しかし、ルルーシュ皇子まで誘拐する必要があったのか? 婚約を潰し、クーデターを成功させるなら天子だけでも良かったはずだ」

 

 天子を誘拐することは仲間である星刻の望みであるが、ゼロ=ルルーシュであることを藤堂達には教えていないので花婿まで連れて来たことに疑問を抱いても仕方ない。

 

「ブリタニア側を牽制するためです。現にシュナイゼルは何も手を出そうとしないでしょ?」

 

 知己ではあるが全てを話せる関係ではない。

 ユーフェミアの騎士として清廉潔白ではいられなくなったスザクは罪悪感を覚えつつも、必要な事であると建前を口にする。

 

「あのブリタニアならば第11皇子など直ぐに見捨てるものと思ったが」

 

 ブリタニアは皇族間ですら競争を奨励しているので、同腹の兄妹以外は仲が悪いと藤堂は思っていた。

 

「それだけルルーシュ皇子に利用価値があるということなんでしょう」

「かもしれんな」

 

 嘯くスザクを注視する藤堂は真意を問うことを止めて、汗を拭いていたタオルを手近にいた整備員に渡す。

 

「籠城戦にも飽きた。君が来たということは大宦官の居場所が分かったのだろう。早々に終わらせるとしよう」

 

 星刻の部下からの報告で大宦官の居場所は判明している。

 後は事前に示し合わせた通りに動くだけでいいのだが、まさか藤堂に見透かされていると思わなかったスザクは僅かに目を見張った。

 

「所詮、私達は君達に利用されているだけなのだろうが、嘘を突き通すならもう少し徹底した方が良いぞ」

 

 助言とも苦言とも取れる藤堂からの言葉にスザクは僅かに申し訳なさげに眉尻を下げた。

 その数十分後、神虎を操る星刻が大宦官を強襲し、中華連邦は天子の下へと全てが集約される。

 

 

 




花婿の奪還はできなかった模様。

次回『STAGE12 血染めのルルーシュ』

さあ、ギャグは終わりだ。


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