コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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前話とその前とでは明らかに感想数が違うので、誰も予想していなかった展開にしてみました。





STAGE14 憎しみの連鎖

 

 

 

 ギアス嚮団本部に向けて出立する前に負傷したジェレミア・ゴットバルトの下へルルーシュが訪れたのは、彼に辛うじて残っていたなけなしの良心だったのか。

 

「…………ジェレミア、俺は行く」

「お待ちください、私も」

 

 ベッドに横たわるジェレミアに静かに告げると、彼は慌てて傷だらけの体を押して起き上がろうとして果たせない。

 

「その体では動けないだろう」

 

 V.V.が駆るナイトメアの攻撃を受けて負傷・損傷したジェレミアの体ではギアス嚮団殲滅作戦には参加できない。

 

「あの時、私がV.V.を止めれていれば」

 

 碌に体を起こすことも出来なかったジェレミアにとってギアス嚮団は良い場所ではない。寧ろ自身を勝手に改造した忌むべき場所だ。だが、それでも主君と共に在る為に向かう覚悟は疾うに出来ていた。

 にも関わらず、大事な時に共を出来ないのは騎士の名折れである。

 

「しかし、ギアス嚮団に攻撃を仕掛けるとなればアーニャ…………マリアンヌ様にはなんと?」

「言う必要などない。アイツにはギアスをかけて既に俺の支配下に置いている」

 

 それを聞いたジェレミアはまだ無事な肌を粟立たせた。

 恐怖ではない。今までマリアンヌが表に出て来ても頑なに会話一つしようとしなかったルルーシュが今このタイミングでギアスを使った理由を、その振り切れてしまった姿を止めなければならないと忠義の騎士は直感した。

 

「お前の所為ではない。後のことは俺に任せておけ」

「いいえ、任せておけません」

 

 例えこの体がどうなろうとも今のルルーシュを向かわせるわけにはいかないと、ジェレミアは確信していた。

 

「ルルーシュ様、憎しみで戦っても何も晴れはしません」

「ジェレミア、俺は」

「仕事であるならば、ルルーシュ様は俺とは言いません!」

 

 短くとも最も苦しい時に共にいたジェレミアは知っていた。ルルーシュが仕事に徹するときは『私』という一人称を使い、『俺』と口にするときは個人的事情を優先した時であることを。

 

「事情は既に聞いています」

 

 まさかシュナイゼルが半ばシャルルを裏切るようなことをするとは思いもしなかったが、その理由がルルーシュの為であると言うのならば傷つけられればジェレミアも同じ怒りを抱く。

 

「その上で申し上げます、ルルーシュ様」

 

 あの時、自身の怒りを優先させてルルーシュの友の命を奪う時間を作ってしまったことをジェレミアはずっと悔いていた。

 怒りや憎しみは、人に判断を誤らせると知っていたから言わざるをえなかった。

 

「何が大切かを忘れないで下さい。でなければ、私と同じように間違えることになります」

 

 今まで唯々諾々と従って来たジェレミアの必死な言葉は深く深くルルーシュの心に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルルーシュの作戦は簡潔にして単純だった。悠長に準備をして浮遊航空艦でゆっくりと向かっていたらV.V.に逃げられてしまう。

 速度を優先したルルーシュが立てた作戦とは、フロートユニットを搭載しているナイトメアに予備のエナジーを持たせて直接向かうという無謀なものだった。

 特定していたギアス嚮団の場所までギリギリで辿り着けるとルルーシュが弾き出した計算は示していた。

 辿り着いてエナジーが切れて戦えなくても別に構わない。ルルーシュの目的は嚮団を混乱に陥れ、その隙に深部に侵入することだから。 

 

『ようやく見つけたぞ、V.V.!』

 

 ランドスピナーの音と共にスピーカーを通して放たれた声が聞こえて、後少しで表面に幾何学模様が描かれた扉を前にしてV.V.達が通って来た扉が外から破壊される。

 

「っ!?」

 

 遂に追っ手に追いつかれたV.V.は表情を強張らせた。

 

「その声は、ルルーシュか!」

 

 現れたヴィンセント・ウォードに乗っているのがルルーシュだと気づき、咄嗟に懐に入れた銃を取り出しかけたがナイトメア相手に生身で闘ったところでたかが知れていた。

 本来、ナイトメアは市街地といった場所でこそ真価を発揮する。しかし、人間相手に真価を発揮する必要などなく、ランドスピナーが高らかに地を噛む音を発して強襲する。

 

『C.C.を返してもらう!』

 

 武装を使う必要すらない。ヴィンセント・ウォードが徒手で逃げる暇もないギアス嚮団員を薙ぎ払い、C.C.を奪還するのに時間はかからなかった。

 

『死ななかろうが痛みはあるんだろ!』

 

 簡単に嚮団員を排除してC.C.を取り返し安全な場所に置き、ルルーシュは今までの恨みを晴らすべくヴィンセント・ウォードにランスタイプのメーザーバイブレーションソードを持たせ、黄昏の間へと逃げようとしているV.V.の下へと向かう。

 V.V.が駆け込むよりも確実にヴィンセント・ウォードの方が早い。

 後少しでV.V.の体をメーザーバイブレーションソードが貫くといったところで、突如としてヴィンセント・ウォードが止まった。

 

「なっ!?」

 

 この地に来るために先行部隊にルルーシュはいた。速度を重視し過ぎたことがここで裏目に出たのである。

 

「エナジー切れ!? くそっ、あまりに強行軍過ぎたか」

 

 こうなればヴィンセント・ウォードから出て直接V.V.を倒すのみ。

 銃を持ってコクピットから出たルルーシュは迂闊だった。

 急に止まってナイトメアから降りるなど、エナジーが切れたと標榜するようなもので、指揮官としては経験を積んでも一兵卒としての経験がないルルーシュはV.V.憎しで硬直化した考えが迂闊な行動を取らせてしまった。

 

「僕を見た目通りと侮ったね」

 

  幼い体だからこそ、いざという時の備えとして一通りの軍事教練を受けたV.V.の銃の狙いは正確だった。

 ルルーシュ本人としては隠れているつもりでも、微かに射線が通った右肩に命中する。

 

「ぐっ!?」

 

 右肩を撃たれて銃を取り落としながらヴィンセント・ウォードから落ちるルルーシュ。

 

「ルルーシュっ!?」

 

 C.C.が落ちたルルーシュに向かって走るV.V.の姿を見ても大きな釘で四肢を物理的に固定されていては何も出来ない。

 

「君のことは嫌いではなかったよ、ルルーシュ。なんといっても子供達の中で一番シャルルに似ているからね」

「がぁっ!?」

 

 V.V.は言いながら地面に落ちたのも合わせた痛みに呻くルルーシュの撃たれた右肩を踏みつける。

 

「久しぶりにヒヤッとしたよ。でも、僕の勝ちだ。こんな目に遭うのはマリアンヌの子供の癖に調子に乗るからだ」

 

 喉の奥で呻くルルーシュの姿を見ることで、V.V.は恐怖に怯えた自分を忘れるようとする。

 銃撃された肩を踏みつけられた激痛の中でV.V.を見上げたルルーシュは、憎しみの中でもジェレミアが引き止めた冷静さが本質を見透かした。

 

「………くっ、はっ、ははははははは! そのマリアンヌを殺し損ねた癖に良くも粋がるな!」

「黙れ!!」

「グウッ!?」

 

 より強く右肩を踏みつけて痛みに悶えさせてもルルーシュの口は止まらない。

 

「マリアンヌは、生きているぞ…………アーニャ・アールストレイムの中で。シャルルもお前の嘘に気付いている。V.V.、お前はただ利用されているだけだ!」

「黙れ! 黙れ! この呪われた皇子が!」

「図星か? どうだ、嘘を消すと言う口で今まで実の弟に嘘をつかれた気分は!!」

「黙れぇええええええええええ!!!!」

 

 C.C.にも刺激されたV.V.の弱い心の部分を怒号と共に言葉の刃を突き刺したルルーシュにV.V.は銃を向ける。

 

「止めろ、V.V.!!」

 

 C.C.が止めようと叫ぶも、無情にもパンパンパンパンと銃撃音が鳴り響く。 

 四発の弾丸全てがルルーシュを襲い、その身体が何度か跳ねた。

 

「V.V.――っ!!」

 

 パタリと一度は跳ね上がったルルーシュの腕が再び床に落ち、力を失ったのを見たC.C.は叫びながら釘に打ち込まれた四肢に力を入れた。

 

「お前は……っ!」

 

 ズブズブと釘の頭部部分が皮膚を抉る痛みよりもV.V.への感情の昂りが勝っていた。

 

「殺してやる! 絶対にお前を殺してやるぞ!」

 

 腹部を血に染めたルルーシュの右肩から足を離して無駄な努力をするC.C.に哀れみの目を向けるV.V.。

 

「馬鹿だね、僕らは不老不死じゃないか…………一々、契約者に思い入れをする所為で永遠の生という呪いを渡すことが出来ない。C.C.、やっぱり君は魔女を名乗るには甘過ぎたんだ」

 

 コードを持つV.V.やC.C.を殺すことなど不可能なのだ、たった一つの方法以外では。

 

「ルルーシュの死体を隠して、君のコードをシャルルに譲渡させる。そしてラグナレクの接続を果たすんだ」

 

 まだ弾丸が残っている銃を徐々に拘束から抜け出そうとしているC.C.に向け、もう止まれなくなったV.V.は引き金に指をかけた。

 

「…………勝手に、人を、殺すな…………」

 

 背後から聞こえて来た微かな声にV.V.の肩がビクンと跳ねる。

 ありえなかった。ありえないはずだった。だが、それを言えばあの時のアリエス宮の時もアーニャ・アールストレイムがいるはずがなかった、マリアンヌがギアス能力を発現して精神を生き延びらせることもなかった。

 

「ぐあっ!?」

 

 血みどろのまま立ち上がったルルーシュは、後ろからV.V.の首に腕を回して全体重をかけて引きずり倒す。

 

「この、死に損ないがぁっ!!」

「…………ああ、俺は……放っておけば、死ぬだろう…………」

 

 弱い力を振り解こうとしたV.V.は自身の体の上に乗ったルルーシュの右眼に炯々とギアスの模様が浮かんでいるのを見て固まった。

 

「だが…………お前の、コードさえ……あれば!!」

 

 V.V.の首にかけられた手に力を籠める必要はない。ただ、手を伸ばすことだけに集中していれば、ルルーシュの体重で勝手にV.V.の首は締まる。

 

「や、止めろぉおおおおお!!」

 

 ギアスは使い続ければ、やがて暴走するが強靭な精神力で増大する力を押さえ込み、あくまで自身の意思で制御する術を勝ち取った者は達成人と呼ばれ、逆にコードユーザーからコードを強奪することが可能となる。

 ルルーシュは自身の意志でギアスのオン・オフを行っている。つまりは達成人となっていた。

 達成人のルルーシュならばV.V.のコードを奪える。

 

「がぁ、ぐっ……!?」

 

 運悪く倒れ込んだ時に銃を取り落としていた。貧弱な子供の体で成長が止まっているV.V.の力では全体重をかけているだけのルルーシュの手を払いのけることも出来なかった。

 

「ぁ……っ……」

 

 そしてパタリとV.V.の手が地面に落ち、直後にルルーシュも崩れ落ちた。

 どちらも動かない。

 ルルーシュがコードを奪えたのか、それとも先に命尽きたのか。

 

「ルルーシュ!!」

 

 ようやく右手を釘から引き抜いたC.C.は左手を持って力尽くで引っ張り、左手の次は両足も釘から抜く。

 

「あぐっ!?」

 

 急いでルルーシュの下へ向かおうとするが、釘から抜いたといっても穴は空いたままで立つことは出来ずに転げ落ちる。

 これだけの傷を癒すにはC.C.の再生能力では半日はかかる。そんな時間を待っていられないC.C.は膝と肘で遅々とした速度で進む。

 

「ルルーシュ! ルルーシュ! ルルーシュ!」

 

 まだどちらも動かない。どれだけ呼びかけてもルルーシュは動かない。

 遠い。走れればあっという間に辿り着ける距離も今は遥かな遠さに感じる。

 

「――――ルルーシュ!!」

 

 それでも呼びかけを続けた声にようやく反応した者がいた。

 

「…………そんなにがなり立てなくても聞こえている」

 

 V.V.に重なり合うようにして倒れていたルルーシュの体がゴロンと横に転がった。

 その拍子に、随分と昔の髪の長さに戻って来ていた前髪が流れてルルーシュの額がC.C.の目に入った。

 

「お前、それ……」

 

 ギアスの模様が額に描かれているのを見たC.C.は絶句する。

 

「どうやらコードは奪い取れたようだ。お蔭で死に損なった」

 

 ハァッ、と大きく息をしたルルーシュの表情が歪む。

 

「くそっ、こんなに痛いのに死ねないなんて」

 

 C.C.が散々味わって来た死にたくなるほどの痛みにルルーシュは泣きごとを漏らしていた。

 

「この、馬鹿っ!」

「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」

「馬鹿でなければド阿呆だ! 私がどんな思いで」

「…………すまん、C.C.のコードを受け継いでやれなかった」

 

 違う違う違う。そんなつもりではない。全くないわけではないが、C.C.の胸の内で荒れ狂う感情はそんなことが理由ではない。

 

「ここに来た時に私になんか構わずにV.V.ごと押し潰していれば、そんな目に遭わないかったのに」

「考えなかったな、そんなことは」

 

 だって、と少し幼い言葉遣いでルルーシュは続ける。

 

「もう、大事な者を失いたくなかったんだ」

 

 息を呑んだC.C.はルルーシュまで後少しの距離で地面に頭を押し付けた。

 

「私は嘘をついていたんだぞ」

「知ってる」

「ルルーシュを利用していたんだ」

「知ってる」

「全部、知っていたのに何も言わなかった」

「知ってる」

「永遠の地獄を押し付けようとした」

「知っている。もういいか? 血が流れ過ぎたのか、意識が途切れそうなんだが」

「ダメだ。寝るな、死ぬぞ」

「俺達は不老不死だろうが」

 

 ここに他人がいれば呆れるほどの会話の内容だったが、本人達は至って本気で話していた。

 

「もう寝かせてくれ」

「何を言っている。まだ話すことが山ほどあるぞ」

「どうせ永遠の時間があるんだ。幾らでも話すことは出来るだろう」

 

 その言葉が決定的だった。

 這って辿り着いたC.C.は隠すようにルルーシュの胸に顔を埋めた。

 

「バカ……」

「痛いぞ」

 

 撃たれた場所に近いところに顔を置かれた所為で痛みが半端ではない。

 

「服が濡れてて気持ち悪い」

 

 決して寒さからではない理由で震えながら言うC.C.にルルーシュは文句を言う気はなかった。

 宥めるようにC.C.の頭に手をやろうとしたルルーシュの耳に、ギギギと何かが動く音が入って来た。

 

「兄さん……」

 

 億劫にそちらを見たルルーシュは黄昏の間の扉を向こう側から開いたシャルル・ジ・ブリタニアは目を見開いて、ルルーシュの近くでピクリとも動かないV.V.を見ていた。

 

「ルルーシュ、貴様のその額は兄さんの」

 

 そしてルルーシュの額に浮かんでいるギアスの模様が示す意味を正確に理解し、シャルルはギリッと歯を食い縛った。

 

「遅かったな、シャルル。奴のコードは俺が奪ったぞ」

 

 笑みと共に放たれた事実にシャルルがあまりの怒りに思考が停止する。

 

「ああ、そうそう。マリアンヌはギアスで俺の支配下に入った。どうだ、全てを失う気分は?」

「ルルーシュゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!!」

「今はコードを奪われたら堪らないな」

 

 シャルルが怨嗟の叫びを上げて走って向かって来るのを見たルルーシュは、流体サクラダイトが仕込まれている眼帯に手を伸ばす。

 

「すまん、C.C.」

 

 了承を得る暇も無いのでC.C.に謝りながら、正式な手順を経なければ簡単に爆発する眼帯を力任せに引き千切った。

 

「っ!?」

 

 走り出したシャルルがルルーシュの行為を見て足を止めた直後、眼帯が視界を染め上げるほどの光を発する。

 そして大きな爆発が起こり、ただでさえ複数のナイトメアが突入したことで脆くなっていた遺跡の天井や床が次々と崩れて行った。

 

 

 

 

 

「陛下っ!?」

 

 つい先程、黄昏の間を通って中華連邦にあるギアス嚮団の本部に向かったはずのシャルルが慌てた様子で戻って来たことに、待機していたビスマルク・ヴァルトシュタインは目を剥いて駆け寄る。

 

「ぐっ」

「ご無事ですか、陛下!」

 

 黄昏の間から転がり出るようにやってきたシャルルの体を受け止めたビスマルクは固まった。

 

「ルルーシュ…………ルルーシュッ!!」

 

 何があったか分からないが、傷だらけの体のシャルルは愛していた息子に向けてはいけない怨嗟の声を漏らし続ける。

 黄昏の間で何があったのかと顔を上げたビスマルクは再び目を剥いた。

 

「黄昏の間が、ない?」

 

 たった今、シャルルが通ったはずの黄昏の間は無機質なコンクリートの壁となってその姿を消していた。

 

「ルルーシュが眼帯の流体サクラダイトを爆発させた所為で向こう側の部屋が崩壊し、その衝撃が黄昏の間を破壊したのだ……」

 

 同じ物を見たシャルルはゆっくりと立ち上がり、長年の夢を根本から崩された衝撃を真正面から受け止めて全身を震わせた。

 激怒と憎悪、決して今までどれだけブリタニアが被害を被ろうともルルーシュへと向けたことの無かった感情が次から次へと湧いて来る。

 

「ビスマルク、ルルーシュが兄さんを殺した」

 

 感情を制御しきれないまま声に乗せてビスマルクの名を呼ぶと、帝国最強の男は体を固くする。

 

「し、しかし、V.V.様にはコードが」

「既に達成人に成っていたのだろう。奴の額にギアスの模様が浮かんでいた」

 

 信じたくはないと顔に書いてあるビスマルクから離れて立ち上がったシャルルの目から涙が流れる。その目に炯々とギアスの輝きを強く灯しながら。

 

「奴はマリアンヌにギアスをかけて支配下に置いたとも言っていた」

 

 ルルーシュは何一つ嘘をつかなかった。シャルルが望んだ嘘の無い世界そのままに、何一つ嘘をつかなかった。

 

「…………ビスマルク」

「はっ」

 

 嘘をつく理由などないルルーシュの言うことを信じたシャルルにビスマルクは跪き、こうなってしまった運命を呪わざるをえない。

 

「儂はルルーシュの全てを壊す」

 

 もしも、あのアッシュフォード学園でルルーシュをV.V.が出て来る前に連れ出せていればと思わずにはいられなかった。

 

「あ奴がエリア11で作り上げた箱庭を壊せ」

 

 もしも、ルルーシュがナナリーの手術を推し進めることなく、隠れながらギアスを成長させ続けていれば。

 

「今までルルーシュが出会って来た全ての者を殺せ」

 

 もしも、V.V.がマリアンヌを襲うことなく、ルルーシュ達が今もブリタニアにいれば。

 

「まず、手始めに」

 

 もしも、もしも、もしも…………。

 仮定だけがビスマルクの裡に次々に降り積もって行っては、やがて意味を失くして消えて行く。

 どこから間違えたのか、何を誤ったのか、それすらも分からないほどに無念の気持ちで胸が一杯になって苦しみすら覚えていたビスマルクの耳に、あまりにも非情な命令が下される。

 

「――――――――――ナナリーの足を切り落とせ。その後、ルルーシュがやったという記憶を植え付ける」

 

 シャルルの命令にビスマルクはYESとしか答える口を持っていない。

 ルルーシュのようにジェレミアという止める人がいないシャルルの狂気はやがて世界を呑み込んでいき、V.V.が発端となった憎しみは止まることなく連鎖していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 公式において第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、帝国第2皇子で帝国宰相であるシュナイゼル・エル・ブリタニアを襲った犯人がいると思われる組織の拠点に自ら潜入し、そのまま帰って来ることはなかった

 その最後の記録は、作戦行動中行方不明(MIA)で終わっている。

 

 

 




ジェレミアのお蔭で踏み止まったルルーシュ、誰もいなくなって踏み止まれないシャルル。

達成人になった段階でコードは奪える資質を持つに至ったルルーシュはV.V.から奪取。

遅れて現れたシャルルはそれを目撃。コードを奪われるわけにはいかないルルーシュは自爆。

なんとか生きていたシャルルこそ振り切れてしまった模様。
そして相変わらず不憫なナナリー。

血縁関係で憎しみを募らせるブリタニア皇族。救われんね。


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