コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

42 / 54
復活のルルーシュを観に行ってモチベーションが上がったので再投稿です。
再投稿分は前書き・後書きは以前と同じとなります。

前とは違ってのんびり投稿ですのでご容赦ください。
以下、以前投稿した際の前書きとなります。



またまたの続編です。
劇場版を見に行き、ネタが出来たのでシャーリー生存√2が始まります。





シャーリー生存√2
STAGE0 始まり


 

 

 皇歴2009年、神聖ブリタニア帝国の帝都ペンドラゴンのアリエスの離宮を襲った悲劇からルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの苦難は始まった。

 

「神聖ブリタニア帝国第17皇位継承者ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様ご入来!!」

 

 まだ年齢が二桁になったところの少年――――ルルーシュがたった一人で大勢の貴族達が見守る中、第九十八代唯一皇帝シャルル・ジ・ブリタニアに謁見する為に歩を進める。

 

「マリアンヌ皇妃はブリタニア宮で殺められたと聞いたが?」

「テロリストが簡単に入れる所ではありませんが」

 

 母マリアンヌがテロリストに殺された話はまだ表沙汰になっていないにしても、情報収集に長けている大貴族達はあらゆる伝手を使って情報を手に入れている。

 

「では、真の犯人は?」

「恐い恐い、そのような話、探る事すら恐ろしい」

「しかし、母親が殺されたというのにしっかりしておられる」

 

 この中に母を殺した犯人がいるかもしれないという疑いを消せぬまま、それでも弱みは決して見せまいと胸を張って壇上で座して待つ父の下へと向かう。

 

「だが、もうルルーシュ様の芽は無い」

 

 遥かに年少でありながらも、第三皇子であるクロヴィスを頭脳で上回っていたルルーシュに密かな期待をしていた貴族もいた。

 マリアンヌは騎士とはいえ、庶民の出身。皇妃に成れたこと自体が奇跡のようなもので、後ろ盾のないルルーシュが皇帝に成った際に後援していれば権力を握ることも出来ると皮算用をしている者もいた。しかし、あまりにも博打が過ぎた。

 

「後ろ盾のアッシュフォード家も終わったな」

 

 まだ幼い子供達だけでは皇帝になるどころか謀殺されるか、体の良い取引材料になるだけ。

 早くからマリアンヌを後援し、ヴィ家の後ろ盾であったアッシュフォード家も運命を共にするしかない。故に博打は失敗に終わったと、多くの貴族達は傍観者として笑う。

 

「妹姫様は?」

「足を撃たれたと……」

「お目も不自由に」

「心の病と聞きました」

「同じ事よ。政略にも使えない体」

 

 事件の目撃者であるナナリー・ヴィ・ブリタニアは目が見えなくなって、足も動かないとなれば政略にも使えないお荷物でしかない。皇族である以上は一定の生活は保障されても、理不尽に与えられる命令にも拒否できる力を身に着けることもまた出来ないことを示している。

 全てを分かった上で、ルルーシュはたった一人で皇帝の前に立つ。

 

「皇帝陛下、母が身罷りました」

 

 ここにいるのは父ではなく皇帝であると、はっきりとした区別を付けられていなかったルルーシュは両親の愛を疑っていなかった。

 

「だから、どうした」

 

 疑っていなかったから、その返答をルルーシュは予想すらもしておらず、「だから?」と鸚鵡返しに問い返してしまう。

 

「そんなこと言うためにお前はブリタニア皇帝に謁見を求めたのか? 次の者を呼べ。子供の相手をしている暇は無い」

 

 信じられなかった。少なくともルルーシュが知る父は母にも妹にも、そして自分にも優しかった。

 

「父上!」

 

 もっと近くで真意を問うべく壇上に上がろうとして衛兵に止められる。

 

「よい」

「イエスユアマジェスティ」

 

 壇上に一歩足をかけたところでルルーシュの首に銃剣を突きつけた衛兵を下がらせ、皇帝は玉座に座ったまま傲岸不遜に己が息子を見下ろす。

 既に皇帝への不敬とも取れるルルーシュへの行動に貴族が内心で瞠目している中、当の本人は感情に突き動かされていた。

 

「何故母さんを守らなかったんですか?皇帝ですよね。この国で一番偉いんですよね。だったら守れたはずです。せめて、ナナリーの所にも顔を出すくらいは!」

 

 それがルルーシュの普通であり、当たり前であり、世界の全てであり、考えの及ばぬ器の小ささだった。

 

「弱者に、用はない」

 

 ブリタニアの国是であり、シャルルの信条そのままの言葉が息子を打ち据える。

 

「弱者?」

 

 母を失い後ろ盾を失ったルルーシュ達、目も見えず足も動けないナナリーは確かに弱者であった。

 

「それが、皇族というものだ」

「なら僕は、皇位継承権なんていりません! 貴方の後を継ぐのも、争いに巻き込まれるのも、もう沢山です!」

 

 ルルーシュには分からない理屈であった。

 母を殺したテロリスト達は他の皇妃達や母を疎んでいる貴族達が送り込んだのだと疑っていた。皇族という括りでしか物事が見れないのならば、皇位継承権など捨ててしまえば争いに巻き込まれることはないと安易に思い込んだ。

 

「――――――――死んでおる。ルルーシュ、オマエは産まれた時から死んでおるのだ」

 

 子供ルルーシュの癇癪を一切の関心を寄せていない目で見下ろすシャルルが告げる。

 

「お前が自らの命を賭けて獲得した物は何か? 身に纏ったその服は誰が与えた? 住んでいる家は? 日々の食事は? 皇位継承権は? 全て儂が与えた物。畢竟、お前は生きているとは言えぬわ! 然るに、何たる愚かしさ!!」

「ヒィ! うわぁ……っ!?」

 

 玉座から立ち上がり、世界に覇を唱えている皇帝の威圧を前にしては齢十歳のルルーシュに耐えられるはずがなかった。

 知る父の全ては偽りであったかのように覇気も露わな皇帝に、ルルーシュは少しでも遠ざかろうと後退ろうとして膝から崩れ落ちて尻餅をつく。

 

「ルルーシュ! 死んでおるお前に権利など無い。ナナリーと共に日本へ渡れ。皇子と皇女ならば、良い取引材料だ」

 

 尻餅をついて見上げるルルーシュを一切の情のない冷徹な眼差しで見下ろす皇帝が非情な命令を下す。

 

「あそこの総理、その息子は確かお前と同い年。篭絡せよ、ルルーシュ」

 

 分からない。ルルーシュには母と共にいる父と今の姿がどうしても重ならないまま、皇帝は訳の分からないことを言い続ける。

 

「皇族にしか為し得ぬ責任がある。ナナリー共々、神聖ブリタニア帝国の礎となるがよい」

 

 分からない。分からない。目の前にいる男が父であることが、同じ人間であることが信じられない。

 

「さもなくば、お前達の居場所など世界のどこにもないと知れ」

 

 そうして一度も皇帝は子供達ルルーシュとナナリーを顧みることなく、ナナリーの傷が癒えて一通りの動作訓練を終えると日本に送られることになった。

 皇族の見送りとしては数は少ないだろう。そして真にルルーシュとナナリーのことを思ってくれている者は、きっと両手の指の数にも足りない。

 

「ルルーシュ……」

「駄目だ、ユフィ」

 

 ルルーシュ達を案じてくれる数少ない者の中の一人、ユーフェミア・リ・ブリタニアが一歩歩み出そうとしたところで、姉であるコーネリア・リ・ブリタニアに肩を抑えられて止められた。

 何故、とユーフェミアが姉の顔を見上げると、彼女はただ首を横に振るだけ。

 ユーフェミアはルルーシュと仲の良かったクロヴィスならばと彼を見た。

 

「クロヴィスお兄様」

「すまない……」

 

 クロヴィスもまたコーネリアと同じく首を振り、妹を見下ろして自分の無力さを嘆くことしか出来ない。皇帝の不興を買い、母や後ろ盾だったアッシュフォード家を失ったルルーシュ達に味方はいないし、なってくれる者もいない。

 第二皇子であるシュナイゼル・エル・ブリタニアにも皇帝の意向を覆せるほどの力はないのだから。

 

「ルルーシュ、本当にすまない。私にもっと大きな力があれば」

 

 頭脳明晰であるシュナイゼルは多くの仕事を任されているが皇帝の決定を覆すだけの力はないことを悔やんでいた。

 

「兄上、そう言ってくれるだけで十分です」

 

 ユーフェミアの優しさも、コーネリアの気遣いも、クロヴィスの無念さも、シュナイゼルの気持ちも、しっかりとルルーシュは受け止める。

 ここに集まった皇族の大半や貴族も儀礼程度の気持ちしかない。皇族という絶対的な権力を持っていても、皇帝の不興を買って半ば廃嫡に近い扱いを受けることになるルルーシュ達の二の舞になる危険があるから味方は出来ないのだ。他に大切な者達がいては誰も踏み込めないのだから。

 全てを分かった上で、そしてナナリーを守れるのは自分しかいないのだと知ったルルーシュの心はブリタニアから離れた。

 

「さようなら」

 

 ルルーシュなりの決別と共に飛行機はブリタニアを飛び立ち、彼らは日本の地を踏むことになった。

 

 

 

 

 

 ブリタニアから遠く離れたこの地ですらルルーシュ達にとっては安らげる場所ではない。

 留学の名目で日本の総理である枢木ゲンブの下へ送られたルルーシュは自分達が体の良い人質であることを理解していた。

 日本側のSPは付いていたが彼らはあくまでルルーシュ達に身の危険がないかを守る為に配置されただけで、歩けないナナリーの世話はしないしルルーシュもさせなかった。

 

「ナナリー、僕の肩に掴まってくれるか」

 

 枢木神社へと続く長い階段の前に車から降ろされたルルーシュはナナリーを背負い、何十段もある階段を一歩一歩上り始める。

 事件の影響で足を動かせないこともあってナナリーの体重は同年代の少女よりも軽い。とはいえ、別段、鍛えていたわけではなく、運動よりもチェスといった知能ゲームを好んでいたルルーシュがナナリーを背負って階段を上るのは容易なことではない。

 

「お兄様……」

 

 日本の夏は暑い。ナナリーを背負って階段を上るルルーシュの息は上がり、汗がダクダクと流れていく。

 目が見えずとも、放散される熱気でルルーシュの疲労を感じ取ったナナリーが心配して声をかける。

 

「大丈夫。ちょっと足場が悪いだけだから。ナナリーも怖くないか?」

「はい、お兄様のお蔭で」

 

 ルルーシュは決してナナリーに階段を上っているとは言わなかった。言われずとも察したナナリーも、見知らぬ者に抱えられるよりかは遥かに安心できた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、くっ、はぁ、はぁ」

 

 階段のところどころに周りを警戒するSP。見上げた階段の頂上に見える鳥居の下にいる四人の人物。

 

(あれが)

 

 老人が一人と中年の男が一人、少年が一人と少女が一人。

 彼らがこれから戦う者達と心に定め、ルルーシュは背中に感じるナナリーの温かさだけを頼りに進み続けた。

 

 

 

 

 

 ルルーシュはそれからもずっと戦い続ける。

 ギアスを手に入れ、ギアスによる悲劇を目の当たりにし、多くの人間を巻き込みながらもナナリーが安全に暮らせる世界を作るまで止まることは出来なかった。 

 

 

 





劇場版Ⅲの皇道はシャーリー生存が確定し、復活のルルーシュに続いていくそうで。
大筋は変わらないけど、ところどころで台詞が変わっていたり。これなら扇レクイエムとも言われなかっただろうに。
見に行った時間帯は朝早かったにしても十人もいなかったのは少し寂しかった。
映画の話はここまでにして。


次話はR2 TURN 13から別のIFが始まります。
このシャーリー生存√2は劇場版の要素を組み込みつつ、今までの三√の要素を統合したものになると思います。

今度こそ更新は出来たら上げていく方向で(毎日や隔日はもう無理)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。