コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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STAGE5 赦し

 

 アッシュフォード学園の生徒会室にいるのは二人。

 

「ごめんね、スザク君。忙しいのに手伝ってもらっちゃって」

 

 二人の内の一人であるシャーリー・フェネットが作業を続けながら、もう一人である枢木スザクに言った。

 

「普段、中々手伝うことが出来ないからね。こういう時でも手伝えることがあるのは嬉しい」

 

 シャーリーが纏めた書類をホッチキスで止め、段ボールに詰めていくスザクは言葉通り表情は穏やかだった。

 

「それに今はエリア11は安定しているし、書類仕事が得意じゃない僕は手が空いてるから」

「黒の騎士団も中華連邦に行っちゃったもんね」

 

 一瞬、シャーリーの言葉に手を止めたスザクは平静を装って作業を続ける。

 

「しかし、また随分と書類があるね。政庁の一部署並みじゃないか」

「生徒会の引き継ぎだから。ミレイ会長…………前会長が生徒会長をやっていた時期が長かったのとイベントの多さもあって、どうしても書類が多くなっちゃったんだって」

「ああ、納得」

 

 アッシュフォードは巨大な学園で、ミレイが会長になってから多種多様なイベントを行っているので関係書類がどうしても多くなってしまう。

 多種多様なイベントを可能にしていたのは会長であるミレイの発想力とカリスマ性、副会長であるルルーシュの事務能力である。その副作用が多量の書類の山ではあるが。

 

「リヴァルが会長を引き継いだけど見てるだけでも大変そう」

「新しい生徒会のメンバーも選んでるんだって? 会長は副会長のルルーシュが引き継ぐって思ったけど」

「柄じゃないって。でも、本当は面倒臭がっただけだよ」

「ルルーシュらしい、のかな」

 

 ゼロとして動くのに生徒会長などやってられるはずがないと二人は知っているので、核心を突かないまま話を続ける。

 

「当のルルーシュは? 姿が見えないけど」

 

 シャーリーは何も知らないとスザクは知っているはずだった。それでもルルーシュとの距離が近いはずだから明確な意図はなくとも、無意識の内に探りを入れる。

 

「ロロとどっかに行っちゃった、私を置いて」

 

 唇を尖らせて拗ねているように見えるシャーリーに嘘は無い様に思えたスザクは内心で首を振った。

 自分が嘘を見抜くのが得意ではないと知っているから。

 

「二人でどこに行ったんだろうね」

「大学には行かないみたいだから、どこかの会社でも見に行ったんじゃない? もう私達もここアッシュフォードを卒業した後のことを考えなきゃいけないし」

 

 アッシュフォード学園を卒業した後のことなど考えたことも無かったスザクは当たり前のことを告げられて鼻白んだ。

 

「卒業した後のことか……」

 

 スザクは今後のことを考えても、ナイトオブワンになって特権を行使して日本を取り戻した後のビジョンを思い描けずにいた。

 

「スザク君はナイトオブラウンズだもん。将来は安泰だね」

「どうだろう」

 

 皇族に次ぐ地位を持っているといっても、その地位は決して盤石ではない。

 ナイトオブラウンズとは勝利し、強さこそが全て。戦場で敗れることがあれば、自分よりも強い者がブリタニアから現れれば地位から引きずり落とされる未来しかない。

 

「僕はナンバーズ出身で追い落とされないように毎日必死だから」

 

 侮られることは多々あり、貴族に下に見られることも決して少なくない。

 表立ってないのは帝国最強を担うナイトオブラウンズの地位があってこそ。地位を追われるほどの失態を起こせば、その瞬間にそれ見たことかと攻撃されるのは想像に難くない。

 

「そういうシャーリーは学園を卒業したらどうするんだい?」

 

 どうしても自分の話は血生臭くなってしまうのでシャーリーに話を振った。

 

「ルルのお嫁さん…………なんちゃって」

 

 頬を赤く染めて恥ずかし気に顔を逸らすシャーリーの当たり前の願いに、スザクは自分が如何に平穏から遠く離れた場所にいるかを突きつけられているようだった。

 

「働かないのかい?」

「昔からお嫁さんになるのが夢だったもの。それにルルなら未来のことまで考えて一杯稼いでくれそうだから」

「簡単に想像できるよ」

 

 ナナリーの為だけに世界に名を轟かせていたブリタニアに戦いを挑もうとしたルルーシュだ。尽くされるよりも尽くすことに喜びを感じるタイプなので、スザクには二人が家庭を営む姿が比較的容易に想像できた。

 ただ、その未来が訪れるかはあまりにも未知数過ぎた。

 

「ねぇ、スザク君」

「なんだい」

 

 ユーフェミアの命を奪ったゼロであったルルーシュが幸福になることを心から望めないスザクの本心を知らずともシャーリーは少し悲しげだった。

 

「私は、私はルルが好き。スザク君は嫌い?」

 

 その問いは今のスザクにはあまりにも重い。

 

「僕は……好きだった」

「今は?」

「……………」

 

 過去形で語ったスザクにシャーリーの追及は止まらず、何も知らないはずの彼女には何も言えずに沈黙を返す。その沈黙こそが何よりも雄弁に今の心情を語っていることにも気づかず。

 

「変だと思ったんだ。前はあんなに仲がよかったのに。ケンカでもしたの?」

 

 ただの喧嘩だったならばどれだけ良かっただろうか。

 ルルーシュは許されないことをした、決してスザクにとって許すことが出来ないことを。

 

「許せないんだ」

 

 何も、話せない。

 話せないから、そんな抽象的なことしか言えない。

 

「…………許せないことなんてないよ。それはきっとスザク君が許さないだけ。許したくないの、きっと」

 

 我知らずにユーフェミアの血に染まった体を幻視して手元を見下ろしていたスザクに、シャーリーは子の全てを包み込む母のような声で言った。

 

「私はもう、とっくに許したわ」

 

 スザクが見上げた視線の先でシャーリーは聖母のように淡い微笑みを浮かべている。

 

「シャーリー、君は……」

「手伝いに来たぞ、スザク」 

「………………」

 

 決定的な言葉がスザクの口から漏れようとした直前、生徒会室に入って来たのはスザクと同じナイトオブラウンズであるジノ・ヴァインベルグとアーニャ・アールストレイムの二人。

 

「じ、ジノ、アーニャまで」

 

 リヴァルの指導を受けながら大分砕けた物言いをするようになってきたジノが気安く、アーニャは無言のまま室内に入って来た。

 

「何か手伝えることはあるか?」

「ううん、もう終わるところ」

「え、もう? これなら女の子と話さずに先に来たら良かったか」

「その女の子達に恨まれそうだから私としては大助かり」

「おっと、これは一本取られた」

 

 先程の空気などないかのようにシャーリーがジノとが気安く話しているのをぼんやりとスザクは見ながら、最後の書類を段ボールに詰めて収納する。

 

「ジノとシャーリー、仲いいね」

 

 異性への好意ではなく、純粋な友人への対応をしてくれるシャーリーにジノも楽しく話せているように見えた。

 

「リヴァル先輩でも固いところがあるのにシャーリー先輩は普通に接してくれるから俺も話しやすい」

「ちょっと話し方が貴族っぽいだけで普通の男子と全然変わらないよ。あ、貴族だっけ」

「後、ナイトオブラウンズ」

 

 最後にアーニャが付け足してオチがついたところで、シャーリーが偏見無くその人を見て話してくれる有難い存在であることをスザクも改めて自覚する。

 

「ルルーシュ先輩は良い人を捕まえたよ。いや、捕まえられたのか?」

「言い得て妙」

「もう、止めてよ二人とも」

「照れなくても良い」

 

 必要が無ければ一日中、口を閉じていることもあるアーニャもシャーリー相手には少し饒舌になるような気がする。

 

「ところで、シャーリーに聞きたいことがある」

 

 ブリタニアの多くの人達がシャーリーのようであったならば、世界はきっと平和だろうなと現実離れした想像を膨らませていたスザクは珍しいアーニャの行動に目を丸くする。

 

「聞きたいことって私でいいの?」

「一番素直に話してくれそうだから」

 

 理由になっているようでなっていないような微妙な理屈に、シャーリーは少し考えるような顔をした後に頷いた。

 

「これを見て」

 

 そう言ってアーニャがシャーリーに手渡したのは彼女が何時も弄っている携帯電話だった。

 携帯電話の何を見るのだろうかと受け取ったシャーリーが画面に目を落とすと、位の高そうな服を着た中性的な少年が花壇の前で二輪の赤いバラを持って立っていた映像を目にする。

 

「わぁ、可愛い子」

 

 ズボンを穿いていることから男の子であると見たシャーリーは感嘆の息を漏らしながら、知っている人物との類似性に気付いた。

 

「ルルに似てる?」

「やっぱりそう思う」

 

 紫の瞳、そして髪の長さは違うが顔つきがルルーシュに酷似していたので思わずそのまま口走ると、アーニャも我が意を得たりと頷いた。

 

「ルルーシュ君には自分じゃないって言われた」

 

 よくよくシャーリーは画面を見て、高貴な服装からしてブリタニアにいた頃の写真であると察しがついた。皇族の次にブリタニアの象徴であるナイトオブラウンズに自分であると言えるはずがないとも知っている。

 

「本当にルルーシュ先輩に似てるな。なあ、スザクもそう思うだろう」

 

 長身を活かして斜め上からシャーリーが持つ携帯電話の画面を覗き込んだジノも同じ所感を抱き、ルルーシュと昔馴染みなのだとリヴァルから聞いていたのでスザクに話を振る。

 

「ん、ああ……」

 

 ルルーシュが皇族だったことを知っているスザクは困った。直ぐに写真の主が幼い頃のルルーシュ当人であることに察しがついたので、ここで安易な否定は逆におかしいので返答を濁す。

 

「アーニャはどこでこの写真を?」

「分からない」

 

 幼い頃のルルーシュとアーニャの繋がりが分からない。写真をどうやって撮ったのかと聞くも、当人であるアーニャは首を横に振った。

 

「分からないってことはないだろう。それとも他の誰かが携帯電話を使ったのか?」

「それも分からない」

 

 ジノの当然の疑問に悄然と肩を落とすアーニャに、スザクとシャーリーは顔を見合わせた。

 

「この携帯電話には、九年前に私が書いた日記がある。でも私にはこの記憶がない」

「えっ」

「他にも一杯。私の記憶と、データとしての記録が違っているの」

 

 九年前から抱えているアーニャの悩みを聞いて、何かの病気ではないかと考えたのはジノ一人だけ。

 

(まさか皇帝陛下のギアス? でも、なぜアーニャに?)

 

 アーニャの症状は皇帝の記憶改竄のギアスを受けたと仮定すれば全てが納得がいく。

 しかし、九年も前のただの少女であったはずのアーニャが皇帝のギアスを受けなければならないような理由に見当がつかない。

 

「それだけじゃない。今でも記憶がずれることがある。中華連邦で戦った時も、いきなり……」

「アーニャちゃん」

 

 皇帝のギアスを受けているだけでは説明できない症状にスザクも困惑する中、アーニャを安心させるようにシャーリーがその手を取った。

 

「私には何も出来ないかもしれないけれど」

 

 自分が自分でないような違和感、世界の全てが嘘をついているような恐怖をシャーリーも感じたことがあった。

 そんなシャーリーを引き戻してくれたのは、温かな手の温もりと強さ、そして捨て鉢になって逃げていた心を繋ぎ止めてくれたのはルルーシュの言葉だった。

 

「出来るだけ力になる」

 

 何も出来ないかもしれないけど、何もしなくて良い理由にはならない。

 

「頭の良いルルなら何か良い解決方法を見つけられるかもしれない。一度、相談してみるね」

「…………ありがとう」

 

 無力なのかもしれない。それでも味方でいてくれるならアーニャは礼を言わずにはいられない。

 そのシャーリーが放つ慈愛の光があまりにもユーフェミアに似ていて、スザクは彼らを直視できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皇帝陛下、何をっ!?」

 

 バンバンバン、と何度も銃声が轟いて、先に倒れていたコーネリアの近くにバトレーと彼の部下が倒れる。

 

「兄さん、大丈夫ですか?」

 

 娘や配下を撃ったことよりも双子の兄の心配をする皇帝シャルルは、放り出された形になるV.V.の傍らに膝をついて背中と頭を支えながら言った。

 

「…………あぁ、くっ……コーネリアにはやられたよ」

 

 両手足は縛られたままで、コーネリアによって両目を撃たれて未だに視力は戻っていないがシャルルの声は聞こえていた。

 

「良く来てくれたね、シャルル。やっぱり最後に頼りになるのは兄弟だ」

「一つだけ聞かせて下さい、兄さん」

 

 流石にV.V.も旗色が悪く何も出来ない中で焦燥を覚えていた。その中で救ってくれたシャルルに礼を言おうとして遮られた。

 

「ルルーシュに刺客を放ったというのは本当ですか?」

 

 目が見えないから今、シャルルがどのような顔をしているのか分からない。

 ただ、声だけは不自然なほどに平坦で、事実だけを確認するような問いにミチミチと肉が再生していく奇妙な感覚の中で笑みを浮かべる。

 

「お蔭で仕返しされちゃた。虎の子だったギアスキャンセラーも取られちゃってアリスにまで裏切られちゃうし、良いところ全くなしだよ」

 

 目が見えないから、シャルルが怒りから歯を食い縛っていることにも気づかない。

 

「ははっ、でも収穫もあった。ルルーシュがゼロだって分かったんだ。ナナリーも騙していたんだ、あいつは。嘘をついていたんだよ」

「嘘をついたのは兄さんだ」

 

 キッパリと切り捨てるように言い切ったシャルルにV.V.は続ける言葉を持たなかった。

 

「兄さん、儂は知っている」

 

 一度ならば、あのマリアンヌを殺したという嘘ならば、精神だけでも生きていたから許そう。肉体も保存してあるから、もしかしたら戻れる可能性もあるから。

 

「あなたがマリアンヌを殺したことを」

「シャルル、違うそれは……」

 

 二度目はない。

 言い訳も、赦さない。

 

「ルルーシュは儂が監督すると言ったはずだ。兄さんもそれを認めた」

「だけど、C.C.がいなければ僕達の計画は」

「兄さんは、嘘をついた」

 

 そこにどんな理由があろうとも、たとえシャルルの為であったとしても、嘘をついたという一点だけが問題なのだ。

 

「これは一時の別れに過ぎない。ラグナレクの接続が成れば、また会える」

「ァアアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!?!?!?!」

「その時までCの世界で待っていてくれ」

 

 達成人となっているシャルルによってV.V.は自身のコードが奪われるのを感じ、抜け出ていく感覚に叫声を上げた。

 

 

 

 

 

 その暫くの後、血の痕跡を追って黄昏の間がある建物へと辿り着いたジェレミアは複数人が倒れているのを見つけるのだった。

 

 

 




1.皇帝に会うことが出来てゼロの正体を話すもギアスで記憶を弄られる
2.黄昏の間に向かうも射殺される(誰に?)
3.敢え無く黒の騎士団に捕まる
4.真実を知って逆上して皇帝を殺す

選択肢4は完全に無くなりました。
まだコーネリアの死亡確定はしていないし、皇帝に会った瞬間のことは敢えて描写していないのでギアスを使われていないとも確定していない。
1.2.3.の可能性はまだある。

いや、本当にどうなるんだろう(すっとぼけ)


後、シャーリーは天使。
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