コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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STAGE8 作戦後の一幕

 

 

 中華連邦領、黄海に浮かぶ潮力発電用の蓬莱島に黒の騎士団の本部がある。

 その蓬莱島にある本部ビルの一室にて、黒の騎士団の首領であるゼロは名目では天子を上位に据えながらも実質的に中華連邦を動かしている黎星刻と向かい合って座っていた。

 

「すまない、星刻。兵に多くの犠牲を出してしまった」

 

 向かい合わせのソファに座り開口一番、ゼロの仮面を被ったルルーシュが頭を下げる。

 同盟者とはいえ、彼我の戦力差は圧倒的。頭を下げるという形で謝辞を示しているルルーシュに星刻は頷いて受け入れる。

 

「ブリタニアの施設に攻勢をかけると決まった時点である程度の損害は織り込み済みだ。謝罪の必要はない。寧ろ君達の方は大丈夫なのか? 隊が壊滅状態だと聞いたが」

 

 ギアス嚮団強襲作戦において中華連邦の代表として同行していた周香凛から報告を受けていた星刻はゼロに頭を上げさせながら聞く。

 

「今回の作戦は私の我儘から始まったと言ってもいい。痛いところではあるが、呑み込むしかない。しかし、共闘関係にある君達にまでそれを強いることは出来ない。非難は甘んじて受けよう」

「中華連邦にこの件でゼロを非難する理由はない。寧ろ我が国の領内の問題に黒の騎士団を巻き込んだこちらこそが謝罪せねばならないだろう」

 

 内心では私心で真っ黒な作戦だったルルーシュは外面を取り繕って仮面を被り、星刻も領内に秘密裏にあった施設の作戦で黒の騎士団の隊が壊滅した責任を負う訳にもいかないので外面上は自国の兵を喪った責任を追及しきれない。

 互いの立場故に、このままでは謝罪合戦になってしまうと判断した二人は話を前に進める。

 

「ブリタニア軍によって施設は壊滅状態、人員も同じく。辛うじて残っていた機械から吸い上げたデータからは何らかの人体実験をしていたことは確認されている」

 

 データの全てに目を通し、ギアス関連の文言は削除して隠滅した情報を渡した張本人であるルルーシュは何食わぬ顔で報告する。

 

「私も確認した。随分と非人道的な行いで、合衆国入りを渋っていた各国首脳を説得する材料にはなった」

「征服した地の民のみならず、自国民すらも平気で実験材料にする国だ。嫌悪を抱くのが普通だ」

 

 失った兵達に見合う価値があったとは上に立つ者として口にしないが、使える物はとことんまで使い尽くすルルーシュである。

 

「ジェレミア・ゴットバルトの件も壊滅した零番隊の代わりとして配置されると聞いたが」

 

 やはり突っ込まれるか、とギアス嚮団強襲作戦前にジェレミアを正式に黒の騎士団に迎え入れていたルルーシュは組んでいた腕を解き、右手を軽く上げる。

 

「今回の作戦は彼の情報提供によって成り立っている。何か問題でもあるか?」

「エリア11…………日本で純血派として辣腕と振るっていた男だ。ナンバーズ排斥の急先鋒だった過去を持つものをとてもではないが信用できない」

 

 ジェレミアは大貴族の出身で、自身も辺境伯の地位を持つ。 純血派と呼ばれるブリタニア人至上主義グループを率いていた男が、よりにもよって反ブリタニアの急先鋒であるゼロの親衛隊に入るなど常識的におかしいと星刻が語る。

 

「ジェレミアの体のことは知っていると思うが」

「改造処置を施されているらしいとは聞いている」

 

 実験適合生体として体を弄られたジェレミアは、そうした者達に恨みを持っていると付け加えて続ける

 

「ブリタニアが本人の意思を無視して行ったことだ。死んだことにされて、軍籍も剥奪されているらしい」

「それで裏切ってこちらに付くと? よりにもよって君に」

「オレンジ疑惑を植え付けた私の味方になるとは普通は思わないだろう。しかし、前提が違うのだ」

「ほう」

 

 クロヴィス暗殺の疑いをかけられたスザクを逃がす為のゼロたるルルーシュが発したオレンジに関しては完全なハッタリであり、そもそも存在しない。

 これはブリタニアへの牽制、更にはジェレミアの心の隙を突くための何重にもおける策略である。そして、仕掛けたトラップが発動し取り乱したジェレミアを狙い、ゼロは『私達を全力で見逃がせ』というギアスを掛けて見逃させた。

 傍目には「オレンジ」なる機密の公表を恐れたジェレミアが隠蔽のために必死でゼロを逃がしたかのように映ったため、皇族殺害の重罪人を逃がした責任を問われるだけでなく、『オレンジ疑惑』なる嫌疑までかけられることとなる。

 

「つまり、ゼロ。君とジェレミアには噂通り繋がりがあったと解釈しても構わないのかな」

 

 そう疑われるのは仕方のないことで、黒の騎士団幹部からも同じ意見が出た。

 

「その通りだ。彼は私の仮面の内側を知る数少ない者だ。とはいえ、協力関係はあの一度に過ぎないはずだった。実際、ブラックリベリオンの時も私を狙って来て戦線を離脱させられた」

 

 厳密には誘拐されたナナリーを追ってルルーシュが勝手に戦線を離脱したのだが、暴走していたジェレミアと戦ったのは嘘ではない。

 ジェレミアは黒の騎士団との対面時に自身が暴走し、ゼロを襲ったことを謝罪している。

 

「人体実験を受けたことでブリタニアを切り、ゼロに付いたと。事情は理解するがスパイである可能性の方が高そうだが」

 

 真実を折り混ぜることで相手に嘘を信じ込ませる。

 ギアスは一度しか効かないし、現にジェレミアはその後の戦いでゼロと戦い続けている。

 

「人生観が変わる程の体験をすれば変遷もありえないものではないだろう。が、今回の作戦で恨みを晴らしている。ブリタニアに戻ろうとする可能性もあるのではないか?」

「ジェレミアは生粋の騎士だ。一度決めたことを覆したりはしない。とはいえ、やはり信用に欠けるのは仕方ないだろう。だからこそ、私の下につけた」

 

 明確に敵だった経緯もあり、同じブリタニア人でもディートハルトと違い、生粋の軍人であったジェレミアが仲間になるからといって即座に受け入れられるものではない。

 ブラックリベリオンでのことを消化できない者もいるので、黒の騎士団の指揮系統から独立してゼロ直属の個人戦力として動く立場に落ち着いたのは状況的に仕方のない面もあった。

 

「随分と信頼しているようだ。回収したナイトギガフォートレスを改修し、ジェレミアの専用機とするプランもあるとか」

 

 V.V.が乗っていたジークフリートはブリタニア軍による人体実験を隠匿する為の攻撃に巻き込まれた。

 神経接続の必要性もあって操縦者がかなり限られる機体ではあるが、V.V.が操っても多くのナイトメアフレームを相手に出来たように強力な機体である。捨ててしまうには惜しく、直せばまだ使えると判断されて今はラクシャータ・チャウラーが修理と改造を施している。

 

「使える機体であるし、放棄するには惜しい。神経接続を必要とする故、他にパイロットを宛がうことが難しいという理由も大きい。疑うならばジークフリートに爆弾を仕掛けるなり、ジェレミアに監視をつけるなりすればいい」

「裏切ることはないと、それだけの信頼をゼロは彼にかけているか」

「ああ」

 

 自信を持って言い切ったゼロに星刻も覚悟を決めるように一度を瞼を閉じた。

 

「分かった。だが、もしもの時は」

「私が責任を持とう」

 

 星刻が言うように強力な機体であるが、やはりブリタニアの騎士であったジェレミアが完全に味方に成ったことを信じれてはいないようなのでルルーシュはそう言うしかない。

 

「超合衆国の結成を前に懸案が解決したのは喜ばしいことだ」

 

 中華連邦を味方に付ける前でも世界の三分の一を支配していたブリタニア。幾ら列強であった中華連邦を味方に付けようとも国力の差は大きい。ことに大宦官の勢力を排除した今の中華連邦は弱体化している。

 勢力の平定は済んでいるが、黒の騎士団と中華連邦だけでブリタニアと戦えると思っていなかったルルーシュが立ち上げたのが超合衆国構想だった。

 

「見事と言っておこう。これで対ブリタニアを標榜できる」

 

 ルルーシュが作り上げた超合衆国構想とは、ブリタニアに脅威を覚えている国や植民地となったエリアの抵抗勢力を取り込み、反ブリタニア同盟を作り上げようという計画である。

 ギアス嚮団強襲作戦で一部の兵を前線から引き揚げた所為で一時停滞していた、攻勢を強めるブリタニアとの陣取り合戦に似た己が勢力に引き寄せる戦いはある程度の決着を見た。

 

「その前にゼロ、君に聞いておきたいことがある」

 

 超合衆国が正式に世間に公開される前に、超合衆国の中軸になる中華連邦の人間として星刻は対ブリタニアの矢面に立つゼロの真意を確かめなければならなかった。

 ゼロが有能であることは疑う余地のない事実である。だが、逆に有能で在り過ぎることが多くの人間に疑念と大きな懸念を抱かせてしまうのも仕方のない面があった。星刻がこれから発しようとしている言葉も当たり前の疑問である。

 

「君はあのブリタニア皇帝のように、世界に覇を唱えるつもりか?」

「それはない」

 

 ルルーシュは仮面の中で苦笑しながら、星刻の懸念を言葉少な気に否定する。

 

「懸念は理解できる。超合衆国の構想者、そして黒の騎士団のトップである私に全くの疑念を抱かない者などいないだろう」

 

 黒の騎士団がここまで成り上がれたのは、ゼロのカリスマ性と結果を示し続けて来たことが大きい。

 ブリタニアに対抗する勢力を作り上げたゼロの非凡さは誰もが知るところであり、世界を二分する勢力のトップに上り詰めたにしてはその真意を窺い知れる者は殆どいないに等しい。現に反ブリタニアでありながらも他国が超合衆国に即座に加入しなかったのも、ゼロの野心を恐れてのことである。

 

「私としては大宦官を排除出来たこと、天子様を救ってもらった二つの恩がある。が、その言葉を信用するにしても、ジェレミアのことだけではなく君にはあまりにも謎が多すぎる」

「同意しよう。自分で言うのもなんだが仮面で姿を隠した者を全面的に信頼できるはずもない」

 

 名前も姿も覆い隠した者がトップに立てば、誰だって疑念を抱かずにはいられない。

 

「だが、私が仮面を被るのも故あってのこと」

 

 誰が元とはいえ、敵国の皇子をトップに擁けるか。ルルーシュがブリタニアと戦うにはゼロの仮面が必要なのだ。

 

「世界に覇を唱えるつもりも、中華連邦を乗っ取る気もない。第一、私は統治に魅力を感じない」

「仮にブリタニアに勝利すれば世界を手に入れることも容易いというのにか?」

「だとしてもだ」

 

 数多の為政者の統治にもどかしい想いを抱いたことはあるし、自分ならばもっと上手く出来るという確信がルルーシュにはある。

 だが、出来るからといってやりたいかはまた別の話である。

 

「信用され難いのは承知している。無理もないということも。しかし、私は今まで散々統治者達の苦労を目にしてきたのでね。一国ですら大変だというのに、世界ともなれば想像も出来ん。いらぬ苦労を背負う気は無いよ」

 

 信じてもらうことは恐らく出来ないだろう。ゼロは戦略家としては謀略型で、かつ上昇志向も強い。そういう人間が得てして信義よりも大望を、調和よりも野心を優先しがちである。

 仮面で姿を隠すゼロの真なる目的が、世界に覇を唱えるつもりなのだと考えてもおかしくはない。

 しかし、覇道を突き進むブリタニア皇帝を憎悪しているルルーシュは彼と同じことを望むのを拒否する。何よりも、ルルーシュが望むのは世界などよりも大事で、もっとちっぽけなものだ。

 

「だが、人は権力を持てば変わるものだ」

 

 最初から腐っている人間は恐らく少ない。権力を持てば、理想を語っていた口でやがて人々を傷つけていくようになる。権力の魔力は容易く人を変えてしまうのだ。

 多くの超合衆国入りに難色を示した権力者達を説得した秘策を星刻にも告げる。

 

「ふむ、ではブリタニアを打倒した暁には、予定されている黒の騎士団CEOの座と超合衆国におけるあらゆる地位から退くことを約束しよう」

「それは……っ!?」

 

 星刻にとって予想もしていない言葉であったのだろう。絶句している気配に苦笑を浮かべたルルーシュに権力にしがみ付く理由などない。

 

「今の段階では口約束に留まるが、ブリタニアを倒して戦後処理を終えれば仮面の英雄は必要なくなる。寧ろ」

「邪魔になる、か」

「英雄など普通の日常には不要なもの。素性不明・真意不明の者など厄介でしかない」

 

 ナナリーの安全を保障し、超合衆国がブリタニアに対してやり過ぎなければルルーシュがゼロの仮面を被り続ける必要もない。

 

「超合衆国に各国が参加を内々に表明したのもそれが理由か」

「ブリタニアを脅威に感じているのはどこも同じだ。一国や数国だけで対抗できないのは自明の理。だが、超合衆国には私がいた」

 

 強いカリスマ性とブリタニアに対抗できる力を示したゼロが戦後には自ら消えるのならば、世界に覇を唱えられる立場を手に入れられるかもしれないと思っただろう。

 

「危うくはないか? 戦後に超合衆国で内乱が起こるぞ」

 

 絶対的な指導者がいなくなれば、残った者達で椅子取りゲームが起こって内部分裂を起こす可能性が高いことを星刻は危惧していた。

 

「その可能性を摘んでから去るつもりだ。最後まで責任は果たすとも」

 

 内乱に発展しなくても超合衆国の中軸である中華連邦が調停に走らざるをえないだろうし、そうなれば変な思惑に囚われている暇もないだろという思惑もルルーシュにはある。大局的な見地ではルルーシュに一歩劣る星刻もその未来が見えたからこそ渋面にもなる。

 ルルーシュの行動が最善と分かっているからこそ非難も出来ないし、回避することも難しいと分かっているだけに特に。

 

「仮に内乱に発展したとしても、私が再び仮面を被ることになる。それは彼らにとっても望むことではないだろう」

 

 三度、立つようなことになればゼロの存在は絶対の物となる。

 そうなれば民衆は政治屋ではなくゼロをこそ指導者として祭り上げることは想像に難くない。だからこそ、超合衆国に参加した者達も軽挙妄動は控えるだろうとルルーシュは考えていた。

 

「君がそこまで考えているならば、私が言うことはもうない」

 

 一般的ではないゼロの考えを聞いた星刻は一応の納得をして頷く。

 

「では、もう一つ聞いておこう。決議第壱號で日本解放戦が選ばれた理由を教えてもらいたい」

 

 超合衆国が成った暁に施行されている決議の一つ目は日本解放戦となっている。複数の国が同盟を結んでの最初の一戦が日本である理由を星刻は訊ねた。

 

「まずはエリア11と、日本の解放が世界的にも多くの影響力を及ぼすことになるのは理解している」

 

 個人の意思によって同盟の向かう先が決定されるのは喜ばしいことではないと暗に込めた星刻にルルーシュは腕を組んだ。

 

「ゼロと黒の騎士団が生まれたのが日本であることは世界的に周知の事実だろう。日本ではなく他のエリアから、となれば日本はどうしたという声はやはり出る」

 

 超合衆国の唯一の軍隊となる黒の騎士団は日本で生まれ、ゼロも日本で立った。その事実は世界的にも有名でもある。

 

「そしてエリア11を一番に選んだのには、今の彼の地にも理由がある」

「矯正エリアから途上エリアに昇格したことか」

「それだけに留まらず、そう遠くない内に衛星エリアにも昇格するだろう」

「また随分と早い」

 

 総督であるナナリーが行政特区・日本を立ち上げる時に黒の騎士団をゼロとして国外追放させたことで不穏分子は減っただろう。その分だけ内政はやりやすくなっただろうし、ルルーシュも陰ながら支えていたのだがナナリーはこちらの思惑を超えていた。

 

「これまで日本人に対して圧政のみしか行ってこなかった総督達と比較して、融和政策を取るナナリー総督は私にとっても好ましい。だが、日本人のブリタニアからの独立の気概を失わせかねない」

 

 ナナリーがナンバーズに対して善政を振るうのは、戦後のことを考えれば問題ないどころか大いにプラスになる。

 総督として表舞台に立ってしまった以上、戦争で負ければ敗戦国の将として扱われてしまう。しかし、融和政策を推し進めたナナリーは年齢と体のこともあって悪い扱いにはされ難い。

 とはいえ、現状のナナリーはルルーシュの想定を超えてやり過ぎてしまった。

 

「今、日本を解放しなければ、ゼロが立ったはずの日本の民衆がブリタニアに従わされてしまう。他の国を解放しても、日本は解放できないとあってはゼロとしての骨子が揺らぐ。ゼロとしての骨子が揺らげば、黒の騎士団にも影響が出るだろう」

「あの総督にゼロともあろう者が随分と悩まされてるようだな」

「笑い事ではないぞ」

 

 目も見えず、立つことも出来ない者がエリア総督になったことは有名な事なので星刻も知悉しているが、一人の少女に世界が揺り動かされている滑稽な状況に笑みを漏らした。

 

「今、日本を解放しなければ後手に回らざるをえない。その事態を避けたいがための日本解放だとは理解したし納得もした」

 

 笑みを収めて組んだ手で口元を隠した星刻は次の話題へと移る。

 

 

 




原作と違って中華連邦の兵を借りてるからこその実質的なトップ会談。

シャーリー生存√『第四話 超合集国決議第壱號』改修版で、一部そのままになっている個所もあります。本当ならこの後にシャーリーが登場する話があるのですが3分の1が出来た時点で3000時を超えたので次の話に移行されることになりました。

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