コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

52 / 54
昨夜に何故か日刊ランキング入りしていてビックリ。
そして何故か今回も長くなる不思議。
この世は不思議で満ちておりますな。





STAGE10 魔女の愛

 

 ルルーシュは超合衆国の結成を前に眠る暇がないほどに忙しい。アッシュフォード学園でルルーシュの身代わりをやってくれている篠崎咲世子と入れ替わる余裕がないほどに。

 

「ルルーシュ、蜃気楼を借りてもいいか?」

 

 条約の締結や会談に折衝など方々を飛び回る中で、ようやく一段落ついて纏まって空いた数時間の間に睡眠を取ろうとしていたルルーシュにC.C.が何でもないことのように訊ねた。

 

「いいが、何に使う気だ?」

「もう何日もシャーリーと会えていないんだ。久しぶりに顔を見たいし、ナイトオブシックスの件があっただろう。直接確認するとまではいかんだろうが遠目に様子を窺うだけでも何か分かるかもしれん」

 

 シャーリーが斑鳩に来る場合、篠崎咲世子に影武者となってもらう時が多い。ここ数週間はルルーシュの影武者に専念してもらっているのでシャーリーはエリア11から出られない。C.C.がシャーリーと話をしたのは、ギアス嚮団強襲作戦後の一時だけなので数週間も顔を合わせていないことになる。

 

「お前、自分が狙われている自覚があるのか?」

 

 末端はともかくとして、シャルルの手の者や恐らくはスザク等もC.C.の身柄を探しているのは間違いない。勝手知ったるアッシュフォード学園とはいえ、敵がいる地に自分から向かうなどありえない。

 

「安全には細心の注意を払う。なんなら監視にジェレミアをつけてもいいぞ」

 

 言われて影のように付き従うジェレミアを見れば小さく頷いていた。

 

「どうせ表には立てない私達には殆ど仕事が無いんだ。ルルーシュも懸念は少しでも減らしておきたいだろ」

「確かにそうだが……」

「いい加減、斑鳩に閉じ込められるのも飽きた。決戦の前に気分転換をさせろ」

「そっちが本音か!」

 

 C.C.に対する信頼は最初から低い、特に日常では。今は非常時ではないので悪い意味で裏切ってくれないので思わず大声を上げてしまう。

 結局、C.C.の我儘をルルーシュが跳ね除けた前例は無きに等しく、極度の疲労と寝不足も重なっている中では幾度かの問答の後に先に折れるのがどちらかなど火を見るよりも明らかだった。

 

「…………ジェレミア、しっかりと監督を頼む」

「イエス・ユア・マジェスティ」

 

 物凄く心配そうな主君に内心を悟らせぬまま、ジェレミアはC.C.の思惑に乗ってアッシュフォード学園に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリタニアに占領支配されているエリア11に入ることは本来ならば不可能であるが、ルルーシュが状況によって31もの通路を設定してあるのでC.C.とジェレミアが乗った蜃気楼が通るのは拍子抜けするほどに簡単な事だった。

 

「懐かしいな」

 

 アッシュフォード学園にあるルルーシュ達が生活していたゲストハウスは嘗てC.C.も短い期間ながら暮らしていたことがある。郷愁を感じるほど思い入れはないはずなのに、C.C.の口は勝手に動いていた。

 ルルーシュの部屋は最近家主が留守にしている所為で若干埃っぽいものの、物の配置などはC.C.がいた頃から特に変わっていないのでより過去を思い出すのかもしれない。

 

「過去は何時だって美しくあり続ける。そうは思わないか」

 

 ルルーシュのベッドに座って呟いたC.C.の言葉は本来ならば他に誰もいない部屋に無為に消えていくはずだった。

 

「同感だけど少しぐらいは私がいることに驚いてほしいものだわ」

「お前相手に一々驚いていたら身が持たんよ、マリアンヌ」

 

 C.C.が声の聞こえた方に顔を向ければ、何時の間にか部屋の入り口にナナリーとそう年の変わらない少女がアッシュフォード学園の制服を着て立っている。

 違う名前で呼ばれようとも、そちらが真名であるかのように笑みを浮かべたアーニャ・アールストレイムはニヤリと笑った。

 

「本当に久しぶりね、C.C.。急にCの世界を通して呼び出して来るものだからビックリしたわ」

 

 アーニャの裡に潜む別人物の魂――――ルルーシュとナナリーの母にして、皇帝シャルルの后妃であるマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアは悪戯気に笑った。

 

「ちゃんと学園にいる時を狙ったんだ。手間を取らせていないのだから文句を言わないでほしいな」

「文句なんて言わないわよ。ふふ、でも直接会うなんて何年振りになるのかしら」

「私としてはCの世界を通して話をしているから久しぶりという感じはしない」

「人間、会って話さないと実感は湧かないもの。だから、久しぶりで良いのよ。私が殺されてからになるから9年振りの再会になるのだから、もう少し喜んでくれても良いんじゃない?」

 

 相変わらずの我が道を行くマリアンヌの物言いであるが、実際にそれを口にしているのが自身よりも見た目で年若い少女となればC.C.としては感覚に狂う。

 

「旧交を温めるにしても、そっちは良くてもこっちは見た目からして別人で戸惑うんだ。また他人の体を勝手に使っているのか?」

 

 マリアンヌはアーニャであれば決して浮かべない質の笑みを浮かべ、アッシュフォード学園制服のスカートを摘まんで持ち上げる。

 

「仕方ないじゃない。魂だけの私はこの子の体を使わなければ、表立って動くことも出来ないんだから」

 

 パッとスカートから手を離すマリアンヌは若干苛ただし気ながらもニンマリと笑う。

 

「私自身の体と比べたら否が応でも劣るけど、やっぱり若さがあると違う。女が永遠の美を望むのが良く分かったわ」

「…………言葉に棘を感じるのだが」

「あら、失礼。無意識の発露みたいなものだから気にしないで」

 

 艶然と笑ってはいるが不老不死で十代の若さのまま永遠を生きているC.C.に対する嫉妬が僅かながらもあることを否定しないマリアンヌだった。

 

「それでルルーシュのことで話があるということだけど、私達の下へ戻る気になったのかしら?」

 

 Cの世界を通して伝えられた再会の約束に、ルルーシュの横やりがあったとしても一度はシャルルの手を振り払ったC.C.を警戒して一定距離を保つマリアンヌ。

 

「戻るなんて話はしていないだろう。ルルーシュのことがそんなに心配か」

「まさか、私がそんなに理想的な母親だと思っていたの?」

「思ってはいないが、ならどうしてここに来たんだ?」

 

 ルルーシュのベッドに座ったままマリアンヌと決して目を合わせることをせず、C.C.は寧ろ無感動に訊ねる。

 元よりつっけんどんな対応をすることの多いC.C.の珍しくない態度を気にしないマリアンヌは腰に手を当てた。

 

「私とあなたの仲だから聞きたいことは一つだけ…………あなたが今でも私達の味方なのかってことよ」

「なにが言いたい」

 

 二人の間にあったのは、離れていた時間に等しい溝。そして物理的に遠い二人のいる位置が心の距離を物語っていることも互いに承知していた。

 

「単刀直入に聞くわ。私達から離れたのは何故?」

 

 ルル―シュが生まれる以前に彼女らは出会い、同じ目的を胸に抱いた同志だったはずなのに、マリアンヌの肉体が殺されたアリエス宮の悲劇を切っ掛けにC.C.は姿を消した。

 

「V.V.が私を殺したから? そんなことは理由にならないはずよ。シャルルならあなたの願いを、死にたいという思いを叶えてくれたのに」

 

 マリアンヌは思い違いをしている。C.C.は彼らの理想に共感したわけではなかった。結果的に死ねるならなんでも良かったのだから。

 

「マリアンヌ、どうしてV.V.はお前を襲ったのだと思う?」

 

 どれだけ親しくなろうとも、幾らマリアンヌに振り回されようとも、V.V.とコードについて語ろうとも、シャルルのルルーシュ達に対する不器用過ぎる愛情を向ける姿を見ようとも。

 C.C.の決意は変わらなかった。

 同志を、友を得ようとも死にたいという根源的な欲求を解消すること出来なかった。

 

「さあ? 私がいるとシャルルが変わってしまうとか言ってたけど」

 

 C.C.は外様だった。志が同じなはずの彼らのことを外から見ていたからこそ分かることがあった。

 

「そうだな。アイツは馬鹿だよ」

 

 マリアンヌは元より確固たる『自分』があって変化などしないから理解出来ないことだろう。変化に取り残される怖さも、変わることが出来ない自分に対する絶望も。本人も自覚していなかったV.V.の秘めた想いも、きっと知りもしない。

 

「報いは受けたわ。一度は見逃してあげたのに、またルルーシュに刺客を向けたんだもの」

 

 マリアンヌをその手にかけたV.V.はその死に関わっていないと恍けた。嘘の無い世界を共に誓ったシャルルに。

 一度は許そう。肉体は死んだとはいえ、肉体の死を切っ掛けとして人の心を渡るギアスに目覚めたマリアンヌの精神はアーニャの中で生きている。だが、二度目はなかった。

 

「だから、シャルルはV.V.のコードを奪った」

 

 それは愛故の行動なのだろうかとC.C.は思った。

 裏切ったと言うにはC.C.はV.V.の気持ちが理解できてしまったから。

 

「後はC.C.のコードさえあれば完全なラグナレクの接続が出来る。あなたは死ねるのよ」

「…………お前は引き止めたりしないんだな」

「死んだ人とも一つに成れるんだもの。そんな必要はないわ」

 

 その言葉が決定的だった。

 

「私はルルーシュを利用していた。全てを知っていながら私自身の死という果実を得るために、あいつが生き残ることだけを優先して……」

 

 ルルーシュの枕を取って抱きしめたC.C.は懺悔するように告白する。

 マリアンヌの死の真相も、シャルル達が望んでいることも、自分達が日本に送られた理由も、全てを知っていながら話すことなく、ルルーシュが破滅へと進んでいくのを期待して待っていた。

 

「永遠の時を生きる魔女が後悔を?」

「懺悔だよ。魔女と嘯っていながら人間らしさを捨てきれなかったようだ」

 

 今でも死を望む気持ちは変わらない。変わらないが、前よりも切実ではなくなった。

 

「今となっては枢木スザクに共感を覚えるよ。あいつは私に似ていた」

 

 父・ゲンブを殺したスザクはある一点においてC.C.と良く似ていた。

 

「あの主君を裏切り続ける男にあなたが似てるって? どこが?」

「死を望みながら死ねないところだ。だが、今は違う」

 

 孤独だったルルーシュが少しずつ皆に歩み寄り、一丸となって戦っていく姿は理想を語り合っていたシャルル達と比べても美しかった。その輪の中に確かにC.C.もいるのだから。

 

「今の私は生きていたい。ルルーシュが見るものを私も共に見たいんだ」

「C.C.、あなたは……」

 

 枕をベッドに置き、立ち上がったC.C.は信じられないと目を見開いているマリアンヌと視線を合わせる。

 

「…………やはり裏切るのね、V.Vと同じように。ルルーシュに付いて、私達を裏切るというの?」

 

 同じ女であるからこそ本人もまだ明確に自覚していないC.C.が変化した理由に得心がいったマリアンヌは鼻を鳴らす。

 

「裏切る?」

 

 ルルーシュに付くとはそういう意味であるが、ここに来てもマリアンヌの思い違いにC.C.は苦笑を浮かべようとして失敗した。

 

「違うだろ、マリアンヌ。私はお前達の願いに賛同しただけで、計画を推進する同志ではあっても別に理解者ではなかった」

 

 裏切る以前の問題だ。嘘の無い世界という結果に至る過程で生まれる死という副産物が目的であるC.C.は目的を同じくはしていない。

 契約によって互いを利用し合う。離れた場所から見ればそんな関係だった。

 

「ルルーシュの目的であった復讐は、ナナリーと…………殺されたマリアンヌ、お前の為だったんだよ。その死の真相を暴き、報いを受けさせる為に」

 

 ルルーシュにとって、マリアンヌは良き母親だった。無為に殺され、シャルルが碌な捜査もしなかったことから全てが始まった。

 

「私を殺したV.V.はもう死んでる。ナナリーのことも、いいえ今までの全てを知ればルルーシュも私達に協力してくれるはずよ」

 

 親である自分達に逆らうはずがないとマリアンヌは疑いもしてない。

 マリアンヌには分からないだろう。ルルーシュがどれだけの思いで行動に移し、そして失って来たかを。

 

「知れば傷つくだけだ」

「必要があってのことよ」

 

 V.V.がいる限りマリアンヌは決して表に出ることは出来ない。一度殺した者が生きていると知れば、シャルルが知る前に今度こそ存在すらも抹消しようとして来るだろう。それは偽りの目撃者にされたナナリーも同じこと。

 

「必要だからと割り切れるものではない。皆が自分と同じと思わないことだ、マリアンヌ」

「同じと思ったことはないわ。煩わしいと感じるだけよ」

「死んでも変わらない女だな」

「私という女はそう簡単に変わるモノではないという良い証明だわ」

 

 マリアンヌは偽らない、己を、他者を、身内にも。

 見せる全ては事実であり、告げる言葉は紛うことなき真実なのだから。ただ、見せも言いもしないことが幾つかあるというだけ。

 

「偽りの目撃者に設定されたナナリーは真実を隠すための駒でもあったけれど同時に不安要素でもあった。ナナリーを情報弱者にして真実に辿り着く可能性を低くしてV.V.から狙われるのを防ぐ為にシャルルのギアスで記憶を変えて光を奪うしかなかった」

 

 V.V.の計画に巻き込まれて、ナナリーは足の自由を奪われた。

 ナナリーの安全の為には必要だったから、仕方なかった。だけど、本当にそうなのか。

 

「シャルルが二人を日本に送ったのも、私の暗殺事件に深く関わり過ぎたナナリーをV.V.から護る為よ」

 

 敵地であった日本に送られれば、二人がどのような扱いを受けるのか分からなかったはずがないのに。

 

「じゃあ、どうして日本に侵攻した? 護る為と言いながら危険に晒したのは何故だ?」

 

 C.C.は理由を知っている。いや、マリアンヌを良く知るC.C.は理解していた。

 

「計画を優先したお前達は、死んだ人とも一つになれると知っていたからルルーシュやナナリーが生きていようがいまいが、さして関係なかったんだ」

「それは違うわっ! 私は」

「お前自身が言ったじゃないか、『死んだ人とも一つに成れる』と。現にお前達はルルーシュ達を助けようともしなかった」

 

 C.C.の望みが死であり、友人である彼女の自死を止めない理由をそう語っていたのを引用するとマリアンヌも抗弁出来ずに沈黙する。

 

「それどころか、自力で生き延びたルルーシュを利用しようと提案して来たな。私の願いを叶えられる高い資質を持った者がいると」

 

 当時、C.C.は契約して読心のギアスを得たマオと共に暮らしていたが精神的に脆弱過ぎて達成人に成れる可能性はほぼ無いに等しく諦めかけていた。

 

「ラグナレクの接続にはV.V.のコードだけでは足りない。だが、私はお前達と共に歩む気は無かった。それでも達成人に成れる可能性があるならと提案に乗った」

 

 ブリタニア皇族の中でも随一のギアス資質を持つルルーシュのことを教え、契約していたマオでは己が目的を果たせないと諦めたC.C.は口車に乗った。

 ルルーシュがC.C.の願いを果たせたらそれで良し。その場合はルルーシュを計画に参加させる。願いを果たせなければ、もう一度シャルル達に協力する。そういう取引をした。

 

「一度捕まったのにルルーシュがアッシュフォード学園に戻されたのはその為だ」

 

 ブリタニアに捕まったルルーシュがエリア11に戻されたのも、その取引があったから。

 スザクやV.V.に怪しまれないように、機密情報局に監視させていたが厳重である必要も無かった。マリアンヌ達にとっては、ルルーシュをC.C.の下に帰せれば良かったのだから。

 

「こんなことをルルーシュが知れば壊れる」

 

 愛する母と憎むべき父は最初から結託し、自分を利用して目的を達成しようとしていた。

 シャルルとマリアンヌと、そしてC.C.の掌で踊って数多の命を奪い、人生を狂わせてきた呵責はルルーシュを壊しかねない。

 

「その前に私がお前を殺そう」

 

 真実の重みがルルーシュを押し潰すのならば、そんな真実を葬ることをC.C.は決めたのだ。

 

「出来るというのあなたに?」

 

 アーニャの肉体を殺されればマリアンヌは他人の体に渡る。しかし、この場にいるのはマリアンヌとC.C.だけ。コードの持ち主であるC.C.にギアス能力は効かない。

 しかし、マリアンヌは焦りも慌てもしない。

 マリアンヌの体に比べれば格段に劣るとはいえ、アーニャもナイトオブラウンズ。格闘技を修めているとはいえ、身体能力は同年代の少女と大差ないC.C.に後れを取るはずがない。だからこそ、C.C.の意味があるとも思えなかった話に付き合ったのだ。

 

「知っているか、ギアスは消せるんだ」

「オレンジ君の力のこと? 彼のギアスキャンセラーのことは知悉しているわよ。その効果範囲もね」

 

 V.V.はギアス能力者に対する切り札とでも呼ぶべきギアスキャンセラーの力をシャルルにもしっかりと報告していたようで、室外からは効果範囲に入らない立ち位置を維持している。

 

「今の私には厄介な力ではあるけど効果範囲はそれほど広くない。気配は掴めているから近づいて来たら逃げるわよ」

「ナイトオブワンにも成ろうと思えば成れた女にしては弱気なことを言うじゃないか」

 

 現ナイトオブワンであるビスマルクにチラリと聞いた話で挑発するように口にすると、マリアンヌは分かっていないなとばかりに肩を竦める。

 

「流石に消されるのはね。死ぬような思いは一度だけで十分」

「何度も死んで来た私にそれを言うか」

「死んでも生き返れる不老不死と比べること自体が間違いじゃない」

「戦闘力がカンストしている奴にだけは言われたくない」

「この体だと生前には全然遠く及ばないのよね。素質は悪くないけれど、やっぱり自分の体の方がいいわ」

「ナイトオブラウンズになっておいて良く言う……」

 

 良くも悪くも遠慮のない言い合いが出来る手合いは中々いない。最近はシャーリーと今はいないカレンも似たようなやり取りは出来るが、二人はマリアンヌほどに弁は立たないのでC.C.が上に立つことの多い。対等な立場で話が出来る同性というのは気が楽ではある。

 たとえお互いの立ち位置を変えながら必殺を狙っている間柄であったとしても。

 

「戦えば私が勝つ。でも、不老不死のC.C.を殺したところで意味はない。こうして張り合っても意味はないわ。一体、何が目的?」

 

 現在はナイトメアフレームでの強さが第一としても、無手でも無類の強さがなければナイトオブラウンズには成れない。確かにC.C.も徒手空拳ではかなりの実力を持つが、武器を隠し持っているとしても戦えば確実にマリアンヌが勝つ。

 C.C.は不死。戦って殺したとしても蘇るのでは意味がなく、不毛なやり取りに嫌気が差したマリアンヌが問いかける。

 

「お前を殺す準備をしていると言ったら?」

「悲しいことを言うのね」

「堪えていないくせに」

「まあ、ね。でも、悲しいことは確かよ。知っているでしょ、私は」

「嘘をつかない、か」

「私は自身を偽ることが大嫌いだから」

 

 真実を口にせず表情や態度で相手に意図的に誤解を抱かせることはあっても、マリアンヌは決して偽りや嘘を口にしない。たとえ偽りを口にしたとしても本人がそれを自覚していない場合に限る。

 

「『死んだ人とも一つに成れる』…………ええ、ルルーシュ達を助けようとしなかったのはそういう気持ちがあったのでしょうね。結果的に見捨てたとも言える形になったのは事実よ」

 

 自覚をすれば直ぐに過ちを認めることも出来る。

 偽りをせず、間違いを認め、騎士としてはこれ以上ない強さを持つマリアンヌを慕う者が多い所以でもある。

 

「でも、違う選択を出来たとしてもV.V.がいる以上は、あの子達を全面的に助けることはきっと出来ない」

「少しの助けでも大分違っただろう。どうして最初からそれが出来ないんだ」

 

 どのような過程を経ようともルルーシュも同じ選択をしただろうと予測出来てしまうから、やはり親子なのだと感じる。

 

「私は理想的な母親には成れないし、成るつもりもない」

 

 少し自嘲的に笑うマリアンヌ。

 確固たる『自分』を構築してしまっているマリアンヌは己を変えられない。変えようとすることも出来ないと自分を見切っている。

 

「シャルルが権謀術数渦巻く宮殿(嘘つき達の集まり)の中で徐々に倦み疲れて行く様を、ずっと見て来たわ。C.C.がいなくなって、V.V.も絶対的な味方じゃない。私もこの子の体にいるから好きな時に会えるわけじゃない。ルルーシュ達も守る為とはいえ、遠ざけた。唯一皇帝といってもその実は孤独なのよ」

 

 何の事情も知らずに捨てられた形だったルルーシュからすれば、きっとあまりにも身勝手な言い分に殺意すら覚えるだろう。

 

「絶対的な信頼を寄せていたV.V.ですら嘘をつく。やがてシャルルが世界に失望してしまう前に、一刻も早く計画を完遂する必要があった。たとえルルーシュ達を犠牲にしたとしても」

 

 大切なたった一人の為に何を犠牲にしたとしても、己が目的を完遂させる。その精神性はやはりルルーシュに良く似ている。というよりもルルーシュが良く似ているのだろう。

 

「ルルーシュがお前達の世界を望まないとしてもか」

「私が一度決めたことを曲げると思って?」

「思わない」

 

 実にマリアンヌらしい反応にC.C.は苦笑を浮かべる。

 『自分』を変えられないマリアンヌはそこで表情を一変させ、言われても分からないほどに微かに膝を曲げた。

 

「話はここで終わり。さよなら、C.C.――」

 

 一足で窓を破って割れる位置にいたマリアンヌが動こうとして、まるで時間が静止したかのようにピタリと止まった。

 

「ああ、ここで終わりのようだ」

 

 ここら一帯の生物がその動きを止めている中で動けている二人の内の一人であるC.C.は悲し気に呟いた。

 徐々に走っている足音が近づいてきて、バタンと大きな音を立ててドアが開かれた。

 

「頼む、ジェレミア」

 

 走って現れたジェレミアはアーニャの体にいるマリアンヌを見据える。

 

「申し訳ありません、マリアンヌ様。私は……」

 

 唇を噛み切らんばかりに表情を歪めながら足を進め、嘗て主君と認めたその人を発動し続けているギアスキャンセラーの効果範囲内に収める。

 

「なっ――」

 

 効果範囲内に入ったことでギアスが解除されてCの世界へと還るその一瞬前、超反応でジェレミアを認識したマリアンヌも刹那では何も出来ない。

 肉体を殺され、その精神もまたV.V.が深く関わった力が殺す。

 

「さようなら、お前のこと好きだったよ」

 

 末期の言葉すら残せずCの世界へと還ったマリアンヌが体から消え去り、力を失ったアーニャの体を抱き留めたC.C.は、シャルル達によって人生を捻じ曲げられたもう一人の被害者を哀れみながらルルーシュのベッドへと寝かせる。

 

「マリアンヌ様は逝かれたか」

 

 C.C.が全てを話して協力してもらったジェレミアは感情の失せた顔で眠るアーニャの姿を見下ろす。

 

「ああ、Cの世界に還った…………すまんな、お前には酷なことをさせた」

 

 主君と定めたマリアンヌを精神とはいえ直接手にかけさせたことを謝るC.C.。

 

「…………マリアンヌ様は八年前に亡くなっておられる」

 

 ゲストハウスの外でC.C.が隠していた盗聴器を通して二人の会話を全てを聞いたジェレミアは言葉少なに答えた。

 最初はジェレミアも真実を認めなかったが、語られた真実の重みに目を閉じて息と共に吐き出した。

 

「礼ならばロロに言ってやるといい。本来の任務を置いてまで協力してくれたのだ。あやつがいなければ成し遂げることは出来なかった」

 

 ジェレミアがそう言った後、顔色が悪いロロが随分と遅れて部屋に入ってくる。

 

「終わっ、たんですか?」

「ああ」

 

 C.C.が頷くとロロは緊張から解放されたように息を吐く。

 

「これで兄さんが苦しむことはないんですね」

 

 C.C.はルルーシュに残酷な真実を知らせぬ為にジェレミアに協力を求めた。しかし、マリアンヌの消去はC.C.とジェレミアだけでは難しい。それでロロの時間停止のギアスに目をつけた。

 ジェレミアと違ってマリアンヌに思い入れは無いが、ルルーシュの目的を知るだけにもしも兄を害する存在であるのならばロロは決して躊躇わない。

 シャーリーを通してアーニャが学園にいる日を予め調べ、ルルーシュの予定を調整してジェレミアと共にアッシュフォード学園にやってきた。そこで事前に呼び出していたロロと合流し、事情を説明して二人にはC.C.が仕込んだ盗聴器で判断を下してもらうという計画。

 数百メートルの効果範囲を持つロロの時間停止とジェレミアのギアスキャンセラーの合わせ技は、ギアスが効かないC.C.のような例外を除けばマリアンヌでも回避することは出来ないとの見立ては正しかった。

 

「C.C.こそ、良かったのか? 友だったのであろう、マリアンヌ様は」

 

 幻想は幻想のままで、知らないでいることの方が幸せなこともある。今の主君であるルルーシュを想うことで気持ちを入れ替えたジェレミアが顔を上げて問いかける。

 

「自分でも言ったじゃないか。マリアンヌはもう死んでいたんだ」

 

 真実は闇に葬り去られる、C.C.の罪もまた。

 ルルーシュと共にいる限り、罪の意識が消えることはないかもしれない。

 

「それでも私は選んだ。シャルルやマリアンヌではなく、ルルーシュを」

 

 どちらかを選ぶ必要があり、C.C.はルルーシュを選んだ。その結果の痛みは受け入れるしかない。

 

「このことは決して誰にも明かさぬよう頼む。ルルーシュにも、絶対に」

「無論だ」

「分かってる」

 

 この場にいる三人だけの秘密にすることにジェレミアとロロも異存は無いのでしっかりと頷く。

 そうしている間にルルーシュのベッドで寝かされていたアーニャが小さな呻き声を上げた。恐らくそう時を置かない間に目覚めるだろう。

 

「この人はどうするの? 今なら簡単に殺せるけど」

「確かに排除しておけばルルーシュ様の障害を一つ取り除ける。だが、彼女はギアスの被害者。私としては説得して仲間に引き込むことも可能であると思う」

 

 物騒なことを考えているロロだが、この場でナイトオブラウンズの一角を苦労することなく排除できたならばルルーシュの為になると考えている。

 ギアスに翻弄されて来たジェレミアとしては、ロロの論理を正しいと認めつつもアーニャ排除の論調には同意し難い。

 

「…………殺す必要はないだろう。少し説明するだけで皇帝への忠誠が揺れるはずだ」

 

 決して慈悲の心に目覚めたわけではない。仲間に引き込めるならばそれはそれで良し。最悪でも戦場で迷えばどんな強者でも弱くなり、死ぬ可能性が高くなる。ナイトオブラウンズが死ねば士気に大きく関わるだろうから影響は計り知れない。

 

「魔女としての本領発揮と行こうか」

 

 真実という毒で人を誑かす魔女の顔でC.C.は笑った。

 

 

 




シャーリーが生存してアーニャと仲良くなったことで、アーニャ=マリアンヌの図式が成立。
シャーリーが生存して色々あってC.C.が記憶を消していないから、今話の状況が成立。
シャーリーがロロに殺されていないから、C.C.の計画に協力できる。

流石はシャーリーさん、本人が出なくてもこんなに話に関わるなんて………。




前書きはここまでとして、

シャーリー生存√でも起こった出来事が前倒しで発生。
マリアンヌがシャーリー生存√よりも母親率高め。でも、最優先はやはり夫シャルルなのは変わらず。


アーニャの仲間フラグが立ちました
アーニャの仲間フラグが立ちました
アーニャの仲間フラグが立ちました


トウキョウ決戦でアーニャはどうなるでしょう?

1.知らない者達の言うことなど聞く必要はない。私はナイトオブシックスだ!
2.皇帝は私を利用していた。裏切って黒の騎士団に付くのだ!
3.もう何も信じられない。私は戦わない……。
4.皇帝は信じられない。でも、今までの自分の行動も裏切られない。迷う迷う迷う……。

正解は次の次ぐらいで。

次回は『第十一話 裏切りは血の味』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。