コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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本√のタイトル表記を変更しました。

作成を優先して感想返しができていない状況です。ご容赦下さい。

前話の最後で予告タイトルとか選択肢とかやりましたけど、もう少し後にずれ込みそうなので気にしないで下さい。




STAGE11 小さな変化

 ブリタニア軍浮遊航空艦アヴァロンのナイトメア格納庫で、ナイトメア開発チームであるキャメロットの主任であるロイド・アスプルンドと副主任のセシル・クルーミーの二人が一体のナイトメアを見上げていた。

 

「いやぁ、トンデモナイものになっちゃったねぇ」

「ロイドさんが限界まで性能を上げようとするからでしょう」

「アマネセールやサグラモールの実働データに触発されちゃって。セシル君だってエナジーウィング付けたりノリノリだったじゃない」

 

 赤いナイトメアを見上げ、魔改造の限りを尽くしてしまった二人は互いに責任を押し付け合う。

 

「ははは……」

 

 ノリに任せてやってしまった自覚があるだけにセシルの口から嗄れた笑い声が漏れる。

 どっちもどっちであることは互いに自覚の上。

 話題を穿り返しても良いことは何もないと判断し、ロイドは赤い機体の隣に立つ白い機体に視線を移す。

 

「それでミサイルキャノンと機体バランスのシミュレーションは終わった?」

「ええ、まあ取りあえず一通りは」

 

 ノリノリで魔改造を加えた赤い機体の時とは違い、自分達が設計・開発を行った我が子のような機体の話になるとトーンダウンするセシルにロイドは苦笑する。

 

「特殊武装なだけに、フロートユニットの調整は更に行わなければなりませんけど本当に必要なんですか、ランスロットにこんなモノ(・・)が?」

 

 追加された特殊武装は、ロイドやセシルが求める白い機体(ランスロット)の設計思想からは最も縁遠いはずの物。

 当初の想定ではフロートユニットすら考えられていなかったので、エアキャヴァルリーやコンクエスターに強化改修して空戦機動力は上がっても地上戦闘に限れば寧ろ機動性はダウンしている。そんな中で特殊武装を積めば更に落ちることだろう。

 技術者としての誇り(プライド)を持つセシルとしては、上司の命令でもなければ搭載することを断固拒否する代物であったからだ。

 

「シュナイゼル殿下は僕達には分からないことを見通している方だから、スザク君にフレイヤを預けるのにも何か意味があるんじゃない?」

 

 ロイドもセシルも世間では天才と称される十分な頭脳の持ち主であり、実績も上げている。それでもシュナイゼルが何を考えているかは分野も違うこともあって理解できないことが多い。

 

「フレイヤ…………実験映像とデータは見ましたけど、使い方を一歩間違えれば勝利ではなく破壊と殺戮しか生まない兵器です。抑止力として、敵に対するデモンストレーション的に使用するのであれば、まだ理解も出来ますけど」

「戦術兵器に戦略兵器を搭載する意味や、一個人でしかないパイロットに託す是非を論じたところで意味のある相手じゃないよ」

 

 紳士然として上司としては理想的な存在ではあるが、あまりにも完璧で語る言葉は論理的過ぎて隙というモノが存在しない帝国宰相(シュナイゼル)を思い出す。

 悪く言えば人間味が感じられず、人を個人ではなく数で見ているとすら感じてしまう。

 

「文句を言うだけ無駄だと?」

「そうそう、上司(シュナイゼル殿下)の命令には逆らわない方が無難だよ。どうせ拒否しても第二、第三の手は準備されてるだろうし、僕らは僻地に左遷されるだけ。ほら、こっちが損するだけで何の意味もない」

 

 論理で上回ることが出来ず、より論理的な理屈に屈するしかないのだと語るロイドに尚もセシルは諦めずに食い下がる。

 

「フレイヤを持ち出すよりも、この紅蓮タイプエイトの調整を終わらせてスザク君を乗せた方が勝率は上がると上申すれば」

 

 論理的に思考する人間は、他に利がある方策があると知ればそちらに方針を変えるかもしれないと一縷の希望を託す。

 

「乗りこなせば、ただの一機で戦況を変えることが出来るのは否定しないよ。でも、デヴァイサーがね」

「スザク君がいるじゃないですか」

「じゃあ、ランスロットには誰が乗るのさ」

 

 元々、ランスロットはロイドの嗜好からハイスペックのみを追求して開発された機体で操縦は極めて困難となっており、適合率の高い人間が搭乗者として必要となる。適合率94%という高い数値を持ち、かつ所属が緩く特派がスカウト可能だったスザクがデヴァイサーとなった経緯がある。

 結果を出して来たことで、高い適性値を持つ者を余所から引っ張って来ることは出来るだろうが、決戦が間近と呼ばれている状況でそんな悠長な手間が認められるはずがない。

 

「こ、コーネリア様とか!」

「あの方の腕を信用していないわけじゃないけど、僕らが作った機体をそう簡単に扱えると思うかい?」

「…………思いません」

 

 最近、行方不明だったコーネリアがエリア11に戻って来ていてエース級の腕前を知っているが、エアキャヴァルリーを経てコンクエスターとなって強化されているスザク専用にチューンされている今のランスロットを乗りこなせるとはセシルにもとても思えなかった。

 

「こうなったら紅蓮タイプエイトの方にスザク君以外を乗せるしか……!」

「誰を? このクラスになると乗れるとしたらナイトオブラウンズぐらいだろうけど、みんな自分の機体があるしね」

 

 パイロットが足りないという、結局は同じ結論となる。

 

「可能性で語るなら捕虜にした紅蓮のパイロットか、机上のデータ上ならスザク君と同レベルのマリーベル皇女殿下なら扱えるだろうけど」

 

 元々の紅蓮のパイロットである紅月カレンであるならば使いこなせる可能性が高い。どちらも今現在のデータではないが、スザクと同じく数値上ではナイトメアの操縦技術でオールSを記録したマリーベル・メル・ブリタニア皇女ならば或いはという可能性があった。

 ただ、捕虜が味方になるはずもなく、後者にも問題がある。

 

「どっちも現実的じゃないですよね。グリンダ騎士団も、どうせ来るならマリーベル殿下も来てくれれば全て解決したのに」

「腹心のグリンダ騎士団がエニアグラム卿の指揮下に入るなんて力技がされてるんだから、あっちはあっちで色々とゴタゴタしてるんじゃないの?」

 

 エリア24の総督であるマリーベル・メル・ブリタニアの軍拡傾向に第二のユーロ・ブリタニアになる可能性があると、ブリタニア本国でも危機感を募らせていた。ナイトオブナインであるノネット・エニアグラムが大グリンダ騎士団の監視のためにエリア24へと赴いていたのは有名な話であった。

 皇帝不在の中では事実上の最高権力者である宰相であるシュナイゼルの指示とはいえ、総督直属の騎士であるグリンダ騎士団がナイトオブラウンズに指揮下に入ってエリアを離れるなど越権行為も甚だしいが政治的なモノは見る者が見れば直ぐに分かる。

 

「大体、僕らにはアルビオンも完成させなきゃいけないんだから、こっち(紅蓮タイプエイト)まで完成させるのは多分無理だよ」

 

 ヴァルキリーもコンクエスターもオリジナルのランスロットを強化改造したに過ぎない。現在の最新技術を搭載しても100%の力を発揮することは難しく、よりマッチングする後継機(アルビオン)が開発されており、同時進行で紅蓮タイプエイトまで完成させるのは如何にロイド達であっても難しい物があった。

 

「二人で何の話をしてるんですか?」

 

 このままではお蔵入りの可能性も出て来た紅蓮タイプエイトを見上げていた二人に、格納庫に現れた枢木スザクが声をかけた。 

 

「ランスロットにフレイヤを載せたり、紅蓮のこととか色々とね。スザク君には紅蓮を使ってもらうなんて話もしてたんだ」

「えっ、僕が紅蓮に?」

 

 ロイドの思いがけない話に敵として戦い続けて来た紅蓮は、鹵獲したとはいえやはりカレンの機体という認識が強かったスザクは予想外の提案に思わず聞き返していた。

 

「紅蓮はカレンの機体じゃ」

「今は鹵獲してうちのものだよ」

 

 ロイドに楽し気にそう言われても、あれだけ戦った相手を即座に味方と判断できるほどスザクは器用な人間ではない。

 表情の選択に困っているスザクに、セシルも自分でも言い訳がましいと思いながら口を開く。

 

「ごめんなさいね。私もついつい乗っちゃって、ロイドさんと一緒に気付いたら趣味の世界に……」

「趣味?」

 

 スザクには良く分からないことを言うセシルの言葉に紅蓮を見上げれば、以前とはかなり意匠が違う。

 

「要は改造しまくったことですか」

 

 自分なりに解釈したスザクにロイドが苦笑する。

 

「ラクシャータのマシンだから弄り易くって。そしたら誰も乗れない物になっちゃったんだ」

「ロイドさんらしいっていえばらしいですけど」

 

 ロイドが言うラクシャータというのが誰のことかは分からないが、ロイドが作る機体に他の人が乗れないことは初期のランスロットの頃からの付き合いであるので珍しいことではないと知っていたスザクも驚くことはなかった。

 

「あの……ロイド先生、ランスロットの件ですが」

 

 それでも自分が紅蓮に乗るはずだったのだと聞かされて機体を見上げていたスザクの耳に、アッシュフォード学園から大分様子が変わったニーナ・アインシュタインが現れてロイドに話しかけていた。

 

「フレイヤのことだよね。シュナイゼル殿下から聞いてるよ」

 

 当のロイドは、常の人を食ったような態度の彼にしては珍しく静かな声で訊ねた。

 

「それだけの理由はあります。一次制圧圏内に含まれた物質はフレイヤのコラプス効果によって完全に消滅しますから」

「あなたはそんな物をスザク君に撃たせるつもり? よりにもよってエリア11で」

 

 騎士として数多の戦場を駆け巡っていたスザクですら聞いていてもゾッとする内容だった。もしもセシルが言わなければスザクがニーナを問い質していたことだろう。

 

「スザク、まだイレヴンと同族意識があるの? 私は あなたにフレイヤを委ねたい」

「僕に、背負えと?」

 

 セシルの言葉をそう捉えたニーナが、信頼というにはあまりにも歪んだ目の奥の光を輝かせてスザクを見る。

 

「ユーフェミア様の騎士でしょ、あなたは」

 

 イレブンを虐殺しろと命じたユーフェミア、そのユーフェミアを殺したゼロは仇である。

 ニーナはゼロを日本人だと思っているのだろうが、騎士ならば主の命令を遂行しろ、騎士ならば仇を取れと言っているのだろうか。どちらの意味を言っているのだろうかと考えたスザクは、しかしどちらであっても最終的な結果は変わらない。

 

「あはぁ、ニーナくん」

 

 即座に答えずにニーナから目を逸らしたスザクの前でクルリとロイドが一回転する。

 

「この矛盾はさ、スザクくんだけじゃない、君を殺すよぉ」

 

 楽し気な言葉とは裏腹にどこまでも冷めた眼差しで告げたロイドにニーナは僅かに怯んだ。

 空気が重くなったと感じる中で、誰かの携帯端末が着信を告げるようにコール音を鳴らす。

 

「すみません、僕です」

 

 その場にいる面々が一斉に自身の携帯端末を確認するよりも早く、スザクは振動する自身の端末に気付いて言った。

 携帯端末を取り出して小さな画面に表示されている相手の名を見たスザクは傍目に分かるほどはっきりと表情を変えた。

 

「出ないのかい?」

 

 呼び出し音は続いているのに、何故か出ようとしないスザクにロイドが声をかけた。

 

「出ますよ…………少し離れます」

 

 背を向けて離れたところで受信ボタンを押して通話に出たスザクの声はロイド達には聞こえない。

 通話をしながら格納庫から出て行ったスザクの背が見えなくなったところで、ようやくついたセシルの一息の音が妙に響いた。

 

「随分と深刻そうな感じでしたね。誰からだったんでしょう」

「さあ? 色々と複雑だからね、彼も」

 

 戦場にいる時のような雰囲気のスザクを心配するセシルに対して、極論すれば自分の作品を動かせればそれでいいロイドは気にしていない。

 スザクと特別親交が深いわけでもなく、研究者でしかないニーナには何も言えるはずもない。

 

「あれ? スザクがここにいるって聞いたのだけれどいないのか?」

 

 何か居た堪れなくなってその場を去ろうとしたニーナの背後に若い男が立っていた。

 

「ヴァインベルグ卿、スザク君ならつい先程出ていきましたが」

 

 驚きも合わさって慌てて飛び退いたニーナを横目に、ナイトオブスリーであるジノ・ヴァインベルグに身を正して答えるセシル。こういうことは傍若無人なロイドには任せられないのでセシルが応対するしかないのだ。

 

「行き違いになったかな」

「お急ぎであれば呼びますが」

「いや、公務じゃなくて個人的なことだから、そこまでしてもらわなくてもいい。しかし、どうするかな」

 

 ニーナがそそくさと退散していくのを尻目に、彼女と殆ど繋がりの無いジノは気にすることもなく困ったように後頭部を掻く。

 

「差し支えなければご用件をお聞きしてもよろしいですか? 私達にも何かできるかもしれません」

 

 ロイドがあからさまに嫌そうな顔をしているが、セシルとしてはスザクと仲良くしてくれるジノが困っているなら手助けしたい思いで申しでる。

 

「うーん……」

 

 身内の恥を晒すような用件だったので、ジノも言おうか言うまいか迷う。が、一人では解決できない問題を前にして困っていたのは確かなので話すことにした。

 

「ナイトオブシックスが、アーニャが学校どころか公務にも出ないで部屋に閉じこもったままなんです。どうしたものかと相談に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恐らく、予想される決戦を前にシャーリー・フェネットが黒の騎士団の本部である蓬莱島に逗留している斑鳩に来れるのはこれで最後となるだろう。

 スザクに連絡するというルルーシュに気を使って部屋を出たが、知り合いの少ない艦内にシャーリーが行ける場所はなかった。

 ナイトギガフォートレスの調整に行っているジェレミア・ゴットバルト、シャーリーが来る前から食堂に行ったまま戻って来ないC.C.、エリア11で機密任務に向かったままのロロ。知り合いは全て用がある様子。

 斑鳩に来ても、ナイトメア格納庫からルルーシュの部屋までしか行き来をしないシャーリーに行き場はなかった。

 当てもなく廊下を歩いていると、向こう側から黒の騎士団には珍しいブリタニア人がやってきた。

 

「君は、ゼロの……」

 

 食事が載ったお盆を持ったディートハルト・リートはシャーリーを見て目を細めた。

 

「こんにちは、お食事ですか?」

「いや、これは」

 

 普段団員と接する機会もないのだから積極的に交流しようとシャーリーから話しかけると、マズいところを見られたかのように一瞬だけ眉を顰めたディートハルトだったが、彼女の存在は時期合いから見ても丁度良いと判断した。

 

「捕虜の食事だ。何時もなら部下がしているのだが手が空いてなくてね。良ければ君も一緒に来てもらっても構わないかな」

「え、私もですか?」

「捕虜は女性でね。男の私だけでは無用な疑いを招いてしまう。手伝ってくれると有難い」

「…………分かりました。ご一緒させてもらいます」

 

 ディートハルトが言うことは尤もで、丁度シャーリーも手持ち無沙汰なこともあって了承する。

 黒の騎士団に名目上は入っていると言っても何もしていないに等しいから、付き添いだとしても仕事が与えてもらうのは嬉しかったのだ。

 

「助かる」

 

 二人で連れ立って歩きながら、シャーリーはふとルルーシュから捕虜がいるなどと聞いたことがないことを思い出した。

 

「捕虜っていたんですね。私、初めて聞きました」

「ゼロにも伝えず、私のところで止めている情報だから君が知らぬのも無理はないだろう」

 

 言っていることを意味をシャーリーが理解したところで、ディートハルトは「君が考えているようなことではない」と言った。

 

「この捕虜には複雑な事情がある。ゼロには対ブリタニアに専念してもらう為に組織の中の問題はこちらで対処しようといていたが、超合衆国成立を目前にしてゼロにも報告しようとしていたところだ」

「複雑な事情、ですか?」

「身内の恥を晒すことになる。詳細はここでは話せん」

 

 つまりはシャーリーも自分は聞かない方が良いのかもしれないと考えた。

 結局は黒の騎士団に名は置いていても、ルルーシュ個人に付いているだけで団員と言い難い自分が口を出すべきではないと判断して聞くことはしなかった。

 

「ここだ」

 

 ディートハルトに付いて捕虜がいるという部屋に着くも、空室に拘束しているようでネームプレートには誰の名前も書かれていない。

 お盆を預かり、ナンバーキーを押してカードキーを通してドアを開けたディートハルトに次いで室内に入ると、電気が点いていない所為で薄暗い。

 

「え?」

 

 捕虜はベッドに座っており、入室に気付いて入り口に顔を向けた。その顔にシャーリーは見覚えがある。当たり前だ、ついこの間まで毎日学園で顔を合わせていたのだから。

 

「シャーリー!?」

「ヴィレッタ先生!?」

 

 両者とも最も出会うはずの無い場所で再会したことで驚きが口について出る。

 

「知り合いかね?」

「学校の先生…………だったはずの人です」

「ほう」

 

 明らかに既知と分かる様子にディートハルトは訊ね、シャーリーを横目に見る。

 

「どうしてヴィレッタ先生が」

 

 ヴィレッタとしてはそのことには触れてほしくない。

 

「それは私の台詞だ。まさかお前が黒の騎士団だったとは…………いや、ルルーシュの為に私を撃ったぐらいだ。当然のことか」

 

 ブラックリベリオン前、ゼロの正体に辿り着きかけていたヴィレッタをシャーリーは撃った。その後、扇要に拾われて紆余曲折有り、今の状態に繋がっている我が身を振り返って泣きたくなった。

 ルルーシュがゼロに戻ったのならば、シャーリーが黒の騎士団にいてもおかしくないとやけっぱちになる。

 

「そのことはごめんなさい!」

 

 幾らルルーシュを守る為とはいえ、人を撃ったことは悪いことである。罪を償う気はあるし、謝らなければならなかった。

 

「なら、私を助けて」

「彼女にはそんな権限はない」

 

 ルルーシュ=ゼロのことを知っていながらも噯にも出さず、ディートハルトは冷徹に告げる。

 

「どうやら二人には何やら因縁があったようだ。シャーリーと言ったか、君には悪いことをした」

「そんな私は」

「捕虜に負い目があるなら接するのは危険だ。この件はゼロにも報告させてもらう。後のことは私がやるから君は戻りたまえ」

 

 有無を言わさぬ口調でお盆を取られて部屋から追い出されそうになる。

 

「シャーリー、私を撃ったことはもう気にしないで良い。学園で辛く当たってしまってすまなかった」

 

 ディートハルトがドアを閉める刹那、ヴィレッタは全てを諦めた顔で言った。

 

「ヴィレッタ先生!」

 

 ドアを叩いても内側からもう開くことはない。

 それでも諦め切れずに何度も叩いていると、廊下の向こうからラクシャータ・チャウラ―の下で行っていたナイトギガフォートレスの調整を終えたジェレミアがやってきてシャーリーに気付いた。

 

「こんなところで何をやっている、シャーリー」

「ジェレミアさん!? ここにヴィレッタ先生が!」

「なに?」

 

 嘗て純血派として轡を並べていたヴィレッタのことはジェレミアも無視できない。

 

「場所を変えよう。詳しく話を聞きたい」

 

 が、黒の騎士団においては人体実験によってブリタニアに恨みを抱いていると伝えられても、エリア11で純血派として様々な行動を取っていたジェレミアは潜在的な敵扱いされているので、ルルーシュの為にも万が一にも問題は起こせない。

 

「でも!」

「私達が問題を起こせばルルーシュ様に迷惑がかかるのだぞ。自重したまえ」

 

 大人としてシャーリーを諌めれば、彼女も一時の激情で失っていた冷静さを取り戻す。

 場所を変えて人通りの少ない通路で事情を聞いたジェレミアは渋面を浮かべる。

 

「ルルーシュ様には報告するが、恐らく状況は何も変えられないだろう」  

「なんで!」

「ディートハルトのしていることは、ルルーシュ様に報告していないことを除けば真っ当な対応だからだ。もしも捕虜がヴィレッタでなく、見知らぬ誰かであったら君は同じ思いを抱くか?」

 

 シャーリーがここまでヴィレッタを気にするのは、知り合いであることと嘗て彼女を撃った負い目があるから。ジェレミアの言うことは至極真っ当だった。

 

「彼女には私も負い目がある。悪いようにはしないと騎士の誇りに賭けて誓う。だから、君も軽挙妄動は慎むように」

「はい、分かりました……」

 

 ジェレミアはシャーリーよりも多くの経験を積んだ大人で、騎士の誇りまで賭けてくれたのだからこれ以上何も言えるはずもない。

 シャーリーは、あまりにも無力だった。

 

 

 




双貌のオズのキャラが1シーンだけとはいえ、復活のルルーシュのエンドに出ていました。つまり、本√で出て来ても何もおかしくはない。

ナイトオブナインのノネット・エニアグラムがトウキョウ決戦に出て来てもおかしくはないね?

アーニャはどういう状態なのかは次回にて。

後半は、シャーリーが生きていたら絶対やらなきゃいけないだろうと記憶を取り戻した状態でのヴィレッタとの対面。
映画版ではヴィレッタを撃ったのはディートハルトになっていますが、本作は混合√なのでシャーリーが撃ったパターンで行きます。


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