コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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日刊ランキングに載ったら凄い勢いでお気に入りと評価が増えて、投稿しなければと燃えた結果、文字数が多くなってしまいました。




第六話 第二次東京決戦

 

 

 

 超合衆国決議第壱號が発令される数日前、雑踏と喧騒に支配された建物の内部にルルーシュの姿はあった。

 

「ルル……」

「シャーリー……」

 

 二人の男女が向かい合い、湿った視線を交わしていたとしても気にもしない周りの人達。それは当然のことで、空港は別れの場所でもあるのだから。

 

「やっと話すことが出来るのに」

「仕方ない。お母さんの気持ちも分かるだろ?」

 

 連れ添う旦那を失い、あわや娘も失いかけた母親の気持ちも分からないでもない。

 シャーリーの母親にとっては呪われているとすら思えるエリア11に残っていたのは娘がゴネたからでもある。だが、しかしそれも撃たれた傷が完全に癒えるまでの話。

 

「でも!」

 

 十代後半ともなれば親よりも愛しい人と一緒にいたいと思う年頃。ことにシャーリーは今までの経緯が経緯だけに容易に離れがたいと思ってしまう。

 

「頼む」

 

 ルルーシュは叶うならばシャーリーには傍にいてほしいと思っている。同時に否応なく、このエリア11が戦地になってしまうことを知っているルルーシュは離れた方が良いとも思っている。

 

「全部終わらせて必ず会いに行く。だから」

 

 その先の言葉が示す物は不穏であり希望であり、不確かな未来に辿り着きたいと願うルルーシュの想いでもあった。

 

「…………ルル」

 

 一度だけ病院で人目が無く二人だけで話せる機会があった時にルルーシュは自身の全てをシャーリーに話した。

 憤怒であり、憎悪であり、懺悔であり、後悔ばかりのルルーシュの全てを。

 ルルーシュの生まれ、アリエス宮で起こった母と妹を襲った悲劇、皇帝からの宣告、日本でのスザクとの交流、侵略戦争後の生活、アッシュフォード、C.C.、そしてギアス。

 ユーフェミアの真実、ナナリーの現状、ロロの正体、ルルーシュの目的に至るまで、その全てをシャーリーに語った。

 

『ありがとう、話してくれて』

 

 長かったかもしれないし、短かったかもしれない。

 ルルーシュにとっては時間間隔が曖昧になりながらも全てを語り終えた後、シャーリーはただそう言って微笑んだ。

 シャーリーは許しも怒りも嘆きもしない。だからこそ、ルルーシュは救われたのだった。

 

『俺の方こそありがとう』

 

 気が付けばルルーシュはそう言っていた。

 全てを知るC.C.にも話したことがないようなことまで語ったルルーシュは、重い何かから解き放たれたような気持ちだった。

 

「ああ、その時に俺の気持ちも伝えるよ」

「待ってる。あんまり遅いと私の方から来ちゃうから」

「肝に銘じておく」

 

 そして彼らは別れる。

 少年は戦場へと赴き、少女は少年が敵と定めた国へと帰って行く。

 ここで綺麗に終われたら物語の一幕にも成れるのだが、それはこの場にいるのが二人だけだったらの話。

 

「ところで、お二人さん。私達は何時までラブロマンスを見てればいいのかしら?」

 

 シャーリーの見送りに来たのに完全に蚊帳の外に置かれた上に、ケリは付けたつもりでも心の奥底にくすぶり続けるルルーシュへの恋心があるミレイ・アッシュフォードとしては堪ったものではない。

 

「そうだよ。俺達だって見送りに来てるんだぜ」

 

 胡乱気な眼差しのリヴァル・カルデモンドも気に入らげに同調する。

 

「恋人の別れに口を挟まないで下さい」

 

 腕を取って笑いながら言ったシャーリーにルルーシュは嬉し気に目を細めた。

 

「全部終わったら――」

 

 未来は不確定であやふなものでもあっても、ルルーシュは歩んだ道の先を見据える。

 

「――――ニーナやカレン、スザクも…………ロロやみんなと一緒に花火を見よう」

 

 シャルルのギアスによってナナリーのことを忘れているミレイとリヴァルの手前、名前は出せないけれどシャーリーには伝わったようだ。

 ナナリーがエリア11の総督になった後、修学旅行に参加しなかったルルーシュの為にミレイ達がアッシュフォード学園の屋上で上げてくれた花火。

 

「この間のあれ?」

「でも、カレンとスザクは……」

 

 カレンは黒の騎士団、スザクはナイトオブラウンズ、ニーナもブリタニア本国で何らかの研究をしていると聞いていたミレイとリヴァルは叶うはずのない約束を思い出していた。

 

「大丈夫」

 

 敵対している勢力に所属している者達が仲良く過ごせるはずがないと諦めているリヴァルに対し、シャーリーはルルーシュの手を握りながら保証する。

 

「折り鶴一つでもルルが来てくれたんだもん。千羽もあればみんな来てくれるよ。私、頑張って作るから」

 

 シャーリーの願いを人は子供の世迷言と笑うかもしれない。

 向けてくれるシャーリーのこの笑顔を守る為にルルーシュは戦うのだ。

 

「ああ、そうだな」

 

 ルルーシュは必ず約束通りに皆が集まって花火をすることが出来ると信じていた。信じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 斑鳩のKMFデッキにある蜃気楼に乗り込んだルルーシュはゼロの仮面を外してインカムを取り付ける。

 

「ルルーシュ」

 

 インカムを取り付けた直後、まるで計ったかのようにC.C.から通信が入った。

 

「どうした、C.C.?」

 

 蜃気楼の隣に立つ濃いピンクに塗装された暁直参仕様に乗り込んだはずのC.C.の顔を思い浮べながらドルイドシステムを起動させる。

 

「特に用があるわけじゃない」

「なんだ、それは」

 

 忙しい時に通信をしてきた理由がそれではルルーシュでなくとも文句を言いたくなる。

 

「用がないのなら切るぞ」

「気の短い奴め。男なら女の気持ちを察するぐらいしろ」

「察しろと言われてもな……」

 

 この日の為に何度もチェックを繰り返してきたシステムには何の異常もない。後は発進するだけとなったので、ルルーシュは隣に立つ暁直参仕様を見てみた。

 

「機体をピンクに塗る神経が信じられん」

 

 というか、女がピンクを良く好む論理的な理由付けも出来ないのでルルーシュには理解できない。

 KMFの色などコンピュータによって迷彩が意味を為さない以上、極論すればなんでもいい。が、やはり濃いピンクは目立って仕方ないとルルーシュは思うのだ。

 

「好きな色なんだから放っておいてくれ…………全くお前に女心を分かれと言っても無駄だったな」

 

 反論したいことは幾らでもあるが、感情で動く女心をルルーシュが理解できたことはないので薮蛇になると分かっているので口を噤んだ。

 

「さっさと本題を言え」

「せっかちめ」

「切るぞ」

「分かった分かった…………ナナリーのことだ」

 

 時間に余裕があるわけではないので業を煮やしてインカムの通信を切ろうとしたルルーシュの手が止まる。

 

「ゲフィオン・ディスターバーによってトウキョウ租界のライフライン、通信網、そして、第五世代以前のナイトメアは機能は停止する。そうなれば奇襲する形となった黒の騎士団が有利になるだろう」

 

 何時もC.C.は肝心なことを言おうとしない。この時もそうだった。

 

「各主要施設を叩き、トウキョウ租界の戦闘継続能力を奪う。ここまでは良い」

「…………政庁を攻撃しろと命令したことか?」

「幾らある程度の要人の避難場所を予測出来ているとしても、ナナリーを確実に抑えられる保証はない。しかも優先順位はカレン・紅蓮に次いでの三番目だ。本当に攻撃しても良いのか?」

 

 心配性め、とはルルーシュは思っただけで言わなかった。

 

「黒の騎士団はもう俺だけの、日本だけの組織じゃなくなった。ゼロは多くの希望を集め、その責任を背負っている」

 

 偽りの記憶が解かれた後、ルルーシュはナナリーのいない生活を送った。記憶にある限りにおいて、今までなかったことだった。

 ナナリーのいない生活など考えられなかった。生きることは出来ないとすら思っていた、そのはずだったのに。

 

「俺はゼロとして、黒の騎士団のCEOとしての責任を果たさなければならない。もう、ナナリーの兄だけでいることは出来ない」

 

 ナナリーを取り戻す。その決意に偽りはなくとも、シャーリーや黒の騎士団たちとの約束が、願いがある。

 

「この戦いはナナリーの為だけものじゃない。日本の、世界の、そして俺自身の願いの為に」

 

 賽は振られた以上、例えその先にどんな犠牲を払おうとも止まることは許されない。

 

「行くぞ、C.C.。魔王たる俺に付いて来る覚悟はあるか?」

「…………私は魔女だ。魔王が為す全てを見届けてやる」

 

 藤堂鏡志朗の斬月が開かれたデッキから発進していく大きな音にも遮ることなく相手へと言葉が伝わった。

 

「蜃気楼、発進どうぞ!」

 

 千葉凪咲、朝比奈省吾の青色に塗装された暁直参仕様が続いて発進し、オペレータである双葉綾芽の言葉の直後、発進シークエンスが終了して何時でも蜃気楼が出撃できる状態になった。

 

「了解した。蜃気楼、出るぞ!」

 

 斑鳩を発進した蜃気楼を操るルルーシュは画面に映る太陽の高さを確認して目を僅かに細める。

 予測ではゲフィオン・ディスターバーが破壊されるであろう時間は日没前。その前に政庁を落としてナナリーを手にすることが出来るか、ルルーシュにも分からない。

 

「地上部隊は敵がゲフィオン・ディスターバーを破壊するのを可能な限り遅らせろ。朝比奈、千葉は政庁を落とせ。しかし、カレンと紅蓮がいると思われる特定のポイントには攻撃をするな」

「「了解!」」

「藤堂は当初の計画通り、暁部隊を率いてゲフィオン・ディスターバーが効いていない敵KMFを相手にしろ。ジェレミアはナイトオブラウンズが現れたらその相手を」

「了解した!」

「イエス・ユア・ハイネス!」

「おい、私は?」

「C.C.は私の直掩だ。蜃気楼は囮として敵を惹きつける!」

 

 矢継ぎ早に指示を出しながらルルーシュの目は戦場を俯瞰する。

 

「斑鳩艦隊はトウキョウ租界上空にてシュナイゼル旗下の航空艦の相手をしてもらう。藤堂とジェレミアの前には絶対に出るなよ!」

 

 あのシュナイゼルならば政庁で避難するよりも航空艦に乗り込んでいるだろう。ゲフィオン・ディスターバーに対抗できるフィルターを装着した第七世代以降の敵KMFの姿も見える。

 

「シュナイゼルめ、トウキョウ決戦を読んでいたか。だが!」

 

 蜃気楼はトウキョウ租界の上空に留まりながら、展開した胸部からプリズム状にした特殊な液体金属のレンズを放ち、それにビームを放って乱反射させる拡散構造相転移砲を放つ。

 ゲフィオン・ディスターバーで動きを止めている第五世代と第六世代のフィルターの付いていない機体を撃ち抜いていく。

 視界の端では藤堂の斬月とジェレミアのサザーランド・ジークが敵ナイトメアと戦端を開くのが見えた。

 

「咲世子、そちらの突入状況はどうなっている?」

 

 敵の接近や身の安全への意識は直掩のC.C.に任せることで除外し、ルルーシュは目と頭は敵の排除を続けながら政庁に侵入している篠崎咲世子に通信を繋げる。

 

「政庁への侵入は成功し、紅月カレンの捜索を行っています」

 

 ドルイドシステムと自前の頭脳を120%駆使して敵を排除しつつ、戦況の流れを見極めて優勢を確信しながらもルルーシュに慢心はない。

 

「潜入部隊を二つに分け、紅蓮の状態も確認させろ。シュナイゼルのことだ。機体に爆弾を積んでいないとも限らない」

 

 ラクシャータによればロイド・アスプルンドがそんなことをさせないという話だが、あのシュナイゼルならばやりかねない上に一度は敵の手に渡ったのだから十分に注意するべきである。

 

「しかし、それではナナリー様が」

「優先順位を間違えるな、篠崎」

 

 名前ではなく苗字で言うことで、ルルーシュとしてではなくゼロとして話しているのだと分からせる。

 

「…………了解しました、ゼロ様」

「頼んだぞ」

 

 ナナリーの優先度を下にすることに心が張り裂けそうなほどに激情が湧き立って来るが、ゼロの仮面で押し留めさせる。

 

「ゼロ!」

 

 C.C.の警戒を促す声に拡散構造相転移砲を放つのを止めると、コックピットに接近警報を鳴り響いた。

 

「…………やはり来たか、スザク」

 

 直後、何度も煮え湯を味わわされてきたランスロット・コンクエスターが向かって来る姿が拡大されて画面に表示される。

 

「聞こえるか、ゼロ」

 

 強制的に通信に割り込みがかけられ、スザクの声がルルーシュの耳に入ってくる。

 

「戦闘を停止しろ。こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば、4000万リータ以上の被害をもたらす。その前に……」

「ジェレミア!」

「イエス・ユア・ハイネス」

 

 ルルーシュの呼びかけに応えたジェレミア・ゴットバルトが操るサザーランド・ジークが蜃気楼の後ろから現れてランスロット・コンクエスターを強襲する。

 

「ジェレミア卿ですか!? 何故!?」

「枢木スザク、君には借りがある、情もある、引け目もある。しかしこの場は…………忠義が勝る!」

 

 ナイトギガフォートレスであるサザーランド・ジークはその巨体を活かしてランスロット・コンクエスターを吹っ飛ばす。

 

「ゼロ、今のスザクが言ったことは……」

「脅しに過ぎん。広範囲に被害を齎す重戦術級弾頭を使えばトウキョウ租界は只ではすまん。使えるはずがない」

 

 トウキョウ租界にはブリタニア人も多く住んでいる。超合衆国決議第壱號で日本解放戦が決議されても全員が避難できるはずがない。

 脅しに過ぎないとルルーシュはC.C.に言い切った。

 

「受けよ! 忠義の嵐!」

 

 ナイトオブラウンズであろうとも何十万人もいるはずのトウキョウ租界上空で重戦術級弾頭は使えない。第一、サザーランド・ジークの猛攻に晒されている今のランスロット・コンクエスターに撃つ暇はないだろう。

 

「俺はランスロットとの通信を完全に遮断する。何かあった時はC.C.、お前に任せるぞ」

 

 ルルーシュは自分が身内に甘い人間だと自覚している。

 通信回線を開いていたら、また情が湧く可能性が高いのでスザクと会話を交わさない為にランスロット・コンクエスターと通信が出来ないように設定する。

 

「いいんだな?」

 

 問うC.C.に無言で返すことで了承の返答する。

 そこへ更なる接近警報が蜃気楼のコクピットに鳴り響き、向かって来る機体を見たルルーシュは目を見開いた。

 

「ナイトオブラウンズの戦場に、敗北はない!」

「倒す」

「ラウンズが二機だと!?」

 

 機体照合の結果、トリスタンとモルドレッドと出た。

 ナイトオブスリーのジノ・ヴァインベルグと、ナイトオブシックスのアーニャ・アールストレイムの機体である。

 

「シュナイゼルは俺を墜とす気か!?」

 

 政庁の防衛でもアヴァロンの護衛でもなく、ゼロが乗る蜃気楼を落とすべく最大戦力であるナイトオブラウンズを差し向けて来た。

 

「がっ!?」

「C.C.……ぐっ!?」

 

 加速力に優れるフォートレスモードになっていたジノの駆るトリスタンにC.C.が攻撃を加えられ、そちらに一瞬気を向けた瞬間にアーニャのモルドレッドが接近しながらシュタルクハドロンを放った。

 蜃気楼は絶対守護領域を展開してシュタルクハドロンを防いだが、モルドレッドは砲塔を押し付けて押し込んで来る。

 

「あなたのシールドが上か。私のシュタルクハドロンが上か」

 

 そして間近で再びシュタルクハドロンが放たれ、絶対守護領域とぶつかり合ってルルーシュの視界を明滅する光で埋め尽くす。

 

「こ、これは、いくら絶対守護領域でも……」

 

 ドルイドシステムを操作して防いでいるが、絶対守護領域を展開している蜃気楼に負荷がかかり続けている。

 このままでは機体が過負荷に耐えらずにオーバーヒートし、絶対守護領域が展開できなくなる。そうなれば、シュタルクハドロンが蜃気楼を簡単に貫くだろう。

 

「ゼロ!?」

「来るな、藤堂! ジェレミア!」

 

 ナイトオブラウンズをルルーシュに集中させるのは諸刃の剣である。

 現に藤堂と暁の部隊によってアヴァロンの直掩部隊は半減している。ジェレミアもスザクを抑えているからこそ、他の戦闘場所が優位に運べているのだ。

 このまま時間を稼げば政庁も落とせる。ルルーシュが落ちるのが早いか、政庁やシュナイゼルが落ちるのが早いか。

 

「ゼロの親友、玉城真一郎を忘れるんじゃねぇ!」

 命を賭けるにはあまりにもハイリスクな状況でルルーシュが戦っている中で、地上で玉城の操る暁が放ったバズーカが――――――ジノのトリスタンに向かって行く。

 

「良くやった、玉城!」

 

 近くに玉城がいたのを知っていたC.C.はモルドレッドではなく、対峙していたトリスタンを狙わせた。

 モルドレッドと蜃気楼の周りにはシュタルクハドロンの所為でバズーカが届かない。だからこそ、自身を囮にしてトリスタンを狙ったのだ。

 バズーカの弾を避けたトリスタンが玉城の暁をしっかりと仕留めている間にC.C.が動く。しかし、その動きはトリスタンに比べれば鈍重だった。

 

「C.C.!?」

 

 機敏に反応したトリスタンから放たれたハドロンスピアーがC.C.の乗る暁直参仕様の半身を抉った。射線上にモルドレッドもいたので撃墜はされないと踏んだが、もう暁直参仕様は戦えない。

 

「ええぃ!」

 

 しかし、暁直参仕様は止まらない。破損している飛翔滑走翼を動かしてモルドレッドの背に取りつこうとしているのを見てジノは己が失策を悟った。

 反対にモルドレッドのコクピットでアーニャは背中に取りついた暁直参仕様に攻撃能力が無いことを見抜いていた。

 

「そんな機体で何も出来やしない」

「機体ではないかもしれないぞ」

 

 中華連邦の戦いでC.C.はアーニャの内に潜む者の正体を知っていた。

 

「目覚めろ!」

 

 嘗て行政特区日本の式典でスザクと触れた時に偶発的に発生したショックイメージを意識的にアーニャに叩きつけて裡にいる者を喚起させる。

 

「あっ、ぐっ――!?」

 

 C.C.が発したショックイメージによって、アーニャは内側にいる者の記憶を叩きつけられる。

 

「はっ!? な、なにこれ――」

 

 造園の花々に囲まれて満面の笑みを浮かべる黒髪の少年。

 離宮の中で立つ豪華なドレスを着た見覚えのない女性。

 草原で活発に遊ぶ少女と振り回されている少年、そして彼らを見守るブリタニア皇帝。

 

「ハドロンが止まった? ならば!」

 

 背中に激突しただけに見えたC.C.の暁直参仕様によってモルドレッドのシュタルクハドロンが止まった。理由は分からずともルルーシュは両膝のスラッシュハーケンを放つ。

 

「C.C.!」

「だ、大丈夫だ……」

 

 スラッシュハーケンが当たった程度でバランスを崩したモルドレッドの背にしがみ付いている暁直参仕様を回収し、離脱しながらC.C.に呼びかけると力のない声が返って来た。

 

「逃がさん!」

 

 可能ならば斑鳩に連れて帰りたいが、トリスタンが行く手を阻む。

 前進を止められた蜃気楼が急停止した瞬間、モニターの一部でトウキョウ租界を沈黙させていたゲフィオン・ディスターバーが全て破壊されたことを知らせてきた。

 

「馬鹿な、早すぎる!?」

 

 まだ日没には少し早い。予定よりも早すぎる破壊にルルーシュが驚愕している間に幾つもの通信が同時に入る。

 

「ゼロ、伏兵が!」

 

 その通信内容を纏めれば、トウキョウ租界が狙われる可能性を読んでいたシュナイゼルは伏せていたナイトメアや工作兵を動かしてゲフィオン・ディスターバーを破壊させたのだ。

 

「――――私を前にして余所見とは余裕だな!」

 

 理由を考えてしまうのはルルーシュの悪癖だった。

 ジノはパイロットであるルルーシュが気を逸らしていたのを如何なる方法によってか察知しており、異常な反応速度でトリスタンを駆ってMVSハーケンを蜃気楼に向けていた。

 

「っ!?」

 

 意識をジノに戻した時には絶対守護領域を発動させられるタイミングではなかった。

 ナナリーの名を叫ぶ暇もなく絶命するはずだったルルーシュの視界を赤い光が埋め尽くす。

 

「―――――――先日はどうも、ブリタニアの貴族様」

 

 戦場で一瞬とはいえ放心したルルーシュは蜃気楼の前に立つ真っ赤な機体がトリスタンではないことに気付くのが遅れた。

 

「カレン、やっぱりシュタットフェルトの名前より紅月…………日本人であることを選んだわけか」

「そうね。だから、ジノ。戦場で会えたことを喜ぶべきかしら、悲しむべきかしら」

「ふふ、楽しむべきってのはどうだい?」

 

 ルルーシュが見えるのは背中部分だけだが、その部分だけをとっても以前の紅蓮可翔式とは明らかに意匠自体が変わっている。

 

「カ、カレンか?」

 

 蜃気楼を助けた紅蓮に乗っているとしたらカレンしか考えられないが、九死に一生を得たルルーシュは思わず訊ねていた。

 

「ゼロ! 親衛隊隊長・紅月カレン。只今を以て紅蓮聖天八極式と共に戦線に復帰しました!」

 

 戦術で戦略をひっくり返すことが出来る機体と共に戻って来たカレンは高らかに叫んだ。

 

「よく戻って来てくれた、カレン。早速で悪いが」

「敵を倒します!」

「そうはさせない!」

 

 右腕を失っているトリスタンに向かおうとした紅蓮だったが、ジークフリートの拘束を脱したスザクのランスロット・コンクエスターが割り込んで来る。

 放たれたメーザーバイブレーションソードを簡単に躱した紅蓮はC.C.の暁直参仕様を抱える蜃気楼を押して下がる。

 

「大丈夫か、アーニャ」

「…………平気」

 

 紅蓮はたった一機で、ナイトオブラウンズ二機とゆっくりと上がって来たモルドレッドの合わせて三機と対峙する。

 

「カレン! どくんだ!」

「どかないよ、スザク!」

 

 真っ先に向かっていたランスロット・コンクエスターがハドロンブラスターを放つも、紅蓮は輻射波動で受け止めながら障害などないかのように突き進む。

 阻止しようとするモルドレッドのシュタルクハドロンも悠々と躱し、輻射波動砲弾を円盤状に収束させてカッターにして投げ、砲塔を呆気なく破壊する。

 機動力が売りのトリスタンが全く追従すらも出来ず、その翼を折られた。

 

「ま、マシンポテンシャルが違い過ぎる……!?」

 

 隔絶した機体性能を前に何も出来ず、ナイトオブラウンズが赤子の手を捻るように敗れ去って行く。

 

「どうしますか、ゼロ? ここでナイトオブラウンズを」

 

 ルルーシュですら呆然とするしかない状況でカレンからナイトオブラウンズを倒すことを優先するかと通信が入った。

 

「…………ランスロットは重戦術級弾頭を持っている可能性がある。エリアでそんな物を撃とうしたことはブリタニアに打撃を与えることが出来るはずだ」

 

 そうしている間に明らかに戦闘能力を失ったトリスタンを抱えてモルドレッドが逃げる。その背に追撃を仕掛けるもブリタニアのナイトメアが次々に盾となり、捨て石になっても構わないと次々に紅蓮に飛び掛かってはカトンボのように落ちていく。

 

「ランスロットを鹵獲しろ」

「それはゼロとしての判断? それとも――――ルルーシュの感情?」

 

 紅蓮という戦術が戦略をひっくり返している中で、スザクを捕まえるという判断はどちらから出されたものかをカレンは問うた。

 

「パイロットを生きたまま捕まえろとは言っていない。恐らく重戦術級弾頭は背腰部のアレだ。アレさえ奪えばランスロットに用はない」

 

 つまりはゼロとしての判断である。

 

「紅蓮のパワーアップのことを考えればスザクを生かしておくわけにはいかない――――確実に殺せ」

 

 下手にスザクを追い詰め過ぎれば、生きろとかけたギアスが発動してどんな行動に出るか分からない。もしかしたら重戦術級弾頭を使う可能性もある。

 

『―――――ルルーシュの感情?』

 

 右手以外を失ったランスロット・コンクエスターを動かしていたスザクの耳に混線した通信が拾った声を届けた。

 

「―――――」

 

 カレンの声で告げられた名前が示した意味。スザクは瞬間的に沸騰した頭と共に理解して、フレイヤの安全装置の解除の操作をしていた。

 一年前のブラックリベリオンの時に神根島でルルーシュがユーフェミアを過去と言った時に湧き上がった同じ憎しみが一瞬でスザクを襲い、腰背部にランチャーの中に何が入っているかも忘れさせた。

 

「ルルーシュゥゥゥゥゥウウウウウウウウッッッッッッッ!!!!」

 

 また裏切られた。また、また、またまたまたまたまたまたまたまたまたまた、ルルーシュはスザクを、学園の皆を、全ての人々を裏切った。

 向かって来る紅蓮のことなど頭にない。あるのはその後ろで半壊したナイトメアを抱える蜃気楼、その内にいるゼロであるルルーシュだけ。

 

――――スザクは憎しみのままに引き金を引いた

 

 フレイヤ弾頭は比較的遅かった。

 紅蓮は勿論のこと、距離があったので半壊した暁直参仕様を抱えていた蜃気楼でも避けることは難しくなかった。

 

「まさか、あれがスザクの言っていた…………ああ、ナナリー!!!!」

 

 ルルーシュが気づいた時にはもう遅い。

 三機が避けたミサイルがトウキョウ租界の中心に近い場所で閃光を放ち、やがてその輝きを高めて広がって行く。

 

「ルルーシュ!」

 

 通信を拾われる可能性があるので、決してルルーシュと名前で呼ぼうとはしなかったC.C.が暁直参仕様を操作して今にも壊れそうな飛翔滑走翼で蜃気楼を押す。

 後少しで機体の足下にまで光が迫ったところで、遂に飛翔滑走翼が爆発した衝撃で我に返ったルルーシュは暁直参仕様を抱えて蜃気楼を全力で後退させた。

 

 

 

 

 

 日が没し、トウキョウ租界があった場所を暗黒が支配していた。ライフラインを抉り取られ、周辺地域も暗いまま。

 トウキョウ租界の中心部で炸裂したフレイヤ弾頭の結果を見届けたシュナイゼルは、損傷の大きいアヴァロンのブリッジで立ち上がる。

 

「素晴らしい……」

 

 光に呑み込まれ、文字通り消えてなくなった嘗てトウキョウ租界だった場所を微かに恍惚とした目で見下ろす。

 

「それでいいのだよ、枢木スザク」

 

 最早、戦うどころではなくなって動きの止まった戦場の中に浮かぶランスロット・コンクエスターを確認したシュナイゼルは何時もの彼らしく笑った。

 

 

 




原作との変更点
・シャーリーが生きており、母親と共にブリタニアに帰国している。
・C.C.がトウキョウ決戦に参加
・トウキョウ決戦の開始時間が早いのでルキアーノ参戦出来ず
・ナナリーの優先度がカレン、紅蓮の下の三番目
・シュナイゼルはトウキョウ決戦は読んでいたが確信はなかったので、念の為に租界外に伏兵を忍ばせていた(お蔭でゲフィオン・ディスターバーを早く破壊出来た)
・なので戦況はほぼ黒の騎士団の圧倒的優勢、シュナイゼルはジノとアーニャにゼロを落とさせる以外に勝ち目は薄かった
・ルルーシュがカレンにランスロットの鹵獲指示(パイロットの生死は問わない)。
・その際、C.C.は作戦行動中にルルーシュの名前を出さなかったが、うっかりカレンが口にしたのを通信で拾ってしまったスザク
・ルルーシュ=ゼロが疑いの段階に過ぎなかったので、また裏切られたと思ったスザクがプッツンしちゃってフレイヤを撃ってしまった。
・何気に落とされかけていたアヴァロンにいたシュナイゼルはフレイヤの光に魅入られてきたようです
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