コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~   作:スターゲイザー

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本話にはありえない展開があるかもしれません。そのことをご了承の上でお読み下さい。





第七話 裏切り

 

 

 

 神聖ブリタニア帝国第2皇女コーネリア・リ・ブリタニアは妹であるユーフェミア・リ・ブリタニアにかけられた虐殺皇女の汚名を濯ぐべく、ブリタニアの力を借りずに単独で調査を行っていた。

 調査の過程でギアス嚮団の存在に行き着き、中華連邦の砂漠地帯にあった嚮団に潜入する。

 コーネリアの前の総督クロヴィス・ラ・ブリタニアの側近バトレー・アスプリウスを見つけ、ギアスの説明を受けているところで嚮主であるV.V.に捕縛されてしまった。

 

「V.V.が死んだだと?」

 

 単独でギアスにまで辿り着いたコーネリアはV.V.によって危険視され、神聖ブリタニア帝国の皇女を口封じに殺すことも出来ずギアス嚮団内部に幽閉されていた。

 

「黄昏の部屋の前で心臓をナイフで一突きされた状態で倒れているのを発見されています」

 

 目は窪み、頬が扱けて憔悴が目立つバトレーによって軟禁から解放されたコーネリアは眉を顰めた。

 

「頭にナイフが突き刺さっても死なぬ子供だ。不老不死もあながち間違いないと思っていたが」 

 

 バトレーに嚮団を案内してもらっている時に現れたV.V.に出合い頭にナイフを投げ、深々と突き刺さったのをコーネリアは確認している。だからこそ、死んだと聞かされても容易には信じられない。

 

「殺したのは誰だ?」

「分かりません」

 

 嚮団にいた者の中でそういった行為を嚮主であるV.V.にするとすれば、それこそコーネリアぐらいなものだろう。

 それほどにV.V.は嚮団内で圧倒的な立場にいるし、不老不死であることは誰もが知っていることだったのだから。

 

「嚮団員が皇帝陛下にご報告したとのことですが、捜査が行われる様子はありません。マリーベル皇女殿下が大グリンダ騎士団と共に一度来られたのですが、V.V.が死んだのを確認すると直ぐに出て行かれたので捜査ではなかったようです」

 

 皇女であるコーネリアがギアス嚮団のことを知らなかったのだ。表の捜査組織を入れられるはずもがないが、皇帝ともなれば秘密厳守を出来る捜査員の一人や二人を投入することも出来るはずだ。

 

「マリーベルが?」

「はい」

 

 神聖ブリタニア帝国の皇位継承権第88位の皇女マリーベル・メル・ブリタニアが来ていたと聞いてコーネリアは思わず聞き返していた。

 

「皇帝陛下はクロヴィス殿下が献上するはずだった不老不死の女を既にご存知でした。それだけではなく、ギアスのことについても」

「父上にマリーベル、そしてギアス」

 

 コーネリアは軟禁中も考えていた皇帝シャルルに対する疑念を強くする。

 既にV.V.が殺されてから数ヶ月が経過しており、トップがいなくなった嚮団は混乱状態にある。

 殺人に対する捜査が行われる様子も無く、皇帝に指示を仰いでも何の音沙汰もない。バトレーらが調整していたジェレミア・ゴットバルトが一時帰還し、ジークフリートを奪って離脱したことで、彼らもコーネリアと同じように軟禁状態にあった。

 

「神を殺す。V.V.もそんなことを言っていたな」

「私の部下が立てた仮説が確かならば、史上最悪のことを行おうとしています。今の世界を滅ぼそうとしているのです」

 

 外の世界では超合衆国が成って決議第壱號が発令された最中に、バトレーは部下の助けで軟禁状態から抜け出し、その足でコーネリアを解放して彼女が皇女としての立場を前面に出して嚮団を制圧した。

 元よりブリタニア皇女を軟禁していることに戸惑いを覚えていた嚮団員が逆らうはずもないので抵抗もなかった。

 

「父上に直接問い質す、というわけにはいかんか」

 

 コーネリアにもシャルルが何をしようとしているのか、何を求めているのかが理解できない。そんな状態で問い質したところで何を聞き出せるものでもないと理解していた。

 

「黒の騎士団がエリア11に攻め入るというならゼロも必ずいる」

 

 ユーフェミアはギアスで操られて虐殺皇女の汚名を着せられた。それを為したのはあの時、会場を一緒に離れたゼロしかありえない。

 

「シュナイゼル兄上もエリア11にいるのなら味方につけるとしよう」

 

 あのシュナイゼルが負けるとは、とても思えない。

 シュナイゼルを味方につけてシャルルを問い質す。必要ならばシャルルに皇位から退いてもらい、シュナイゼルに新たな皇帝に成ってもらってユーフェミアの汚名を濯げばいい。

 

「バトレー、エリア11に向かう。ギルフォードに」

 

 連絡を、と言いかけたコーネリアの言葉は続けられなかった。

 慌ただしくコーネリアらの前にやってきた嚮団員が荒い息を吐きながら報告する。

 

「エリア11のトウキョウ租界が…………政庁ごと消滅しました!!」

 

 歴史は、時代は否応なく時間の針を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘗てトウキョウ租界があった場所から少し離れた上空に、半壊した暁直参仕様を抱える蜃気楼が浮かんでいた。

 蜃気楼のコクピットでルルーシュは目を見開いて、政庁があったはずの場所を見下ろしている。

 トウキョウは政庁を中心とした地域のライフラインが途絶し、常ならば眩いばかりに照らされる灯りもなく、まるで暗黒の世界に包まれたかのように暗い。

 

「咲世子…………応答しろ、咲世子」

 

 カレンが紅蓮と共に現れた後、ナナリーを見つけたとの報告をしてきた篠崎咲世子と通信を試みても、返ってくるのは無情なまでにザーザーと大量の砂が流れるような音だけ。

 

「ルルーシュ、ナナリーは」

 

 疲労の色の濃いC.C.の声が通信を介してルルーシュの耳に入る。

 だが、認めたくなかった。認められるはずがなかった。

 咲世子が通信を送った直ぐ後にナナリーを確保して退避したならば、退避方法にもよるがギリギリで逃げられるはずとルルーシュの脳の冷静な部分が弾き出しても、そんな都合の良いことがあるはずがないと誰よりも彼自身が理解していた。

 

「ナナリー」

 

 妹の名を口に出したルルーシュの目が光を映し出す。

 照明弾がトウキョウ租界を照らし出す。黒の騎士団、ブリタニアのどちらが上げたかは分からないが、政庁を中心として半径10キロメートル近くを文字通り抉り取っている姿が見えた。

 

「学園は無事か。しかし、これは、もう戦じゃない」

 

 モルドレッドに抱えられているトリスタンに乗っているジノ・ヴァインベルグは、通っているアッシュフォード学園が辛うじて被害を免れていることに安堵しながら表情を歪めた。

 貴族であり騎士であるジノだからこそ、信念も尊厳も持たないフレイヤという兵器に嫌悪と恐怖を感じる。

 

「何故、何故撃ったスザク!!」

 

 同じナイトオブラウンズとして仲が良かったからこそ、スザクの為した結果にジノは憤らずにはいられなかった。

 

「この兵器をもう一度使われたら、黒の騎士団は壊滅する」

 

 ブリタニアの旗艦と目される浮遊航空艦アヴァロンを後一歩で落とせるところまで扱ぎ付けた藤堂鏡志朗もまた、フレイヤを目の当たりにして動きを止めていた。

 

「藤堂……」

 

 蜃気楼から通信が入り、この状況においては静かすぎるゼロの声に藤堂はハッと我を取り戻した。

 

「ゼロ、ここは」

「マクハリまで後退し、戦線を立て直す」

「しかし、それは……」

 

 藤堂とて犠牲も出ている上に動揺している将兵に戦闘を強要などしたくはない。

 が、後一歩で勝利という段階で軍を下げることに直ぐには賛成できなかった。 

 

「黒の騎士団にも多くの犠牲が出ている。アレを目撃した敵も味方も戦えるものではない。それにブリタニア側に援軍が来ている。このまま戦えば負けるのは私達だ」

 

 ハッとしてモニターを操作すれば、トウキョウに向かってブリタニアのマーカーが施された軍隊が向かって来ている。

 

「ナイトオブラウンズに大グリンダ騎士団だと?」

 

 船籍・機体照合の結果、ナイトオブテンのパーシヴァルと直属の部隊であるグラウサム・ヴァルキリエ隊、ブリタニアの対テロリスト機関である大グリンダ騎士団の母艦であるとコンピュータは表示していた。

 

「ここで闘っても無駄死にだ。戦略を立て直す…………ジェレミアを殿に、藤堂は先行して部隊を下げるんだ。斑鳩に戻った後、一度星刻と合衆国代表達と合流する」

「…………了解した」

 

 ナイトオブラウンズのルキアーノ・ブラッドリーとその部隊、ブリタニアでも強硬派で精強と名高いグリンダ騎士団の母体の両隊が戦線に参加すれば、幾らアヴァロンを落としてもこちらも落とされる可能性が高いと藤堂も分かった。

 

「星刻達の戦場でもビスマルクが下がったようだ。ランスロットが重戦術級弾頭を撃った映像をディートハルトに送っている。ここからは情報戦になるだろう」

 

 ゼロの声を遠くに感じながら藤堂は戦略が崩れたという意味を理解する。

 トウキョウ租界はブリタニアの領地なのだから戦略的には黒の騎士団がフレイヤを使った方が自然だと考える。

 黒の騎士団としては、機体の映像データを抽出してナイトオブラウンズであるランスロットが撃ったことを喧伝し、ブリタニアの非道をアピールして未だ日和見を決め込んでいる国を取り込まなければならない。

 

「武士の戦場では無くなるか」

 

 フレイヤが量産されれば、戦場はナイトメアフレームではなく遠距離からの戦術弾頭を当てるものへと変化する。

 武士の挟持も何もなくなり、冷たい論理が支配するものになるかと思うと藤堂は心に冷たい風が吹くのを覚えた。

 

「黒の騎士団に告ぐ。マクハリまで後退せよ」

 

 ゼロの通信を聞いて真っ先に斬月を動かしながら、藤堂はチラリと重戦術級弾頭を撃ったランスロット・コンクエスターを見て、嘗ての弟子である枢木スザクのことを思った。

 

「僕が、やったのか……」

 

 黒の騎士団のことも、己が立場も忘れて憎しみのままにフレイヤを撃ってしまったスザクは己が為してしまった結果を直ぐには受け入れられなかった。

 全身は震えて目を見開き、どれだけ息を吸おうとも息苦しさが消えてはくれない。

 

「あ……かっ、ぉ……あぁ……」

 

 どれだけ否定しようとも現実は変わらない。両腕で頭を抱え、我知らずに涎を垂らしながらもスザクは狂うことを許されなかった。

 

『どうして』『なんで』『死んだ』『誰が』『自分が撃った』『どれだけの人が』『ナナリー』

 

 頭の中で単語だけが幾つも飛び交い、精神に圧し掛かる負荷で圧死しようともスザクの目に赤い光が宿って現世に留める。

 断続的に明滅を繰り返す赤い光。操縦を放棄して両腕で頭を抱えていたからランスロット・コンクエスターは力を失ったかのように落ちていく。

 幾らランスロットといえどもトウキョウを見下ろせる高度から墜落すれば、中のパイロットは勿論のこと機体も無事でいられるはずもない。

 

「っ!?」

 

 見開いた目から涙を流しながらも迫ってくる地面を見たスザクの体が本人の意思を無視して動き、フロートユニットを操作して急停止して軟着陸させる。

 足が無いのでガシャンとうつ伏せに倒れ込んだランスロットのコクピットで、着地の衝撃でガクンと揺れたスザクの頭。

 

「ユフィ」

 

 嘗ての主に縋るように懐に右手を伸ばして、剣と白い羽を広げたような形をした騎士の証を取り出した。

 

「僕を許してくれ」

 

 羽の部分を持ち、その刃先を躊躇いなく自身の首元に突き刺す――――。

 

「――――どうして!」

 

 目に赤い光を滲ませたスザクは、突き刺さんとした騎士証を持つ右手を押さえつけている左手を見下ろして絶望する。

 

「死んで詫びることも許してはくれないのか」

 

 あの式根島でシュナイゼルにゼロを引き止める囮として諸共に殺されようとしたスザクは『生きろ』というギアスをかけられた。

 スザクにだってギアスの所為で死ねないと分かっている。決してユーフェミアが許さなかったわけではない。許す許さない以前に、死者が生者に干渉することなど出来ないのだから。

 

「…………………フフフフフフ」

 

 騎士の証を落とし、込み上げる絶望に肩を震わせたスザクは決定的なところで心が壊れてしまった。

 

「アハハハハッ…………アッハハハハッハ―――――――!!」

 

 血涙を零しながら狂ったように笑い続けたスザクは、嘗て自身が幼い頃に起こした結果を思い出していた。

 徹底抗戦を唱えた父親である枢木ゲンブをスザクは幼い衝動的な行動で殺した。しかし、これで戦争は終わると、無駄な血が流れることはもうないのだと信じて疑わなかった。

 なのに、戦いは終わらなかった。ただ、スザクは人が人を殺めるということを止めたかっただけなのに。

 

「君は()に生きろと言うのか、ルルーシュ」

 

 ゲンブを殺した時のよう憎悪(一時の感情)に駆られた衝動的な行動で取り返しのつかない引き金を引いた。

 ギアスは人の意志を捻じ曲げる卑劣な力だ。しかし、あの瞬間においてスザクはギアスの干渉下にはなかった。全ての結果はスザクが為したものだ。

 

「ナイトオブワンになると決めたのに甘かった。結果より手段と言いながら、大事にしていたのは理想や美学だった」

 

 もう手段を選ぶ理由はなくなった。そんなことは、もう許されなくなった。

 

「今度こそ終わらせよう、この戦争を」

 

 ランスロットを回収する為に降りて来るアヴァロン。

 その艦にいるであろう最も皇位に近いシュナイゼルを皇帝にすると決めたスザクの目は、ルルーシュにかけられた『生きろ』というギアスが赤く光り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 半壊した暁直参仕様を抱えた蜃気楼が斑鳩に帰還した。

 ラダーに捕まって足をかけ、蜃気楼から下りて来るゼロの仮面をつけたルルーシュに団員達が次々に集まってくる。

 

「ゼロ!」

「トウキョウ租界が」

「――――分かっている」

 

 団員達が次々に言葉を発するのを、落ち着いているように見えるルルーシュの静かな声が押し留める。

 

「斑鳩艦隊は星刻と代表達の騎士団本体と合流する。ナイトメアの各パイロット達は機体の映像データを抽出して藤堂に渡せ。藤堂は集めた映像データをディートハルトに」

「了解した」

 

 蜃気楼よりも先に帰還していた斬月に乗っていた藤堂が重く頷く。

 

「ブリタニアは租界で重戦術級弾頭を撃った。被害は予想も出来ない…………この非道を、決して許してはならない」

 

 破損した機体から苦労しながら降りて来たC.C.が気遣わしげに寄り添って来るのを感じながらもルルーシュの口は止まらない。

 

「そ、そうだよ。奴らは自分達が治める土地だって遠慮なく消し飛ばすような奴らなんだ……」

 

 集まった団員達の中から一人が声を上げれば、次々と連鎖するようにブリタニア許すまじという声が続く。

 

「早ければ直ぐにでも戦端が開かれる可能性もある。各自、機体を万全にし、英気を養っておけ」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」

 

 改造された所為で前回とはラダーの位置が変わっている紅蓮から遅れて紅月カレンが下りてきた時、団員達は戦意も高く動き出していた。

 

「カレン、良かったなあ!無事で!」

「ごめんなさい、心配かけて。ねえ、ゼロは?」

 

 特務隊隊長の杉山賢人が部下に指示を出した後、出迎えてくれたがカレンは動き回る団員に紛れて見失ってしまったゼロの行方を尋ねる。

 

「本隊と合流するまでに戦略を練り直すって言ってたから部屋に戻ったんじゃないか」

「ありがとう」

 

 囚われていた時にナナリーに教えてもらった優しい兄としてのルルーシュの仮面と冷静冷徹なゼロの仮面。

 どちらが本当かを確かめたかったが、政庁と共に恐らく死んだだろうナナリーのこともあってルルーシュの様子が心配になったカレンは足早にKMFデッキを出て行こうとした。

 

「カレン」

 

 入り口から入って来たラクシャータ・チャウラーを見て足を止めた。

 

「ラクシャータさん、ゼロを見ませんでした?」

「さっき、そこですれ違ったわよ」

 

 それなら直ぐに追いつけると判断したカレンは、礼を言って入れ違いにKMFデッキから出て行く。

 

「紅蓮のチェックが終わったら、アンタも検査受けなさいよ」

「分かりました!」

 

 去り際に背中にかけられた声に返答をしながら廊下を進んでいき、曲がり角を曲がったところでC.C.に寄り添われたゼロが床に座り込んでいるのを見つけた。

 

「カレンか」

 

 振り返ったC.C.が背後を振り返り、そこにいるのがカレンだと分かって少し安心したようだった。

 

「丁度良いところに来た。こいつを運ぶのを手伝え」

「は? 怪我したんなら医務室に行った方が」

「怪我はしてない。ただ……」

 

 精神的なものであるのだとC.Cが言いたいことを察したカレンは傷ましげに目を伏せた。

 ルルーシュのシスコン振りを何度も見て来たカレンは、政庁と運命を共にしたであろうナナリーがどうなったかを考えれば寧ろ我を忘れることなく撤退し、騎士団に走る動揺を沈めて冷静な指示を出せることの方が異常というべきなのだと分かっている。

 なんとか部屋に戻るまで気を張っていたが、誰も見ていないことに緊張の糸が解けて動けなくなったのだろう。

 

「ゼロの部屋に?」

「他に行ける場所もないだろう」

 

 ルルーシュが仮面を外せる場所がゼロの私室以外にないことに、カレンは一抹の寂しさを覚えながらもC.C.の反対側の肩を担ぎ上げる。

 

「軽いわね」

 

 ゼロの体はとても軽かった。カレンの身体能力が幾ら並外れてずば抜けているとしても、それでもルルーシュの体は魂が抜け落ちてしまったかのように軽い。

 日本や、世界から寄せられる期待という名の課せられた重みとは裏腹に軽いルルーシュの体を抱えてゼロの私室に着いたカレンは決心を固めた。

 

「おい、カレン?」

 

 ソファに座らせればいいのに何故か通り過ぎて寝室へと向かうことにC.C.は疑念を抱くが、今のルルーシュは横にした方が良いとも思ったので付き添う。

 

「仮面、取るわよ」

 

 ルルーシュをダブルベットの端に座らせたカレンはゼロの仮面に手をかけたところで止まる。

 

「どうやって取るの?」

「はぁ、私がやろう」

 

 普通に持てば外れるものか分からなかったカレンが聞くと、C.C.は溜息を漏らしながら仮面を持ってスライドさせて外す。

 

「!?」

 

 そうして外れた仮面の内側のルルーシュの生気の抜けた死人のような顔を見たカレンは息を呑んだ。

 一度固めた決心が揺らぎそうになりながらも、震える手でルルーシュの顔に手を伸ばして。

 

「ルルーシュ」

 

 顔を上げさせて、自分の顔を寄せた。

 

「…………おいっ!?」

 

 塞がれた唇にようやく現状を認識したルルーシュが離れたカレンに何かを言おうとして、肩を押されてベットに倒れ込む。

 

「前にアンタが言ったんじゃない。女だから出来る慰め方を」

 

 パイロットスーツのチャックを外してバッと腕を順に抜いたカレンは自分が暴走していることを自覚しながら、ナナリーが総督になった時にゼロを止めて逃げ出そうとしたルルーシュが慰めるように求めたのを突っぱねて頬を張った。

 あの時は戦う気を完全に無くしたルルーシュが逃げていたからそうした。

 夢を見せた責任を果たせと、今度こそ完璧にゼロを演じきってみせろとカレンは言い、ルルーシュはその役割を果たしている――――ナナリーを失っても。

 ならば、カレンもまたゼロを引き止めた責任を果たさなければならない

 

「C.C.、アンタも手伝いなさいよ!」

 

 まさかの驚きの展開に目を丸くしているC.C.をキッと睨んだカレンは、これからする初めてのことにテンパって混乱し、顔を林檎のように真っ赤にしながら暴走したまま叫んだ。

 

「カレンを止めろ、C.C.!」

「私は魔女だ。正義の味方の言うことなど聞くはずがないだろ」

 

 しっかりとカレンに抑えつけられているルルーシュがもがくが彼我の身体能力の差は大きいので抜け出せない。

 ある意味では変わらない二人に、力を抜いて楽し気に笑ったC.C.は自身もパイロットスーツのチャックを下ろしていく。

 

「お、おい……!?」

「もう、黙りなさい」

「観念しておけ」

 

 状況が理解できないルルーシュの悲鳴は部屋の外には決して漏れることはなかった。

 

 

 




原作との変更点
・実はずっとギアス嚮団に幽閉されていたコーネリア。
・外伝から双貌のオズのマリーベルが嚮団にやってきて、描写はしてませんがピースマークのオルフェウスと戦っている
・ルルーシュの中で他の者の優先度が上がった結果と記憶が消えていないC.C.が傍にいることで、我を見失わずに指示を出せている
・このタイミングでルキアーノとグラウサム・ヴァルキリエ隊、中華連邦でオルフェウスと戦闘後のマリーベルの大グレンダ騎士団が援軍としてやってくる
・スザク、ギアスなしでフレイヤを撃った所為で何度も自殺しようとするが果たせず。
・手段を選ばなくなったスザクは常時ギアス発動状態。
・ルルーシュ、ディートハルトにブリタニアのネガティブキャンペーンを指示。
・傍目には冷静なルルーシュの指示に黒の騎士団の士気向上。
・カレン、ルルーシュがゼロを頑張っているのを見て焚きつけた責任を果たそうとする。
・C.C.、カレンに便乗?



裏切ったのはスザク? カレン? C.C.? それともルルーシュなのか?



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