コードギアス~死亡キャラ生存if√(旧題:シャーリー生存√)~ 作:スターゲイザー
前話の展開に物凄く反響があって驚いています。その影響で本話ではシリアスとそれ以外の差が酷いことに。
損傷の大きい船体を修理する為にトウキョウ租界を離れたアヴァロンのKMFデッキで、四肢の大半を失ったランスロット・コンクエスターの様子を見に来たロイド・アスプルンドはフレイヤ弾頭を放ったランチャーが外されるのを芒洋とした目で見送る。
「結局、分かっていなかったんです、私。どんな被害が起きるかなんて、データ上でしか理解していなかった」
フレイヤの開発者であるニーナ・アインシュタインは自身の気持ちを吐露する。
科学者が陥りやすい考え方と言われればそれまででしかない。許可したシュナイゼルや撃ったスザクに責任転嫁出来ないほどに、フレイヤ弾頭が起こした被害は大きすぎた。
「ニーナ君、君は決めなくちゃいけない」
自身には決して理解できない心境になっているニーナに、それでも先達としてロイドは言わなければならなかった。
「科学を捨てて心を守るか、心を捨てて科学に殉じるか」
被害は天文学的な数字となっているだろう。一人の命さえ人間には背負いきれないのに、それが数百、数千万ともなればニーナがこれから歩む道は必然としてその二択になる。
「そんなこと…………ロイド先生も選んだんですか?」
「僕は元から壊れてるからね。それくらいの自覚はあるんだ」
ロイドは生まれた時から人間として壊れているのかもしれない。科学者としては倫理を無視してでも求める物を追求できても、やはり周りの者とは違うのだと壊れていると自覚していた。
容易には選べない選択にニーナが苦悩する中、一度KMFを離れていた枢木スザクが戻って来た。
「ロイドさん、ランスロットはどうなっていますか?」
充血しているからか、赤く光っているような目のスザクの質問にランスロット・コンクエスターのチェックをしていたセシル・クルーミーが顔を上げた。
「どうって、コアルミナスがあの状態じゃ」
「いえ、ランスロット・アルビオンの方です」
平静状態に見えるスザクがアルビオンを求める理由に察しがついて、目を細めたロイドが「ロールアウト直前」と静かに言った。
「アルビオン?」
自機の修理状態を確かめに来たジノ・ヴァインベルグが歩み寄りながら聞く。
「ああ、枢木スザク専用に開発したナイトメアなんだけど…………今の君には渡したくないね」
長い付き合いなのもあってスザクの変化が良い物ではないと判断したロイドに対し、スザクはずっと目に赤い光を灯しながら表情一つ変えずにニーナを見る。
「ニーナ、大成功だよ。フレイヤ弾頭の威力は絶大だ。結果的に我がブリタニアに勝利を齎すだろう」
「おい、スザク」
ジノはスザクとの付き合い自体はロイドに比べれば短くとも、騎士として明らかにショックを受けているニーナに対して言っていいセリフではないと苦言を呈しようとした。
「ナイトオブセブンとして命令します。ランスロット・アルビオンにフレイヤを載せて下さい」
冷ややか過ぎる眼差しでジノを無視したスザクがロイドとニーナに命令を下す。
「ますます、嫌になったよ」
ただでさえ、戦術兵器であるランスロット・コンクエスターに戦略兵器であるフレイヤを載せるのを嫌がっていたロイドはスザクの命令に顔を顰めて嫌悪も露わにする。
「止めておけよ、スザク。らしくないだろ」
フレイヤを放った影響でスザクが錯乱していると判断したジノは拳を握った。
ギアスが常時発動し続けているスザクはジノが行動を起こそうとしているのを感じながらも揺らがない。もう揺らぐような余裕がスザクにはないのだから。
「どうやら慌ただしいところへ来てしまったようだね」
そこへ頭に包帯を巻いた副官のカノン・マルディーニを伴ったシュナイゼル・エル・ブリタニアが現れた。
「ああ これは……」
「いいよ、そのままで」
セシルが皇族に対して礼をしようとしたところでシュナイゼルが止める。
「シュナイゼル殿下」
厳しい面持ちのスザクがゆっくりとシュナイゼルへと歩み寄る。
「ご報告したいことがあります――――ゼロの正体について」
後一歩のところで足を止めたスザクはいきなり核心を言い放った。
これにはシュナイゼルよりもジノやニーナ、ロイドやセシルの方が驚いている。
「君は、知っているのかい?」
「自分が以前のゼロを捕まえた功績で、ナイトオブラウンズに選出されたことはご存知のはずです」
ピクリと眉を動かしたシュナイゼルの問いに、スザクは感情が消えてなくなったかのように話を続ける。
「皇帝陛下は奴のゼロとしての記憶を奪い、監視を付けたとはいえ元の生活に戻しました」
「…………つまり、今のゼロは記憶を取り戻した同一人物であるということかな」
「はい。どうやったかは分かりませんが監視を欺き、ゼロとして活動しているのでしょう」
いっそ非人間的とすら思えるほどに情緒が欠けたスザクに酷く興味を引かれたシュナイゼルは、仮面ではなく本物の笑みを浮かべながら口を開く。
「そうだとするならば、皇族殺しに加えて超合衆国という強敵を作り上げたゼロを、皇帝陛下は見逃していたことになる」
まるで同族を見つけたかのようにシュナイゼルは高揚を覚えていた。
「それでゼロの正体とは?」
「…………皇帝陛下はゼロの身柄でナイトオブセブンの称号を与えて下さりました。自分が望むのはナイトオブワンの地位です。殿下は自分に何を与えて下さるのですか?」
ゼロの正体を明かす代わりに自分をナイトオブワンにしろと、子供でも分かる要求をするスザクにセシルが顔を青くする。
「枢木卿!? それはあまりにも不敬な発言」
「ナイトオブワンの任命は、皇帝陛下にしか出来ないんだよ。つまり……」
「では 成るとしよう皇帝に。そして枢木卿をナイトオブワンに指名する」
ジノが厳しい顔つきを浮かべてスザクを睨む中、セシルが止めようとし、ロイドも翻意させようとしたがシュナイゼルはあっさりと答えた。
「殿下、その発言は…………本気ですか?」
笑みを深めるシュナイゼルに、ジノの目は必要とあれば制圧すると語っていた。
「超合衆国決議第壱號が発令された後、陛下に通信を行った時に俗事と仰ったよ、黒の騎士団との戦争のことを」
「っ!? しかし、だからといって」
「それだけではない。父上は、危険な研究にのめりこみ度々玉座を離れた。そう、政治を、戦争をゲームとして扱ったんだよ」
シャルルが玉座を度々離れていることは、ブリタニア本国を離れたジノの耳にも届いている。そして危険な研究にのめり込んでいるのも恐らく嘘ではないのだろう。
反逆と取られかねない発言をシュナイゼルがするはずがないとジノは知っていたから。
「この世界に興味を失い、みんなが苦しんでいるのをただ眺めているだけの男に王たる資格はない」
黒の騎士団、超合衆国は最早無視できる相手ではない。にも拘らず、俗事と切り捨てた男に皇帝たる資格はないと断じたシュナイゼルに、カノンはようやく主君が決断したことに喜びを抱きつつも、どこかズレを覚えていた。
「これって クーデター?」
「そんな」
幾ら皇位継承権第二位で、第一位の凡庸なオデュッセウス・ウ・ブリタニアよりも最も皇位に近いと目されていた男といえど、力尽くで皇位を奪おうというならクーデターである。
スザクがナイトオブラウンズに命じられて異動になったとはいえ、元は上司であるシュナイゼルが皇位を簒奪すると宣言したも同然の発言にロイドとセシルは顔を真っ青にする。
「陛下。ラウンズの自分なら、陛下に謁見が叶います。自分に、皇帝陛下暗殺をお命じください」
「スザク!」
暗殺という決定的な言葉に我慢が出来ずに飛び掛かって来たジノを、ギアスの力の付与もあって瞬く間に制圧したスザクにシュナイゼルは笑った。
「いいや、フレイヤがあるんだ。真っ向から玉座を奪いに行こうじゃないか」
「イエス・ユア・マジェスティ」
ジノを気絶させたスザクはシュナイゼルの命令に唯々諾々と従う。
「さて、では教えてもらおうか、ゼロの正体を」
跪いて新たに皇帝となる男に忠誠を示していたスザクが顔を上げる。
「ゼロは殿下も知る者です」
「ほう」
これは裏切りだろうかとスザクは考えた。
しかし、裏切っているのはお互い様だと、赤い光が奔る目を伏せてスザクは考えることを止めた。
「――――――――――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、殿下の弟君です」
既知の名に、場に入れなかったニーナは目を見開いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ルルーシュは見慣れた斑鳩にある自室の見慣れた天井を見上げ続ける。
「おい、ルルーシュ。隣にこんな極上の美女がいるのに何を天井を見ている」
「ちょっと、なんで自分だけアピールしてるのよ、C.C.」
もう少し逃避していたかったルルーシュは左のC.C.、右の紅月カレンから声をかけられては現実を直視せざるをえない。
「なんで、こうなった……」
女の感情を理解できないルルーシュは、それでも現実を受け入れ難くて右腕で目を覆おうと動かそうとした。
すると、腕に抱き付いていたカレンの体が布団から出て来てルルーシュの視界を肌一色に染める。
柔らかそうだと思ったルルーシュは、実際に柔らかかったことをこの手で触って確認したことを思い出して固まった。
「もう動かないでよ…………恥ずかしいじゃない」
「すまん」
謝ってベッド上で直立不動に戻るルルーシュ。その頬はカレンに負けず劣らず真っ赤であった。
「今更、裸程度で恥ずかしがるような仲でもないだろうに」
ヤることをやっといて恥ずかしがる二人を笑ったC.C.はルルーシュの腕に強く抱き付き、裸の胸を押し付けて反応する様を見て楽しんでいた。
「変なことを言うな」
「そうだな。もう坊やとも呼べないことだし」
こっちは大人になったからな、とルルーシュの太腿辺りを膝で痛くない程度に軽く蹴ったC.C.は悪戯気に笑う。
「下品よ」
と言いつつも、ルルーシュを挟んで反対側にいるカレンは布団の動きの感覚からC.C.が何を言いたいかを理解してしまった様子だった。
「俺で遊んでないか?」
「ピロートークというやつだ。それでどんな気分だ? 女二人を手籠めにした感想は」
「どちらかというと俺が手籠めにされたような気がするんだが……」
その主犯であるカレンは自分が仕出かしてしまったことが今更ながらに恥ずかしくなってしまったようで、迫った時よりも顔を真っ赤にしながらルルーシュの肩に顔を伏せる。
普段の凛々しい姿とのギャップに可愛いと思ってしまったルルーシュだった。
「男の夢だろ? こうやって極上の美女と女を侍らせるなんてまたもないぞ」
「だから、その極上の美女って私? アンタ?」
看過しえない問題に顔を上げたカレンの問いにC.C.は楽し気に笑うだけで答えない。
「二人には感謝してる」
おちおち気落ちもさせてくれない二人に精神的に力を抜くルルーシュは感謝を述べた。
「感謝だけか?」
「他にどうしろと言うんだ」
というか、ヤることをやっている間は時間感覚が無かったので今が何時なのかが分からない。騎士団達にはある程度の指示は出していたが、戦略を立て直すと言って部屋に戻った以上は指針だけでも決めておかなければならない。
「ゼロの真贋は中身ではなく、その行動によって測られるんだろ。感謝も言葉だけではなく行動で示せ!」
ルルーシュが思考の渦に沈もうとしたところでC.C.が腹の上に乗ってくる。
「お、おいっ!?」
当然、そんなことをすれば布団が捲れ上がってルルーシュの視界の中心にC.C.の裸身が現れる。
「最初は発案者のカレンに譲ってやったんだ。第二ラウンドは私からに決まっているだろ…………おや、お前もやる気じゃないか」
健康的な十代後半の生理現象に正直に反応してしまったルルーシュは穴があったら入りたい気分である。
「これから私に入れるだろ?」
「心を読むな、魔女め」
「顔に考えが出ているぞ」
ハッと顔を抑えようとする、やはり腕に抱き付いたままのカレンの体も一緒に動き、ムニュリと形を変える何かにルルーシュの膨張率が高くなる。
「性欲の有り余る年頃なんだから我慢は毒だぞ」
「ぬぐぅ……」
旗色が悪くて顔を横に逸らせば、ルルーシュに負けず劣らずに顔を真っ赤にしているカレンの顔があって目が合ってしまった。
「カレンは私の次な」
C.C.に言われたカレンはプシューと耳から蒸気を噴出したかのように気持ちでルルーシュの肩に顔を埋める。
ルルーシュの匂いを嗅いでいたりするのはカレンの秘密である。C.C.が布団を捲り上げた所為でカレンのほぼ全身がルルーシュに見えているのにも気づいていないだろうが。
C.C.にカレンが対抗意識を燃やし、カレンにC.C.が対抗意識を燃やし、どれだけ時間が経ったのか分からなくなった頃。
太陽が見えれば白くなったり二個に見えたりすること間違いなしであろうルルーシュは通信に反応する。
「――――――――――通信だ!」
何か大切な物を失ってしまったような、逆に満たされているような不思議な気持ちだったルルーシュは人の腕を持ったまま眠ってしまった二人を振り解いて通信画面に飛びつこうとする。
「ルルーシュ、仮面」
「…………すまん」
「その格好で出る気か?」
寝ぼけ眼のカレンが投げた仮面を受け取り、C.C.の突っ込みに自身の状態に気づくも通信は鳴り続けている。
「ええい!」
しっかりと仮面を着用してルルーシュは通信に出た。
「どうした、扇?」
『…………いや、こちらがそんなに画面に近づいてどうしたと聞きたいんだが』
重大事項を伝える通信ならば服を着ている時間も惜しい。
そのまま通信に出るしかなかったルルーシュは仮面以外を身に着けていない。一応、寝室は通信には映らない場所にあるのだが、ルルーシュの現在の姿もあってそんな状態を通信に映すわけにはいかず、苦肉の策として画面一杯に仮面が映るようにするしかなかったのだ。
「気にするな。私は気にしない」
『はぁ』
ここは強硬に乗り切るしかないと論理的ではない屁理屈で言い切ると、画面の扇は理解は出来ないようだが納得することにしたらしい。
「で、用件はなんだ? 悪いがまだ戦略は固まっていないぞ」
『そうなのか? もう昼前だからゼロなら出来てると思ったいたんだけど』
「…………俺も人間だ。休む時間も必要になる。すまないが、少し休ませてもらっていた」
本当に休んでいたかは主観に寄るところが大きいが、夜も明けて半日経っていると聞いて眠い理由が分かったルルーシュは寝室を向きそうになったのを必死に自制する。
「用件がないのなら切るぞ」
下世話な意味でなく一晩中運動していたような物なので、改めて自覚すると精神的に肉体的にも疲れを自覚してしまったルルーシュは、本当にひとまず休もうと決めた。
『い、いや、すまない。用件はあるんだ』
扇はカレンの兄の親友と聞いているので後ろめたい気持ちもあり、早く通信を切りたいルルーシュは「なんだ?」と先を促した。
『驚かないで聞いてくれ、ゼロ』
「いいから早く言え。シュナイゼルが皇位簒奪を目論んだぐらいじゃないと俺は驚かんぞ」
『どうして知ってるんだ!?』
早く通信を切りたいルルーシュがスイッチに手を伸ばしたところでピタリと止まる。
『シュナイゼルがクーデターを起こすと宣言したんだ!』
「はぁっ?!」
ルルーシュが激動の半日を過ごしている間に世界の動きも加速していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クーデターを起こし、皇位を簒奪すると決めたシュナイゼルの行動は迅速だった。
「フレイヤの映像が流れている? そのまま流しておいて構わないよ。その方が良い宣伝になるだろう」
ディートハルトが主に行っているブリタニアに対するネガティブキャンペーンを寧ろ助かると笑みを浮かべながら言う。
「アヴァロンの修理に時間がかかるって? じゃあ、他の船で行こうか」
損傷著しい旗艦のアヴァロンが使えないと分かれば何の躊躇もなく他の艦に乗り換えることを決める。
「ランスロット・アルビオンの最終調整はアヴァロンの施設が無いと難しいから行かないって? 施設をこっちに動かせば大丈夫だね。人は出させるし、君達なら出来ると信じているよ」
クーデターに渋るロイドとセシルはそんなに簡単に施設を動かせないと言ってもシュナイゼルの笑みを崩せない。
否と言わせない雰囲気のシュナイゼルと近くに銃を構えた兵を用意していた副官カノンを前にして、ロイドとセシルは拒否権がないのだと思い知らされた。
「ジノ? あの様子では仲間にはなってくれないだろうし、殺すのは流石に不憫だ。どこかの基地の牢にでも入れておこうか。これからすることの邪魔さえしなければ、それでいい。その後、敵となるか味方になるかは彼次第だ」
ナイトオブラウンズのジノですら今のシュナイゼルには重要ではないのだろう。
ブリタニアが誇る絶対の剣に大した感慨も抱くことなく、スザクに倒された後は薬によって眠らされたまま別の基地へと移送されて行った。
「ニーナは一緒に行かないって? 彼女はフレイヤを開発してくれた功労者だ。十分な褒賞を渡さないとね」
エリア11を治めることに意味を失くしたシュナイゼルは、そうして呆気なくブリタニア本国を目指した。
『第九十八代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアは皇帝の器に非ず。よって、次の皇帝にはシュナイゼル・エル・ブリタニアが成る。皇位継承の準備をせよ』
向かっている途中でシュナイゼルはブリタニアに向け、そして世界中にも同様の内容の通信を送った。
「殿下、帝都ペンドラゴンよりナイトオブラウンズが! ナイオトブワンを先頭にこちらに向かってきます!!」
事態を呑み込める時間を与える為に一日をかけ、ゆっくりとブリタニアへと向かっていたログレス級浮遊航空艦でその報告を受けたシュナイゼルは笑みを浮かべていた。
「ラウンズの機体は確認出来ただけでも四機はいます。また、その直属部隊までが」
「ビスマルク、ドロテア、モニカ、ルキアーノの四人か。どうやらノネットはエリア11に残ったようだね」
艦長席を玉座のように座るシュナイゼルの目が機体照合の結果を見て、あまりに予想通り過ぎて面白みにかけているようだった。
「マリーベル皇女殿下とグリンダ騎士団と共に行動しているのでしょう」
「心情としてはビスマルクに付きたいだろうが、テロを憎んでいるマリーベルがゼロを放ってエリア11を離れられるはずがない。グリンダ騎士団を指揮下に入れているノネットとしては忸怩たるものがあるだろうね」
カノンの言葉に感情に振り回される者達を今は理解できるシュナイゼルは喜劇を眺めているように笑みを浮かべる。
「対してこちらのラウンズは枢木卿、ただ一人。数の上では圧倒的に不利です」
ナイトオブラウンズの数の上では四対一。シュナイゼル旗下の部隊が幾らかはいるが、先のトウキョウ決戦で大半が落ち、残った機体もどこかしら損傷していて修理はしているがまともに戦える機体は数える程度だろう。
反対にドロテアとモニカの隊は万全で、カゴシマ租界で星刻らと戦ったビスマルクとルキアーノの隊も数は減っているがシュナイゼルらとは比べ物にならない。
「良かったのですか、アールストレイム卿を引き止めなくて」
「コーネリアが齎してくれた資料から予測すれば、彼女が望む物を提示するのは簡単だ。だが、必ず必要というわけでもない」
シュナイゼルは仲間を募ることに積極的ではなかった。
生身では同じナイトオブラウンズを圧倒したスザクと、ランスロット・アルビオンという第九世代のナイトメアフレームがある以上、直ぐに必要ではなかったからジノに対する扱いを見たアーニャが同行を拒否しようとも放っておいた。
「我らはシャルル陛下に忠誠を誓った存在! 逆賊シュナイゼルを討つ!」
ナイトオブラウンズでシャルルの計画を知るビスマルクがギャラハッドのコクピットで吠える。
「ん、迎撃部隊? しかしたった1機で……」
「ビスマルク卿、自分が相手をしよう」
「この声、そしてランスロットの意匠…………枢木スザクか!」
ギャラハッドにログレス級浮遊航空艦から発進したランスロット・アルビオンから通信が入り、ビスマルクはナイトオブラウンズがクーデターに参加している姿を見て過去を思い出していた。
マリアンヌがまだナイトオブラウンズだった血の紋章事件を。
「ナイトオブラウンズに取り立てて下さった皇帝陛下を裏切るか。やはり貴様は主君を裏切り続ける男だったな!」
「かもしれません」
シュナイゼルの片棒を担ぎ、その計画を聞いても心が揺らぐことの無かった今のスザクはユーフェミアにも顔向けできないことをしようとしている。
父を裏切り、祖国を裏切り、ユーフェミアを裏切り、ルルーシュを裏切り、ナナリーを裏切り、そして全てを裏切る。
これが自分に与えられた
「降伏して下さい、ビスマルク卿。自分が乗るランスロット・アルビオンは第九世代ナイトメア。第八世代のギャラハッドに勝ち目はありません」
トウキョウ決戦で紅蓮聖天八極式の圧倒的なマシンポテンシャルの差に敗れ去ったスザクだからこそ、今のランスロット・アルビオンと自分の前では第八世代のギャラハッドに乗る帝国最強を前にしても全く脅威を感じなかった。
「ナイトオブワンとは帝国最強の証! 貴様如きに敗れる道理はない! 皆の者、決して手を出すでないぞ!」
一対一の尋常の勝負を挑んだギャラハッドに遅れて動き出したランスロット・アルビオンのエナジーウィングが輝く。
「なっ!?」
ビスマルクは微塵も油断していなかった。
しかし、気づいた時にはランスロット・アルビオンとすれ違っており、シャルルが直々に命名した剛剣エクスカリバーの刀身が折られていた。
「枢木スザク、言うだけの力はあることは認めよう。しかし」
ランスロット・アルビオンの機体性能を目の当たりにしたビスマルクは目の封印を外してギアスを発動する。
「我がギアスは未来を読むギアス! この力をマリアンヌ様以外に使うことになろうとはなっ!?」
しかし、発動させたギアスでも真正面から向かって来たランスロット・アルビオンの軌道を捉えることは叶わず、メーザーバイブレーションソードによって残ったエクスカリバーの刀身ごとギャラハッドを真っ二つにされた。
「うっ、マリアンヌ……様ぁっ!!」
ギャラハッドの爆発と共に一部も残さずに消え去ったナイトオブワンに興味を失ったスザクは、ランスロット・アルビオンを操作してフレイヤが搭載されたランチャーを構えさせる。
「撃ちますか、シュナイゼル殿下」
「ああ、撃ってくれ」
通信先である主君のシュナイゼルに最後の許可を貰い、ビスマルクの圧倒的なまでの敗北に動揺している他のナイトオブラウンズやブリタニアの軍から離れた直上の空に狙いを定める。
トウキョウ決戦でランスロットからフレイヤが放たれたのは黒の騎士団の宣伝によって、ナイトオブラウンズやブリタニア軍の知るところとなっている。
「――――フレイヤ、発射」
少しでも被害から逃れようと高度を下げるナイトメアを無感動に見ながら、自身の命運を決めた女神の名を冠する重戦術級弾頭を何の躊躇いも無く撃った。
放たれたフレイヤ弾頭はペンドラゴン上空の雲へと飛んで行き、その姿を隠したところで太陽が突如として現れたかのような閃光が帝都を照らし出した。
光自体はそう長い時間、発し続けられたわけではない。
「素晴らしい。リミッターを外したフレイヤならば、帝都ペンドラゴンすらも跡形も無く消し飛ばすことが出来るだろう」
ペンドラゴンにいる者達は帝都を覆い隠してあまりある広さの雲を吹き飛ばしたのを見上げればフレイヤの恐ろしさを知るだろう。
「ブリタニアに通告を。十分以内に私の即位を認めないならば、次はペンドラゴンにフレイヤを撃ち込むと」
通告という名の脅しを受けたブリタニア側は、皇帝シャルルの不在も相まってシュナイゼルの前に膝をつくことしか出来なかった。
シュナイゼルがブリタニアを我が物とした、その数時間後。
政庁を失ってブリタニア本国すらもシュナイゼルの手に落ちて混乱するエリア11は、電撃的に行動を開始したゼロ率いる黒の騎士団に一部の僅かな抵抗しか出来ずに日本は解放された。
そして数日後、第九十九代皇帝となったシュナイゼルは即位式にて全世界に向けてテレビ放送を行った。
『私は前皇帝シャルルと違い、世界征服に興味はないし、エリア政策も必要とは思っていない』
間違いなく世界を動かす一人となったシュナイゼルは穏やかに笑って言った。
『その手始めとして過去の
テレビ放送を見ている者は、これでようやく解放される、戦争が終わると喜んだ。
『今まで征服して来た側のブリタニアの皇帝である私の言うことなど信じられぬという者も多いと思う。それほどに私達の間には大きな溝がある』
シュナイゼルを信用など出来るものかと叫ぶ者がいる。
そんな者達を慈しむような目で、手の平で踊る小さき者達を無感情な目で見つめるシュナイゼルの本当を看破しているのはたった一人だけ。
『私の誠意を示す意味を込めて、会談の場所は黒の騎士団が解放した嘗てのエリア11である日本のアッシュフォード学園を指定しよう』
その学園の名前を出された時、日本の臨時政府の政庁となった建物でテレビを見ていたルルーシュは目を見開いた。
『会談にはブリタニア側からは私一人で臨む。超合衆国にも黒の騎士団CEOであるゼロに出てもらいたい』
世界は否応も無く、次のステージへと舞台を進める。
原作との変更点
・アヴァロンが損傷し過ぎてトウキョウ租界から離れる。
・シュナイゼルにゼロの正体を教えるのがスザク。
・ジノ、ギアスが常時発動状態のスザクに制圧される。
・シュナイゼル、皇位簒奪を真っ向から行おうとする。
・ルルーシュとC.C.・カレンとの甘い一時。
・まさかの裸仮面を披露。
・シュナイゼルが停戦交渉に現れない。というか停戦交渉自体がない。
・シュナイゼルのクーデター宣言。
・ディートハルトのネガティブキャンペーン、それを歓迎するシュナイゼル。
・ジノ、仲間にならないならいらないとポイされる。
・アーニャ、ジノの扱いに不満を示したら同じくポイされる。
・シュナイゼルがブリタニアに攻撃を仕掛ける。
・双貌のオズのオルドリンとマリーベルが和解、でもテロは憎い。その所為でノネットさんはお留守番。
・ルキアーノとその部隊が生きているので帝都防衛戦に参加。
・ビスマルク、未来を読むギアスを発動しても常時ギアス発動状態のスザクに瞬殺される。
・シュナイゼル、スザクにペンドラゴン上空にフレイヤを撃たせて、自身の皇位継承を認めさせる。
・エリア11、シュナイゼルのクーデターの煽りを食らって黒の騎士団に制圧されて日本が解放される。
・第九十九代皇帝となったシュナイゼルがテレビ放送を行い、アッシュフォード学園でゼロとの会談を求める。
ラスボスはシュナイゼルなのか? シャルルはどこで何してるのか?
明確に描写はしていませんが、
・エリア11出立前のシュナイゼルにギリギリで間に合ったコーネリアだったが、ギアスの情報を渡しても既にスザクから聞いていたし、皇帝になればギアス嚮団を手に入れられるから特に興味を示さなかった。
・ユーフェミアの虐殺皇女の汚名を濯ぎたいコーネリアはクーデターを起こすというシュナイゼルに協力を申し入れたが、計画を聞いて逆らって銃撃を受ける。
そのまま退場してしまいました。