ロキ·ファミリアに直死の魔眼持ちが所属しているのは間違っているだろうか。 作:cocoon
オリキャラ出てきます。
目を覚ますと、晴れ渡った青空が広がっていた。
何処までも飛んで行けるのではないか、と錯覚してしまいそうな程に綺麗な空。
その空の下で私は仰向けになっていた。
地面に手をついて上半身を起こす。
周囲を見回した私は目の前の光景に目を奪われてしまった。
地面だと思っていたものはまるで鏡のように青空を反射していた。
視界一面に広がる青。
その美しさに私は我を忘れて見惚れていた。
故に、背後に迫った存在に気付くこともなかった。
[やあ、君が両儀式ちゃんだね?]
[っーー]
突然、背後から男の声で話し掛けられる。
驚いた私は反射的に袂に忍ばせていたナイフを振り向き様に男の首筋に突きつけると、そこには白い男が立っていた。
癖のある長髪は白。
傷一つ見当たらない滑らかな肌も白。
女のように細い身体を覆う時代錯誤な衣装も白。
唯一、整った顔に存在する両眼だけが紅玉を練り込んだかのように紅い。
その男は刃物を突きつけられたにも関わらず、慈愛に満ちた微笑みを私に向けた。
この男は何?
気配がまるで感じられなかった。
[やれやれ、初対面の相手に刃物を突きつけるなんて無作法だと思わないのかい?]
[無作法?
人をこんな所に連れてきて、背後から、しかも名乗りもせずに話し掛けるのはどうなのでしょう?
無作法というよりは悪趣味です。]
[ふむ、それは確かに正論だが、何故僕が君を此処に連れてきた、と思うんだい?]
[勘です。]
[君も大概失礼だよね···]
目の前の男は呆れた様に溜め息をついた。
無性に腹が立つ。
[このナイフはいつになったら下ろしてもらえるのかな?]
[それはあなた次第です。]
[横暴極まるとはこのことか···]
男はやれやれと肩をすくめてみせる。
言動がいちいち勘に障る。
気にくわない。
[で、名前、聞かないの?]
[どうせ聞かれても答えないでしょう?
それに私はあなたに興味なんてありませんから。]
[全く、悲しいことを言ってくれるね。
ならばまずは君の勘違いを正そう。
僕は君を此処に連れ込んだ覚えはないよ。
むしろ君が此処に来たんだ。]
[私だってこんな所に来たいなんて思った覚えはありません。]
[そうだね。
君は望んで此処に来た訳ではないだろう。
それに此処は来ようと思って来れる場所ではないからね。]
[何が言いたいんですか。]
[此処は生と死の狭間だよ。
僕は差し詰め其処の管理人といったところかな。
つまり君は現世で死にかけているんだよ。
此処に来る以前の記憶はあるかい?]
思いだそうとして
つきんと頭が痛んだ。
[無くなっているようだね。
でも安心していい。
それは正しいことだ。
死に近づくということは失っていくことと同じだからね。
人間の中で最も揺らぎやすい記憶から失われていくのは当然のことなんだよ。
常識とかと違って物事を見極める定規でもないからね。]
[···今まで有ったものが無いんですよ。
安心していいわけがないじゃない。]
[でも今僕に言われるまで君は有ったことすら忘れていただろう?
存在すらも忘れていたならそれは初めから無かったことと同じじゃないか。]
痛いところを突いてくる。
そうだ。私は今まで記憶が有ったということを忘れていた。
思いだそうともしなかった。
まるで底抜けに深い空に吸い込まれてしまったかのような忘却だ。
私は男に突きつけていたナイフを下ろした。
[記憶を取り戻す為にはどうすればいいんですか。]
[簡単なことだよ。
君がいた世界に還ればいい。
そうすれば失った記憶も戻ってくるさ。]
[具体的には。]
[ん~。
さっきも言った通り僕は此処の管理人だからね、死者の蘇生は無理だけど、君はただ死にかけているだけだから送り返すことくらいなら出来る。]
[ならさっさとそうして下さい。]
[それが人にものを頼む態度なのか···まあ、イイケド。
じゃあ取り引きといこうじゃないか。
僕はこれから君にある依頼を頼む、その成功報酬として僕は君を元いた世界に送り返す。
どうだい?]
怪しい。
胡散臭い。
殺してやりたい程憎たらしい人。
けれど私は記憶を取り戻したい。
つまり、実に腹立たしいことだが、この男の依頼を請ける他に道はないのだ。
[分かりました、その依頼、受けましょう。]
しぶしぶ返事をすると男はニヤリと笑って
[君にはとある世界に移動して貰う。
そこで発生する特異点の調査及び解決を頼みたい。]
[回りくどい人ですね、もっと情報が欲しいのですけれど。]
[うーん、こればっかりは実際に行って見た方が早い。
というわけでポチっとな。]
男は隠し持っていた何かを押した。
途端、私が立っていた場所に穴が開く。
重力に逆らえずに私は宙に放り出された。
空が離れていく度に意識が薄れていく。
男に対する憤激のお蔭で落下の恐怖を味わうことはなかった。
私は意識が無くなる直前まで、彼に対する罵詈雑言を吐き続けた。
[これでよしっと。]
無事、一仕事を終えた男は安堵の溜め息をついた。
久し振りの客人だったのだしもう少しお喋りをしたかったのだけれど、
[彼女はせっかちだし、何しろ世間話なんて柄じゃないからね。]
少し無理矢理だったけれど彼女ならば問題無いだろう。
揉め事の類には鼻が利きそうだし何しろ強い。
唯一の心配事といえばあの協調性の無さなんだけど···
まあ、なんとかなるだろう。
そう楽観的に考えて男は目を閉じ、彼女の行く末に想いを馳せた。
管理人と名乗る男は一応神様ではありません。
人間よりも神様に近い上位存在、というイメージです。
色々細かい設定は考えたのですが、本編とはあまり関係がないので割愛します。
至らない点がありましたら、優しく指摘してくれれば嬉しいです。
もちろん、感想も嬉しいです。