ロキ·ファミリアに直死の魔眼持ちが所属しているのは間違っているだろうか。 作:cocoon
朝の早い時間帯。
朝日が眩しく射し込んでくる本拠の中庭でアイズは一人、日課の鍛練に励んでいた。
数本の庭木と僅かな芝生がある空間の中、静寂の中ヒュンヒュンと剣を振るう音だけが響き渡っていた。
休憩をしようと愛剣を振るう腕を休め、視線を上げた先の木の側に投げ出された人の足が見えた。
私以外にこんな朝早くからあんな所で何をしているのだろうか。
そう思ったアイズは声をかけようとその木に近づいていく。
木の側まで来るとアイズはいつもの無表情に驚きの色を滲ませた。
そこにいたのはアイズと同じ位の歳の少女だった。
眠っているのか瞳を閉じたまま、木に身体を預けて穏やかな寝息をたてている。
艶やかな烏の濡れ羽色のような黒髪は大雑把に肩口で切り揃えられている。
華奢な細い身体を覆う蒼い衣服は極東地域の伝統的な衣装である着物と呼ばれるものでその上に赤い革製のブルゾンを着用し、着物の裾から覗く足は編み上げブーツを履いている。
そんな奇妙な出で立ちの女の子がスヤスヤと赤子のような無垢さで寝ていた。
アイズは少女の和洋折衷なのかそうでないのか分からない服装に驚いた、という訳ではなかった。
少女がアイズの知らない人間である、つまりロキ·ファミリアの人間でないことがアイズを驚かせたのだ。
此処はロキ·ファミリアの本拠だ。
外部の人間が本拠に入るには許可が必要であり、許可なく立ち入ると不法侵入と見なされ、団員による強制排除の対象となる。
ロキ·ファミリアはオラリオ内最大派閥であり、そんな彼等には敵も多く存在する。
その代表が闇派閥だ。
都市の秩序を乱す邪神の使徒達。
彼等が夜襲や奇襲を仕掛けて来ないよう本拠の周囲には常に見張りを置き、本拠は最早猫の子一匹通さない要塞と化している。
そんな監視の網を潜ってどうやって本拠に入ったのか。
そして何故こんな所で寝ているのか。
[どうしよう···]
アイズが頭を抱えた時、
[おい、アイズ。
お前そこでなにやってんだ?]
[ベートさん··]
やって来たのはアイズと同じ、ロキ·ファミリア所属の第一級冒険者。
狼人の青年ベート·ローガだった。
歩み寄って来た彼はアイズの足元の少女を見ると眉間に眉を寄せた。
[何者だ、こいつ。]
[えっと、私にも分からなくて···]
[ちっ、てことは侵入者か。]
ベートは面倒臭そうに舌打ちをし、アイズにちょっと待ってろと言い残して去っていった。
そうしてまたもや謎の少女と二人きりになってしまったアイズはただ少女の寝顔を見つめることしかできなかった。
[この子が例の侵入者かい?]
ベッドに横たわる少女を見ながらそうアイズに向かって尋ねるのは幼い少年···ではなく小人族の青年だ。
その幼い外見とは裏腹に誰よりも戦局を見通し、皆を勝利へと導く、ロキ·ファミリアを束ねる団長のフィン·ディムナだ。
[うん···]
アイズが頷く。
[それにしても見張りは一体何をしていたのだ。]
額に手を当て頭を痛める素振りをして、そう苦言を呈したのは美しいエルフ、リヴェリア·リヨス·アールヴだ。
今この部屋にいるのは第一発見者のアイズと団長のフィン、そして少女の診察を行う為にフィンに呼び出されたリヴェリアの三人のみだ。
[そもそもこういうことは私より治療師のほうが適任ではないのか。]
[まあまあ、万が一この子が目を覚まして暴れた時の保険さ。
何しろ袂にナイフを忍ばせていた危険人物だ。
リーネ達じゃ荷が重いと思ってね。
この子の調子はどうだい?]
[特に問題はない。
呼吸も脈も正常。
外傷も無し。
精神疲弊した訳でもなさそうだ。]
[ふむ、一体この子は何が目的で此処に侵入したんだ?
まさかナイフを持っておきながら一眠りしに来ただけ、ということはないだろう?]
フィンはそこでアイズに向き直ると
[アイズ、君がこの子を見付けた時にこの娘の何か痕跡はなかったかい?]
と尋ねた。
アイズは首を横に振り
[何もなかった。後で周りを見てみたんだけどこの娘の足跡すらなかったよ。]
と答えた。
地面は朝露で適度に湿り、踏み固められた場所ではなかった。
少女が歩けば靴の跡が残るはずである。
それなのに足跡は見付からなかった。
ならば少女は突然本拠の中庭に現れたというのか。
三人が頭を抱えていると
[·······]
今まで眠っていた少女がうっすらと目を開いた。
好きなベートさんがほんの少しですが出せました!
やった!
レフィーヤも早く出したい!