アハーンジュルジュルレロレロレーン   作:宇宮 祐樹

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なんかあ
モンスターハンターワールドとか
オリジナルのやつ書いてたら
更新遅れたんですよね


グリッドレイちゃん……かわいいね……お、おじさん、サラトガちゃんの写真一杯持ってるんだ……一緒にあ、遊んでくれたら……写真いっぱいあげるよ……だ、だから……おじさんと一緒に、い、いいことしようね……

 

 どぼーん、と、遠くで水飛沫が上がる。

 

「サラトガちゃん! サラトガちゃん、こっち見て! 見て! 手を振って! ちょっとサラトガちゃん! サラトガちゃん!? おーい!! サラトガちゃーーん!? ぴーす! ぴーーす!! ウインクしてーッ! おーーーい!!」

「うるっさ」

 

 愛用のカメラを覗き込みながら叫ぶグリッドレイに、たまらず指揮官が言葉を漏らした。

 けれど当の本人は気にする素振りも見せず、堤防に座り込んだまま、水面に触れそうな足をぷらぷらと振っている。そんな彼女を横目に見つつ、隣で同じように座っている指揮官は、一つ重たい息を吐いた。

 

「うーん、やっぱりここからじゃあんまり映らないよ。指揮官、もっと近くまで行ってもいい?」

「演習の邪魔になるだろ。ここで我慢してろ」

「むぅー、けちんぼ」

 

 ぷい、と口を尖らせるグリッドレイが、再びカメラを覗き込む。そのレンズに映っているのは、艦隊の日課である他の鎮守府との演習であった。もっとも彼女が見たいのは、戦術的なものではなく、サラトガをはじめとした彼女らなのだろうが。

 愛用のカメラを覗き込みながら、ぱしゃりと一つシャッターを切る。彼女なりにいい画が取れたのであろう、レンズから離れた目は満足気に細められていた。

 

「どうだ?」

「うん、いい感じだよ。やっぱりサラトガちゃんは可愛いね」

 

 指揮官の問いかけに、グリッドレイは笑って答えた。

 

 グリッドレイというのは自分に正直な艦であった。

 いつものようにサラトガの追っかけをしているかと思えば、ふとした時にサラトガとはまた別の艦へカメラを向けたり、たまにただの風景写真を撮る事も有る。

 ただの写真好き、と言ってしまえばそれまでなのだろう。けれど、自分の好きなものに正直になって、その通りに行動できることは、指揮官にとってはとても難しいことのようにも思えた。

 

「ねーねー、指揮官はさ、あの中だとどの子が一番かわいいと思う?」

「……あー」

 

 ふと、グリッドレイはそんな疑問を口にする。唐突にかけられた問いかけに、指揮官は腕を組んで考え込んだ。

 

「………………そう、だな……」

「あ、迷うんだ」

「上司と部下という関係がある」

 

 真剣になって答える指揮官に、グリッドレイが頭を抱える。

 

「指揮官、そう言う時だけ妙にカタいよね」

「逆に俺がいろんな奴に手を出してたらどう思う?」

「……ごめん」

「分かってくれればいいんだ。けれど、どいつもこいつも妙に見てくれがいいのは分かる。だから誰がいい、と言われると少し迷うな」

 

 その言葉は半ば本心からのものらしく、指揮官は腕を組みつづけてうんうんと唸っていた。グリッドレイからすればこの質問は軽いものでもあったのだが、そう言う意味でも指揮官はどこか固い人間であった。

 

「お前は」

「サラトガちゃん」

 

 愚問である。

 

「というか、そんなに悩む事なんだね。この職場そういうの考えたことないの?」

「あるにはあるが……何というかな」

「知られたくない?」

「そう、だな。特にお前には」

「む、なにそれ。こう見えても私、口は堅いんだからねっ」

「そう言う意味とは少し違うのだろうな」

 

 指揮官の曖昧な返しに、グリッドレイは首を傾げた。

 

「うーん、よく分かんない……」

「分からなくていいんだ」

「そう言われると気になっちゃうもん。私だって女の子なんだし」

 

 そうして考える素振りを見せた後、グリッドレイは何かを思いついたらしく、首にかけたカメラを弄って指揮官へ語り掛けた。

 

「ねえ指揮官」

「何だ?」

「言うの嫌だったら、カメラ貸してあげるよ。これで撮ってみれば、誰か分かんないでしょ?」

 

 果たしてそれに意味があるのだろうか、という指揮官の疑問を無視して、グリッドレイは手に持ったカメラを指揮官へ押し付けるように渡した。

 

「しかしなあ……難しいぞ?」

「大丈夫だよ。私、サラトガちゃん以外にも撮ってるし。バレないバレない!」

「そういう意味ではないけれどな……」

「とにかく、私は見てないから。一思いにぱしゃっ、って行っちゃって!」

 

 それだけ残して、グリッドレイが遠くに見える演習風景に目を馳せる。

 旗艦はサラトガ。その両脇に控えるようにしてレナウンとイラストリアスが主力艦隊を努めており、前衛には綾波に続いてノーフォークとプリンツ・オイゲン。

 この六人の艦の内、果たして指揮官は誰を選ぶであろうか。イラストリアスやレナウンは立ち振る舞いからして可憐であるし、プリンツはそれとはまた違った蠱惑的な雰囲気を感じさせる。対してノーフォークや綾波は庇護欲のようなものが掻き立てられるし、サラトガはもちろん可愛い。

 うんうんと唸っても、グリッドレイがはっきりとした答えに辿り着く事は無く。

 

 やがて、長い時間を置いて、ぱしゃりとシャッターを切る音がした。

 

「……うむ」

「どう? 指揮官。綺麗に撮れた?」

「ああ。とても可愛いと思う」

「そっか、それなら良かったね!」

 

 指揮官の手からカメラを受け取って、グリッドレイがにこりと笑う。

 

「それじゃあ指揮官、私は現像してくるから!」

「あっ、待て」

「待たないもーん、じゃあねー!」

 

 ぴょん、と飛び跳ねるように立ちあがって、グリッドレイがとたとたと駆けていく。突拍子もない彼女の行動に指揮官は呆れたように息を吐いたが、上機嫌になって笑っている彼女を見ると、どうも怒る気にはなれなかった。

 

「……まあ、いいか」

 

 そう呟く瞳は海の上ではなく、去っていく彼女の後ろ姿を映していた。

 

 

「上がった上がった~」

 

 即席の暗幕を翻しながら、グリッドレイが疲れたように声を上げる。

 

「……グリッドレイ、倉庫に暗室作るのやめるにゃ」

「だって、寮でやると怒られるもん」

「理由になってないにゃ……」

 

 手に持ったいくつかの写真をひらひらと振りながら、グリッドレイは肩をすくめた。明石もそんな彼女に呆れたような視線を向けていたが、それは次第に彼女の右手にあるものへと引かれていった。

 

「それ、今日の午前の演習のやつにゃ?」

「そうだよ。それでね、最後の一枚に指揮官のイチオシの子がいるんだよ」

「イチオシ、にゃ?」

「そう! 気になるでしょ? 私も現像するまで見ずに、仕上げる時も目をつむってやったの。この中から当ててみるの、面白そうじゃない?」

「……イイにゃ。指揮官の弱みを握ってやるにゃ」

 

 目的は別であるが、行き先は同じである。明石とグリッドレイは二人で倉庫の隅に座り込みながら、手の内の写真を一枚一枚吟味していた。

 

「ほら見て、このサラトガちゃんかわいくない!? この流し目! すき!」

「サラトガが多いにゃ」

「だって可愛いんだもん……あ、これはイラストリアスさんだね」

「イラストリアスは綺麗だにゃ~、お姫様ってカンジがするにゃ」

「だよねー。可愛いっていうより、綺麗だよね」

「あ、レナウンもいいにゃ。カッコイイにゃ」

「あの人は純情そうだよねー。何というか、美少女、って雰囲気がする」

「あ、これはノーフォークだにゃ? 綾波も一緒に映ってるにゃ」

「この二人、何となく気が合いそうじゃない? 何というか、妹ってカンジがする」

「綾波はともかくノーフォークはどうなんだにゃ……」

「あ、プリンツさんだ。この人すごい綺麗だよね」

「オトナの雰囲気がするにゃ。指揮官もこれにはイチコロだにゃ」

「だよね。私もプリンツさんが一番だと思うな」

 

 と、会話を続けることしばらく。

 とうとう最後の一枚に辿り着き、グリッドレイと明石が無意識で息をのむ。

 

「……プリンツさんかなー、私は」

「いや、明石は裏を読んでノーフォークだにゃ」

「よーし、じゃあ行くよ? せーの、」

 

 ぽん、と意を決して、グリッドレイが最後の一枚をめくる。 

 そして、そこに映っていたのは。

 

 

 物憂げに海を眺めている、グリッドレイの姿であった。

 

 

「………………へっ?」

「にゃー…………」

 

 僅かな沈黙を置いて、二人が顔を見合わせる。そしてもう一度写真へ目を落とすが、やはりそこに映っているのはグリッドレイ本人の姿であった。

 顔が赤くなるのが分かる。あわあわと慌てたようなそぶりを見せるグリッドレイに、明石はじとっとした視線を向けた。

 

「……ノロケならヨソでやってくるにゃ」

「ち、違うよぉ! ま、まま、まさかそんな……」

 

 言葉にできなくなって、グリッドレイがうー、と顔を隠す。けれど指の間から見える写真には、やっぱりグリッドレイが克明に映っているのであった。

 疑問が彼女の頭を埋め尽くす。理解があまり追い付かず、指揮官の顔を思い出すのにも、今のグリッドレイにはかなりの時間を要した。

 

「だ、だって指揮官、全然私のこと――」

 

『指揮官、綺麗に撮れた?』

『ああ、とても可愛く映っている』

 

「あーーー! やだやだ、うわーーーん!」

「忙しないやつにゃ……」

 

 真っ赤になって騒ぎ立てるグリッドレイに、明石がため息混じりに呟く。

 

「ま、ガンバレにゃ」

「待って明石ちゃん! 行かないで! こういう時どうすればいいの!?」

「一気に押し倒すか誘惑して押し倒されればいいにゃ」

「そ、それってどういう!? あ、待って! 行かないで! 明石ちゃーーーん!!」

 

 倉庫に甲高い叫び声が響き、明石が再びうるさそうに嘆息を一つ。

 彼女が静かになるのには、長い時間がかかるようであった。

 

 

 

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