次の朝、学校に行く直前にイタチに呼び止められた。
「そういえば、学校にはほかの魔術師はいるのか?」
「いや、俺が知ってるのは士郎だけだ。
けど、他にもいるかもしれない。」
「士郎と言うと、昨日の赤毛の青年か?
彼からはサーヴァントの気配を感じなかったが・・・」
「っていうことは士郎はマスターじゃないのか・・・
まあ、あんなのに好き好んで参加するような奴じゃないけど。」
「けれど、他にもいるかもしれないなら用心したほうがいい。」
「うん、わかってる。
それじゃあ、そろそろ行こう。」
そういって家を出る。
イタチは霊体化してついてきている。
通りを歩いていると、たくさんの学生が談笑している。
彼らはこの街で戦争が起こるとは欠片も思ってないだろう。
このまま何も起こらなければいいのに、と思っていると、
(止まれマスター)
イタチに校門前で止められた。
(どうしたの?
サーヴァントでもいた?)
(いや、しかし学校内に敵がいることは間違いないだろう。
結界がドーム状に張られている。)
(なんだって?
どうしてわかったの?)
(俺の眼はチャクラを視る眼だ。
屋上から校庭までびっしりと覆われているのが見える。)
(チャクラって?)
(ああ、すまない。
この世界の魔力のようなものだと思ってくれ。
まだ起動はしてないようだが・・・)
(だったらすぐに破壊しないと。
一般人を巻き込むわけにはいかない。)
(わかっている、だが焦るな。
学校に誰もいなくなってからでいい。
まだ発動は出来なさそうだしな。)
まだ発動できないという言葉に、少し安心した。
そのまま校門をくぐると、確かに違和感を感じる。
他の人は誰一人気づいていないが。
教室に入ると、大勢のクラスメイト(主に男子)に囲まれた。
突然のことに理由を説明してもらうと、自分の無断欠席に関係しているらしい。
どうやら、昨日遠坂も学校を無断欠席したようだ。
遠坂は無断欠席するような奴じゃないから、自分が何か関係しているんじゃないかと
疑われているのだが・・・
もちろん無関係なので、誤解だと説明していると、
扉が開いて、張本人が入ってきた。
その目を見た瞬間、
「――――――――――――痛ッ」
令呪に痛みが走った。
それと同時に、イタチの声が頭に響く。
(気を付けろ、間違いなくサーヴァントを連れている。)
見れば向こうも同じ状況らしく、こちらを鋭い目で睨んでいる。
いや、こちらは囲まれているし、まだ誰なのかはわからないはず・・・
「岸波君、ちょっと話したいことがあるから昼休みに屋上へ来てくれる?」
「・・・・・・・わかった。」
やっぱりばれていたか。
そして、この発言がもとでまた自分はクラスの男子から睨まれることになった。
遠坂ってホントに人気あるんだな。
昼食を買って屋上へ行った俺を待っていたのは、満面の笑みを浮かべた遠坂だった。
ちなみに目は笑っていない。
「あら、遅かったじゃない。
どうしたのかしら岸波君。
ずいぶんと青ざめているけど。」
「い、いや何でもない。」
向こうは笑顔なのに、なぜかゾッとするのは気のせいだろうか。
対して遠坂は、あきれたようにため息をついて、
「はあ、まさか岸波君がマスターだったなんて。
この学校に他の魔術師がいたなんて知らなかったわ。
わたしもまだまだ未熟だったのかも。」
「いや、俺はちょっと魔術を習っただけの一般人だ。
マスターになったのだって、ほとんど偶然だしな。」
そう言って、一昨日の出来事を説明する。
遠坂は何か考えていたようだったが、顔を上げると、
「まあいいわ。
岸波君がマスターだったのは驚いたけど、大したことじゃないわ。
それよりも、わたしが聞きたいのは一つだけよ。」
そう言うと、急にまじめな顔になって、
「あの結界を張ったのはあなたなの?
正直に言わないと消し飛ばすわよ?」
そんなことを聞いてきた。
なんだ、そんなことか。
自分も、遠坂の顔を見て返答した。
「いや違う。
誰だかわからないけど、少なくとも結界を張ったのは俺じゃない。」
そのまま睨み合う二人。
先に音を上げたのは遠坂だった。
「・・・わかったわ。
あなたって、嘘を付けるような人には見えないし。
とりあえず信用してあげる。」
「ありがとう、遠坂。
ところで、そろそろ昼休みが終わるぞ。」
時間は、次の授業に移ろうとしているところだった。
「そうね。
じゃあそろそろ行きましょうか。
それと、放課後も付き合ってもらうわよ。」
「どうして?」
「どうしてって、結界を壊さないといけないじゃない。」
「ああ、そういうことか。
それなら手伝う。」
この結界は、遠坂の話によると、発動すると
魔術師でない人間を無理やり溶かす結界のようだ。
もちろんそんな結界を放っておくわけにはいかない。
幸い、結界の起点を壊せば結界も無効化されるらしいので、手は打っておくに限る。
その後、遠坂と一緒に教室に入ると、自分を待っていたのは
明らかに負の感情が込められた複数の目線だった。
一体自分が何をしたんだろう。
side 凛
放課後、誰もいなくなってから私たちは結界の起点を探し始めた。
最初は、学校中を探し回らなければいけないのかと覚悟していたが、
「俺のサーヴァントなら起点を見つけられるらしいけど。」
なんと、岸波君のサーヴァントは魔力の流れを視る眼を持っていて、
結界の起点もやすやすと見つけられるらしい。
そういうわけで、岸波君に案内してもらうことになった。
それにしても・・・
(岸波君、便利なサーヴァントを持ってるわね。)
(凛、それは暗に私が使えないサーヴァントだと言っているのかね?)
(別にそんなこと言ってないでしょ。
わたしはただ、あんな能力があったらいいな、なんて思っただけよ。)
(わかった。
君がそういうつもりなら、私は何も言わない。
だが、魔力が視える能力があるからと言って、弱ければ何にもならない。
それをよく覚えておくことだ。)
アーチャーは明らかに拗ねている。
このまま話していてもらちが明かなそうなので、黙ってついていくことにした。
あれから、岸波君のおかげで、起点探しは割とすんなりいった。
そして、屋上へ出ると、7つ目の起点があった。
岸波君(のサーヴァント)の話によると、どうやらここが最後らしい。
だが・・・
「まいったな・・・
これ、わたしの手に負えない。」
「なんだって?
それじゃあ、結界を止めることはできないのか?」
「ええ、完全にはできないわ。
けど、邪魔することならできる。」
そういって、わたしは起点に魔力を通す。
「Abzug Bedienung Mittelstnda」
唱えると、色が洗い流されていくのがわかった。
「言っとくけど、これは一時しのぎにすぎないわ。
術者が再びここに魔力を通せば、それだけで復活してしまうでしょうね。」
そういうと、岸波君は考え込んだ後、
「いや、それでも十分だよ。
ありがとう遠坂。」
なぜかお礼を言ってきた。
別にこれは私がしたいことであって、彼のためにしたわけではないのに・・・
不思議に思っていると、突然アーチャーが実体化する。
「アーチャー、どうしたの?」
「どうしたも何も。
結界はひとまず止めたのだろう?
なら、マスター同士がするべきことなど一つだと思うが。」
その言葉と同時に、岸波君のサーヴァントも実体化する。
アーチャーと比べると、彼の背はそんなに高くない。
せいぜい170後半だろう。
端正な顔立ちは、一見すると穏健そうにも見える。
だが、彼もまた、幾たびの戦いを越えてきたことはすぐに分かった。
なにより・・・
その眼が、彼が只者ではないと告げていた。
アーチャーが彼らのほうに向きなおる。
「ほう、その眼が魔力を視る眼か。
魔眼の類か?
そして、学校内でも気配が無かったということは、どうやらアサシンのクラスのようだな。」
「・・・その質問に答える義理はない。
しかし、この人たちは俺たちをただで帰らせてはくれないようだ。」
二人が一触即発の状態になる。
けれど、今日はアーチャーには悪いが止めないと。
「そこまでよアーチャー。
岸波君たちとは今日は戦わないわ。
彼らは今日起点を探すのを手伝ってくれたし。」
アーチャーがこちらを見る。
何か言いたそうにしているけれど反論はしない。
昨日一日で、遠坂凛という人間が、一度決めたことを覆すわけがないと理解したからだろう。
ため息をつきながら、アーチャーは霊体化した。
それと同時にアサシンも霊体化する。
「止めてくれてありがとう、遠坂。」
「別に、お礼を言われるようなことじゃないわ。
わたしは、単に人に借りを作りたくないだけ。
それと、今日は戦わないけど、明日からは敵同士よ。
せいぜい頑張ることね。」
そう言って、屋上から立ち去ろうとする。
しかしそのとき、
「なんだ、やらないのか。
つまんねぇな。」
全く知らない人の声が響き渡った。
もうお分かりだと思いますが、凛のサーヴァントは
あの正義の味方です。
というか他のサーヴァントは今のところは変えないつもりです。
話次第によっては分かりません。
そしてここまで戦闘数ほぼゼロ。
けど次回は戦わせる予定です。
もう少しお待ちください。