side 白野
声のしたほうを振り返る。
そこには、全身を青い衣装で包み、獣のような眼をした男がいた。
イタチとアーチャーが実体化する。
「まさか、サーヴァントか?」
「正解だ。しっかし、二人同時とは少々厳しいな」
そう言いながらも、男の口には笑みが浮かんでいる。
そして、男が手を上げると、
次の瞬間、2メートル近い朱槍が握られていた。
ほぼ間違いなく、ランサーのサーヴァント・・・!
「白野、下がっていろ」
そう言って、イタチはクナイを投擲する。
自信がありそうだけど、あれじゃあ弾かれてしまうんじゃ・・・
「はっ、そんな攻撃なんざ効か・・・がッ?!」
ランサーは防がなかった。
それどころか、ランサーは一歩も動かなかった。
クナイは吸い込まれるようにランサーの右腕に刺さる。
どういうこと?
隣にいた遠坂も驚いた表情をしている。
「ぐッ・・・!貴様、幻術使いか」
「そうだ。残念だが、お前はもう俺の幻術の中だ」
その言葉でようやく理解する。
ランサーは幻術にかかり、腕一本動かせなくなっているのだ。
イタチがランサーにかけたのは、「魔幻・枷杭の術」
イタチの眼「写輪眼」を相手が視るだけで発動でき、
相手は全身に杭が刺さった幻覚を見せられ、身動きが取れなくなる。
生前、かの大蛇丸をも撃退した術である。
「あのわずかな時間で直接干渉せずに幻術にかけるなんて・・・
サーヴァントってやっぱり化け物ね」
「ふむ、やはりあの眼の力のようだな。おそらく、見るだけで敵を縛る眼、と言ったところか。確かに知らなかったら危なかったな」
遠坂とアーチャーは冷静に分析している。
とにかく、これならランサーを倒せる・・・!
「終わりだな」
イタチが再びクナイを投げる。
その数十数本。
おそらくここで勝負をつけるつもりなのだろう。
・・・・・・しかし、
「なめてんじゃ・・・・ねぇぇぇぇ!!!」
動けないはずのランサーは、すべてのクナイをはじいていた。
イタチが驚くのも無理はない。
ランサーは、気力だけで幻術を打ち破ったのだ。
そのまま突進してくるランサー。
一直線にイタチに向かい、槍を繰り出す。
「なんだと?」
その槍がイタチを貫くことはなかった。
いつの間にかイタチの体の周りにはオレンジ色の鎧が出現し、槍を防いでいた。
さらにその鎧から巨大な腕が伸び、ランサーを横殴りにする。
ランサーは咄嗟に槍で防ぐが勢いまでは殺しきれず、そのまま校庭に落下した。
「やった・・・のか?」
「いや、まだだ。奴はこんなことでは死なないだろう。
それよりも、俺たちも降りるぞ。奴がまた上ってくる前にな」
そういうと、巨大な腕が自分をつかんだ。
イタチはそのまま飛び降りる。
「私たちもいくわよ、アーチャー」
「わかっている」
それに続いて、遠坂とアーチャーも飛び降りた。
下では、ランサーが自分たちを待っていた。
治癒魔術でも使ったのか、右腕はすでに治っている。
「てめぇ、さっきからやってくれるじゃねえか・・・!」
ランサーはイタチに殺意を向ける。
出会い頭にたやすく幻術をかけられたり、校庭に落とされたのが気に入らないようだ。
対するイタチは、ただ相手を観察していたが、突然口を開いた。
「さて、どうする白野。どうやら戦わざるを得ないようだが」
確かにそのようだ。
ランサーは殺気立っており、ただで帰らせてくれるとは思えない。
遠坂に視線を向けるが、
「悪いけどこちらは手を出さないわ。
あなたたちには恩があるけど、それでも共闘するほどじゃない。
安心しなさい。後ろから狙い撃ち、なんて真似はしないから」
アーチャーも実体化してはいるが、まるで戦意はない。
こちらに被害が来たら、くらいの用心だろう。
まあこの反応は覚悟していたが。
共闘するよりも、二人で潰し合ってくれたほうが効率がいい。
それに、敵に情報を与えることもない。
だから、この判断は極めてまともである。
・・・・絶対学校では猫かぶってたな。
要するに、助け無しでランサーと戦わなければいけないわけだ。
・・・まいったな。
つまり、イタチに言うことは一つしかない。
「アサシンを信じる」
その言葉を聞くと、イタチはかすかに微笑んで、自分の前に立つ。
ランサーも槍を構える。
自分にとっての初めてのサーヴァント戦が始まろうとしていた。
先に動いたのはランサーだった。
頭、首筋、心臓への三連突。
それらをイタチは紙一重で回避する。
そして、ランサーの追撃を避け後ろに跳ぶと同時に、クナイを二本投げる。
ランサーはこともなげに弾くが、直後、
「火遁・豪火球の術」
等身大ほどの炎弾がランサーを襲う。
ランサーは一旦距離をとるが、脇からイタチが走りこんでくる。
そのまま打ち合いになるが、ランサーの神速の槍は簡単にイタチのクナイを手から弾いた。
「終わりだ」
心臓への刺突。
槍はイタチの体を貫き、決着は着いたかに見えた。
「なんだと?」
その瞬間、イタチの体が何羽ものカラスに代わり、飛び去ってしまう。
ランサーは驚くが、次の瞬間、イタチの声が後ろから響く。
「火遁・鳳仙火の術」
吹き出された火の玉は一瞬でいくつもの火の玉に分かれ、ランサーに向かって飛ぶ。
ランサーはかろうじて全てを切り裂くが、再びイタチが迫ってくる。
応戦するランサー。
しかし、2合ほど打ち合った後、突如イタチの体が爆発する。
「がッ・・・?!」
爆破をもろに食らってしまったランサーは、大きく後退する。
目の前には未だ無傷のイタチ。
(どういうことだ、あれは魔術じゃねえのか?奴の技が全く読めねえ)
ランサーは訝しむが、実際、彼の術は魔術ではなく忍術なのだから読めないのも仕方ない。
「てめえ、どこの英雄だ。その術、ただの英霊じゃねえはずだ」
「悪いが、敵に不用意に情報を渡すわけにはいかない。力ずくで奪ったらどうだ」
「ほう、よくぞ言った。
―――――――――ならば食らうか。我が必殺の一撃を」
たかが暗殺者、と侮ってしまったのがここまでやられた原因。
しかし、もう慢心はしない。
こいつは、俺が宝具で仕留める――――――!
ランサーがそう決意した瞬間、槍に禍々しい魔力が流れる。
イタチにもそれがわかったのか、いつの間にか彼の周りをあの鎧が覆っていた。
「じゃあな。その心臓、貰い受ける――――――――!」
ランサーがそう宣言した時、
「・・・・・白野?」
いるはずのない声が聞こえた。
やっぱり戦闘シーンは難しいですね。