冬木に蘇る万華鏡   作:エメラル

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第六話です。


六話 決意

side 白野

 

そのサーヴァントは、一直線にこちらに向かってきた。

自分の前には遠坂とアーチャー。

何故かは知らないが、アーチャーはそのサーヴァントを見た途端動揺し、身動きを取らない。

遠坂は何かをしようとしてるが、おそらく間に合わないだろう。

このままでは二人が殺されてしまう・・・!

 

「アサシン!」

 

無意識にイタチを呼んでいた。

イタチもわかっていたようで、無言で彼らの前に立ち、

そのサーヴァントが持つ「何か」をクナイで防ぐ。

しかし、防いだ瞬間、クナイにひびが入った。

さらにもう一度「何か」が振るわれると、クナイは砕けてしまった。

そして、3度目の攻撃がイタチを襲うが、それは我に返ったらしいアーチャーが防いだ。

彼が持っているのは一対の夫婦剣。おそらく中華剣だろう。

 

それにしても、あのサーヴァントの攻撃力は桁違いだ。

ランサーとの戦いでもイタチは多少打ち合っていたが、クナイは折れた様子はなかった。

ていうことは、あれはランサー以上の力を持つということ・・・!

 

一旦距離をとったサーヴァントを、遠坂が撃った魔力の弾丸が襲った。

しかし、家一軒は吹き飛ばせるであろうそれは、瞬く間に消滅する。

対魔力も桁違いだ。

そして、敵が再び襲い掛かろうとした時、

 

「やめろセイバーーーーーー!!!!」

 

追いついた士郎の声が響く。

セイバーは一旦は手を止めたが、士郎のほうへ向きなおると、

 

「なぜ止めたのです。彼らはアーチャーとアサシンのサーヴァントと、そのマスターです。

今のうちに仕留めておかなければ」

 

「だ、だから待てって言ってるだろう!俺のことをマスターとかなんとか言ってるけど、

こっちはてんで解らないんだ。俺のことをマスターって呼ぶんなら、説明するのが

筋ってもんだろう・・・!」

 

そのまま言い争う声が聞こえる。

士郎はこの状況を理解していないようだ。

まあ、いきなり理解しろって言われても難しいだろう。

そう思っていると、遠坂が口を開いた。

 

「ふうん、あなたもそうだったのね、素人のマスターさん?」

 

「遠坂、凛—――――――」

 

士郎は言葉を失っている。

遠坂がここにいるのが信じられないようだ。

 

「一体どういう・・・

そうだ、白野!何か知ってるなら説明してくれ!」

 

「えっと・・・」

 

「彼もあなたと同じマスターよ。私もね。

それより、まだ状況理解できてないんでしょ。なんか頭に来たから説明してあげる」

 

自分が何か言うより早く、なぜか怒っている様子の遠坂が説明し始めた。

一応顔は笑っているが、あれはどう見ても怒っている。

 

「そういうわけだからアーチャー、あなたは霊体化して。あなたがいたらセイバーが剣を

納められないでしょ?」

 

「はあ・・・。言っても無駄だとは思うが、君は今余分なことをしようとしている」

 

そういって、アーチャーは霊体化した。

自分もイタチを霊体化させる。

すると、遠坂は勝手に衛宮邸に入っていった。

 

「多分遠坂が説明してくれるから、今は遠坂の言うとおりにしてくれ」

 

「まあ、白野がそういうなら・・・」

 

ついていく自分たち。

けど、セイバーって女性だったんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

その後、遠坂によって聖杯戦争の基本の説明がされた。

遠坂は、素人レベルの魔術使いの士郎がセイバーを召喚したことに怒っていた。

士郎は、遠坂の学校とのギャップについていけず、

 

「なあ白野、あれ遠坂だよな?」

 

とか聞いてきた。

 

「気持ちはわかる。何しろ同じ心境だ」

 

「そうか・・・

ところで、白野はどうして聖杯戦争に参加したんだ?」

 

「ああ、俺も全くの偶然だよ。他のサーヴァントに襲われて、アサシンに救われたんだ」

 

そう言って、自分はアサシンを召喚した時のことを話す。

話し終えると、士郎は納得した表情をしていた。

 

「そうだったのか・・・

まあ、白野が自分から殺し合いに参加するわけないと思ってたけど」

 

そんな話をしていると、遠坂が教会へ行くと言い出した。

どうやら監督役である神父に会いに行くらしい。

士郎は最初は渋っていたが、セイバーも勧めたので行くことにした。

自分も行ったほうがいいようだ。

 

そうして出発したのだが、セイバーはなぜか霊体化できないらしい。

しかし鎧は脱がないと言い張るので、士郎が雨合羽を着せたところ、

終始無言になってしまった。

自分とセイバーは話すことがないので、遠坂とだけ話している。

 

遠坂の話では、その神父は一筋縄ではいかないらしく、

どんな人か説明するのすら難しいらしい。

しかし、遠坂がその神父を嫌っていることはわかった。

どんな人だろう、と思っていると、どうやら着いたようだ。

ちなみにセイバーは教会の前で待っているらしい。

 

「その神父って、こっち側の人間なのか?」

 

「ええ、名を言峰綺礼って言う、バリバリの代行者よ。

出来れば知り合いたくなかったけど・・・」

 

「―――――――同感だ。私も、師を敬わない弟子など持ちたくなかった」

 

教会の奥から声がした。

見ると、修道服を着た神父がこちらに歩いてきた。

・・・なんでだろう。

この神父には間違いなく会ったことがないのに、この先困らせられそうな気がするのは。

 

「珍しいな。久しぶりに来たと思えば、二人も客を連れてくるとは。

もしや、彼らはマスターなのかね?」

 

「ええ、二人はセイバーとアサシンのマスターよ」

 

「なるほど。では、君らの名前は何というのかね?」

 

言峰がこちらに視線を向ける。

 

「俺は岸波白野」

 

「俺は衛宮士郎。だけど、俺はまだマスターなんてのになった気はないからな」

 

士郎はまだマスターになったことを認めていないようだ。

対して言峰は、士郎の名前を聞いた途端、見る人がゾッとするような邪悪な笑みを浮かべた。

背筋に悪寒が走る。

 

「では始めよう。まず衛宮士郎、君はセイバーのマスターで間違いないか?」

 

「それは違う。確かに俺はセイバーと契約したけど、聖杯戦争とか、そんなことを言われても俺はてんでわからない。今からでもいいから違う人を選んだほうがいい」

 

「・・・なるほど、これは重傷だ。彼は本当に何も知らないのか、凛」

 

「ええ、彼は素人よ。そのあたりからしつけてやって」

 

「ふむ、わかった。ところで、君はどうかな?アサシンのマスターよ」

 

言峰は自分に矛先を向けてきた。

重圧に負けないように、まっすぐ目を見て言う。

 

「いや、俺は聖杯にかける望みはある。アサシンと共に戦う覚悟もできている」

 

自分の言葉に驚く士郎と遠坂。

言峰も興味深げに自分を見た後、

 

「ほう、君にはすでに願いがあると?」

 

「ああ」

 

しばらく言峰は自分を見ていたが、フッと笑うと、

 

「それなら君は問題ないな。ならば衛宮士郎、君の勘違いをまず正そう」

 

といって、士郎に聖杯戦争の説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

言峰の話は終わり、士郎はマスターとして戦う選択をした。

神父は彼の答えが気に入ったのか、満足そうな笑みを浮かべた。

 

「それでは君たちをマスターと認めよう。

この瞬間より、此度の聖杯戦争は受理された。

—―――――存分に競い合いたまえ」

 

その後、遠坂が言峰と何か話していたが、終わったようだ。

教会を出る。

もう二度と来ることはないだろうと思いながら。

 

帰り道はみんなが無言だった。

そして交差点についたとき、

 

「ここで別れましょう。悪いけど、明日からは敵同士だから」

 

と遠坂が言った。

やはり、自分たちに気を遣ってくれていたようだ。

感謝してもしきれないな、と思っていると、士郎は

 

「遠坂っていいやつだな。俺、お前みたいなやつは好きだ」

 

なんて、しれっと言った。

 

ちょっと待て。

それは、あまりにも直球すぎではないだろうか?

遠坂も士郎の発言に黙ってしまった。

 

「と、とにかくサーヴァントがいなくなったらすぐ教会に逃げ込みなさいよ。

そうすれば命だけは助かるんだから」

 

「いや、そんなことにはならないだろ。どう考えても俺のほうが死ぬ確率が高い」

 

そんな話をしていると、

 

「—―――――――ねえ、お話は終わり?」

 

幼い声が聞こえた。

そこにいたのは、

 

雪のような少女と、居てはいけない化け物だった。

 

 

 

 

 

 

 




ホントはもうちょっと伸ばしたかったんですけど
いろんな都合で断念しました。
申し訳ありません。

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